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作者: 鈴奈
Exspetioa2.10.2
 今日は、シスター・アザレアに、昨晩ずっと考えていたことを提案しました。

「この規則、皆でつくりませんか?」

 シスター・アザレアは眉ひとつ動かさず、

「それはマザーの命令ではないわ」

 とおっしゃいました。

「マザーには、私からお願いします。昨日、考えていたのです。私は、皆さんにも、シスター・アザレアにも、幸せになっていただきたいのです。ですが、このままでは、考えがぶつかるだけで、すべての方が幸せになる規則はつくれません。だから、お互いに許容できることとそうではないことを話し合って、皆が少しずつ受け入れ合っていくことができたら……そうしたら、皆、シスター・アザレアも、幸せになれると思うのです。そうしていつか、シスター・アザレアの笑顔を見ることができたら……」

「シスター・ルドベキアに、何か言われたの」

 シスター・アザレアが、小さなお声を震わせました。
 私は、ドキリとしました。どうして、シスター・ルドベキアがかかわっているとわかったのでしょう。私は、「少し、お話をお聞きして……」とお答えしました。なんとなく、シスター・ルドベキアのお話を詳しくお伝えするのはいけないように思えたのです。
 シスター・アザレアは、思いつめていらっしゃるようでした。そして、

「まだ、私のことを……」

 と、小さくつぶやいたように聞こえました。
 私が何も言えずにおろおろしていると、シスター・アザレアは勢いよく立ち上がり、私を睨むように見下ろしておっしゃいました。

「私たちは神のために咲いている。規律を守り、神を愛し、神の楽園をつくる。それが私たち花の修道女の美しい在り方。私たちが生まれ、存在している意味。私たちが幸せになる必要なんてないわ。

 ……私は、神の楽園を、つくらなければならないの」

 シスター・アザレアの手の甲の花が、わずかにしおれたように見えました。
 私がしっかり確かめる間もなく、シスター・アザレアは鐘木を握りしめました。そして、私を振り向くこともなく、冷たくおっしゃいました。

「今度、シスター・ルドベキアが私の話題を出すようなら言っておいて。二度と、私のことを考えないで、と」

 私は、悲しくなりました。シスター・アザレアは、シスター・ルドベキアのことがお嫌いなのでしょうか……。

 ニゲラ様が遊びに来てくださいました。このことについて、お話してみたいと思います。
 素敵な夜になりますように。Ex animo.
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