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作者: 鈴奈
Exspetioa2.10.7
 今日は休息の時間に、「花の修道女たちを正すための規則」の草案を、シスター・アザレアと一緒にマザーに提出しに行きました。
 マザーはじっと読んだ後、

「指輪をつけないことだけで、エスを取り締まれると考えているのですか?」

 とおっしゃいました。

「いえ。私は、完全に禁止にするべきと考えております。ただ、シスター・セナが、いきなり禁止にしてしまうと、花の修道女たちの心が渇いてしまうのではと」

 マザーは、シスター・アザレアを見上げました。

「禁止にしなさい」

 衝撃を受けました。マザーは、「エスごっこがしたい」とかわいくおっしゃるほど、エスにあこがれをおもちだったから……。私は、もう一度お願いをしようと口を開きました。ですが、

「マザーのおっしゃることは絶対。口を出すことは許されないわ」

 とシスター・アザレアに制されてしまいました。
 他の規則については、このままで構わない、とのことでした。そして、明日の礼拝の時間の最後に、この規則を提示するようにとのご命令でした。
 マザーではなく、中心となって考えたシスター・アザレアがお話をするようにとのことでした。
 
 そのまま「神の学び」に入ることになりました。シスター・アザレアがお部屋を出ていかれるのを見送ると、扉が閉まった直後、マザーが私の腕に、ぎゅっと抱きつかれました。
 エスごっこは継続のようでした。
 本当は、マザーもエスにあこがれていらっしゃるのに……。私は、マザーのお立場を想い、胸が痛くなりました。
 マザーは神様の記憶をおもちでいらっしゃるからか、日々の礼拝をはじめ、私以外のお方の前では、威厳を保っていらっしゃいます。また、その威厳を保つためでいらっしゃるのか、他の方々と交流をされません。礼拝の時以外は、お外にも出られないそうです。
 マザーも、神様の記憶をおもちとはいえ、一花の修道女。おさみしいのかもしれません。マザーのお心を満たせるよう、これからも誠心誠意努めていきたいと思います。
 今日は、「神の学び」が終わると、「庭園の手入れはしなくていい」と言われ、日向ぼっこに誘っていただきました。草むらの上に寝転がり、光を体中に浴びました。とても気持ちよかったです。
 マザーは、私の指にお指を絡めました。左肩にすり寄せられるマザーの頬が、ふにふにとしてとてもかわいらしかったです。

 午後の労働が終わり、お部屋に入る前、ニゲラ様にちらりと、今日は遊びにいらっしゃるかお訊きすると、

「あら。待っていてくれてたの? 嬉しいわ。セナも、いつでも来てもいいのよ」

 とおっしゃいました。なんだかお誘いいただいているようで……。お話のされ方からしても、私からお伺いするべきなのかもしれない、と思いつつ、なんだかとても恥ずかしく思えて……。
 私からお伺いするのは、大きな勇気が必要に思えます。お話ししたいと思っているのは私なのですから、ニゲラ様にお任せするのは違うと、わかってはいるのですが……。

 今夜、私に勇気は出るのでしょうか。

 神様。私に心の力をお与えください。前に進んでいく力を。
 この世界があることに感謝。この生があることに感謝。
 神様に愛を。
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