残酷な描写あり
12話 仮眠
【これまでのあらすじ】
明治生まれの常太郎。大阪の材木商で丁稚。旦那衆に認められ単身四国へ。道中地震に遭い命を失う。先祖は徳川幕府2代将軍秀忠の時代。100石の嫡男として転生。右肩に火傷を負う。体格の良さと前世での記憶と知識を兼ねる。知識と人柄から寺子屋の経営を譲られる。大御所の死去に伴い、父恒興は小山を発ち、膨大作業と時を経て、体調を崩す恒興は隠居し恒太郎に家督を譲る。翌月家族に見守られ死去。正純から転生者だと指摘。師範を増やす為の育成。浪人を雇うのに50石の加増。雇ったのは陸奥国会津藩出身の佐々木国明という若者。早速、正純に報告する。家事手伝いから解放された妹詩麻が通うようになる。
明治生まれの常太郎。大阪の材木商で丁稚。旦那衆に認められ単身四国へ。道中地震に遭い命を失う。先祖は徳川幕府2代将軍秀忠の時代。100石の嫡男として転生。右肩に火傷を負う。体格の良さと前世での記憶と知識を兼ねる。知識と人柄から寺子屋の経営を譲られる。大御所の死去に伴い、父恒興は小山を発ち、膨大作業と時を経て、体調を崩す恒興は隠居し恒太郎に家督を譲る。翌月家族に見守られ死去。正純から転生者だと指摘。師範を増やす為の育成。浪人を雇うのに50石の加増。雇ったのは陸奥国会津藩出身の佐々木国明という若者。早速、正純に報告する。家事手伝いから解放された妹詩麻が通うようになる。
昼の食事明け再び勉学をするのだが、腹が膨れたことで子供たちは眠たそうだ。
恒太郎「だいぶ眠たそうにしてるな。今日は特別にこれから四半刻全員横になろう。眠いまま勉強をしても身に付かんからな。横になったら話はせず目を閉じなさい」
四半刻は一刻が2時間なので、その4分の1で30分。30分の睡眠で残りの時間は、一刻も無いが、眠いままでは。と思いみなで寝ることとした。
ざわざわ
がやがや
恒太郎「そろそろかな。起きなさい。あれ?皆起きてるな。よし。まだ寝てる子を起こしてあげなさい。いいですか。食べてすぐに寝るのは身体によくありませんが、少し寝ることで疲れをとることが出来ます。お昼寝はこれから毎回することとします」
少しずつこの時代のこれまでに経験したこと無いことを提案をしていく。寺子屋で新たな考え方が始まった。子供たちは戸惑いながらも経験の無いことを楽しんでいるようだ。
恒太郎「みな起きたな。では、頭もよくまわるだろう。計算を勉学するぞ」
子供たちは「えー」心の声を出しながら落ち込む声を上げる。
恒太郎「国明先生。茶碗を三つほど持ってきてもらえますか?」
茶碗をカチャカチャと音を立てながら持ってくる。
恒太郎「ありがとうございます。では、この茶碗を三個で一分金とします。十五個必要とします。いくらになるでしょうか。そろばんを使っても良いですが、できれば頭の中のそろばんを使って考えてください」
子供たちはガッカリしながらも問いに答えようと必死に考える。さほど難しい問題では無いため分かった子供たち出てきた。
恒太郎「目いっぱい考えて良いですよ。何人か分かった人が居ますね。では、先生のところまできて小声で答えてください。分かった人は私に耳打ちしてください」
千代が最初にやって来た。
千代「一分金五枚です」
恒太郎「良いですね。当たってはいますが、相手の商人のことを考えてもらえますか?」
千代は首をひねりながら席に戻る。次に、男の子が自信満々でやって来た。
男の子「一分金五枚です」
恒太郎「惜しいですね。もっと簡単にしてください」
男の子はなにが間違いなのか分からない顔して席に戻る。
別の男の子が自信無さげにやってきた。
男の子「その茶碗は使い古されているので、値切れると思います。それとまとめて購入するのですから、ぼくなら一分金三枚まで値切れると思います」
なんと値切った上での金額を提示してきた。
恒太郎「面白い答えですね。実に現実的な答えです。その答えは正解としたいのですが、先に言わずすみません。新しい茶碗として計算し直してください。考え方はとても私の好きな答えです。ほとんど正解と言っても良いでしょう」
普段から値切ることもできると伝えているため着眼点は素晴らしかった。しかし、それだと単純な計算ではすまなくなるので、不正解とした。
恒太郎「では、四人一組になって話し合ってください。まだ分からない人が居たら皆さんで計算法を教えてあげてください。その上で、より簡単にするように考えてください。隣の組とも相談しても良いとします。ただ、最も早く良い答えが言えた組には来月の評価が上がりますよ。頑張ってくださいね」
ワイワイ言いながら懸命に考える。その間、国明は子供たちを見て回る。頭を掻きながら考える。
子供たち「一分金五枚と答えたら惜しいと言われたんだ」
子供たち「どうやって答えを出したの?」
子供たち「なにが違うんだろう」
悩むのを微笑みながら待つ。
恒太郎「では少し手がかりをお伝えしましょう。枚数が多いと数えるのが面倒ですよね。では、簡単になると手持ちが楽になります」
しばらくすると香与が大きな声を上げた。
香与「あーーー!わかった!!」
恒太郎のところへ駆け寄る。
香与「二分金一枚と一分金一枚です」
興奮してるためか大きな声で言ってしまったため、全員に伝わった。聞こえた子供たちも大きな声で落胆の声を上げる。
苦笑いしながらも。
恒太郎「ははは。本当は小声でお願いしたかったのですが、ついつい興奮してしまったんですね。仕方ないです。答えはそのとおりです。さすが、商家の娘さんですね。よくできました」
香与の頭を撫でて褒めた。
恒太郎「実際は、この茶碗はそれほどの価値はありませんが、面白い答えも聞けて私は楽しかったですよ。計算は必ず一つの答えになる。と言いますが、二つ・三つあることは実のところあります。その中の答えからさらに絞り最適化した一つに絞ることが出来れば良いのです」
恒太郎「財布が重いのは人目にはよく見えますが、実際は軽い方が使い勝手が良いというものです。商人は受け取る時に、数えるのが簡単な方が早く取引できるので、客も商人もどちらも喜ばれます」
子供たちは顔を見合わせる。
恒太郎「みなさん。少し寝たからでしょうか。よく集中してましたね。仮眠は良いことだとわかりました。次からも仮眠をとる時間を作りますね。その代わり頭をたくさん使うようにします。みなさん頑張りましょう!」
子供たちの残念な声が上がる。それを聞き笑顔で聴く。
恒太郎「では今日はこれで終わりです。頭をたくさん使うと頭が痒くなりますね。ごくろうさまでした」
一礼して子供たちは解散する。
国明「箸は洗ってあります。自分のを持ち帰ってください。ここに置いて帰るのはだめですよ」
迎えに来た親たちは、初めての全員での食事の他に食後の仮眠など信じられなかった。
親たち「先生。食事はまだわかりますが、仮眠?というのはどうなんですか?」
恒太郎「眠くてウトウトしながら勉学をしても身になりません。だったら全員寝て頭を休ませてから勉強をするとどうなると思います?わかりますよね。頭が冴えるんです。ですから、仮眠を取りました。四半刻も必要ありませんが、少し寝てから働くと動きが良くなるのと同じです。みなさんも一度やってみてはどうですか?」
親たちは、不審に思いながらも子供を連れて帰る。次回の送りに来た時から一部の親たちが実践したようで、特に大工のような高いところを昇るなど危険な仕事をしてる親からは大変好評だった。みなに勧めているとも聞いた。良い傾向だと喜ぶ。
それらを見聞きしてる国明は、恒太郎の先端を行く考えを不思議そうに見ている。武家の人間は、前例を重んじる傾向がある。どこでそのようなことを知ったのだろうか。いつ経験をしたのか。感心しながらも少し恐ろしく感じた。
ー 帰路 ー
恒太郎と国明、千代と詩麻。4人で一緒に帰る。千代はこの時間が好きだ。帰り道話をしながら帰るのが楽しいようだ。3日に1日通う寺子屋。先生は毎日通うが、子供たちはおおよそ3日に1回通う。畑仕事が忙しいなどがあり、季節によっては6日に1回通うことも珍しくはない時代。子供でも手伝わないと間に合わないからという理由で駆り出される。しかし、千代は百姓の子供であるが、勉学に真面目に取り組むことから3日に1回通うように話を通してある。
千代「ツネ先生。お昼美味しかったですね。これからもお昼にご飯食べてもいいんですね。お昼が楽しみになりました」
恒太郎「そうですか。それは良かったです。これからも続けていきますよ。私の石高が減らないことを願っていてください」
笑いながら帰る。さらに千代は言う。
千代「他の子たちもご飯が食べれた上に、みんなで一緒に寝れたのを喜んでました」
恒太郎「そうですか。嬉しいですね。まだ初回ですので、みなで楽しみながら勉学ができると良いですね。みな平等でありたいものです」
平等は現代でこそ当たり前の言葉だが、江戸時代に平等などという言葉は使わない。特に人間に関しては。ますます、国明を悩ます。
国明 [一体何を言ってるのだろうか]
恒太郎「だいぶ眠たそうにしてるな。今日は特別にこれから四半刻全員横になろう。眠いまま勉強をしても身に付かんからな。横になったら話はせず目を閉じなさい」
四半刻は一刻が2時間なので、その4分の1で30分。30分の睡眠で残りの時間は、一刻も無いが、眠いままでは。と思いみなで寝ることとした。
ざわざわ
がやがや
恒太郎「そろそろかな。起きなさい。あれ?皆起きてるな。よし。まだ寝てる子を起こしてあげなさい。いいですか。食べてすぐに寝るのは身体によくありませんが、少し寝ることで疲れをとることが出来ます。お昼寝はこれから毎回することとします」
少しずつこの時代のこれまでに経験したこと無いことを提案をしていく。寺子屋で新たな考え方が始まった。子供たちは戸惑いながらも経験の無いことを楽しんでいるようだ。
恒太郎「みな起きたな。では、頭もよくまわるだろう。計算を勉学するぞ」
子供たちは「えー」心の声を出しながら落ち込む声を上げる。
恒太郎「国明先生。茶碗を三つほど持ってきてもらえますか?」
茶碗をカチャカチャと音を立てながら持ってくる。
恒太郎「ありがとうございます。では、この茶碗を三個で一分金とします。十五個必要とします。いくらになるでしょうか。そろばんを使っても良いですが、できれば頭の中のそろばんを使って考えてください」
子供たちはガッカリしながらも問いに答えようと必死に考える。さほど難しい問題では無いため分かった子供たち出てきた。
恒太郎「目いっぱい考えて良いですよ。何人か分かった人が居ますね。では、先生のところまできて小声で答えてください。分かった人は私に耳打ちしてください」
千代が最初にやって来た。
千代「一分金五枚です」
恒太郎「良いですね。当たってはいますが、相手の商人のことを考えてもらえますか?」
千代は首をひねりながら席に戻る。次に、男の子が自信満々でやって来た。
男の子「一分金五枚です」
恒太郎「惜しいですね。もっと簡単にしてください」
男の子はなにが間違いなのか分からない顔して席に戻る。
別の男の子が自信無さげにやってきた。
男の子「その茶碗は使い古されているので、値切れると思います。それとまとめて購入するのですから、ぼくなら一分金三枚まで値切れると思います」
なんと値切った上での金額を提示してきた。
恒太郎「面白い答えですね。実に現実的な答えです。その答えは正解としたいのですが、先に言わずすみません。新しい茶碗として計算し直してください。考え方はとても私の好きな答えです。ほとんど正解と言っても良いでしょう」
普段から値切ることもできると伝えているため着眼点は素晴らしかった。しかし、それだと単純な計算ではすまなくなるので、不正解とした。
恒太郎「では、四人一組になって話し合ってください。まだ分からない人が居たら皆さんで計算法を教えてあげてください。その上で、より簡単にするように考えてください。隣の組とも相談しても良いとします。ただ、最も早く良い答えが言えた組には来月の評価が上がりますよ。頑張ってくださいね」
ワイワイ言いながら懸命に考える。その間、国明は子供たちを見て回る。頭を掻きながら考える。
子供たち「一分金五枚と答えたら惜しいと言われたんだ」
子供たち「どうやって答えを出したの?」
子供たち「なにが違うんだろう」
悩むのを微笑みながら待つ。
恒太郎「では少し手がかりをお伝えしましょう。枚数が多いと数えるのが面倒ですよね。では、簡単になると手持ちが楽になります」
しばらくすると香与が大きな声を上げた。
香与「あーーー!わかった!!」
恒太郎のところへ駆け寄る。
香与「二分金一枚と一分金一枚です」
興奮してるためか大きな声で言ってしまったため、全員に伝わった。聞こえた子供たちも大きな声で落胆の声を上げる。
苦笑いしながらも。
恒太郎「ははは。本当は小声でお願いしたかったのですが、ついつい興奮してしまったんですね。仕方ないです。答えはそのとおりです。さすが、商家の娘さんですね。よくできました」
香与の頭を撫でて褒めた。
恒太郎「実際は、この茶碗はそれほどの価値はありませんが、面白い答えも聞けて私は楽しかったですよ。計算は必ず一つの答えになる。と言いますが、二つ・三つあることは実のところあります。その中の答えからさらに絞り最適化した一つに絞ることが出来れば良いのです」
恒太郎「財布が重いのは人目にはよく見えますが、実際は軽い方が使い勝手が良いというものです。商人は受け取る時に、数えるのが簡単な方が早く取引できるので、客も商人もどちらも喜ばれます」
子供たちは顔を見合わせる。
恒太郎「みなさん。少し寝たからでしょうか。よく集中してましたね。仮眠は良いことだとわかりました。次からも仮眠をとる時間を作りますね。その代わり頭をたくさん使うようにします。みなさん頑張りましょう!」
子供たちの残念な声が上がる。それを聞き笑顔で聴く。
恒太郎「では今日はこれで終わりです。頭をたくさん使うと頭が痒くなりますね。ごくろうさまでした」
一礼して子供たちは解散する。
国明「箸は洗ってあります。自分のを持ち帰ってください。ここに置いて帰るのはだめですよ」
迎えに来た親たちは、初めての全員での食事の他に食後の仮眠など信じられなかった。
親たち「先生。食事はまだわかりますが、仮眠?というのはどうなんですか?」
恒太郎「眠くてウトウトしながら勉学をしても身になりません。だったら全員寝て頭を休ませてから勉強をするとどうなると思います?わかりますよね。頭が冴えるんです。ですから、仮眠を取りました。四半刻も必要ありませんが、少し寝てから働くと動きが良くなるのと同じです。みなさんも一度やってみてはどうですか?」
親たちは、不審に思いながらも子供を連れて帰る。次回の送りに来た時から一部の親たちが実践したようで、特に大工のような高いところを昇るなど危険な仕事をしてる親からは大変好評だった。みなに勧めているとも聞いた。良い傾向だと喜ぶ。
それらを見聞きしてる国明は、恒太郎の先端を行く考えを不思議そうに見ている。武家の人間は、前例を重んじる傾向がある。どこでそのようなことを知ったのだろうか。いつ経験をしたのか。感心しながらも少し恐ろしく感じた。
ー 帰路 ー
恒太郎と国明、千代と詩麻。4人で一緒に帰る。千代はこの時間が好きだ。帰り道話をしながら帰るのが楽しいようだ。3日に1日通う寺子屋。先生は毎日通うが、子供たちはおおよそ3日に1回通う。畑仕事が忙しいなどがあり、季節によっては6日に1回通うことも珍しくはない時代。子供でも手伝わないと間に合わないからという理由で駆り出される。しかし、千代は百姓の子供であるが、勉学に真面目に取り組むことから3日に1回通うように話を通してある。
千代「ツネ先生。お昼美味しかったですね。これからもお昼にご飯食べてもいいんですね。お昼が楽しみになりました」
恒太郎「そうですか。それは良かったです。これからも続けていきますよ。私の石高が減らないことを願っていてください」
笑いながら帰る。さらに千代は言う。
千代「他の子たちもご飯が食べれた上に、みんなで一緒に寝れたのを喜んでました」
恒太郎「そうですか。嬉しいですね。まだ初回ですので、みなで楽しみながら勉学ができると良いですね。みな平等でありたいものです」
平等は現代でこそ当たり前の言葉だが、江戸時代に平等などという言葉は使わない。特に人間に関しては。ますます、国明を悩ます。
国明 [一体何を言ってるのだろうか]
香与の名前の由来は、商人の娘ということもあり、香りを与える。商人として人として香りという安らぎを与える。
アチラでは違う文字でしたが、新たに美しさと聞こえの良さを重視した名前にしています。どちらの香与も可愛い娘さんなので大事にしてあげてください。
アチラでは違う文字でしたが、新たに美しさと聞こえの良さを重視した名前にしています。どちらの香与も可愛い娘さんなので大事にしてあげてください。