残酷な描写あり
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第31話「イディアニウムの【勇者】たち」
■■勇者クルオス:記『イディアニウムの【勇者】まとめ』より抜粋■■
イディア暦八〇一年以降、【女神の意志】により、イディアニウムに召喚された勇者たちについて記載する。
※頭番は召喚順。
※固有スキルは判明しているもののみ記載。
①【愚勇】
・プロフィール
名前:タクミ・ニーシャ/西谷 拓海(36歳/男性)
召喚年:イディア暦801年
活動エリア:フリードリヒ公領、獣の大地(フリードリヒ公管轄地)、王城
レベル:60★★★★★★(78)※実質レベル
固有スキル:【炎万流転】【海砂利水魚】(不明:5スキル)
・戦闘スタイル
魔法・MPの強化系スキルによって、自然の力を自在に操る。無尽の物量攻撃は状況を問わず圧倒的な威力を発揮し、あらゆる困難を打破する。
・コメント
八〇一年以降、イディアニウムに一番最初に召喚された勇者。イディアニウムに存在する五つのダンジョン全てを踏破しており、その誠実さと正義感から、王家の覚えもよい。行動意識が非常に高く、現在は八〇一年以降大量に出現した魔獣の発生場所を突き止めるべく、未開区域であるフテルシア島の【獣の大地】にて探索活動を行っている。レベル・【女神の恩恵】はともに最大値に達しており、全勇者内で『最強』と呼ばれるに相応しい実績も持ち合わせている。召喚当初は単独で活動していたが、近年ではプロトス人の弟子達と行動をともにしている。
②【銀狼】
・プロフィール
名前:ハーミット・サハラ/佐原 栄路 (38歳/男性)
召喚年:イディア暦802年
活動エリア:果ての村(ゼーレン公管轄地)、白炭連山(ゼーレン公管轄地)、双子山(王都直轄地)、ゼーレン公領
レベル:60★★★★★(75)
固有スキル:【天啓】【獣神の加護】【銀爪牙】(不明:3スキル)
・戦闘スタイル
直感・精神感応系スキルに富み、鋭い読み合いや高い判断能力を求められるような戦いにおいて、無類の強さを発揮する。機動力と対応力を活かした変則的な近接戦闘を得意とする。
・コメント
【愚勇】に唯一比肩しうると云われる勇者。召喚当初は王都を中心に行動しており、タクミ・ニーシャとともに王家に奉公していたが、拠点をゼーレン公管轄地に移してからは、その活動は謎に包まれている。寡黙な性格で他人との交流に消極的なことと、大概の問題は一人で効率的に解決できる要領のよさを持っていることから、基本的には単独での行動を好む。【凶獣侵攻】と呼ばれる事件の際、片目を失っている。
③【鬼骨】
・プロフィール
名前:ミッチェル・エンド/遠藤 美千流(34歳/女性)
召喚年:イディア暦805年
活動エリア:靴売り宿(マルティン公管轄地)、剣の墓場(王都直轄地)、灰の湖(王都直轄地)、巨人の石剣(王都直轄地)、南部砂漠(マルティン公管轄地)
レベル:60★★★★(72)
固有スキル:
【狂戦士化】【鬼神の加護】【鬼気慟哭】(不明:2スキル)
・戦闘スタイル
物理系ステータスを底上げするスキルにより、近接に特化した戦闘スタイルをとる。魔法への耐性は低いものの、短時間で勝負に決着をつける高い制圧力がそれを補っている。
・コメント
マルティン公管轄地にある宿場――【靴売り宿】で用心棒を務めている勇者。【靴売り宿】は、王都から【王の道】を辿って、【剣の墓場】という岩壁地帯を抜けた先に位置している。このエリアは強力な個体の獣・魔獣が発生するため、勇者ミッチェルはその退治を主な生業としているが、山越えの疲労とストレスにより、【靴売りの宿】で問題行動を起こした客を取り押さえるのも、彼女の業務の一つである。過去に騎士団と悶着を起こしていることから、王都とは非常に折り合いが悪い。分別を弁えた人柄ではあるものの、彼女が愛用の眼鏡を外した時は注意が必要である。後述の【悪童】と親交が深く、度々近隣の酒場で杯を酌み交わしている姿が見られる。
④【蒼穹】
・プロフィール
名前:ソラ・ヨシダ/吉田 空(27歳/男性)
召喚年:イディア暦807年
活動エリア:アルトゥール公領、仔羊草原、自由の沃野(王都直轄地)、ゼーレン公領
レベル:58★★★★(70)
固有スキル:
【鵬翼】【スカイリミット】【是空】(不明:3スキル)
・戦闘スタイル
決まったスタイルが存在せず、驚異的な学習・適応能力により、相手ごとに最適な戦い方を選択する
・コメント
歴代勇者の中で召喚時年齢最年少の勇者。『天才』の一言で称されることも多く、その快楽主義的な性格がなければ、【愚勇】を抜くほどのポテンシャルを秘めていると云われる。大らかでさっぱりした気質ゆえに、彼に親しみを覚える人間は多く、気分次第で様々な土地を渡り歩くフットワークの軽さもあることから、勇者たちの中では群を抜いて顔が広い。騎士団関係者ですら、彼を【勇者】としてではなく、ただの友人として接しているきらいがあり、王都から正式に依頼を受けることこそ少ないものの、それなりのコネクションを持っている。
※追記
自分で記載するのもアレだが、ボク、勇者クルオスに並々ならぬ興味を持っているようだ。彼の歯の空くような熱烈なアプローチを躱わすのも、今や日常の一部となりつつあるが、特筆したいのは、どこにいてもボクのことを探し当てるあの異常な嗅覚である。努力とは無縁の男だが、一度目的と定めれば、どれだけ不可能に近い事柄でも、必ず成し遂げる能力と手段を持っている。仮にあの阿呆を敵に回してしまう瞬間があったらと想像するとボクとてぞっとしない。
⑤【華煙】
・プロフィール
名前:サクラ・エドガー/江戸川 咲良(30歳/女性)
召喚年:イディア暦810年
活動エリア:魔女の森(アルトゥール公管轄地)
レベル:48★★(57)
固有スキル:
【魔女の森】【深緑の薬師】【ウィスパーボイス】(全スキル判明済)
・戦闘スタイル
植物を材料としたアイテム製作スキルを持ち、多様な状態異常・回復効果を使いこなす。直接戦闘は避ける傾向がある。
・コメント
アルトゥール公管轄地である【魔女の森】にて活動する勇者で、人前には滅多に姿を現さない。薬の卸売りで最低限の生計を立てているが、他人からの干渉を嫌っており、【魔女の森】のどこかに潜む彼女に無理矢理接触を図ろうとして消息不明となった人間も少なくない。目立った功績こそないものの、彼女の薬は魔術痕跡を残さずに〝ある目的〟のために使用することが可能なため、貴族などの有力者たちによって多少の勝手を黙認されている。【銀狼】と浅からぬ因縁がある。
⑥【悪童】
・プロフィール
名前:ケイジ・ミーティア/三田 啓司(26歳/男性)
召喚年:イディア暦812年
活動エリア:星海灯台(王都直轄地)、渇望の荒野(王都直轄地)、南部砂漠(王都直轄地)、王都
レベル:55★★★(64)
固有スキル:
【喰拳】【魔拳】【悌心発起】【怒髪天】(全スキル判明済)
・戦闘スタイル
守りに秀でたスキルを利用し、突貫戦法で徒手空拳を振るう喧嘩屋。
・コメント
もっとも多くのパーティメンバーを従える勇者。イディアニウムで最も治安が悪いと云われる王都南部エリア――【渇望の荒野】にて、荒くれ者たちを己の拳一つでまとめあげ、その頂点に君臨した。仁義に厚い性格であり、召喚当初、世話を焼いてもらった【鬼骨】を姉貴分として慕っている。やや天然な面はありつつも、直感と自分なりの事実解釈によって物事を推し量る能力に長じており、特に人を正確に見定めることにおいては他の追随を許さない。
⑦【紅雲】
名前:ジュン・クルオス/黒瀬 純(25歳/女性)
召喚年:イディア暦814年
活動エリア:黒箱城(ゼーレン公管轄地)、落伍者の雪原(ゼーレン公管轄地)、ゼーレン公領
レベル:52★★★(61)
固有スキル:
【運命の輪】(不明:3スキル)
・戦闘スタイル
魔力で編んだ不可視のワイヤーを使って戦う。糸は直接攻撃や罠、拘束、探知といった用途の他、外骨格として筋力を増加させるなど、様々な使い方ができる。
・コメント
ノーコメント。ただし、評判はすこぶる悪い。
⑧【連環】
・プロフィール
名前:アツコ・シーヴァ/椎葉 篤子(23歳/女性)
召喚年:イディア暦815年
活動エリア:蟲血ヶ浦(ゲオルク公管轄地)
レベル:30★(33)
固有スキル:
【虫の息】【テイクンオーバー】
・戦闘スタイル
ものすごく弱いが、超高性能なHP自然回復強化スキルにより、戦闘不能に陥らない(行動不能となっても瞬時に復帰できる)。全属性に対して攻撃有利となる無属性の魔法を扱う。
・コメント
引きこもりニート。ゲオルク公管轄地【蠱血ヶ浦】にある自宅からとにかく出たがらない。過去に楽して稼ぐ方法を探して、【華煙】との接触を図ったことがあったが、見事に返り討ちに遭い、その上、アルトゥール公領のダンジョン【歌い人の虚空】に無理矢理放り込まれてしまった。その際、今代勇者で初めての死者が出たと噂されたが、数ヶ月後、勇者シーヴァは衣服がズタボロになった状態でダンジョンの出口に姿を現した。そして、彼女は「ダンジョンを一人で踏破したら教えてもいい」という約束の通り【華煙】から希少価値の高い秘薬の調合法を教えてもらったらしい(ただし、面倒臭くなってしまい、その後結局一度も作っていない)。同じくゲオルク公管轄地内に拠点を構える勇者ターナカと仲が良く、どうにかして彼に養ってもらおうと日々画策している。
⑨【峨々】
・プロフィール
名前:クアッド/阿藤 九(24歳/男性)
召喚年:イディア暦816年
活動エリア:マルティン公領、王都
レベル:50★★(56)
固有スキル:【剣神の旗印】【聖女の旗印】(不明:1スキル)
・戦闘スタイル
剣をメインで扱う。味方全体のステータスを大幅強化するスキルを持っており、騎士団にて同じ隊に所属する仲間たちとの連携攻撃を得意とする。
・コメント
勇者でありながら、騎士団員としても活動している青年。職務の都合上、活動範囲・自由行動に制限があるため、実力に対してダンジョン踏破数は少ない。戦略的思考に優れており、彼が編成された騎士隊は死者が出ないことでも有名である。非常に仲間思いであり、騎士団の同僚のためであれば、命を投げ出すことも厭わない。実直な性格だが、その反面、融通が利かず、プライドの高い一面もあり、自分の後に召喚されながら、既にステータスが自分以上に高い勇者ターナカを一方的に敵対視している(元騎士団長と懇意にしているという点も気に食わないらしい)。また、職務上、王都とマルティン公領を行き来することが多いため、【鬼骨】とは顔見知りだが、関係はあまり良好でなく、腕相撲を挑んで一度も勝ったことがない。
⑩【操奇】
・プロフィール
名前:ユウ・ターナカ/田中 勇愛(26歳/男性)
召喚年:イディア暦818年
活動エリア:不浄の平原(ゲオルク公管轄地)、針の森(王都直轄地)、天涙峰(王都直轄地)、風の集落(王都直轄地)、王都
レベル:50★★★(59)
固有スキル:
【ラウンドアバウト】【孤軍敢闘】(不明:2スキル)
・戦闘スタイル
対集団戦・長期戦に特化した強化スキルを持つ。耐久戦によって確実に状況を打破できる機会を待ちながら、瞬間的に猛攻を仕掛ける一点突破型の戦法を好む。その際、近接・魔法攻撃を独自に組み合わせた型にはまらない戦闘スタイルを取るが、集中の度合いによる実力のブレが激しく、自分以上に強力な相手を打倒せしめることもあれば、格下の人間にあっけなく敗北することもある。失敗のコストを最小限に抑えるため、スキルによる星属性化と守備方面に振ったステータスによってカバーしている。
・コメント
曲者ぞろいの勇者達の中で『奇人』との呼び声が高い謎の存在。イディアニウムに存在する五つのダンジョンの中で、なぜか最初に難関と云われる【下り人の頂き】を踏破したことで名が知れ渡った。様々な状況で異常なまでの集中力を発揮する分、周囲ことも見えなくなってしまいがちな性質の問題か、戦闘では不要な傷を負うことが多く、実力の割に、戦いの後はいつもボロボロである。たまたま通りがかった【枝喰み川】にて命を救ったヒース第三王子や、従者として実娘を預かっているヘルド・フェレライ大公など、この国でも『変わり者』と呼ばれる有力者たちと親交を結ぶことが多い。イドという素性不明の僧侶とパーティを組んでいるが、行動をともにしている様子はあまり見られず、単独行動を主としている。誤解されがちではあるものの、根は誠実なお人好しであるため、【鬼骨】や【悪童】、【連環】など一部の勇者とは友好的な関係を築いている(ただし、【峨々】のように合わない人間とは徹底的に合わない)。
▲▲~了~▲▲