相部屋希望
別れがあれば出会いがある
その光は一瞬で、ちょっと熱くて、やがて視界が霧が晴れるように鮮明になっていく。
「……」
物言わぬ黒焦げになったチビヒョロ。一瞬死んじゃった? と心配してみたけど、よく見ると身体がピクピクしてるので生きてはいそう。
「あーもうイライラする。このまま丸焼きにしてやろうか?」
「よせ!」
再び杖を突き出すおんなの子。焦ったオジサンはうしろから少女の手首をひっつかみ、少女はそれを振り払った。
「ッ! いきなりか弱い女の子の手を握らないでよヘンタイ!」
「うっ」
(かよわいおんなのことは)
わたしのアタマは混乱した。
「アンタたちもやる気?」
ヘンタイ呼ばわりされちょっとうろたえたオジサン。でもすぐに立ち直り少女としっかり目を合わせた。
「命まで奪う価値のない男だ。これ以上は要らん」
丸焦げと言っても表面こんがり的なアレだ。昔やったことある。おにくを串に刺して、ぐるぐる焼いて、じょーずに焼けました! と思ったら表面だけで中身がぜんぜんナマだったこと。あんな感じ。
ふと気づけば、あんだけ好戦的だったスーツ姿の男たちはどこぞに逃げ出してしまったようだ。
かすかに「こんなの聞いてない!」とか「簡単な仕事だと聞いてたのに!」とか「報酬ちょろまかしやがった!」とか聞こえたような気がしたけど、まあ気のせいだと思う。
納得いってないような少女の不満顔。ほっぺたふっくら系少女に背を向け表面サクサクになったちっこい男の肩を抱き引き寄せた。
「さぁて」
そのまま手頃な椅子に座らせる。チビヒョロはまだ現状に気づいてないけど、時間経過とともに表面についた煤が取れていき、脱皮したフレッシュなお肌を晒していきます。
「ぁ……あ?」
そして状況に気づく。自分がとんでもない攻撃を受けたことに。
彼の視線はオジサンのうしろ。まだ怒りの目で睨みつけられていることに。
「ヒィ!!」
「組織について知ってること、すべて教えてもらおうか」
(うーん、どうだろ?)
知ってる知ってないにかかわらず言えるのでしょうか? あのような精神状態で。
「や、やめてくれ! いいいいいいいのちだけはおだずけぇ~!」
「あぁーあ、すっかり怯えちまってるよ」
ことが澄んでタイクツモードに戻ったスプリットくんのボヤきが響く。とはいえ少年も魔法使いの少女に興味アリアリらしく、口ではチビヒョロのことを示しつつ、その視線はガッツリ少女のほうを向いてるね。
「好みかな?」
「あん?」
いきなり何わけわかんないこと言ってんだ? って顔された。
「もうやめてくれ! お、おれはただの下っ端で、命令されてるだけなんだ! 悪気はなかったんだぁ!」
(いまさらになってそんなこと言う?)
っていうか、っていうかつまりそれってさ。
「チビヒョロくん見捨てられたってことじゃん」
王城の目の前のレストランでこんな騒動でしょ? んで組織名を漏らすな言われてるんでしょ?
「ち、ちびひょろ?」
「あ」
(言っちゃった)
まあでも問題なし。
「……本当に何も知らなさそうだな」
オジサンのふっかーいため息。その後、彼はお城からやってきた衛兵の御用となりました。
「たのむ! 組織の名前を出したことバレたら殺される! ヒミツにしてくれぇ!」
「それ衛兵の前で言っちゃダメでしょ」
はじめは大人しくて紳士的なイメージだったんだけどなぁ。これがほんとの化けの皮が剥がれるってやつか。
「依頼主が悪党だったなんて……これではお仕事がありませんわ」
親分が衛兵に連れて行かれる様を見送りつつ、騎士風の衣装に身を包んだ少女は呆然とつぶやいた。
「はぁ、サイアク」
対して、魔法使い風の少女は未だツンツン属性を解除しておりません。
チビヒョロを連れてった他にも、けっこうな人数の兵士さんたちがここに乗り込んでいた。そりゃそうか、だってこんだけ大きな騒ぎになっちゃったんだもん。
ほんとうだったらみーんなしてお城のくらーい部屋に連れ込まれて、まぶしいライトを目にぶつけられ「ぜんぶ吐け!」とでも言われたのだろうか? それともカツ丼注文してお代は自分で支払う?
っていうイベントをパスできた理由は、やってきた兵士が「これはチャールズ様、スパイク様」ってな感じに敬礼してるので察しました。
ついでにスパイクが「彼女たちはおいらの連れさ」なんて言って、あのですわ少女とツンケン少女も抱き込んでおります。まあ最初からそのつもりだったんだろうけど、魔法使いのほうが兵士をめっちゃ拒否ってしまいにゃ黒焦げヒューマンをもうひとりふたり生産しそうだったので、助け舟という形の提案だった。
「感謝なんてしないから」
これが魔法使いの第一言である。ガードが固いロリっ子ちゃんは置いといて、ボリューミーで貴族っぽいですわちゃんにアプローチをかける女たらしスパイク。
「残念だったね」
「残念どころじゃありませんわ! 彼らはわたくしの住まいまで提供してくださったのですのよ!」
そこまで言って、少女は虚空を見上げ悲しさの最上級を全身で表現した。
「これではもう住む場所さえなくなってしまいますわ」
うわーそれはかわいそう。これにはスパイクも眉を下げるばかりです。
「それは……おいらたちのゴタゴタに巻き込んでしまったようだね。よし!」
スパイクは笑顔になった。それから彼女を元気付けるような口調で続ける。
「迷惑料といってはなんだけど、仕事と住む場所はこちらで用意しよう」
「ほんとですの!?」
お嬢様の顔がぱぁっと明るくなった。
「もちろん。料理とか編み物とか、なにか得意なことはあるかい?」
「料理、ですか? ……やったことはありませんわね」
「んー、まあ見た感じそうだよねぇ」
立派な甲冑を上から下まで見渡して考える。しばらく唸って、力仕事になるのかなぁなんてつぶやいて、それからピーンとひらめいたような顔でこっちを見た。
(え、なに?)
「キミたちいっしょに住む?」
「……」
物言わぬ黒焦げになったチビヒョロ。一瞬死んじゃった? と心配してみたけど、よく見ると身体がピクピクしてるので生きてはいそう。
「あーもうイライラする。このまま丸焼きにしてやろうか?」
「よせ!」
再び杖を突き出すおんなの子。焦ったオジサンはうしろから少女の手首をひっつかみ、少女はそれを振り払った。
「ッ! いきなりか弱い女の子の手を握らないでよヘンタイ!」
「うっ」
(かよわいおんなのことは)
わたしのアタマは混乱した。
「アンタたちもやる気?」
ヘンタイ呼ばわりされちょっとうろたえたオジサン。でもすぐに立ち直り少女としっかり目を合わせた。
「命まで奪う価値のない男だ。これ以上は要らん」
丸焦げと言っても表面こんがり的なアレだ。昔やったことある。おにくを串に刺して、ぐるぐる焼いて、じょーずに焼けました! と思ったら表面だけで中身がぜんぜんナマだったこと。あんな感じ。
ふと気づけば、あんだけ好戦的だったスーツ姿の男たちはどこぞに逃げ出してしまったようだ。
かすかに「こんなの聞いてない!」とか「簡単な仕事だと聞いてたのに!」とか「報酬ちょろまかしやがった!」とか聞こえたような気がしたけど、まあ気のせいだと思う。
納得いってないような少女の不満顔。ほっぺたふっくら系少女に背を向け表面サクサクになったちっこい男の肩を抱き引き寄せた。
「さぁて」
そのまま手頃な椅子に座らせる。チビヒョロはまだ現状に気づいてないけど、時間経過とともに表面についた煤が取れていき、脱皮したフレッシュなお肌を晒していきます。
「ぁ……あ?」
そして状況に気づく。自分がとんでもない攻撃を受けたことに。
彼の視線はオジサンのうしろ。まだ怒りの目で睨みつけられていることに。
「ヒィ!!」
「組織について知ってること、すべて教えてもらおうか」
(うーん、どうだろ?)
知ってる知ってないにかかわらず言えるのでしょうか? あのような精神状態で。
「や、やめてくれ! いいいいいいいのちだけはおだずけぇ~!」
「あぁーあ、すっかり怯えちまってるよ」
ことが澄んでタイクツモードに戻ったスプリットくんのボヤきが響く。とはいえ少年も魔法使いの少女に興味アリアリらしく、口ではチビヒョロのことを示しつつ、その視線はガッツリ少女のほうを向いてるね。
「好みかな?」
「あん?」
いきなり何わけわかんないこと言ってんだ? って顔された。
「もうやめてくれ! お、おれはただの下っ端で、命令されてるだけなんだ! 悪気はなかったんだぁ!」
(いまさらになってそんなこと言う?)
っていうか、っていうかつまりそれってさ。
「チビヒョロくん見捨てられたってことじゃん」
王城の目の前のレストランでこんな騒動でしょ? んで組織名を漏らすな言われてるんでしょ?
「ち、ちびひょろ?」
「あ」
(言っちゃった)
まあでも問題なし。
「……本当に何も知らなさそうだな」
オジサンのふっかーいため息。その後、彼はお城からやってきた衛兵の御用となりました。
「たのむ! 組織の名前を出したことバレたら殺される! ヒミツにしてくれぇ!」
「それ衛兵の前で言っちゃダメでしょ」
はじめは大人しくて紳士的なイメージだったんだけどなぁ。これがほんとの化けの皮が剥がれるってやつか。
「依頼主が悪党だったなんて……これではお仕事がありませんわ」
親分が衛兵に連れて行かれる様を見送りつつ、騎士風の衣装に身を包んだ少女は呆然とつぶやいた。
「はぁ、サイアク」
対して、魔法使い風の少女は未だツンツン属性を解除しておりません。
チビヒョロを連れてった他にも、けっこうな人数の兵士さんたちがここに乗り込んでいた。そりゃそうか、だってこんだけ大きな騒ぎになっちゃったんだもん。
ほんとうだったらみーんなしてお城のくらーい部屋に連れ込まれて、まぶしいライトを目にぶつけられ「ぜんぶ吐け!」とでも言われたのだろうか? それともカツ丼注文してお代は自分で支払う?
っていうイベントをパスできた理由は、やってきた兵士が「これはチャールズ様、スパイク様」ってな感じに敬礼してるので察しました。
ついでにスパイクが「彼女たちはおいらの連れさ」なんて言って、あのですわ少女とツンケン少女も抱き込んでおります。まあ最初からそのつもりだったんだろうけど、魔法使いのほうが兵士をめっちゃ拒否ってしまいにゃ黒焦げヒューマンをもうひとりふたり生産しそうだったので、助け舟という形の提案だった。
「感謝なんてしないから」
これが魔法使いの第一言である。ガードが固いロリっ子ちゃんは置いといて、ボリューミーで貴族っぽいですわちゃんにアプローチをかける女たらしスパイク。
「残念だったね」
「残念どころじゃありませんわ! 彼らはわたくしの住まいまで提供してくださったのですのよ!」
そこまで言って、少女は虚空を見上げ悲しさの最上級を全身で表現した。
「これではもう住む場所さえなくなってしまいますわ」
うわーそれはかわいそう。これにはスパイクも眉を下げるばかりです。
「それは……おいらたちのゴタゴタに巻き込んでしまったようだね。よし!」
スパイクは笑顔になった。それから彼女を元気付けるような口調で続ける。
「迷惑料といってはなんだけど、仕事と住む場所はこちらで用意しよう」
「ほんとですの!?」
お嬢様の顔がぱぁっと明るくなった。
「もちろん。料理とか編み物とか、なにか得意なことはあるかい?」
「料理、ですか? ……やったことはありませんわね」
「んー、まあ見た感じそうだよねぇ」
立派な甲冑を上から下まで見渡して考える。しばらく唸って、力仕事になるのかなぁなんてつぶやいて、それからピーンとひらめいたような顔でこっちを見た。
(え、なに?)
「キミたちいっしょに住む?」