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残酷な描写あり
1話 丁稚生活
 時は、明治時代。まだ、武士もどきが多く生息する時代。農家の倅として生まれ育つ。
 「父上。もう少し畑を広くしてトウモロコシを植えたく思います」


 常太郎ツネタロウ8歳。農家の長男として生まれるも両親はどこにでもいる農民。土地は借地しゃくちのため食うことにも困る貧乏びんぼう農家。誰に似たのかかしこい長男が頭角とうかくあらわした。しかし、借地農家にその賢さは使い物にならず、育ててやりたいが明日の食い扶持ぶちあやしい始末しまつ

 常太郎は、どうすれば今ある畑から別品目べつひんもくのトウモロコシを栽培さいばいできるか考える。トウモロコシ栽培が成功せいこうすれば、上納じょうのうする必要もなく家族をやしなうことが出来ると考えた。せた土地でも栽培できると聞いている。家の周辺しゅうへんに植えることで家族を養うくらいなら可能だと考えた。

 それを目に付けた、地主じぬしがこの才能さいのうで勝手に収穫物しゅうかくぶつを広げられても困る。と大阪おおさか材木商ざいもくしょう丁稚でっちに入れることを両親に提案ていあん。という名の強制きょうせい。食い扶持を減らすこともできるとして丁稚でっちに出された。

  常太郎「父上。母上。行ってまいります。かならずかせいで帰ってまいります」

 両親の手を振り見送る姿を見れず、まっすぐ前を見てあゆむ。

 働くのは、大都会だいとかい大阪の材木商。見た目同じくらいの子供にえらそうに指示しじされることもあったが、持ち前の明るさと賢さで次第しだいに、他の丁稚と仲良くなっていく。

  旦那だんな「常さんや。お前はんはよう働くな。偉いわ。せっかくやし、読み書きや簡単かんたんな計算おぼえる気はあるか?」

 商人の社会では、丁稚の名前の後ろにきちまつなど縁起えんぎの良い名前を付けて呼ぶことが多くあった。

  常吉「だんさん。おおきに。うれしごあす。色々学びたくおます」
  旦那「ほうか。せやったら明日からでもウチの手代てだいから教わり」

 早々に、店の旦那に気に入られ勉強することが出来た。

  手代「旦さん。偉いこっちゃ。常っつぁん飲み込みはやぁて私では手にえません」
  旦那「ほうか。そんなにか。これは偉いひろいモンやで!せや。常吉にもっと勉強させたる。学校に通わせたるわ」

 晴れて、学校に通うことを許可きょかされた。丁稚の分際ぶんざいではかなりめずらしい。
 尋常じんじょう小学校へ入学。毎日通わせてはもらえていない。他の丁稚との軋轢あつれきみかねないことから週に3日の午前だけ通うことになった。
 短い時間だったが、たくさんの知識ちしきることが出来た。短い間にも同じような境遇きょうぐうから級友きゅうゆうも出来た。友と呼べる者も出来た。青春せいしゅん謳歌おうかしているようだ。

  手代「常吉っつぁん。台帳だいちょう見てわかるんか?」
  常吉「はい。このお客はんいつも来てはりますな。恰幅かっぷくのええお人ですなぁ」
  手代「ほー。すごいな。名前だけでわかるんか。よう覚えてるな。偉いわ」
  常吉「おおきに」

  手代「旦さん。常吉また成長してはりますわ!今度、けに常吉を連れてもよろしおますか?」
  旦那「ほうか。そんなにか。面白い。一度常吉を連れて行ってきなはれ」

 和歌山まで手代さんと買い付けに同行どうこうさせてもらう。
 初めての列車れっしゃだが、満席まんせきすわることができない。

  手代「常吉っつぁんは足腰あしこしつよおますな。若いだけやないで。こりゃ頼もしい」
  常吉「初めての買い付けで緊張きんちょうしてます。勉強できるのがうれしゅうて」
  手代「奈良に着いたわ。お疲れさん。ほな和歌山まであと少しや。もうひとりやで」

 奈良から和歌山まで山間さんかんを抜けた先に到着。
  手代「今日はもう遅いし宿に泊まるで。言うてもザコやからせまいけどな」
  常吉「野宿のじゅくかと思いましたわ。さすが手代はんや」
  手代「さすがに、野宿は出来んひんわ。野犬やけんもおるしな。明日も早いしもう寝」

 簡単かんたんに食事をませ、宿で一泊いっぱく
 が昇る前に出発。
 お客さんに会う前に、山をじかに見て回る。どれほどれるか。他に採れるものは無いか。調べて見て回る。

  手代「常吉っつぁん。こうして計算するんや。そこからそこまで木材何本取れるか考えるんや。そこから全体で考えるとどれくらい採れるかおおよそでわかるやろ?それからな。木材だけやなくて、キノコやタケノコなどもかねになるからな。そこらも調べたうえで買い取るんや。色付いろつけたると喜ぶさかいにな」

 普段から書いて覚えるクセをつけていた。この日も収穫がたくさんあり楽しくてつかれもっ飛ぶほど。

 おおよその産出量さんしゅつりょうを見たうえで、山の主人しゅじんである所有者しょゆうしゃと出会う。

  手代「まいどおおきに。この山はなかなかですな」
  主人「よーきたな。待っとったわ。いつ来たん?ほう列車とな。もうけてはりますな」

 笑顔えがおでやり取りしながら商談しょうだんをすすめる。

  手代「すんまへん。今日は、勉強に丁稚を連れて来てます。なかなかオモロイ子なんで」
  主人「さっきから、なにか書いてるけどなに書いてるん?ちょっと見せて貰えるか?」

 書いてた紙を見せる。
 手代のやり取りの流れを書いている。

  主人「会話かいわのやりとりを記録きろくするのはオモロイな。ははは。この子はオモロイ」
  手代「そうなんですわ。教えたことはどんどん吸収きゅうしゅうするさかいに。すぐに抜かれますわ」

 手代と主人は、すぐに合意ごうい商談成立しょうだんせいりつした。主人は思った以上の山の価値かちに顔が紅潮こうちょうしほころぶ。
 
  手代「常吉。なにか気になったことでもあったら今の内に言いなはれ」
  常吉「少し気になったのですが、この山間では農業がむずかしいと思います。和歌山といえば蜜柑みかんです。みかん栽培をすることで、さらに山の価値が上がるように思うんです    がどうですか?日当ひあたりはあちらの部分を使うことで得られます」
  手代「わー常吉!もう少し早よう言うてや。ほんますんまへんご主人」
  主人「オモロイこと言うなー。ほうか。この山でもみかんできるか」
  常吉「土壌どじょうから見ると充分じゅうぶんできますわ。手代はん。気ぃつけます」
  主人「丁稚さん元は何してはったん?」
  常吉「家は農家をしてまして」
  主人「なるほどな。それなら合点がてんいくわ。わしら素人にええこと教えてくれはったわ!」

  手代常の|視点《してんは変わったとこ見てるな。旦さんに教えな》

 その日の内に大阪に戻れた。

  丁稚「だんさーん。おかえりになられましたー」

 奥から旦那が小走こばしりにやってくる。

  旦那「うまく行ったか?」
  手代「ええ。えらい喜んでくれはりましたわ」
  旦那「ほうかほうか。で、常吉はどやった?」
  手代「飲み込みがようて、後何度あとなんどか行けばひとりで行けますわ」
  旦那「そんなにか!ええ子が来てくれたわぁ。あんさんが独りちしたら常吉手代にしたらないとな」
  手代「最後に常吉っつぁんに言わせたらオモロイこと言うんですわ。みかんの栽培をすすめたんです。自分にはよう言えませんわ。常吉っつぁんは土壌からできると思ったようですわ」
  旦那「ほうか。せやったな。常吉っつぁんは農家の子やったな。家の周りにトウモロコシ植えて飢えから両親をすくったと。そのおかげで、両親は食い扶持に困らなくなったそうだ。村のちょっとした特産品とくさんひんになったとか聴いてるわ」

 それから何度か買い付けに同行させてもらい、独りでも買い付けに行けると旦那からもお墨付すみつきをいただき、ひとり四国へ向かった。

 買い付けは、店の看板かんばんを持ち歩くようなもの。低く見積みつもれば店の利益りえき追求ついきゅうすることもできるが、安く買いたたかれた所有者は、良い思いをしない。相場そうばから色を付けて買い付けをすることで、長い付き合いができる。ただし、すでに将来が見込みこめない山は、素直すなおにおことわりするのも買い付けで大事な点。所有者のことを考えた買い付けが大事だということ。

 もし、改良かいりょう点でもあれば素直に伝えることで、店の信用しんようも山の所有者の信用も落とさずに済む。理解できるまでしっかりと伝えることで、店の信用を得ることが出来、他の山の所有者とのつながりを得ることが出来る。素直に立ち回ることで、得られることが大きい。

 緊張しつつも独りで買い付けに行ける喜びが上回りスキップしてるのがはたから見たら誰でもわかるほど。

 常太郎14歳。独り買い付けに四国へわたる。




  旦那「おそいな。常吉っつぁんどうしたんかな。なにかあったんやろか」

 伊予地震いよじしん遭遇そうぐう。大きな災害さいがいは無かったが、運悪うんわるく山間を進んだところで、土砂崩どしゃくずれに巻き込まれ意識いしきうしなう。

  手代「旦さん!伊予で大きなれがあったようです!もしかしたら常吉なにかに巻     き込まれたかもしれまへん!!」
  旦那「手代はん!自分の代わりに見て来てくれんか!?」
  手代「準備じゅんび出来てます。いますぐ見てきます!」

 常太郎の意識いしきは。常太郎の身体からだは。
 小説家になろうで書いたのを再編集して転載してます。
 変更点は、カタカナ表記から読みやすい漢字にしました。

 ではなぜ、カタカナ表記にしていたのか。
 それは、カタカナは別の世界線のつもりで当初はあったのですが、元和時代だと言っているのにおかしな話だと気づいた。しかし、今更変えるのもどうかと思いそのまま放置。せっかくだからとここでは、カタカナ表記を止めて漢字に戻しました。

 それから、独り言な前書きやあとがきは無くす予定です。
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