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作者: 古今いずこ
残酷な描写あり
第2回 祈りが届く 助けが来る:1-1
作中よりも過去における死ネタが含まれます。苦手な方はご注意ください。
 亡き母の父、即ち祖父の実家へ行くように、という父の指示は唐突だった。本家に適当な女児がおらず、七年に一度の祭祀が行えないので、未婚の娘を借りたいと依頼があったのだという。本家に女児がいないわけではなく、嫁いでしまったか幼すぎるかで巫女役を務められないということらしいから、今回一度限りのことだ。拒むことでもあるまい、助けてやるといい、ついでに異国見物でもしてこいと言われて、疑いを抱く道理もないと言えばなかった。

 末子であった祖父はほん放で、家を飛び出し国を飛び出してあちこち旅をしたらしいが、大陸の東端から帝国を横断して生国へ戻る途中、祖母と結ばれ、母の誕生を待たずに去ったのだという。自分の姓名を特にすこともなく、故郷が生国のどの地であるかも包み隠さず教えていたから、祖母は祖父の実家を突き止め、女児が生まれたと伝えることができたらしい。そのように話だけは聞いているけれども、実のところ祖父の実家とは交流らしい交流もなく、親族意識もあまりないのが実態であった。

 そんなところからそんな話が急に来たというのは妙な気もしたけれど、父親がそう言うのだ、そうですかと信じるしかないではないか。やけに甲斐甲斐しく世話を焼き、従者を選んで旅の準備を整える様子が、普段とあまりにかけ離れているからといって、薄気味悪いともまさか言えない。その割にはつけられた従者は二人きりで、みのない異国に出向くにしては少ないように感じたけれども。

 山を越えると聞いたときもおかしいとは思った。回すると時間がかかりすぎて、肝腎の祭祀に間に合わないのだと説明をつけられれば、けれども代わりの道は提示できなかった。どんなに怪しくとも、代案を出せなければ黙るしかないのだ。腑に落ちないことばかりで、いささか投げやりになっていたところもあるだろう。

 その結果が——これ、だ。
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