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残酷な描写あり R-15
自己満足な奴隷少女購入
「ぷはぁ~! 城下町に出かけたのは初めてだけど、色々あるんだなぁ。クヒャヒャ! たまには外出ってのも悪くねぇ!」

 翌日の昼、カクトはティモンとともに城下町へ視察しにいった。上機嫌で街を散策し、キョロキョロと物見遊山する。

「ところでさぁ、さっきから群衆の奴ら、何か俺のこと避けてるって感じなんだけど? 遠巻きにチラチラ見てきて、何かムカつくっていうかさぁ」

「そ、それは、恐らく先日の公開処刑で見た衝撃のあまり、皆カクト様に恐れを抱いているのでしょう」

「ああそう。ファイアボール」

 カクトはその群衆の中の一人の男に目をつけると、その男に向かって火の玉を飛ばした。

「ギャアアアアアアッ!!」

 男の身体は一瞬で燃え上がり、悶え苦しみながら焼け死んだ。
周りの群衆たちは一気に騒然となり、水を流し入れられた蟻の巣の如く逃げ惑う。

「な、何故あの者を殺したのですか!?」

「あいつ俺にガン飛ばしてきやがった!」

 カクトはあからさまな敵愾心を露わにして憤慨する。
ティモンはもはや恐怖を通り越して、呆れかえってしまった。

(こいつはやはり、少しでも自分が気に入らなければ人を殺すトチ狂った人間なのだ……)

 衛兵たちが騒ぎに駆けつけ、黙って焼死体の後片付けをする。もはや誰もカクトの蛮行に口出ししようともしなかった。

 その後、カクトとティモンは中流階級が住む街沿いの一角に差し掛かった。多種多様な屋外店舗が並ぶ中、一際目立つ商人のキャラバンがあった。その上等な衣服を着た商人の背後には、複数の大きな鉄の檻が整列している。その檻の中には、獣の耳や尻尾が生えた黒い肌の人間たちが詰め込まれていた。

「なぁ、何あれ? もしかして犯罪者でも護送されてんの?」

「あれは奴隷市場ですよ。ブラカイア族という野蛮で品性のない民族が売られているのです」

「へぇ~、この世界には奴隷がいるんだ」

 カクトは興味を示し、ズカズカと奴隷の檻に近づく。

「か、カクト様! 危険であります!」

 ティモンは慌てて制止するも、カクトの歩みは止まらない。丸々と太った奴隷商人の男がニコニコと揉み手しながらカクトに近づいてくる。

「いらっしゃいませカクト陛下! 何かご入用ですかな?」

「ああうん、奴隷ってどんな奴がいるのかなって思って」

「左様ですか! ではとびっきりの目玉商品をご紹介しましょう!」

 奴隷商人がパンパンと手を叩くと、召使いの一人が車輪付きの台座に乗せられた檻を運んできた。その檻の中を覗くと、カクトはハッと目を色めき立たせる。

 黒猫のような獣の耳と尻尾が生えた、15歳ぐらいの褐色美少女がいた。黒髪ロングストレートの青い瞳。ブラカイア族特有の艶やかな黒い肌。粗末なボロ衣だけを纏ってちょこんと座っており、丈の短い裾からは細くて未成熟な生足が露わになっていた。

(へぇ……こいつはヤリごたえがありそうだな)

 カクトはその美少女の剥き出しになった黒い肌を見て舌なめずりする。あのボロ衣の奥にあるものを覗いてみたい……。早速商人に向かって首を回転させた。

「おっさん、これいくら?」

「おおっ! さすがカクト陛下お目が高い! この娘は先日、年老いた貴婦人のご厚意で売られてきたばかりなのですよ! 『私はもう老い先短い命だから』と後を頼まれましてね。この娘は肌に傷もありませんし、よく髪や歯も手入れされている。器量もなかなかよく、前の主人の屋敷ではメイドとして働いていたのでございます。

 そして何と言っても処女! もしカクト陛下のお気に召したのであれば、この娘の初物にお手をつけることだってできるのでございますよ!」

 隣まで駆けつけたティモンは、奴隷商人の売り文句に苦虫を噛み殺したような表情となった。

(所詮奴隷商人など下劣な品性でなければ務まるまいな)

 内心見下した視線を送る。
だが当のカクトは奴隷商人の口車に乗り気な姿勢を見せた。

「御託はいいからさっさと値段言えよ。倍の額で買ってやっから」

「おおっ! それは大変ありがたい!! ではお値段の方につきましては――」

「お、お待ちくださいカクト様!」

 ティモンが慌てて止めに入る。カクトと奴隷商人は同時に振り向き、そして買い手は鬱陶しそうに顔をしかめた。

「んだよジジイ。いいところで止めやがって。俺の買い物にケチつける気かよ?」

「……お、恐れながら、そうでございます。非常に申し上げにくいのですが、ブラカイア族の娘など買うべきではありません」

「は? 何の根拠があってそんなこと言ってんの?」

 カクトは眉根を歪ませ、ますます不機嫌になる。それでもティモンは必死に諫言を続けた。

「ブラカイア族は元々、ファース大陸を侵略しようとした異民族です。1000年もの間他国に攻め入っては略奪を繰り返し、虐殺の限りを尽くしてきた歴史を持っております。その凶暴な血筋は今となっても脈々と引き継がれており、由緒あるミチュアプリス王国の城へ連れて帰るなど、国家の威信を貶める行為に他なりません」

「は? お前それ差別だろ? いちいち過去の出来事掘り返して勝手に他人のこと決めつけんじゃねぇよ。お前差別が悪いことだって学校で習わなかったの?」

 カクトは人差し指を突き出してティモンを批判する。

「さ、差別するのだって正当な理由があるからです。ブラカイア族というのは反抗的で協調性もなく、度々問題ばかり起こす人種であります。現に奴隷の身分から脱走したブラカイア族は、皆押し並べて盗みや強盗などの犯罪をおかして逮捕されているのです。

 本来なら侵略戦争に敗北した時点で皆殺しにされる所だったのに、我々の温情で生かされている立場すら忘れている。そんな恩知らずで危険な民族など、王城に迎え入れるべきではありません」

「うるせぇよバーカ! 俺はこいつが可哀想だから買ってやるんだよ。俺は心優しいからな。あ~あ、自分でもお人良しすぎて涙出てくるわぁ」

 カクトはクヒャヒャ! と高笑いを上げる。涙は全く出ていない。

(こいつの言ってることはただの自己満足にすぎん。『可哀想だから買う』などと、だったら何故他のブラカイア族には目もくれないのだ? 所詮小娘の色香に惑わされただけではないか!)

「さてさて、そろそろご相談の方は済みましたかな? では改めてお値段の方を――」

 奴隷商人の男がささっと割って入ってくる。そしてミチュアプリス王国の庶民では、絶対に買えないような金額を突きつけてきた。健康な若い男の奴隷の20倍ほどの値段だった。

 ティモンはその悪辣な交渉のやり方に反吐が出そうになる。だがこの国の奴隷相場などまるで知る由もないカクトは速攻で承諾した。

「ああ、わかったわかった。それで買ってやるよ。俺に買えないものなんてないんだからな。ティモン、代わりに金出しとけ」

 ティモンは苦渋の表情を浮かべながら、その場で手形を取り出す。インクのついたペンでさらさらと、金額と自分の名前を記入した。

「……これを持って後で王城にある手形交換所に行ってくれ」

「はいはい、かしこまりました!」

 慣れた手つきで奴隷商人は手形を受け取ると、大事そうにカバンの中にしまい込む。そしてそのまま鍵を取り出し、檻の扉を開けた。

 ブラカイア族の奴隷娘は、扉が開けられているのに座りっぱなしで、放心した眼差しでカクトを眺めている。カクトはズカズカと娘に近づき、小さな檻の前に立った。

「おい、お前のこと買ってやったぞ。俺は心が広いからなぁ。お前、名前何ていうの?」

「……レクリナと、申します」

 ブラカイア族の奴隷娘はおずおずと名乗る。上目遣いにカクトを見上げており、青い瞳をキラキラと輝かせていた。

「あっそう、レクリナか。いい名前だな。俺はタナカカクト。もう知ってると思うけどこの国の王。とりあえず今晩は一緒に寝るか!」

 カクトは檻の前で腰をかがめ、奴隷娘レクリナの頭をくしゃくしゃと撫でる。

「……カ、カクトさまぁ♥」

 頭を撫でられたレクリナは、うるうるとした瞳で頬を紅潮させた。
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