ですわキャラは基本天然ですわ
おおきく振りかぶって
「任せていただきますわ。さあ悪党はどこに? わたくしがこの剣で成敗してさしあげますわ!」
メシ食うとこだってのにこの女騎士は。場所も構わず大剣を掲げてくれました。
どうなるかってと、まあ客は逃げ出しますわな。
「出した金のぶんしっかり働けよ」
女性のうしろで喚くチビヒョロを無視し、オジサンは眼前の異世界人に集中する。
(なんでわかったのかって?)
雰囲気というヤツよ。あと臭いとか香りとか臭気とか。
「このひと異世界人だ」
「ほう? ふむ」
「ッ! なんですの?」
中年のおっちゃんが若いおんなの子を上から下までミッチリ凝視。いやいやちゃんと理由があるのですよ。
相手を視るとき、まずは体つきからチェックする。
どの筋肉が発達してるか。それと手持ちの武器を比較し戦闘スタイルを見極める。上半身ばかりが太い輩は完全なる近距離パワー型で、こっちが素早く動けば相手は攻撃を当てることができず勝手に疲れ果ててくれる。んでこのおんなの子はどうだろう?
(見た目はちょっと華奢な印象。にしては武器が大剣なんだよな)
装備は無骨だけど機能面に優れてそう。とはいえ素材や年季が、どこぞのゲームのはじまりの村で購入できそうな安っぽさを醸し出している。
見た目が立派だから、素人からすると強靭に見えなくもない? 見掛け倒しでくるタイプかな。
(んーにしてはちょっと違うような)
立ち姿は堂々としてるんだけどそれだけみたいな。なんか戦う気がないというか、そもそも戦い方を知らなさそうというか。
この違和感は、オジサンの値踏みの結果によってすぐに解消された。
「……やめておけ。お前では私に勝てん」
その言葉に、自信たっぷり女騎士はツリ目をぴくんとさせた。
「聞き捨てなりませんわね。やってみなければわかりませんわよ?」
重そうな剣を腰に設置し突進の姿勢を見せる。いや実際重たいんだろうな。動きが鈍かったもん。
(ん?)
鈍いだけじゃない。ちょっと切っ先がブレブレしてる。っていうか振動?
(あー、もしかして)
「緊張してる?」
わかりやすく女騎士が跳ねた。
「なっ!! そ、そんなことはありませんわ! このわたくしに緊張なんて言葉は似つかわしくありませんもの!」
「手、震えてるよ」
「剣もブレブレだな。重いんだろ」
うしろでスプリットくんが追随する。そこからビーちゃんはじめみんなの評議会がはじまった。
「重心が高い。私なら接近される前に八発は撃てる」
「そもそも近づかせねーだろ」
「アタイは逆に近づくけどね。剣は立派に見えるけど使い手があんなんじゃノーダメさ」
「んもう、みなさん争いごとばかり夢中になって……そこの女騎士さま」
うちの慈悲深さ担当がちょこちょこ前に歩み出た。いちおうオジサンのうしろ側で、ある程度の距離をとってる。
「なぜそのような心理状況で立たれるのですか? もしかして、彼らになにか脅されているとか」
(うおー慈悲深い)
さっき金がどうのって言ってたのに、グウェンちゃんはファイターレベル3くらいの女騎士にムダに命を散らさぬよう諭していらっしゃいます。
ご安心ください。オジサンにそんな気はありませぬ故。まあ、そのうしろの有象無象は知らないけどね。
「違います! わたくしは」
「では、莫大な報酬でムリな労働をさせられていると」
「ッ!? ――その」
女騎士がまた跳ねた。おいマジかよ。
で、逡巡の末ちょっぴり声を漏らす。
「は、はじめて大金がはいるお仕事だったから」
(うわー、無骨なカッコでモジモジしてるー)
ちょっとかわいいと思った。
「はうぅ!」
「えっ」
彼女がとつぜん膝から崩れ落ち、うつむいて右手で胸を鷲掴みにした。重かった大剣がズシンという音をたて地面と激突する。
(っはは、サっちゃん用装備かな?)
っと、それはさておき。わたしは心配になって声をかけてみた。
「どーしたの?」
「き、緊張で心臓がドキドキしてしまいました」
うしろで誰かが吹き出した。たぶん無礼な少年だと思う。
「気持ち悪いですわ」
(なんか戦いの雰囲気ぶっ壊れてない?)
オジサンも肩の力抜けてるし。もうお開きにしようか? って流れになりそうなことろ、それに待ったをかけるうるさい声がひとつ。
「っておい! 払った金のぶん働けっつってんだろ!?」
「ハッ! そうでしたわ! 危うく悪党の罠に嵌められそうになりました」
(どんな理屈だよ)
「悪党よ観念なさい! このあたりを牛耳っている悪の組織をわたくしは許しませんことよ!」
「どっちかってとソッチのが悪党だよ?」
「問答無用!」
セルフ膝カックンが逆に良かったのか、彼女は低くなった重心から剣をとり、這い上がる力を利用して大剣を振り上げる。
「おお!」
オジサンは感心したような声でそれを躱し、あ、受け止めた。
「あぶないあぶない。そんなに振り回すと屋根まで壊してしまうぞ」
「なぁあ!?」
振り上げた剣の下側をつままれ、女騎士は驚愕の最上級みたいな顔になった。そんなんでもかわいく見えるのヒキョーだと思います。
「このぉ!」
ぶん回す。これはあぶない。まるで剣を握ってひと月程度しか経ってないような慣れてないやり方だ。
でもこういう時こそラッキーヒットに警戒しなきゃダメなのよね。やたら振り回してくる相手にはさっさと無力化するのがイチバンと教わりました。
「落ち着け!」
「キャッ!」
女騎士がよろけてる間に懐に入り手首を叩く。物騒なものが再び地面に落とされ、おんなの子の嬌声がこの場に響きわたった。
「悪党はあっちだ」
「ウソですわ! だってこちらの方からあなた方がどれほど残酷卑劣か聞きましたもの」
「一方の意見だけ鵜呑みにするな! ったく最近の若いもんは」
(――それわたしたちにも言ってる?)
「お嬢さん。ちょっといいかな」
これまで様子を見守っていたスパイクが、事が済むタイミングを見計らい一歩前へ出た。
「キミの言う悪党ってのは、もしかして他人の建物をぶち壊し好き勝手暴れまわりあわよくば相手の土地を奪うような簒奪者のことを指すのかな?」
「そうですわ」
「じゃあ、ちょっと周りを見渡してもらっていいかな?」
言われて女騎士は立ち上がり、スパイクに促されるままレストランの状況を見渡した。あ、そこは素直に従うんだ。
「食事はめちゃくちゃ、テーブルが壊れてお客さんがケガをした。ひどいよね」
「そう、ですわね」
「だれがやった?」
「それは――あっ」
ちらり。甲冑に身を包んだ少女はチビガリヒョロサングラスのほうを向いた。
「どっちが悪党かな?」
「……フッ」
少女はしばらく黙る。んでそっから不敵な笑みを浮かべた。
「悪党たちよ覚悟なさい!!」
切っ先をこちらと逆側に向けて。うっわーおもしれー。
(そうか! これが少女マンガによくいるおもしれーおんなってヤツなのか!)
自分で言ってなんだけど、たぶん違うと思います。
メシ食うとこだってのにこの女騎士は。場所も構わず大剣を掲げてくれました。
どうなるかってと、まあ客は逃げ出しますわな。
「出した金のぶんしっかり働けよ」
女性のうしろで喚くチビヒョロを無視し、オジサンは眼前の異世界人に集中する。
(なんでわかったのかって?)
雰囲気というヤツよ。あと臭いとか香りとか臭気とか。
「このひと異世界人だ」
「ほう? ふむ」
「ッ! なんですの?」
中年のおっちゃんが若いおんなの子を上から下までミッチリ凝視。いやいやちゃんと理由があるのですよ。
相手を視るとき、まずは体つきからチェックする。
どの筋肉が発達してるか。それと手持ちの武器を比較し戦闘スタイルを見極める。上半身ばかりが太い輩は完全なる近距離パワー型で、こっちが素早く動けば相手は攻撃を当てることができず勝手に疲れ果ててくれる。んでこのおんなの子はどうだろう?
(見た目はちょっと華奢な印象。にしては武器が大剣なんだよな)
装備は無骨だけど機能面に優れてそう。とはいえ素材や年季が、どこぞのゲームのはじまりの村で購入できそうな安っぽさを醸し出している。
見た目が立派だから、素人からすると強靭に見えなくもない? 見掛け倒しでくるタイプかな。
(んーにしてはちょっと違うような)
立ち姿は堂々としてるんだけどそれだけみたいな。なんか戦う気がないというか、そもそも戦い方を知らなさそうというか。
この違和感は、オジサンの値踏みの結果によってすぐに解消された。
「……やめておけ。お前では私に勝てん」
その言葉に、自信たっぷり女騎士はツリ目をぴくんとさせた。
「聞き捨てなりませんわね。やってみなければわかりませんわよ?」
重そうな剣を腰に設置し突進の姿勢を見せる。いや実際重たいんだろうな。動きが鈍かったもん。
(ん?)
鈍いだけじゃない。ちょっと切っ先がブレブレしてる。っていうか振動?
(あー、もしかして)
「緊張してる?」
わかりやすく女騎士が跳ねた。
「なっ!! そ、そんなことはありませんわ! このわたくしに緊張なんて言葉は似つかわしくありませんもの!」
「手、震えてるよ」
「剣もブレブレだな。重いんだろ」
うしろでスプリットくんが追随する。そこからビーちゃんはじめみんなの評議会がはじまった。
「重心が高い。私なら接近される前に八発は撃てる」
「そもそも近づかせねーだろ」
「アタイは逆に近づくけどね。剣は立派に見えるけど使い手があんなんじゃノーダメさ」
「んもう、みなさん争いごとばかり夢中になって……そこの女騎士さま」
うちの慈悲深さ担当がちょこちょこ前に歩み出た。いちおうオジサンのうしろ側で、ある程度の距離をとってる。
「なぜそのような心理状況で立たれるのですか? もしかして、彼らになにか脅されているとか」
(うおー慈悲深い)
さっき金がどうのって言ってたのに、グウェンちゃんはファイターレベル3くらいの女騎士にムダに命を散らさぬよう諭していらっしゃいます。
ご安心ください。オジサンにそんな気はありませぬ故。まあ、そのうしろの有象無象は知らないけどね。
「違います! わたくしは」
「では、莫大な報酬でムリな労働をさせられていると」
「ッ!? ――その」
女騎士がまた跳ねた。おいマジかよ。
で、逡巡の末ちょっぴり声を漏らす。
「は、はじめて大金がはいるお仕事だったから」
(うわー、無骨なカッコでモジモジしてるー)
ちょっとかわいいと思った。
「はうぅ!」
「えっ」
彼女がとつぜん膝から崩れ落ち、うつむいて右手で胸を鷲掴みにした。重かった大剣がズシンという音をたて地面と激突する。
(っはは、サっちゃん用装備かな?)
っと、それはさておき。わたしは心配になって声をかけてみた。
「どーしたの?」
「き、緊張で心臓がドキドキしてしまいました」
うしろで誰かが吹き出した。たぶん無礼な少年だと思う。
「気持ち悪いですわ」
(なんか戦いの雰囲気ぶっ壊れてない?)
オジサンも肩の力抜けてるし。もうお開きにしようか? って流れになりそうなことろ、それに待ったをかけるうるさい声がひとつ。
「っておい! 払った金のぶん働けっつってんだろ!?」
「ハッ! そうでしたわ! 危うく悪党の罠に嵌められそうになりました」
(どんな理屈だよ)
「悪党よ観念なさい! このあたりを牛耳っている悪の組織をわたくしは許しませんことよ!」
「どっちかってとソッチのが悪党だよ?」
「問答無用!」
セルフ膝カックンが逆に良かったのか、彼女は低くなった重心から剣をとり、這い上がる力を利用して大剣を振り上げる。
「おお!」
オジサンは感心したような声でそれを躱し、あ、受け止めた。
「あぶないあぶない。そんなに振り回すと屋根まで壊してしまうぞ」
「なぁあ!?」
振り上げた剣の下側をつままれ、女騎士は驚愕の最上級みたいな顔になった。そんなんでもかわいく見えるのヒキョーだと思います。
「このぉ!」
ぶん回す。これはあぶない。まるで剣を握ってひと月程度しか経ってないような慣れてないやり方だ。
でもこういう時こそラッキーヒットに警戒しなきゃダメなのよね。やたら振り回してくる相手にはさっさと無力化するのがイチバンと教わりました。
「落ち着け!」
「キャッ!」
女騎士がよろけてる間に懐に入り手首を叩く。物騒なものが再び地面に落とされ、おんなの子の嬌声がこの場に響きわたった。
「悪党はあっちだ」
「ウソですわ! だってこちらの方からあなた方がどれほど残酷卑劣か聞きましたもの」
「一方の意見だけ鵜呑みにするな! ったく最近の若いもんは」
(――それわたしたちにも言ってる?)
「お嬢さん。ちょっといいかな」
これまで様子を見守っていたスパイクが、事が済むタイミングを見計らい一歩前へ出た。
「キミの言う悪党ってのは、もしかして他人の建物をぶち壊し好き勝手暴れまわりあわよくば相手の土地を奪うような簒奪者のことを指すのかな?」
「そうですわ」
「じゃあ、ちょっと周りを見渡してもらっていいかな?」
言われて女騎士は立ち上がり、スパイクに促されるままレストランの状況を見渡した。あ、そこは素直に従うんだ。
「食事はめちゃくちゃ、テーブルが壊れてお客さんがケガをした。ひどいよね」
「そう、ですわね」
「だれがやった?」
「それは――あっ」
ちらり。甲冑に身を包んだ少女はチビガリヒョロサングラスのほうを向いた。
「どっちが悪党かな?」
「……フッ」
少女はしばらく黙る。んでそっから不敵な笑みを浮かべた。
「悪党たちよ覚悟なさい!!」
切っ先をこちらと逆側に向けて。うっわーおもしれー。
(そうか! これが少女マンガによくいるおもしれーおんなってヤツなのか!)
自分で言ってなんだけど、たぶん違うと思います。