残酷な描写あり
R-15
賊の包囲陣
カクトはヘラゲラスの物語を聞いた後、昼食を取りに食堂へと向かった。だが階段を降りた道すがらよく見ると、玉座の間へ繋がる回廊では随分と警備が厳重になっている。
「あれぇ? 何かあったの?」
カクトは兵士たちに呼びかける。
「はっ、カクト様。現在城の中に盗賊が侵入したとの報告を受けました。我々はその不届き者を捕らえるために警戒態勢に入っております」
「あっそ。じゃあさっさと捕まえて殺してね」
そして兵士たちが敬礼する群れを通りすぎて食堂に着く。するとそこもやはり厳重であり、将軍であるアーサスもいた。
「あれアーサス? お前もいたの?」
「はいカクト様。もう既にお聞きしているでしょうが、この城に盗賊が紛れこんだのです」
アーサスも敬礼して報告する。カクトは興味なさそうに席に着いた。だが食事は用意されてない。
「あれぇ? まだ食事できてないの? 昼飯の時間からもう2時間近く経ってるんだけどぉ?」
「コックが昼食を温め直しているのです。すぐにご用意致します」
「あっそ。あ~あ、待つのダリィわぁ」
背もたれにだらりと背中を預けながら、カクトは退屈しのぎに窓の外を見遣る。だがその時、異変に気づいた。空が全て紅く染まっていたのだ。まだ昼の2時であり、夕刻の時刻ではない。そもそも夕焼けのような安らぎを覚えるオレンジ色とも様相が違う。外の様子は明らかにおかしかった。
「ねぇ、何か空が紅いんだけど? これってもしかして天変地異? 何かの前触れ?」
カクトはテーブルに肘を突きながらアーサスに尋ねる。だがアーサスも他の兵士たちもカクトの返事を無視した。
「あっ? 何で無視してんのお前ら? ムカつくんだけど?」
カクトは威圧の視線を刺す。だがやはり誰も答えなかった。厳格な眼差しを決して逸らさず、カクトをじっと見下ろしている。
「……まぁいいや。ティモンなら何か知ってるだろ。事情を聞き出したらお前ら全員拷問だからな? ワープホール」
カクトは立ち上がって呪文を唱える。だが黒い靄が出現しなかった。
「あれ? 呪文を唱えたのにワープホールが出てこないんだけど?」
瞬間、カクトは鋭い殺気を背後から感じた。振り向くと、抜剣したアーサスが剣を振り下ろす直前だった。
ガキィィィィン!!
だがカクトの頭上に剣が迫った寸前、『パーフェクトガード』が発動する。カクトは全くの無傷だった。
「あれぇ? もしかしてお前、俺のこと殺そうとしたぁ?」
カクトはアーサスに口元を歪めながら笑いかける。そしてポケットに手を突っ込んだまま余裕の態度を見せた。
「ギラムの仇取らせてもらう! かかれぇ!!」
周囲の兵士たちも抜剣し、一斉にカクトに襲い掛かる。
ガキィィン! ガキィィン! ガキィィン!
だがその殺意の籠められた剣撃は全て『パーフェクトガード』によって弾かれた。
「あのさぁ、お前ら。俺のチート能力忘れちゃったわけぇ? 『パーフェクトガード』。俺に危害を加えようとするあらゆる攻撃を跳ねのける」
「知ってるさ。だがお前の王様ごっこに付きやってやるのもここまでだ!」
「は? 何言ってんの? 俺は正真正銘この世界の王なんだけど?」
そしてカクトは右手を広げる。
「んじゃ、目障りだからそろそろ死ねよ♪ クラフトニードル・サウザンド!」
そしてカクトの周囲に鋭く黒い針が出現する。だが様子がおかしい。1000本の針を出したつもりなのに、20本程度しか現れなかった。
「盾を構えろぉ!」
アーサスの号令と同時に針が射出された。兵士たちに一斉に針が襲い掛かる。だが瞬時に盾を構えたことで、針は全て盾に突き刺さる。全員の命が無事だった。
(は? ……どういうことだ? こんな雑魚ども、俺なら一瞬で全滅させられるはずなのに)
異変に気づいたカクトは、額から汗を流す。その標的が狼狽する様を見て、アーサスは瞬時に判断を下す。
「かかれぇ! 今こそカクトを仕留める好機だぁ!」
態勢を立て直し、兵士たちがまたカクトに襲い掛かる。
ガキィィン! ガキィィン! ガキィィン!
『パーフェクトガード』が剣撃を弾く。だがそれも様子がおかしい。カクトの周りを囲む魔法障壁に、ヒビが入り始めたのだ。
(まさか……おかしい! パーフェクトガードにヒビが入るなんて今までなかったぞ! 俺の能力は無敵のチートじゃなかったのかよッ!?)
「クラフトニードルッ!! クラフトニードルッ!! ……ファイアボールッ!!」
カクトは攻撃魔法を立て続けに唱える。だが広げた右手から何も魔法が出てこない。兵士たちの猛攻と殺意が浴びせるようにカクトに降りかかる。
「クソッ! どけッ!!」
危機を察したカクトは出口の扉に向かって突進する。『パーフェクトガード』が自動発動して、カクトの周りを囲んでいた兵士たちが弾き飛ばされた。だがすぐに立ちあがり、全員が再びカクトに殺意の眼を向けた。
「追えッ! 決して逃がすなぁ!!」
アーサスの猛々しい号令が食堂中に響き渡る。兵士たちが地響きを鳴らし、扉から逃げ出すカクトを追う。
「ファイアボールッ!! ファイアボールッ!!」
カクトが扉を出て振り向いた瞬間、その右手から火球が飛び出した。
バアァァンッ!!
轟音とともに扉のしきりに炎の壁が出現する。兵士たちの追跡が阻まれた。
「第四部隊ッ!! すぐに厨房からありったけの水を持ってこい!!」
食堂にいた兵士の半分が分かれ、厨房へ駆け込む。残りの兵士は炎の壁の前で足止めを喰らい、回廊へ逃亡するカクトを睨む。
「第一部隊ッ、第二部隊ッ! 聞こえるか!? 今すぐカクトを殺せッ!!」
外の廊下で待機していた兵士たちが、アーサスの号令とともに一挙にカクトを挟み撃ちにする。カクトはそれを目視すると、真っすぐ逃げながら叫んだ。
「ワープホールッ! ワープホールッ! ワープホールッ!!」
(逃がすものかッ!!)
アーサスは炎の壁の最前に立ち、背中から弓矢を取り出す。そして矢を番え弦を力いっぱい引く。
「ワープホールッ!!!」
四度目の叫びとともに、ようやくカクトの目の前に黒い靄が出現する。だがカクトがワープホールに飛び込んだ時、アーサスの放った矢がカクトの右肩を射抜いた。
「あれぇ? 何かあったの?」
カクトは兵士たちに呼びかける。
「はっ、カクト様。現在城の中に盗賊が侵入したとの報告を受けました。我々はその不届き者を捕らえるために警戒態勢に入っております」
「あっそ。じゃあさっさと捕まえて殺してね」
そして兵士たちが敬礼する群れを通りすぎて食堂に着く。するとそこもやはり厳重であり、将軍であるアーサスもいた。
「あれアーサス? お前もいたの?」
「はいカクト様。もう既にお聞きしているでしょうが、この城に盗賊が紛れこんだのです」
アーサスも敬礼して報告する。カクトは興味なさそうに席に着いた。だが食事は用意されてない。
「あれぇ? まだ食事できてないの? 昼飯の時間からもう2時間近く経ってるんだけどぉ?」
「コックが昼食を温め直しているのです。すぐにご用意致します」
「あっそ。あ~あ、待つのダリィわぁ」
背もたれにだらりと背中を預けながら、カクトは退屈しのぎに窓の外を見遣る。だがその時、異変に気づいた。空が全て紅く染まっていたのだ。まだ昼の2時であり、夕刻の時刻ではない。そもそも夕焼けのような安らぎを覚えるオレンジ色とも様相が違う。外の様子は明らかにおかしかった。
「ねぇ、何か空が紅いんだけど? これってもしかして天変地異? 何かの前触れ?」
カクトはテーブルに肘を突きながらアーサスに尋ねる。だがアーサスも他の兵士たちもカクトの返事を無視した。
「あっ? 何で無視してんのお前ら? ムカつくんだけど?」
カクトは威圧の視線を刺す。だがやはり誰も答えなかった。厳格な眼差しを決して逸らさず、カクトをじっと見下ろしている。
「……まぁいいや。ティモンなら何か知ってるだろ。事情を聞き出したらお前ら全員拷問だからな? ワープホール」
カクトは立ち上がって呪文を唱える。だが黒い靄が出現しなかった。
「あれ? 呪文を唱えたのにワープホールが出てこないんだけど?」
瞬間、カクトは鋭い殺気を背後から感じた。振り向くと、抜剣したアーサスが剣を振り下ろす直前だった。
ガキィィィィン!!
だがカクトの頭上に剣が迫った寸前、『パーフェクトガード』が発動する。カクトは全くの無傷だった。
「あれぇ? もしかしてお前、俺のこと殺そうとしたぁ?」
カクトはアーサスに口元を歪めながら笑いかける。そしてポケットに手を突っ込んだまま余裕の態度を見せた。
「ギラムの仇取らせてもらう! かかれぇ!!」
周囲の兵士たちも抜剣し、一斉にカクトに襲い掛かる。
ガキィィン! ガキィィン! ガキィィン!
だがその殺意の籠められた剣撃は全て『パーフェクトガード』によって弾かれた。
「あのさぁ、お前ら。俺のチート能力忘れちゃったわけぇ? 『パーフェクトガード』。俺に危害を加えようとするあらゆる攻撃を跳ねのける」
「知ってるさ。だがお前の王様ごっこに付きやってやるのもここまでだ!」
「は? 何言ってんの? 俺は正真正銘この世界の王なんだけど?」
そしてカクトは右手を広げる。
「んじゃ、目障りだからそろそろ死ねよ♪ クラフトニードル・サウザンド!」
そしてカクトの周囲に鋭く黒い針が出現する。だが様子がおかしい。1000本の針を出したつもりなのに、20本程度しか現れなかった。
「盾を構えろぉ!」
アーサスの号令と同時に針が射出された。兵士たちに一斉に針が襲い掛かる。だが瞬時に盾を構えたことで、針は全て盾に突き刺さる。全員の命が無事だった。
(は? ……どういうことだ? こんな雑魚ども、俺なら一瞬で全滅させられるはずなのに)
異変に気づいたカクトは、額から汗を流す。その標的が狼狽する様を見て、アーサスは瞬時に判断を下す。
「かかれぇ! 今こそカクトを仕留める好機だぁ!」
態勢を立て直し、兵士たちがまたカクトに襲い掛かる。
ガキィィン! ガキィィン! ガキィィン!
『パーフェクトガード』が剣撃を弾く。だがそれも様子がおかしい。カクトの周りを囲む魔法障壁に、ヒビが入り始めたのだ。
(まさか……おかしい! パーフェクトガードにヒビが入るなんて今までなかったぞ! 俺の能力は無敵のチートじゃなかったのかよッ!?)
「クラフトニードルッ!! クラフトニードルッ!! ……ファイアボールッ!!」
カクトは攻撃魔法を立て続けに唱える。だが広げた右手から何も魔法が出てこない。兵士たちの猛攻と殺意が浴びせるようにカクトに降りかかる。
「クソッ! どけッ!!」
危機を察したカクトは出口の扉に向かって突進する。『パーフェクトガード』が自動発動して、カクトの周りを囲んでいた兵士たちが弾き飛ばされた。だがすぐに立ちあがり、全員が再びカクトに殺意の眼を向けた。
「追えッ! 決して逃がすなぁ!!」
アーサスの猛々しい号令が食堂中に響き渡る。兵士たちが地響きを鳴らし、扉から逃げ出すカクトを追う。
「ファイアボールッ!! ファイアボールッ!!」
カクトが扉を出て振り向いた瞬間、その右手から火球が飛び出した。
バアァァンッ!!
轟音とともに扉のしきりに炎の壁が出現する。兵士たちの追跡が阻まれた。
「第四部隊ッ!! すぐに厨房からありったけの水を持ってこい!!」
食堂にいた兵士の半分が分かれ、厨房へ駆け込む。残りの兵士は炎の壁の前で足止めを喰らい、回廊へ逃亡するカクトを睨む。
「第一部隊ッ、第二部隊ッ! 聞こえるか!? 今すぐカクトを殺せッ!!」
外の廊下で待機していた兵士たちが、アーサスの号令とともに一挙にカクトを挟み撃ちにする。カクトはそれを目視すると、真っすぐ逃げながら叫んだ。
「ワープホールッ! ワープホールッ! ワープホールッ!!」
(逃がすものかッ!!)
アーサスは炎の壁の最前に立ち、背中から弓矢を取り出す。そして矢を番え弦を力いっぱい引く。
「ワープホールッ!!!」
四度目の叫びとともに、ようやくカクトの目の前に黒い靄が出現する。だがカクトがワープホールに飛び込んだ時、アーサスの放った矢がカクトの右肩を射抜いた。