残酷な描写あり
第五幕 2 『満喫』
残酷な結果に打ちひしがれながらも、温泉はたっぷり堪能した。
…なぜ私はあんな無謀な戦いを挑んだのだろうか?
皆にも大好評で、また入ろうという事に。
夜も格別だし、朝も贅沢な感じがして良いよね。
しかし、お風呂もいいけどもう一つの楽しみがある。
そう、これからの夕食である!
この世界に転生してからは和食を食べる機会は無かったが、やはり【俺】の記憶を持つ身としては少し物足りない気もしていたのだ。
これほどまでに東方文化に拘った旅館ならば、食事も期待できると思う。
食事は部屋で取ることも出来るのだが、せっかくなのでみんな集まって食べたいので、宴会場のようなところを借りて食べることにした。
既に机には食事が用意されていて、様々な彩りの食材が趣向を凝らした料理になって所狭しと並べられている。
うん、予想に違わずとても美味しそうだ!
みんな揃って着座する。
畳敷きに座布団だが、部屋もそうだったので既に皆も慣れたようだ。
「うわぁ~、美味しそう!」
「東方料理は久しぶりだな。まぁ俺としちゃあ、それよりも酒が楽しみなんだが」
「東方酒?お米から作るやつだよね」
まあ、ようするに日本酒だ。
…いいなぁ、私も飲みたい。
「カティアは止めておけ。ビールなど比べ物にならん。舐めただけでやられるぞ」
「そんな物欲しそうな目で見ても駄目だぞ」
「…絡み酒は勘弁してほしいッス」
やっぱり全否定される。
「そうね~。お酒はカイトくんと二人だけの時にしておきなさい~」
「…」
「また姉さんは変なこと言わないでよ。カイトが困ってるじゃないの」
どうも、カイトがいるときは彼に甘えて、そうじゃない時は絡み酒になるらしい。
…自分でもそんなヤツ面倒くさいと思うわ。
さて、皆揃ったので食事の開始となった。
ご飯をよそったり、緑茶を注いだりして皆に配膳する。
リュシアンさんがもの凄く恐縮していたけど、初めてだと分からないでしょ。
「では、いただきま~す!」
「カ、カティアさん…これ、生みたいですわ…」
と、食べ始めたのは良いが、ルシェーラが恐る恐る聞いてきた。
あ~、初めてだと驚くか~。
「これはね、お刺身と言って生のお魚だけど美味しく食べられるんだよ。(ぱくっ)うん、美味しい!」
ここは結構海から離れてるんだけど、冷凍の魔法があるからコストをかければ新鮮な魚介も手に入るんだよね。
私が美味しそうに食べるのを見て、ルシェーラも恐る恐る刺し身を口に運ぶ。
因みに私は箸を使ってるが、彼女はフォークである。
「…おいしい!驚きましたわ、生の魚がこんなに美味しいなんて…」
「でしょう?まあ、鮮度が良くないと食べられないけど、新鮮なものは本当に美味しいよね」
「カティアさん、これは何でしょうか?」
リュシアンさんが指しているのは四角い白いもの。
「ああ、お豆腐ですね。大豆から出来ててとってもヘルシーな食べ物ですよ」
「…とても柔らかくて滑らかな食感です。味は淡白ですが、このショーユ?に付けて食べるのは良いですね」
「これは…変わったスープだな?だが、これも美味い」
「ミソ汁だね。それに使われてるミソも、ショーユも、トーフも大豆から出来てるんだよ」
「へえ…大豆と言うのは随分と色々なものが出来るんだな」
初めて食べる人は興味半分、怖さ半分と言ったところだったが、概ね好評の様子。
私はもちろん大満足だ!
「魚やらトーフやら、ヘルシーなのも悪くはねぇんだが、やっぱり俺ぁ肉だな。このスキヤキが一番だ」
「同じくッス」
まあウチの男どもはそうだよね。
でも実際メイン料理はこれだろうし、美味しいということに異論はない。
というかめちゃくちゃ美味しい。
肉質は柔らかくて旨味もしっかりあって、甘辛い割り下の味が染み込んだのを生卵に絡めて食べるのがとても良く合う。
意外と生卵に抵抗は無いみたい。
「いや~、美味しかった、ごちそうさま!私は満足だよ」
「ママ!凄く美味しかったよ!」
食いしん坊ミーティアも満足の様子。
というか、この子嫌いなものが無くて、いつも美味しい美味しいって何でも食べてるけどね。
「私も大変満足でした。東方文化と言うのはとても洗練されていて素晴らしいものだと思いますし、カティアさんが夢中になるのも納得ですわ」
「喜んでもらえて良かった。ここを選んだ甲斐があったよ」
自分の好きなものを気に入ってもらえるのは嬉しいからね。
皆にも満足してもらって、食事は好評のうちに終わった。
食事も終わって、後は寝るだけなのだが、少し休んだらまた温泉には入りに行きたい。
現在は女子の大部屋でまったりお喋りに興じているところだ。
と、会話が途切れたタイミングで、ケイトリンさんが提案してきた。
「せっかくこれだけ人数がいるのだから、ゲームでもしない?」
「ゲーム?」
「そう、コレよ!」
と言って彼女が荷物から取り出したのは…
「…『トランプ』?」
「お?カティアちゃん、流石だね~。まだ王都でようやく出回り始めたところなのに知ってるなんて」
「え!?本当に『トランプ』って言うんですか?」
今、私は前世でのソレの名称をそのまま発音したのだが…
「ちょっと見せてもらえます?」
「ん?いいよ。はい」
受け取ったそれを確認させてもらう。
当然ながらプラスチックではなく…どうやら薄い金属製のようだ。
図柄も印刷ではなく彫っているみたい。
凄く手が込んでいるが、多分魔法を使った技術の恩恵なんだろうな。
2~10までの数字と、『英雄』『騎士』『女王』『王』の絵柄とそれらを意味する単語の頭文字、剣、盾、杖、弓を図案化したと思しきマークが刻まれている。
そして、これはジョーカーと言うことだろうか?
多分これオキュパロス様の絵だよね…
ところどころアレンジされているけど、私が知る前世のトランプと同じと考えても良いだろう。
しかし、『トランプ』という名称…
前世でコレをそう呼ぶのは実は日本だけだ。
ただの偶然か…私以外にも転生者がいるのか…?
「…これって誰が作ったんですかね?」
「え、これ?これはモーリス商会…リュシアン様の妹君、レティシア様が立ち上げた商会の商品だよ。考えたのはレティシア様だって聞いたけど…」
「まあ…流石は『神童』と名高いレティシアさんですわね。このようなものも考えられるなんて」
リュシアンさんの妹、レティシアさん…
確か、私と同い年だったよね。
ん~、この人が転生者だったりするのかなぁ?
「他にも何か発明されたりしてるんですか?」
「そうだねぇ…色々あるけど、私的に有り難かったのはトイレの魔道具だね」
ああ…異世界転生知識チートの定番の一つだね。
ここ数年で随分普及してるんだけど、誰が発明したかなんて今まであまり気にしてなかったなぁ…
これは間違いないかな?
リュシアンさんに招待されるみたいだし、そこで会って確認できるかも。
とりあえずそれは先の楽しみとしておこうか。
「で、ルールも知ってるの?」
「多分、いくつかは分かると思いますけど…何をやります?」
「初めての人も多いだろうし、ルールが単純な『数合わせ』にしましょうか」
…ああ、『神経衰弱』の事かな?
確かにルールが単純明快なので初めてやるには良いかも。
「じゃあ、それでいきましょうか」
皆にもルールを説明して、ゲーム開始となった。
あ、折角なので姉さんとリィナも呼びました。
「え~と、『王』はここと…ここなの!」
「うわっ!またとられた~!」
「ミーティアちゃん、記憶力凄すぎだよ…」
始めてみると、ミーティアの独壇場だった。
一度でも確認したところは確実に覚えているみたいで、取りこぼしが全くない。
何と言うチート記憶力!
次点は私なんだけど、圧倒的大差がついている。
3回ほどやってみたが結果は変わらず。
「う~ん、全く勝負にならないねぇ…」
「ほんと、凄いよミーティアちゃん!」
「えへへ~、ありがとう、リィナお姉ちゃん!」
リィナは負けても不貞腐れたりせず、手放しにミーティアを褒めている。
ほんと良い子だなぁ…
ちびっこ二人のやり取りにみんなほっこりしている。
「じゃあ~、『数合わせ』はミーティアちゃんの優勝と言う事で~、別のゲームはないのかしら~?」
「そうねぇ…『死地並べ』はどう?」
ん?
何だか不穏当な響きが…
まさか『七並べ』か?
「何です?そのネーミングは…」
「え~と…あまり堰き止めしすぎると死地になるよ、って事らしいよ」
ああ…友情にヒビが入る的な…
レティシアさん、遊び過ぎでは?
結局、その後も色々なゲームをしたり、お喋りをしたり、また皆でお風呂に入ったりして思う存分に旅館を満喫するのだった。
…なぜ私はあんな無謀な戦いを挑んだのだろうか?
皆にも大好評で、また入ろうという事に。
夜も格別だし、朝も贅沢な感じがして良いよね。
しかし、お風呂もいいけどもう一つの楽しみがある。
そう、これからの夕食である!
この世界に転生してからは和食を食べる機会は無かったが、やはり【俺】の記憶を持つ身としては少し物足りない気もしていたのだ。
これほどまでに東方文化に拘った旅館ならば、食事も期待できると思う。
食事は部屋で取ることも出来るのだが、せっかくなのでみんな集まって食べたいので、宴会場のようなところを借りて食べることにした。
既に机には食事が用意されていて、様々な彩りの食材が趣向を凝らした料理になって所狭しと並べられている。
うん、予想に違わずとても美味しそうだ!
みんな揃って着座する。
畳敷きに座布団だが、部屋もそうだったので既に皆も慣れたようだ。
「うわぁ~、美味しそう!」
「東方料理は久しぶりだな。まぁ俺としちゃあ、それよりも酒が楽しみなんだが」
「東方酒?お米から作るやつだよね」
まあ、ようするに日本酒だ。
…いいなぁ、私も飲みたい。
「カティアは止めておけ。ビールなど比べ物にならん。舐めただけでやられるぞ」
「そんな物欲しそうな目で見ても駄目だぞ」
「…絡み酒は勘弁してほしいッス」
やっぱり全否定される。
「そうね~。お酒はカイトくんと二人だけの時にしておきなさい~」
「…」
「また姉さんは変なこと言わないでよ。カイトが困ってるじゃないの」
どうも、カイトがいるときは彼に甘えて、そうじゃない時は絡み酒になるらしい。
…自分でもそんなヤツ面倒くさいと思うわ。
さて、皆揃ったので食事の開始となった。
ご飯をよそったり、緑茶を注いだりして皆に配膳する。
リュシアンさんがもの凄く恐縮していたけど、初めてだと分からないでしょ。
「では、いただきま~す!」
「カ、カティアさん…これ、生みたいですわ…」
と、食べ始めたのは良いが、ルシェーラが恐る恐る聞いてきた。
あ~、初めてだと驚くか~。
「これはね、お刺身と言って生のお魚だけど美味しく食べられるんだよ。(ぱくっ)うん、美味しい!」
ここは結構海から離れてるんだけど、冷凍の魔法があるからコストをかければ新鮮な魚介も手に入るんだよね。
私が美味しそうに食べるのを見て、ルシェーラも恐る恐る刺し身を口に運ぶ。
因みに私は箸を使ってるが、彼女はフォークである。
「…おいしい!驚きましたわ、生の魚がこんなに美味しいなんて…」
「でしょう?まあ、鮮度が良くないと食べられないけど、新鮮なものは本当に美味しいよね」
「カティアさん、これは何でしょうか?」
リュシアンさんが指しているのは四角い白いもの。
「ああ、お豆腐ですね。大豆から出来ててとってもヘルシーな食べ物ですよ」
「…とても柔らかくて滑らかな食感です。味は淡白ですが、このショーユ?に付けて食べるのは良いですね」
「これは…変わったスープだな?だが、これも美味い」
「ミソ汁だね。それに使われてるミソも、ショーユも、トーフも大豆から出来てるんだよ」
「へえ…大豆と言うのは随分と色々なものが出来るんだな」
初めて食べる人は興味半分、怖さ半分と言ったところだったが、概ね好評の様子。
私はもちろん大満足だ!
「魚やらトーフやら、ヘルシーなのも悪くはねぇんだが、やっぱり俺ぁ肉だな。このスキヤキが一番だ」
「同じくッス」
まあウチの男どもはそうだよね。
でも実際メイン料理はこれだろうし、美味しいということに異論はない。
というかめちゃくちゃ美味しい。
肉質は柔らかくて旨味もしっかりあって、甘辛い割り下の味が染み込んだのを生卵に絡めて食べるのがとても良く合う。
意外と生卵に抵抗は無いみたい。
「いや~、美味しかった、ごちそうさま!私は満足だよ」
「ママ!凄く美味しかったよ!」
食いしん坊ミーティアも満足の様子。
というか、この子嫌いなものが無くて、いつも美味しい美味しいって何でも食べてるけどね。
「私も大変満足でした。東方文化と言うのはとても洗練されていて素晴らしいものだと思いますし、カティアさんが夢中になるのも納得ですわ」
「喜んでもらえて良かった。ここを選んだ甲斐があったよ」
自分の好きなものを気に入ってもらえるのは嬉しいからね。
皆にも満足してもらって、食事は好評のうちに終わった。
食事も終わって、後は寝るだけなのだが、少し休んだらまた温泉には入りに行きたい。
現在は女子の大部屋でまったりお喋りに興じているところだ。
と、会話が途切れたタイミングで、ケイトリンさんが提案してきた。
「せっかくこれだけ人数がいるのだから、ゲームでもしない?」
「ゲーム?」
「そう、コレよ!」
と言って彼女が荷物から取り出したのは…
「…『トランプ』?」
「お?カティアちゃん、流石だね~。まだ王都でようやく出回り始めたところなのに知ってるなんて」
「え!?本当に『トランプ』って言うんですか?」
今、私は前世でのソレの名称をそのまま発音したのだが…
「ちょっと見せてもらえます?」
「ん?いいよ。はい」
受け取ったそれを確認させてもらう。
当然ながらプラスチックではなく…どうやら薄い金属製のようだ。
図柄も印刷ではなく彫っているみたい。
凄く手が込んでいるが、多分魔法を使った技術の恩恵なんだろうな。
2~10までの数字と、『英雄』『騎士』『女王』『王』の絵柄とそれらを意味する単語の頭文字、剣、盾、杖、弓を図案化したと思しきマークが刻まれている。
そして、これはジョーカーと言うことだろうか?
多分これオキュパロス様の絵だよね…
ところどころアレンジされているけど、私が知る前世のトランプと同じと考えても良いだろう。
しかし、『トランプ』という名称…
前世でコレをそう呼ぶのは実は日本だけだ。
ただの偶然か…私以外にも転生者がいるのか…?
「…これって誰が作ったんですかね?」
「え、これ?これはモーリス商会…リュシアン様の妹君、レティシア様が立ち上げた商会の商品だよ。考えたのはレティシア様だって聞いたけど…」
「まあ…流石は『神童』と名高いレティシアさんですわね。このようなものも考えられるなんて」
リュシアンさんの妹、レティシアさん…
確か、私と同い年だったよね。
ん~、この人が転生者だったりするのかなぁ?
「他にも何か発明されたりしてるんですか?」
「そうだねぇ…色々あるけど、私的に有り難かったのはトイレの魔道具だね」
ああ…異世界転生知識チートの定番の一つだね。
ここ数年で随分普及してるんだけど、誰が発明したかなんて今まであまり気にしてなかったなぁ…
これは間違いないかな?
リュシアンさんに招待されるみたいだし、そこで会って確認できるかも。
とりあえずそれは先の楽しみとしておこうか。
「で、ルールも知ってるの?」
「多分、いくつかは分かると思いますけど…何をやります?」
「初めての人も多いだろうし、ルールが単純な『数合わせ』にしましょうか」
…ああ、『神経衰弱』の事かな?
確かにルールが単純明快なので初めてやるには良いかも。
「じゃあ、それでいきましょうか」
皆にもルールを説明して、ゲーム開始となった。
あ、折角なので姉さんとリィナも呼びました。
「え~と、『王』はここと…ここなの!」
「うわっ!またとられた~!」
「ミーティアちゃん、記憶力凄すぎだよ…」
始めてみると、ミーティアの独壇場だった。
一度でも確認したところは確実に覚えているみたいで、取りこぼしが全くない。
何と言うチート記憶力!
次点は私なんだけど、圧倒的大差がついている。
3回ほどやってみたが結果は変わらず。
「う~ん、全く勝負にならないねぇ…」
「ほんと、凄いよミーティアちゃん!」
「えへへ~、ありがとう、リィナお姉ちゃん!」
リィナは負けても不貞腐れたりせず、手放しにミーティアを褒めている。
ほんと良い子だなぁ…
ちびっこ二人のやり取りにみんなほっこりしている。
「じゃあ~、『数合わせ』はミーティアちゃんの優勝と言う事で~、別のゲームはないのかしら~?」
「そうねぇ…『死地並べ』はどう?」
ん?
何だか不穏当な響きが…
まさか『七並べ』か?
「何です?そのネーミングは…」
「え~と…あまり堰き止めしすぎると死地になるよ、って事らしいよ」
ああ…友情にヒビが入る的な…
レティシアさん、遊び過ぎでは?
結局、その後も色々なゲームをしたり、お喋りをしたり、また皆でお風呂に入ったりして思う存分に旅館を満喫するのだった。