残酷な描写あり
第五幕 2.5 『その時男たちは…』
ーー 男部屋にて ーー
カティアたちが女部屋でカードゲームに興じている頃、男部屋でも風呂上がりの酒を楽しみながら話をしていた。
「あ~、いい湯だったな…こう、旅の疲れが湯に溶け出していくようだったぜ」
「ああ、カティアのチョイスもなかなかのものだ。東方料理も久しぶりに食べたが、ここまで美味いのは初めてだな」
ティダも、妻と娘が女部屋に行ったのでこちらに合流している。
「しかし、ロウエンも似たような事言っていたが、あいつそんなに東方文化に詳しかったか?」
「まあ、カティアちゃんは色んな事覚えてるッスからねぇ。そんじょそこらのお貴族様より博識だったりするんじゃないッスか?…あ、リュシアン様の事じゃないッスよ!?」
「ふふ…分かってますよ、そんなに気にしないでください。今の私は唯の旅の仲間と思った頂ければ」
「そうだぞロウエン。そんなこと気にしてたら、カティアなんてお姫様だぞ」
「大将は気にしなさすぎだと思うッスよ…しかし、カティアちゃんはいったいどこまで行くッスかね?あ、カイトは大丈夫なんスか?相手がお姫様とか…」
「え?…ええ、まあ、あまり驚かなかったというか、やっぱりな…と思いましたし」
「…その、カイトさんは姫…カティアさんとお付き合いを?」
「そ、そうですね、まだはっきりと付き合ってる訳ではありませんが、想いは伝えたと言いますか…」
「もういい加減確定でいいだろ…。なんだ?カイトの身分が気になるか?」
「あ、いえ、そういう訳ではありません。(確かこの方はレーヴェラントの…ですから、身分的には気にはしてませんが)…ただ、イスパル王家の臣下たる私としては、お付き合いするのであるならば、そこはハッキリして頂きたいとは思います」
「だとよ、カイト。まあ、近いうちに何とかする気なんだろ?」
「ええ、王都に着いたらいろいろ動こうと思います」
「そうですか、安心しました。もし、私の力が必要なときは言ってください。私も微力ながらお手伝いできればと思います」
と、意味有りげな視線を向けながらリュシアンが言う。
それを見たカイトは、この人もある程度自分のことを知っているのだろうと理解し、ならば、有り難く好意を受け取っておこうと返事をする。
「…リュシアン様、お心遣い感謝します。その時が来たら、是非、お力添えをお願いします」
「ええ。国の人間としてどう動けるかは分かりませんが…少なくとも友人としては約束いたします」
「ふふ、そうだぜカイト。俺たちだっているんだからな。協力者は何人いたっていいんだ。なあ、ティダよ」
「その通りだ。我々一座の連中は仲間のためなら命をかける。ましてや、うちの『姫さま』のためなら何だってするからな」
「…はい。以前忠告してもらった通り、自分だけで抱え込まないようにします」
「ああ、それでいい」
そう、カイトに言うダードレイの表情は、まるで息子を見るかのようであった。