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作者: 鈴奈
Exspetioa2.10.6
 今日は、「花の修道女たちを正すための規則」の草案がかたまりました。シスター・アザレアがエスの項目を妥協してくださり、ありがたかったです。
 明日、マザーにご確認いただいて、すべてが確定します。無事に、マザーにご許可いただけますように。
 そして今日も、マザーとの「神の学び」でエスごっこをしました。今日もいつものように草むらに座って、クッキーを食べながら、お話をしていました。

「ねえ、セナ。私のこと、どれくらい好き?」

 どれくらい……悩みました。気持ちは、量や数で表すことが難しいのだな、と思いました。

「そういう時は、順序で表してみて。私のこと、この修道院で一番好き?」

「一番……順序を考えたことがなくて……えっと……」

「何も考えずに、私の言う通りに言えばいいんだよ。ほら、言って。私のことが一番好きって」

 マザーの不満げな声音に、私は慌てて、

「申し訳ありません。マザーのことが、一番好きです」

 とお応えしました。
 マザーが嬉しそうに、私の腕に絡まり、すりすりと頬ずりをしてくださいました。マザーの甘える仕草はとてもかわいくて、幸せな気持ちになります。
 私がそうお伝えすると、マザーは笑いました。

「そう。そういう風にもっと言って。もっと素直に、イヴのようになって。そうすればセナは、イヴ以上の、神の理想の花嫁になれる」

 私は、「はい」とお返事しました。

「今日は、何をしましょうか?」

「呼び名を決められていなかったし、決めようか。セナは、なんて呼ばれたい? お姉さま?」

「マザーにお呼びいただくのは、恐れ多い気持ちがします」

「じゃあ、セナのままかな」

「マザーは、いかがしましょうか。マザーのお名前は……」

「私は……ああ、そうだ。神の名前で呼んで」

「神様にもお名前があるのですか?」

「うん。イヴしか呼んだことはなかったけれど」

 マザーは、神様のお名前を口にしようとしたのでしょうか、一瞬唇を開いたのですが、すぐに閉ざされました。

「――いや、やっぱりやめよう。セナはまだ、正式な『神の花嫁』じゃないから。とりあえず、いつものマザーのままで」

 それからまた、エスごっこでしたいことを考えました。おそろいのものを一緒につくるのも楽しかったですし、互いの花を贈り合う慣習を取り入れて、互いの花を交換しておそろいのものをつくることをご提案しました。ただ、私は花がないので、私が育てている花をお渡ししようと思っていました。
 マザーは、「それもいいけど、セナから贈り物をもらってみたい」とおっしゃいました。私につくれるものは数少ないのですが、頑張って考え、つくりたいと思います。
 何が一番、喜んでくださるでしょうか。皆さんにもご相談して、できることを増やしながら、マザーを幸せにできたら嬉しいです。

 そういえば、マザーはどのような花を咲かせていらっしゃるのでしょうか。いつも手の甲を白い布で覆っていらっしゃるので、見たことがないのです。何かご事情があるのかもしれませんが……いつか、拝見できたら嬉しいです。
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