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作者: さや
残酷な描写あり R-15
抱擁
「先輩っ!!!」

私はすぐさま先輩を抱き上げた。

「…………ぅ………?」

先輩は焦点のあってない濁った目で私を一瞥すると

「…ぁ………………………」

安心したような表情で瞼を閉じてしまった。

「先輩?!しっかりして下さい先輩!!」

脈が凄く遅い、呼吸も掠れている。
私は先輩を慎重に抱き抱えて作戦本部の元へ走っていった。




「迅速にバイタルチェックを!呼吸が浅い子は優先的に私の方へ!!」

作戦本部の医療テントは阿鼻叫喚の一言だった。
かなりぎゅうぎゅうに人が詰められ、怒号が飛び交う。

「先輩が!わ、私の先輩がもうっ………!」

「落ち着いて、私達に任せなさい。…………ッ!この子心停止寸前じゃないっ!この子に早く魔力の拍動補助!気道確保のあとAEDの準備を!」

先輩が奥に運ばれていく。
私はただ、祈ることしか出来なかった。






そのまま先輩は重度の栄養失調で入院。
最低でも一週間は目覚めないとの診断だった。

先輩は意識が戻るまで面会謝絶。
大きな作戦が終わり、休暇を与えられた私はやる事もなく、ただ部屋で引きこもる。

先輩のことが頭から離れない。
私の憧れで尊敬する先輩。
背が私よりも全然小さいのに戦う姿がカッコいい先輩。
基本無表情でクールだけど、偶に見せる少し顔を赤らめた顔が可愛い先輩。

早く、早く会いたい。
何分、何時間、何日蹲っていたかは分からない。そこから私を動かしたのは医務室からの呼び出しだった。






「あの子、大分入念に躾けられてた。洗脳の解除が全然進まないの」

医務室の先生から掛けられたのはそんな言葉だった。

「他の子みたいに戦闘員として動かす為の洗脳かと思ったら全然違うし、しかもかなり強めの薬物も使われてるしで、状況は芳しくないわ」

「じゃ、じゃあ先輩はどうなるんですか?!」

「落ち着きなさい、別に洗脳が解除出来ない訳じゃないの。ただただ解除が凄く遅い。それだけの話」

「そ、そうなんですね…………」

「本来なら洗脳が完全に解除されるまでは私達が面倒見るのだけれど、今回の作戦で医務室はてんてこ舞い。正直なところ誰か代わりに世話をしてくれる子がいれば出来るだけその子に任せちゃいたいの。勿論何かあった時はすぐにサポートできる体制を敷いてね」

「そこで、貴方とあの子の関係を聞いてここに呼び出したってわけ。じゃあ本題に入るけど、あの子の世話、任せちゃっていい?」

「は、はい!喜んで!」

「じゃ、世話の仕方と注意事項を説明するわね。世話としてやることはご飯の準備とトイレや入浴の補助が基本ね。そして注意することはあまりストレスを与えないことぐらいかしら。あとはこの薬を毎日与えること」

取り出したのは少し小さな注射器

「あの子に打たれた薬物の中和剤よ。これを毎日、頸動脈に注射して頂戴。あとで注射の仕方は教えるわ。副作用でドーパミンが分泌されるけど依存性は低い…………ゼロとは断言できないけど」










私は注射のやり方や世話の細かいやり方をレクチャーして貰った後、先輩がいる部屋に向かう。
私は意を決して扉を開けた
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