残酷な描写あり
R-15
152 鼎談
ビスタークをスヴィルへ渡した後はリューナの髪への反応を確認するため他の牢へ姿を見せて回った。他の神衛兵たちもやはり青い髪に反応していた。その後は自分たちの部屋へと戻り、いつも通りに食事をしてリューナは眠りについた。
フォスターは大神官から呼び出しがあるだろうと起きて待っていた。リューナが完全に眠りについたと思われる時間に予想通り呼び出された。音を立てないように大神官の部屋へ入る。中にはリジェンダとティリューダが書類仕事をしながら待っていた。
「また遅い時間になってしまってすまないね」
「いえ、リューナが寝た後でないと何か勘づくかもしれませんので」
「耳が良いですもんね」
ティリューダが頷いた。
「早速だが、彼女からの手紙を読んだよ。ビスタークの過去を見たそうだね」
彼女、とはエクレシアのことである。フォスターは頷いた。
「私も見てみたいけど流石にね、身内でも無いのに面白半分に私生活を覗き見るのはどうかと思うと娘に釘を刺されてね」
リジェンダはティリューダを見ながら半笑いで言う。ティリューダがいなかったら見るつもりだったらしい。
「で、私がやることは他の都への連絡だね?」
「はい。お願いします」
リジェンダは手紙に書かれていたことの進捗を次々と報告してくれた。
「ストロワ氏の捜索は各都へ既にお願いしているよ。青い髪の女性への注意喚起もだ」
「ありがとうございます」
「もう遅いからこれは明日以降になるけど、闇の都には何故リューナを預かれなかったのか、どうやって力を封じたのか聞いてみるよ。それから今破壊神の神殿がどうなっているのか探ってもらうようにも依頼する」
「はい」
「光の都の光源石は今まで出なくなったことは無いから特に何も無いと思うけど、二十年くらい前に神衛の失踪者がいたかどうか聞いておくね」
「お願いします」
「時の都へは二十年近く前の破壊神神官周辺を嗅ぎまわっていた飛翔神の神衛兵は怪しくないことを一応伝えておく。今更だろうけどね」
「はい」
それから思い出したように付け足してきた。
「あ、医者についても調べてもらってる。ザイステルという名前で、細目で眼鏡をかけてて金髪で背が高いって特徴でいいんだよね?」
「そうです」
「医者と言えば命の都だからね。何かわかればいいんだが」
各都への連絡事項を確認した後、リジェンダが付け足す。
「ああ、そうだ。鯵神の町が全滅した話だが、この事件と関連性は無いかという話も闇の都をはじめ他三つの都へしておいたよ」
「ありがとうございます」
「破壊神とは関係無いかもしれないが、『例の薬』は別の大きな問題だからね。これはこれで解決しないとならないし」
次にリジェンダは別のことを話し始めた。
「捕えている神衛兵たちのことだけど……聞いているかもしれないが、一人正気に戻す話が出ていてね」
「聞きました。忘却石を使いたいという話ですよね?」
「ああ。先日忘却神の町へ石を調達しに神官たちを向かわせたがそんなすぐには戻ってこれないしね。どうだろう、使わせてもらってもいいかな?」
「いいですが、条件があります」
「うん。どんな?」
そう言われることを予想していたようにリジェンダは聞き返してきた。
「一応労働の対価として貰い受けた石ですので、お金かもしくは……」
少し図々しいかと思い言葉を濁らせた。
「いいよ、言ってごらん」
リジェンダが気にしないよ、という様子だったので安心して伝える。
「転移石があったら欲しいのですが」
「転移石か……」
「すみません。厚かましいお願いだとは思うのですが、この先何かあってここに戻って来たい場合にあると便利だなと思いまして。捕らえた神衛たちの持っている石を譲ってもらうわけにはいきませんか?」
「あー、そうだねえ。私個人としては構わないんだけど……」
それまで黙って聞いていたティリューダが口を挟んだ。
「ダメですよ。犯罪者だとしても個人の持ち物を神殿で勝手に取り上げるのは横暴すぎます」
「だってさ」
「やっぱりそうですよね……一つだけは持ってるので一回家に帰りたかったんですけど。複製石でもいいんですが」
「……その一つはどうやって手に入れたんですか?」
ティリューダが突っ込んできた。フォスターは元々ヴァーリオの物であった転移石を先ほど言われていた通り「勝手に取り上げた」わけで、まずいと思ったのが顔に出てしまった。
「以前襲われたという神衛兵からですか?」
にこやかに責められて冷や汗が出る。ここでビスタークがいれば色々と反論したのだろうが今はスヴィルのところである。ビスタークがいないことを心細く感じたのは初めてだった。
「はい……すみません……」
ここは素直に謝った。
「まあまあ。その神衛はもう亡くなったんだろう? 彼らは被害者なんだし、慰謝料としてもらっておけばいいと思うよ」
「……まあ、仕方ないですね。そちらは良いでしょう」
「ありがとうございます」
フォスターは安堵したが、すぐ地元に戻れないことについてどうすればいいか考え始めていた。するとリジェンダが提案してきた。
「その持ってる石は自宅に帰る用かな?」
「はい」
「それならここに来るときはマフティロの息子に頼めばいいよ」
「え?」
「あの子たち、私の伯父から転移石をもらってた。孫や息子がすぐ会いに来れるようにって渡してたよ」
「そうなんですか! それなら助かります!」
リジェンダの伯父とは元水の大神官でコーシェルとウォルシフの祖父である。フォスターはあの兄弟の顔を思い浮かべた。きっと快く使わせてくれそうである。今頃何をしているだろうか。リューナが神の子だとソレムたちから聞いているだろうか。
「伯父の家に転移するからあいつらと一緒に来ることになるだろうけど」
「もちろんそれで構いません」
これで一度自宅へ戻れる。旅に出てから一か月程度しか経っていないが、すぐに帰ることが出来ると思うととても地元が恋しくなった。
「じゃあ、忘却石の件はお金で払うね」
「お願いします」
「一度自宅に戻られるときに一回精算されますよね? そのときで良いでしょうか?」
「はい」
そうなると宿泊代と相殺になり手元には来なさそうだなとフォスターは思ったがティリューダの次の言葉で驚いた。
「リューナさんが理力を理蓄石に入れてくれた分の報酬が結構ありますよ」
「そうなんですか?」
「普通なら時間のかかる理力の注入を一瞬で終わらせてくださいますので。本人にそのことは伝えていませんが」
「……そうですか」
また神の子だという証拠が増えてしまい、フォスターは暗い気持ちになった。
「じゃあごめん、話を戻すよ」
「……はい」
空気を読んだのか読んでいないのかわからないがリジェンダが横から口を出した。
「取り敢えず一人だけでいいんだ。正気に戻したい。頭に衝撃を与えても正気になったとは聞いたが、流石に危険だからね。忘却石のほうがいいと判断した。君たちじゃないと使えないんだろう?」
「そうですね、そういう契約をしたので。いつにしますか?」
「早速明日にでも」
「リューナはどうしましょう?」
「一緒にいないほうがいいだろう」
「ダスタムと共に外へ散歩に連れだそうと思います。神殿の中は飽きた様子ですので、美味しいお店にでも連れていけば楽しんでいただけるかと」
「すみません、助かります」
疑問に思うことがあったのでフォスターはリジェンダへ質問する。
「でも、正気に戻した後はどうするんですか? 全部忘れますよね?」
「ああ、試してみたいことがあるんだよ」
「何をですか?」
「通信石だ。彼らは一つずつ持っていてね、君の言っていた医者に繋がっているんじゃないかと思うんだよ」
「なるほど……」
「あれは登録者しか繋げないからね。操られたふりをして連絡を取らせるんだ」
それならば色々と情報が聞き出せるかもしれない。
「まあ、演技が下手だとすぐばれそうだから、そこが不安要素だけどね」
「やらないより良いと思います」
自分たちだけではおそらく思い付かなかっただろう。水の神殿を巻き込んで良かったとフォスターは丁重にリジェンダたちへ礼を伝えた。
フォスターは大神官から呼び出しがあるだろうと起きて待っていた。リューナが完全に眠りについたと思われる時間に予想通り呼び出された。音を立てないように大神官の部屋へ入る。中にはリジェンダとティリューダが書類仕事をしながら待っていた。
「また遅い時間になってしまってすまないね」
「いえ、リューナが寝た後でないと何か勘づくかもしれませんので」
「耳が良いですもんね」
ティリューダが頷いた。
「早速だが、彼女からの手紙を読んだよ。ビスタークの過去を見たそうだね」
彼女、とはエクレシアのことである。フォスターは頷いた。
「私も見てみたいけど流石にね、身内でも無いのに面白半分に私生活を覗き見るのはどうかと思うと娘に釘を刺されてね」
リジェンダはティリューダを見ながら半笑いで言う。ティリューダがいなかったら見るつもりだったらしい。
「で、私がやることは他の都への連絡だね?」
「はい。お願いします」
リジェンダは手紙に書かれていたことの進捗を次々と報告してくれた。
「ストロワ氏の捜索は各都へ既にお願いしているよ。青い髪の女性への注意喚起もだ」
「ありがとうございます」
「もう遅いからこれは明日以降になるけど、闇の都には何故リューナを預かれなかったのか、どうやって力を封じたのか聞いてみるよ。それから今破壊神の神殿がどうなっているのか探ってもらうようにも依頼する」
「はい」
「光の都の光源石は今まで出なくなったことは無いから特に何も無いと思うけど、二十年くらい前に神衛の失踪者がいたかどうか聞いておくね」
「お願いします」
「時の都へは二十年近く前の破壊神神官周辺を嗅ぎまわっていた飛翔神の神衛兵は怪しくないことを一応伝えておく。今更だろうけどね」
「はい」
それから思い出したように付け足してきた。
「あ、医者についても調べてもらってる。ザイステルという名前で、細目で眼鏡をかけてて金髪で背が高いって特徴でいいんだよね?」
「そうです」
「医者と言えば命の都だからね。何かわかればいいんだが」
各都への連絡事項を確認した後、リジェンダが付け足す。
「ああ、そうだ。鯵神の町が全滅した話だが、この事件と関連性は無いかという話も闇の都をはじめ他三つの都へしておいたよ」
「ありがとうございます」
「破壊神とは関係無いかもしれないが、『例の薬』は別の大きな問題だからね。これはこれで解決しないとならないし」
次にリジェンダは別のことを話し始めた。
「捕えている神衛兵たちのことだけど……聞いているかもしれないが、一人正気に戻す話が出ていてね」
「聞きました。忘却石を使いたいという話ですよね?」
「ああ。先日忘却神の町へ石を調達しに神官たちを向かわせたがそんなすぐには戻ってこれないしね。どうだろう、使わせてもらってもいいかな?」
「いいですが、条件があります」
「うん。どんな?」
そう言われることを予想していたようにリジェンダは聞き返してきた。
「一応労働の対価として貰い受けた石ですので、お金かもしくは……」
少し図々しいかと思い言葉を濁らせた。
「いいよ、言ってごらん」
リジェンダが気にしないよ、という様子だったので安心して伝える。
「転移石があったら欲しいのですが」
「転移石か……」
「すみません。厚かましいお願いだとは思うのですが、この先何かあってここに戻って来たい場合にあると便利だなと思いまして。捕らえた神衛たちの持っている石を譲ってもらうわけにはいきませんか?」
「あー、そうだねえ。私個人としては構わないんだけど……」
それまで黙って聞いていたティリューダが口を挟んだ。
「ダメですよ。犯罪者だとしても個人の持ち物を神殿で勝手に取り上げるのは横暴すぎます」
「だってさ」
「やっぱりそうですよね……一つだけは持ってるので一回家に帰りたかったんですけど。複製石でもいいんですが」
「……その一つはどうやって手に入れたんですか?」
ティリューダが突っ込んできた。フォスターは元々ヴァーリオの物であった転移石を先ほど言われていた通り「勝手に取り上げた」わけで、まずいと思ったのが顔に出てしまった。
「以前襲われたという神衛兵からですか?」
にこやかに責められて冷や汗が出る。ここでビスタークがいれば色々と反論したのだろうが今はスヴィルのところである。ビスタークがいないことを心細く感じたのは初めてだった。
「はい……すみません……」
ここは素直に謝った。
「まあまあ。その神衛はもう亡くなったんだろう? 彼らは被害者なんだし、慰謝料としてもらっておけばいいと思うよ」
「……まあ、仕方ないですね。そちらは良いでしょう」
「ありがとうございます」
フォスターは安堵したが、すぐ地元に戻れないことについてどうすればいいか考え始めていた。するとリジェンダが提案してきた。
「その持ってる石は自宅に帰る用かな?」
「はい」
「それならここに来るときはマフティロの息子に頼めばいいよ」
「え?」
「あの子たち、私の伯父から転移石をもらってた。孫や息子がすぐ会いに来れるようにって渡してたよ」
「そうなんですか! それなら助かります!」
リジェンダの伯父とは元水の大神官でコーシェルとウォルシフの祖父である。フォスターはあの兄弟の顔を思い浮かべた。きっと快く使わせてくれそうである。今頃何をしているだろうか。リューナが神の子だとソレムたちから聞いているだろうか。
「伯父の家に転移するからあいつらと一緒に来ることになるだろうけど」
「もちろんそれで構いません」
これで一度自宅へ戻れる。旅に出てから一か月程度しか経っていないが、すぐに帰ることが出来ると思うととても地元が恋しくなった。
「じゃあ、忘却石の件はお金で払うね」
「お願いします」
「一度自宅に戻られるときに一回精算されますよね? そのときで良いでしょうか?」
「はい」
そうなると宿泊代と相殺になり手元には来なさそうだなとフォスターは思ったがティリューダの次の言葉で驚いた。
「リューナさんが理力を理蓄石に入れてくれた分の報酬が結構ありますよ」
「そうなんですか?」
「普通なら時間のかかる理力の注入を一瞬で終わらせてくださいますので。本人にそのことは伝えていませんが」
「……そうですか」
また神の子だという証拠が増えてしまい、フォスターは暗い気持ちになった。
「じゃあごめん、話を戻すよ」
「……はい」
空気を読んだのか読んでいないのかわからないがリジェンダが横から口を出した。
「取り敢えず一人だけでいいんだ。正気に戻したい。頭に衝撃を与えても正気になったとは聞いたが、流石に危険だからね。忘却石のほうがいいと判断した。君たちじゃないと使えないんだろう?」
「そうですね、そういう契約をしたので。いつにしますか?」
「早速明日にでも」
「リューナはどうしましょう?」
「一緒にいないほうがいいだろう」
「ダスタムと共に外へ散歩に連れだそうと思います。神殿の中は飽きた様子ですので、美味しいお店にでも連れていけば楽しんでいただけるかと」
「すみません、助かります」
疑問に思うことがあったのでフォスターはリジェンダへ質問する。
「でも、正気に戻した後はどうするんですか? 全部忘れますよね?」
「ああ、試してみたいことがあるんだよ」
「何をですか?」
「通信石だ。彼らは一つずつ持っていてね、君の言っていた医者に繋がっているんじゃないかと思うんだよ」
「なるほど……」
「あれは登録者しか繋げないからね。操られたふりをして連絡を取らせるんだ」
それならば色々と情報が聞き出せるかもしれない。
「まあ、演技が下手だとすぐばれそうだから、そこが不安要素だけどね」
「やらないより良いと思います」
自分たちだけではおそらく思い付かなかっただろう。水の神殿を巻き込んで良かったとフォスターは丁重にリジェンダたちへ礼を伝えた。