ここは戦闘を楽しむためのダンジョンです
物語とは関係ありません
モンスターハウスは逆に稼ぎの場として使えるよね
モンスターハウスは逆に稼ぎの場として使えるよね
戦闘開始だ。
あんずは先頭に立ちデコイとなって。
ブッちゃんは補助スキルであんずを援護する。
ドロちんはみんなから距離を置き呪文を唱える。
わたしはマモノが気を取られている隙に影に紛れる。
ここは石に囲われた四角いフィールド。
隠れる場所なんてない。
大量のマモノ。
じゃあどうするかって?
「さいしょの獲物はだーれでーすかー!」
マモノの股の下をくぐり、別のマモノの背中に回り込み、と思えばまた別のマモノの裏手に回る。
的を絞らせない。これが生存戦略最大の秘訣です。
もちろん、そのついでに相手の急所をサクッとやるのも忘れません。
狩りのときは血が吹き出したり暴れられたりするので大変だけど、マモノはスッと消えてくれるから逆にやりやすいんだよね。
「およ?」
(アレはなんだ?)
「グレース!」
ブォン!
目の前を大剣が通り過ぎた。
「危ないですわよ!」
「あはは、めんごめんごよそ見してました」
「まったく、アサシンなら静かに戦いなさいな」
冷や汗あんずちゃん。重厚な鎧に身を包み大量のマモノをまとめて圧し斬っていく。
そっちがワイワイやってくれてるから、マモノの気がそっちに向いて自由に動けるのです。さんきゅ!
「諸行無常」
暴力沙汰はあまりスキでないブッちゃん。とはいえ、さすがにこのような状況では暴力反対を謳えませんのでキッチリ反撃してる。
右フック、左ストレート、うっわあのラッシュ目に止まんねー。
(ボクシングスタイルかな?)
「力は心に寄りて力たり」
(ん)
ドロちんの喉から鈴のような音色。
大きなスキルを使う際の呪文だ。
「力は風。無尽の刃となり我が前にある敵を葬り去らん。我が手に宿れ――一気にやるわよ、みんな伏せて!」
(っべ)
ドロちんが叫ぶ。
みんな伏せる。
風が舞い上がる。
「スキル、暴風!」
風がドロちん一点に集約し、そして爆ぜた。
「うひゃあ!」
「くぅ!」
あんずは重装だから風などなんのその。けどこっちは軽量化ウェア故に地ベタベッタリじゃなきゃ巻き込まれそうです。
もともと重量級のブッちゃんはどっしり構えてるけど、青いマントがバタバタはためいてる。
竜巻が風の刃を形成しマモノを切断していく。
首を、あるいは胴体を縦に横に薙ぎ払う。
やがて風が収束すると、そこにいたマモノは半数以下になっていた。
「無茶をする」
「でも数は減ったわ」
「減ってないですわね」
あんずが遠くへ視線を送る。
そこから増えた。
一体、二体、まだ増える。
「埒が明きませんわ」
「退散するか?」
「ワープしてきたばかりで右も左もわからないのにどうしろってのよ!」
「原因をつくったお前が言うな」
「うっさいわね!」
「こんな時までケンカしないでくださいな。とにかく、どうにかしないとこのままジリ貧ですわよ!」
また部屋のすみっこに追いやられていく。この状況を打開するにはパワーあんどスキルだけじゃどうにもできなさそう。
そこでスゴ腕隠密さんの出番ですわよ。
「ねえねえアッチ見て!」
わたしは部屋のすみっこを指さした。
「階段あるよ!」
さっき見つけた。
床にぽっかり空いた穴。その先にさらに地下へと続く階段があり、どうなってるんかなーと覗き込もうとしたところであんずちゃんのウェポンが眼前通過してったんだっけ。
「逃げるわよ! あんず先行って!」
「わかりましたわ!」
ドロちんが叫び、そこから早かった。
「スキル、衝撃波!」
あんずちゃんが大剣を横に凪ぐ。その切っ先から衝撃波が放たれ、正面のマモノたちを一掃した。
「はしれー!」
「帰りが危険だな!」
「そんなの後で考えるわよ!」
マモノが後ろから迫る。
それに構わず、わたしたちは下への階段めがけ一直線に走っていった。
安請け合いするんじゃなかった。
報酬は弾むってどのくらいバインバインなんだろう?
あー疲れたおみず飲みたい。
いま何時くらいだろうなぁ。
「……グレース」
「んー」
「き、気のせいかしら? アナタの背中から黒いオーラが見えるのですけど」
「きのせーだよー」
あーういーうあー。
「やめてよ。こっちまで疲れてくるじゃない」
「ふむ、少し休憩を挟むべきか」
階段を突き抜け、さらに探索を繰り返し。
同じ構造の道をただひたすら進み、同じような部屋で同じようにマモノを撃退し。
時にはトラップを避け、武器や薬草や高そうなアクセサリーを拾い。
ここが地下何階かを数え忘れたころ、やっとブッちゃんからその言葉が飛び出た。
「ひうぅ~」
地面にぺたん。
そのままばたんきゅ~。
「お行儀悪いですわよ。はいこれ」
あんずちゃんがパンをくれた。
「ありがどぉ」
わたしはパンを受け取らなかった。
「えっ」
そのままぱくり。
指ごともきゅもきゅ。
「ちょ、グレース!?」
「ん――あ、ごめん」
自然にやってた。
「なんか手を使うのめんどくさいっていうか、そもそもわたしたち手ぇ使ってたっけ、みたいな」
「なんですかそれ……別にいいですけど」
(えっ)
いいの?
「次からは気を付けてくださいな」
「あ、うん」
ちょっと残念。
じゃなくて。
「かなり潜ったな」
ブッちゃんが脳内マッピングにて探索度を量ってる。少なくとも五回は階段を降りたので、複雑な構造をしてない限りここは地下六階以下ということになる。
構造は相変わらず石造りだけど、心なしか湿気が増しているようにも感じた。地下へ潜るごとにどんどん濡れた壁が増えており、そのうち地下水とご対面できそうな予感。
「あんず、うちにもひとつくれない?」
「お安い御用ですわ」
言って、あんずちゃんが立ち上がった。
大剣を置きドロちんのほうへと歩み寄る。
それから保存用の乾パンを取り出し、
ズボォ。
「あら?」
そんな音がした。
わたしは見た。
あんずちゃんの身体が地面に突っ込んでいく様を。
「……抜けませんわ」
地面に手を付き抜け出そうとするあんずちゃん。
下半身だけでなく、すでに腰まわりまで地面に埋まってる。
それを見たドロちんは。
「ヤバい」
顔面蒼白になっていた。
あんずは先頭に立ちデコイとなって。
ブッちゃんは補助スキルであんずを援護する。
ドロちんはみんなから距離を置き呪文を唱える。
わたしはマモノが気を取られている隙に影に紛れる。
ここは石に囲われた四角いフィールド。
隠れる場所なんてない。
大量のマモノ。
じゃあどうするかって?
「さいしょの獲物はだーれでーすかー!」
マモノの股の下をくぐり、別のマモノの背中に回り込み、と思えばまた別のマモノの裏手に回る。
的を絞らせない。これが生存戦略最大の秘訣です。
もちろん、そのついでに相手の急所をサクッとやるのも忘れません。
狩りのときは血が吹き出したり暴れられたりするので大変だけど、マモノはスッと消えてくれるから逆にやりやすいんだよね。
「およ?」
(アレはなんだ?)
「グレース!」
ブォン!
目の前を大剣が通り過ぎた。
「危ないですわよ!」
「あはは、めんごめんごよそ見してました」
「まったく、アサシンなら静かに戦いなさいな」
冷や汗あんずちゃん。重厚な鎧に身を包み大量のマモノをまとめて圧し斬っていく。
そっちがワイワイやってくれてるから、マモノの気がそっちに向いて自由に動けるのです。さんきゅ!
「諸行無常」
暴力沙汰はあまりスキでないブッちゃん。とはいえ、さすがにこのような状況では暴力反対を謳えませんのでキッチリ反撃してる。
右フック、左ストレート、うっわあのラッシュ目に止まんねー。
(ボクシングスタイルかな?)
「力は心に寄りて力たり」
(ん)
ドロちんの喉から鈴のような音色。
大きなスキルを使う際の呪文だ。
「力は風。無尽の刃となり我が前にある敵を葬り去らん。我が手に宿れ――一気にやるわよ、みんな伏せて!」
(っべ)
ドロちんが叫ぶ。
みんな伏せる。
風が舞い上がる。
「スキル、暴風!」
風がドロちん一点に集約し、そして爆ぜた。
「うひゃあ!」
「くぅ!」
あんずは重装だから風などなんのその。けどこっちは軽量化ウェア故に地ベタベッタリじゃなきゃ巻き込まれそうです。
もともと重量級のブッちゃんはどっしり構えてるけど、青いマントがバタバタはためいてる。
竜巻が風の刃を形成しマモノを切断していく。
首を、あるいは胴体を縦に横に薙ぎ払う。
やがて風が収束すると、そこにいたマモノは半数以下になっていた。
「無茶をする」
「でも数は減ったわ」
「減ってないですわね」
あんずが遠くへ視線を送る。
そこから増えた。
一体、二体、まだ増える。
「埒が明きませんわ」
「退散するか?」
「ワープしてきたばかりで右も左もわからないのにどうしろってのよ!」
「原因をつくったお前が言うな」
「うっさいわね!」
「こんな時までケンカしないでくださいな。とにかく、どうにかしないとこのままジリ貧ですわよ!」
また部屋のすみっこに追いやられていく。この状況を打開するにはパワーあんどスキルだけじゃどうにもできなさそう。
そこでスゴ腕隠密さんの出番ですわよ。
「ねえねえアッチ見て!」
わたしは部屋のすみっこを指さした。
「階段あるよ!」
さっき見つけた。
床にぽっかり空いた穴。その先にさらに地下へと続く階段があり、どうなってるんかなーと覗き込もうとしたところであんずちゃんのウェポンが眼前通過してったんだっけ。
「逃げるわよ! あんず先行って!」
「わかりましたわ!」
ドロちんが叫び、そこから早かった。
「スキル、衝撃波!」
あんずちゃんが大剣を横に凪ぐ。その切っ先から衝撃波が放たれ、正面のマモノたちを一掃した。
「はしれー!」
「帰りが危険だな!」
「そんなの後で考えるわよ!」
マモノが後ろから迫る。
それに構わず、わたしたちは下への階段めがけ一直線に走っていった。
安請け合いするんじゃなかった。
報酬は弾むってどのくらいバインバインなんだろう?
あー疲れたおみず飲みたい。
いま何時くらいだろうなぁ。
「……グレース」
「んー」
「き、気のせいかしら? アナタの背中から黒いオーラが見えるのですけど」
「きのせーだよー」
あーういーうあー。
「やめてよ。こっちまで疲れてくるじゃない」
「ふむ、少し休憩を挟むべきか」
階段を突き抜け、さらに探索を繰り返し。
同じ構造の道をただひたすら進み、同じような部屋で同じようにマモノを撃退し。
時にはトラップを避け、武器や薬草や高そうなアクセサリーを拾い。
ここが地下何階かを数え忘れたころ、やっとブッちゃんからその言葉が飛び出た。
「ひうぅ~」
地面にぺたん。
そのままばたんきゅ~。
「お行儀悪いですわよ。はいこれ」
あんずちゃんがパンをくれた。
「ありがどぉ」
わたしはパンを受け取らなかった。
「えっ」
そのままぱくり。
指ごともきゅもきゅ。
「ちょ、グレース!?」
「ん――あ、ごめん」
自然にやってた。
「なんか手を使うのめんどくさいっていうか、そもそもわたしたち手ぇ使ってたっけ、みたいな」
「なんですかそれ……別にいいですけど」
(えっ)
いいの?
「次からは気を付けてくださいな」
「あ、うん」
ちょっと残念。
じゃなくて。
「かなり潜ったな」
ブッちゃんが脳内マッピングにて探索度を量ってる。少なくとも五回は階段を降りたので、複雑な構造をしてない限りここは地下六階以下ということになる。
構造は相変わらず石造りだけど、心なしか湿気が増しているようにも感じた。地下へ潜るごとにどんどん濡れた壁が増えており、そのうち地下水とご対面できそうな予感。
「あんず、うちにもひとつくれない?」
「お安い御用ですわ」
言って、あんずちゃんが立ち上がった。
大剣を置きドロちんのほうへと歩み寄る。
それから保存用の乾パンを取り出し、
ズボォ。
「あら?」
そんな音がした。
わたしは見た。
あんずちゃんの身体が地面に突っ込んでいく様を。
「……抜けませんわ」
地面に手を付き抜け出そうとするあんずちゃん。
下半身だけでなく、すでに腰まわりまで地面に埋まってる。
それを見たドロちんは。
「ヤバい」
顔面蒼白になっていた。