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作者: 清水レモン
区切り
 読めば読むほどシンプルだった。
 言い回しは簡潔とは言えなかったけれど、質問内容は単純明快。ただし。

 言葉のとおりに受け取って、いいのだろうか?

 という疑問も生まれた。
 そんな疑問を抱えたまま、おれは問題にとりかかる。
 
 第一問目。

 意味もなく理由もわからず、息をのむ。読んだ。息を飲む。読み返す、さらに呼吸を整えて文字そのものを目で追いかけてみる。問われていることは単純だよな。答えればいいんだよな。用いる公式は、どれだっけ。いつものやつでいいんだろ。なあ、解けるよ。解けるじゃんかよ、なあ?

 問題文というより説明文だな?
 これを読んだうえで、小さな問題が複数。
 問題そのものとは関係ないが、ここで使うことになる公式を応用して解くことになる設問。
 数えてみれば、五つほど。
 大見出しの第一問目に、五つの小見出し。それぞれの問いかけに対して、自分の説明を試みる。個性は問われていない。いかにして客観的に述べるかだ。感情を見え隠れさせてしまう文字ではなく、感情を隠し切ってクールに見せる数字と記号だけで。さあ説明を試みようか、おれの読みちがえがなければ。

 計算式を使用すれば、物理的に時間が必要。努力や根性では短縮できない時間が。
 使用可能な公式は複数ある。あれが、いちばん効率的。だが、あっちを使ったとしても同じ答えにたどりつく。
 まったく逆方位の山道をのぼり始めても、頂上で出会って握手を交わせるだろう。
 おれは最初に思いついた公式で解いた。それから問題用紙の空欄に、別の公式を用いて解いてみる。同じ答えに行き着いた。ならばよし。次。応用か。
 
 さっきまでの空気が変わって、「まあ、いいからチョット寄ってけ。そんなに緊張するなってホラ」と言われていそうな感覚になる。簡単だよ、実に。だが、うっかりミスを誘発するには、もってこいだな。
 小さな問いかけほど、深い闇を見せてくる。ほうら、どうだ。簡単だろう? なあ、これボーナス問題。できるだろう、できてあたりまえ。点数稼ぎに、もってこいさ。さささ、さあ、解いてごらんよ書いてごらん。

 オマエの答え!

 おれは念のため、もう一度さらりと計算する。さっきと違う数字が顔を出した。え。なぜ。わからない。理由が。さらりと計算したから、うっかりまちがえとでも?
 いや、いや、いや。ちがうだろ。もう一度。

 またちがう答えになった。
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