第2話 絶望を希望に変えろ!! 15 ―嘲笑―
15
少年のスマホは火花と共に真っ二つになって少年の手から弾け飛んだ。
それは、衝撃音が聞こえたのとほぼ同時で、少年達三人は衝撃音に反応する時間すら与えられなかった。
スマホが壊れた瞬間、少年はその衝撃音の出所は弾け飛んだスマホからかと思った。だが『そうではない……』とすぐに分かった。
何故なら、スマホが割れた音とは違う衝撃音が少年の右方向から確かに聞こえたからだ。そして、更に察する。『その衝撃音と共に飛んできた"ソレ"が、スマホを残骸へと変え、スマホを持っていた自分の右手にも熱い痺れを残したんだ……』と。
「な……なんだボズ!!」
タマゴが反射的に驚きの声をあげるのと同時に、
「………ッ!!」
少年は衝撃の飛んできた方向を鋭い視線で睨んだ。
少年が睨む先にあるのは男の子が囚われていた部屋、リーダー格の男が居る筈の部屋だ。
「………」
「………」
タマゴと男の子も少年の視線に合わせて彼が睨む方向を見た。
「あ……!!」
「あぁ……」
彼らの目にも入った。ソイツの姿が。
こちらに向かって銃を構えるリーダー格の男の姿が。
「フハハハハハハハハッ!!!!」
高笑いとは正にこの事を言うのだろう。少年達が自分の存在に気が付くと、リーダー格の男は少年達三人を嘲笑う様な笑い声をあげた。
「何を楽しそうに喋っているんだ?」
男は男の子が囚われていた部屋のすぐ外に立っていた。体がまだふらつくのか壁に体を預けている。だが、銃を持つ両手はしっかりと三人に向かって狙いを定めていた。
少年達の居る場所から男までは15m以上は離れている。スポットライトの明かりが暗闇を薄らげていても工場の中はまだ薄暗い。その表情は確かには見えない。
だが、男から溢れ出る怒気なのだろうか、ねっとりとした熱風の様なモノが、まだ二月の冷たい空気を裂いて少年達に伝わってくる。男が猛犬の様に目を血走らせながら、少年達への抑えきれぬ怒りを爆発させようとしているのがその顔を見なくてもよく分かる。
「あ……あぁぁぁ……」
男の子はリーダー格の男の姿を見た瞬間に、腰を抜かしその場にへたり込んでしまった。
頭の中で悪夢の様な想像が一瞬にして渦巻いたのだろう。
リーダー格の男が自分達三人の頭を撃ち抜く姿が……
頭を撃ち抜かれる自分の断末魔が……
「ちきしょう……」
少年は悔いた。自分の甘さを。タマゴと合流した事で、油断してしまった自分の甘さを。
だが、少年は叫んだ。
「逃げろッ!!」
今は悔しさに打ちひしがれている暇は無い。少年は叫びながら両手を大きく広げ、男の子とタマゴを庇う格好で二人の前に進み出た。
「その子を連れて早くここから逃げるんだッ!」
少年はタマゴに向かって叫んだ。
「でもボズ!」
「でもじゃないッ!!」
しかし、タマゴはすぐには動けなかった。それも仕方ない。少年の要求通り、このまま彼を一人残してこの工場を去る事は明らかに危険だ。
― 相手はバケモノみたいな奴だボッズー! 一人になんてしたら絶対殺されてしまうボズ! そんな事……そんな事出来ないボズ! でも……
タマゴは全身を震わせ怯える男の子の姿を見た。
― でも……こんなに怯えていたんじゃ、この子一人で逃げてもらう事も不可能ボズ。じゃあどうすれば……俺が、俺が残るか……
タマゴは考えた。『自分がリーダー格の男の気を引きつけて、その隙に少年が男の子を抱えて逃げれば良い』と。しかし、タマゴの心に不安が襲う。
― ……しかし、それが本当に俺に出来るのかボズ? さっき俺は失敗したんだぞ……今度の失敗は絶対に許されないボズ! どうする!! どうすれば良いんだボッズー!!
少年のスマホは火花と共に真っ二つになって少年の手から弾け飛んだ。
それは、衝撃音が聞こえたのとほぼ同時で、少年達三人は衝撃音に反応する時間すら与えられなかった。
スマホが壊れた瞬間、少年はその衝撃音の出所は弾け飛んだスマホからかと思った。だが『そうではない……』とすぐに分かった。
何故なら、スマホが割れた音とは違う衝撃音が少年の右方向から確かに聞こえたからだ。そして、更に察する。『その衝撃音と共に飛んできた"ソレ"が、スマホを残骸へと変え、スマホを持っていた自分の右手にも熱い痺れを残したんだ……』と。
「な……なんだボズ!!」
タマゴが反射的に驚きの声をあげるのと同時に、
「………ッ!!」
少年は衝撃の飛んできた方向を鋭い視線で睨んだ。
少年が睨む先にあるのは男の子が囚われていた部屋、リーダー格の男が居る筈の部屋だ。
「………」
「………」
タマゴと男の子も少年の視線に合わせて彼が睨む方向を見た。
「あ……!!」
「あぁ……」
彼らの目にも入った。ソイツの姿が。
こちらに向かって銃を構えるリーダー格の男の姿が。
「フハハハハハハハハッ!!!!」
高笑いとは正にこの事を言うのだろう。少年達が自分の存在に気が付くと、リーダー格の男は少年達三人を嘲笑う様な笑い声をあげた。
「何を楽しそうに喋っているんだ?」
男は男の子が囚われていた部屋のすぐ外に立っていた。体がまだふらつくのか壁に体を預けている。だが、銃を持つ両手はしっかりと三人に向かって狙いを定めていた。
少年達の居る場所から男までは15m以上は離れている。スポットライトの明かりが暗闇を薄らげていても工場の中はまだ薄暗い。その表情は確かには見えない。
だが、男から溢れ出る怒気なのだろうか、ねっとりとした熱風の様なモノが、まだ二月の冷たい空気を裂いて少年達に伝わってくる。男が猛犬の様に目を血走らせながら、少年達への抑えきれぬ怒りを爆発させようとしているのがその顔を見なくてもよく分かる。
「あ……あぁぁぁ……」
男の子はリーダー格の男の姿を見た瞬間に、腰を抜かしその場にへたり込んでしまった。
頭の中で悪夢の様な想像が一瞬にして渦巻いたのだろう。
リーダー格の男が自分達三人の頭を撃ち抜く姿が……
頭を撃ち抜かれる自分の断末魔が……
「ちきしょう……」
少年は悔いた。自分の甘さを。タマゴと合流した事で、油断してしまった自分の甘さを。
だが、少年は叫んだ。
「逃げろッ!!」
今は悔しさに打ちひしがれている暇は無い。少年は叫びながら両手を大きく広げ、男の子とタマゴを庇う格好で二人の前に進み出た。
「その子を連れて早くここから逃げるんだッ!」
少年はタマゴに向かって叫んだ。
「でもボズ!」
「でもじゃないッ!!」
しかし、タマゴはすぐには動けなかった。それも仕方ない。少年の要求通り、このまま彼を一人残してこの工場を去る事は明らかに危険だ。
― 相手はバケモノみたいな奴だボッズー! 一人になんてしたら絶対殺されてしまうボズ! そんな事……そんな事出来ないボズ! でも……
タマゴは全身を震わせ怯える男の子の姿を見た。
― でも……こんなに怯えていたんじゃ、この子一人で逃げてもらう事も不可能ボズ。じゃあどうすれば……俺が、俺が残るか……
タマゴは考えた。『自分がリーダー格の男の気を引きつけて、その隙に少年が男の子を抱えて逃げれば良い』と。しかし、タマゴの心に不安が襲う。
― ……しかし、それが本当に俺に出来るのかボズ? さっき俺は失敗したんだぞ……今度の失敗は絶対に許されないボズ! どうする!! どうすれば良いんだボッズー!!