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残酷な描写あり R-15
短絡的な奴隷解放宣言
「昨日の夜は楽しかったなぁレクリナ!」

「はい! とても忘れられない夜でしたわカクトさまぁ♥」

 明日の朝となり、玉座の間では卑猥な談笑が繰り広げられていた。カクトのすぐ隣の椅子に座るレクリナは、玉座に座るカクトの腕に抱きついている。程よく膨らんだ自分の胸をしきりに押しつけており、その度にカクトの気分とアソコは大きくなった。

「ねぇカクトさま……私、もう一度カクトさまと一緒に夜を過ごしたいですわ。だってその……あんなに気持ちいいとは思いませんでしたもの」

「ああいいぞいいぞ! これから毎日セックスしようぜ!!」

 朝っぱらから神聖な玉座の間で人目も憚らずイチャつく二人。周りにいた臣下たちは皆、アホ面でとろけた猿以下どもの会話に白眼視する。ミチュアプリスの歴史ある玉座の間は、すっかり威厳も風紀も乱れてしまった。

「ねぇ、カクトさま。カクトさまは私のこと、どう思ってますの?」

「は? んなもん好きに決まってんだろ! お前以上に可愛くて俺好みな女はいねぇよ!」

 カクトは自信満々にレクリナに受け答える。だがその途端にレクリナは顔を伏せ、表情に影を落とした。

「んあ? どうしたレクリナ?」

「……申しわけありませんカクトさま。私、こうしてカクトさまが愛してくださっているのに、どうしてもその、自信が持てないんです。本当に私は、偉大な王でいらっしゃるカクトさまに愛される資格なんてあるのかな? って」

「んだよめんどくせぇなぁお前も。俺が好きだって言ってんだから俺の気持ちを受け止めろよ。俺はどこかのジジイみたいに民族とか肌の色とかで差別したりしねぇから」

「……か、カクトさまぁ♥」

 レクリナは頬を紅潮させて瞳を潤ませる。その控え目で奥ゆかしい態度にカクトはますます熱を上げた。

「ではカクトさま。本当に私を愛してくださっているのでしたら、ひとつ我が儘を言ってもいいですか?」

「ああいいぞ! なんたって俺はこの国の王だからなぁ。お前の願いの一つや二つ何でも叶えてやるぞ!」

「ほ、本当ですか!?」

「あったり前だろ! 俺は心優しい王だから美少女の願いなら全部聞き入れてやるよ!」

「カクトさま素敵っ♥」

 レクリナはカクトの腕にまた飛びつき、自分の頬をスリスリとさせた。
カクトはすっかり鼻の下を伸ばし、だらしない顔つきでニタニタと笑った。

「では、早速お願いを聞いてくださいまし。……仲間のブラカイア族たちを、全員助けてほしいのです」

(な、何だとッ!?)

 二人の傍で会話の行方を窺っていたティモンが仰天する。

「カクトさま、私たちブラカイア族は奴隷の身分でしょ? だからみんな毎日いじめられるし、全然ご飯も食べられないし……だから、凄く困ってるんです。カクトさまのお力で、何とかできないでしょうか?」

「わかったわかった。んじゃ、今日からブラカイア族は全員奴隷の身分から解放な」

(ッ!!!)

 あっさりと決定された奴隷解放宣言に、ティモンは血相を変える。

(この下賤女め! カクトを手玉に取ってとんでもないことを言わせてくれたな!!)
「お待ちくださいカクト様ッ!! ブラカイア族を奴隷の身分から解放するなどとんでもございません!!」

「んあ? またお前かよジジイ」

 カクトはレクリナとの睦み合いに水を差され、途端に機嫌が悪くなる。
それでもティモンはミチュアプリスの平和のために諫言を続けざるを得なかった。

「ブラカイア族は昨日話した通り、残忍で凶暴な蛮族です。100年前にこのファース大陸に侵略して、大勢の原住民たちを殺害して回りました。当時のファース大陸の王たちは結託してブラカイア族と戦って勝利を収め、やっとのことで彼らの殺戮を食い止めることができました。その後彼らが族長を失って命乞いをしたために、当時の国際会議の結果、奴隷として生かすことが決められたのです」

「ま~た歴史の講釈かよ。うっぜぇなぁ」

 カクトはそっぽを向いてレクリナの艶やかな髪の毛を弄ぶ。

「こ、これは重大な話なのです! どうかお聞きください! 我々がブラカイア族を服従させてから、100年の月日が流れました。ですが今となってもブラカイア族の凶暴性は消えたわけではありません。盗み食いは当たり前、脱走しては強盗を繰り返す。あげくミチュアプリス原住民がブラカイア族に殺害された事件だってあります。

 そんな蛮族どもを奴隷の身分から解放するということは、猛獣を檻から解き放つのと同じ。ましてブラカイア族は長年奴隷生活を強いられ、ファース大陸の原住民たる我々をひどく恨んでおります。なまじ数が多いだけに国外追放することすらできない有様で、この奴隷制度もミチュアプリスの平和を守るためにあるのです。そんな状況でブラカイア族を自由にして野放しにすれば、きっと大きな擾乱じょうらんが巻き起こってしまうでしょう」

 ティモンは必死でカクトに忠言を訴えかける。
だがカクトはレクリナの髪いじりに夢中になっており、まるで聞く耳など持たなかった。

「あっ? んなこと知らねぇよ。ごちゃごちゃといちゃもんつけて俺の決定に口出しすんじゃねぇ。奴隷制度は悪いことだから止める。俺が住んでた世界じゃ奴隷の売買が悪いってのは常識なんだよ」

 カクトは鋭い視線でティモンを威圧する。これ以上異議を唱えれれば、もはや自分の命が危ぶまれる。ティモンは黙って引き下がらざるを得なかった。だが心の中では堪えがたいほどの反発を抱いていた。

(この男は碌にブラカイア族のことを知りもしないからそんなことが言えるのだ。民族性とは身体的な属性だけでなく、心の在り方すらも決める。ブラカイア族は今まで奴隷として苦杯を舐めさせられ、過去の恨みを募らせてきた者たちだ。そんな輩が大人しく他者と手を取りあって平和な社会生活を営めるわけがない。

 彼らには常識も理性もなく、一度権利を与えれば、際限なくそれらを要求するだけの寄生虫になるだろう。表面的な正義を振りかざすだけでは、けっきょく国家全体の利益など守れるはずもないのだ!)

「あっ、それとやっぱ奴隷商人どもは皆殺しにするわ♪ よくよく考えたら奴隷商人とか犯罪者だし、全員ぶっ殺した方が世の中のためになるわ。おいティモン! さっさとアーサス呼んでこい!!」

「素敵ですわ! カクトさまぁ♥」

 残虐なカクトの命令と、レクリナの甘ったるい声が玉座の間にこだました。
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