国からのお手紙にはグレードがあってだね?
辺境の町に国王令関連の超重要なお手紙が届けられた感
「騒ぐなよ」
(なぜバレたし)
真っ青ローブに真っ黒フェイスな僧侶さまから釘を刺された。そうじゃなけりゃ、今ごと「たのもー!」と言って扉を開けていたところだ。バタン! つって。
代わりに、発言者が白色の軽い木製扉に手をかける。ブッちゃんの巨大な手に対しドアノブはとてもかわいく見えて、キィという音と共にわたしたちはテトヴォ役所へと足を踏み入れた。
洋風でも和風でもなし。いたってふつうの室内ビューだった。ふつうとは? って聞かれても困る。だってふつうなんだもん。
「ウチらはここで待ってるわ」
近場のテーブルに目だけを投げる。そのワンジェスチャーだけで待機組と受付に向かう組に分かれた。ドロちんとあんずちゃんがあっち、んでブッちゃんとグレースちゃんがこっちである。
(ん)
待って。
ドロちんだけちんだ。
ほかのみんなはちゃんだ。
バランス悪いな。
(あんずくん……あんずっち……あんずさま……)
「何をしてる? グレースも付いてくるつもりか?」
「あ、うん」
(ブッちゃま? いやそれはねーわ)
などと考えつつ、わたしは先行する青い背中を追った。
「ご要件は?」
丁寧な姿勢と服装の男性がカウンターの後ろに座っている。ここもそうだけど、お役所やギルドや旅団の受け付け窓口は、建物いっぱいまで横に長いタイプが多い。それで仕切板があって、だいたい木枠と透明なボードで遮られている。面と向かいあった時は、そのボード越しに会話することになる形。
「ウォルター殿に面会をお願いしたい」
(だれ?)
ブッちゃんが聞き覚えの無い人の名前を言った。
その名前を耳にした時、受け付けの男性は表情を硬くしてブッちゃんの顔色を伺う。
訝しげに。
なんだったら不審者を見る目で。
「こちらの書状を直接手渡すよう承っている」
青いローブに手を差し入れ、男の人に一瞬緊張が走る。
大きな手から差し出された手紙。
男性はそこに付着した赤い蝋を見て、さらに大きく目を見開いた。
「ッ! ――拝見します」
それを受け取り鑑定スキルにかけてる間、わたしは悶々と浮かんだ疑問をぶつけることにした。
「ねえねえ、ウォルターさん? ってだれ」
「テトヴォ町長だ。身分制議会の議長も務める」
「へー、そうなんだー」
知らなかった。
ところでみぶんなんとかって?
と興味が湧いてからのガタッ! である。
音の源はカウンター向かい側のおにーさん、が座ってたイス。
「これは!」
おにーさんは立ち上がりつつ、動揺した様子でその手紙をつまんでる。
両方の親指と人差し指で。
やっべーブツ触っちまった感マシマシで。
どした?
「しょ、少々お待ちください!」
彼の態度に周囲の受け付けさんもビックリな模様。なんか「あの冷静沈着な彼が」みたいなヒソヒソ声聞こえた気がする。男の人はそのまま後ろの扉の奥に消え、時計の針をちくたく眺めて半周したころ大慌てで戻ってきた。
「失礼しました! そして誠に申し訳ありません!」
(えぇぇ)
いきなり謝られたんだけど?
「ただいま議長は近隣会合に出席しておりまして、テトヴォへは明後日かそれ以降に戻られる予定です」
「つまり、あと二日か三日は待たなければならないのか」
困った。そんな感じでブッちゃんはみんなのほうへ振り向く。つられて見ると、あんずちゃんは近場の冒険者と談笑してるではありませんか。いやだもう、あんな笑顔見せちゃってわたしにも見せたことなくない? ちなみにドロちんは本の虫になってました。
「可及的速やかな緊急の要件でございますか? で、あれば今すぐにでも伝令魔法を――」
「いや、それには及ばん」
もはや口調までおかしくなってる受け付けさんを落ち着かせつつ、ブッちゃんは冷静にことばを紡いだ。
「どの道長く滞在するつもりだった。待てば来るというのなら次の機会まで待つとしよう」
「では、こちらから電話しますので連絡先を」
「うむ」
ということで、お偉い方からの依頼は後日遂行することになりました。なんだったらお手紙預けといてよくない? と提案してみたところ、今まで以上に慌てた受け付けさんが「とんでもない! これは決して他者に渡してはいけないものなんです!」と半ば涙目になってた。
なんかね、あの赤い蝋で封印されたお手紙は、本人以外の手にあると奪ったとみなされるらしいよ? なんでそんな必死なのか、どう不都合なのかはわかんないけど、おにーさんの必死さ具合からして何かあるんだろうね。
(他にもお手紙の色自体にも意味があったり、鑑定スキルで追加情報が観られたり……うーん頭が痛い)
もういいや、わたしに関係ある話じゃないし。
ひとまずあんずちゃんドロちんと合流。事の次第を伝えて、引き続きテトヴォ生活をエンジョイしていきましょうって流れになった。つまりは仕事を探そうってことなんだけど、わたしは以前やった漁師の仕事を継続してく予定。ブッちゃんたちもいろいろ見つけてるみたいだし、ザックリ稼いでいきましょう。
「んじゃ、張り切ってこー!」
「おう、用事は終わったのか?」
「およ?」
木製の軽い扉をバターン! と開けた時、目の前には緑のコートを着た侘しいおじちゃんがいた。
(なぜバレたし)
真っ青ローブに真っ黒フェイスな僧侶さまから釘を刺された。そうじゃなけりゃ、今ごと「たのもー!」と言って扉を開けていたところだ。バタン! つって。
代わりに、発言者が白色の軽い木製扉に手をかける。ブッちゃんの巨大な手に対しドアノブはとてもかわいく見えて、キィという音と共にわたしたちはテトヴォ役所へと足を踏み入れた。
洋風でも和風でもなし。いたってふつうの室内ビューだった。ふつうとは? って聞かれても困る。だってふつうなんだもん。
「ウチらはここで待ってるわ」
近場のテーブルに目だけを投げる。そのワンジェスチャーだけで待機組と受付に向かう組に分かれた。ドロちんとあんずちゃんがあっち、んでブッちゃんとグレースちゃんがこっちである。
(ん)
待って。
ドロちんだけちんだ。
ほかのみんなはちゃんだ。
バランス悪いな。
(あんずくん……あんずっち……あんずさま……)
「何をしてる? グレースも付いてくるつもりか?」
「あ、うん」
(ブッちゃま? いやそれはねーわ)
などと考えつつ、わたしは先行する青い背中を追った。
「ご要件は?」
丁寧な姿勢と服装の男性がカウンターの後ろに座っている。ここもそうだけど、お役所やギルドや旅団の受け付け窓口は、建物いっぱいまで横に長いタイプが多い。それで仕切板があって、だいたい木枠と透明なボードで遮られている。面と向かいあった時は、そのボード越しに会話することになる形。
「ウォルター殿に面会をお願いしたい」
(だれ?)
ブッちゃんが聞き覚えの無い人の名前を言った。
その名前を耳にした時、受け付けの男性は表情を硬くしてブッちゃんの顔色を伺う。
訝しげに。
なんだったら不審者を見る目で。
「こちらの書状を直接手渡すよう承っている」
青いローブに手を差し入れ、男の人に一瞬緊張が走る。
大きな手から差し出された手紙。
男性はそこに付着した赤い蝋を見て、さらに大きく目を見開いた。
「ッ! ――拝見します」
それを受け取り鑑定スキルにかけてる間、わたしは悶々と浮かんだ疑問をぶつけることにした。
「ねえねえ、ウォルターさん? ってだれ」
「テトヴォ町長だ。身分制議会の議長も務める」
「へー、そうなんだー」
知らなかった。
ところでみぶんなんとかって?
と興味が湧いてからのガタッ! である。
音の源はカウンター向かい側のおにーさん、が座ってたイス。
「これは!」
おにーさんは立ち上がりつつ、動揺した様子でその手紙をつまんでる。
両方の親指と人差し指で。
やっべーブツ触っちまった感マシマシで。
どした?
「しょ、少々お待ちください!」
彼の態度に周囲の受け付けさんもビックリな模様。なんか「あの冷静沈着な彼が」みたいなヒソヒソ声聞こえた気がする。男の人はそのまま後ろの扉の奥に消え、時計の針をちくたく眺めて半周したころ大慌てで戻ってきた。
「失礼しました! そして誠に申し訳ありません!」
(えぇぇ)
いきなり謝られたんだけど?
「ただいま議長は近隣会合に出席しておりまして、テトヴォへは明後日かそれ以降に戻られる予定です」
「つまり、あと二日か三日は待たなければならないのか」
困った。そんな感じでブッちゃんはみんなのほうへ振り向く。つられて見ると、あんずちゃんは近場の冒険者と談笑してるではありませんか。いやだもう、あんな笑顔見せちゃってわたしにも見せたことなくない? ちなみにドロちんは本の虫になってました。
「可及的速やかな緊急の要件でございますか? で、あれば今すぐにでも伝令魔法を――」
「いや、それには及ばん」
もはや口調までおかしくなってる受け付けさんを落ち着かせつつ、ブッちゃんは冷静にことばを紡いだ。
「どの道長く滞在するつもりだった。待てば来るというのなら次の機会まで待つとしよう」
「では、こちらから電話しますので連絡先を」
「うむ」
ということで、お偉い方からの依頼は後日遂行することになりました。なんだったらお手紙預けといてよくない? と提案してみたところ、今まで以上に慌てた受け付けさんが「とんでもない! これは決して他者に渡してはいけないものなんです!」と半ば涙目になってた。
なんかね、あの赤い蝋で封印されたお手紙は、本人以外の手にあると奪ったとみなされるらしいよ? なんでそんな必死なのか、どう不都合なのかはわかんないけど、おにーさんの必死さ具合からして何かあるんだろうね。
(他にもお手紙の色自体にも意味があったり、鑑定スキルで追加情報が観られたり……うーん頭が痛い)
もういいや、わたしに関係ある話じゃないし。
ひとまずあんずちゃんドロちんと合流。事の次第を伝えて、引き続きテトヴォ生活をエンジョイしていきましょうって流れになった。つまりは仕事を探そうってことなんだけど、わたしは以前やった漁師の仕事を継続してく予定。ブッちゃんたちもいろいろ見つけてるみたいだし、ザックリ稼いでいきましょう。
「んじゃ、張り切ってこー!」
「おう、用事は終わったのか?」
「およ?」
木製の軽い扉をバターン! と開けた時、目の前には緑のコートを着た侘しいおじちゃんがいた。