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作者: ビーグル
序章 ―始まりの日― 2
 ひとしきり遊んだ後、男の子は不思議な事を俺たちに言ったんだ。
 
「6年後の2月15日の夕方17時、空が割れ、世界に破滅をもたらす王が現れる」
 
 ……と。
 
 そして、もう一つ。
 
「私は君達に英雄になってもらいたい。君達に世界を救ってもらいたいんだ」
 
 ……と。
 
「何を言っているのだろう?」
 
 五人が五人共そう思った。
 
 だけど、男の子は言うんだ。
 
「私を信じて。今からみんなで私と手を繋いで目を瞑って下さい。君達にこれから起こる未来を教えます。だからお願い……世界を救えるのは君達しかいないのですから」
 
 そう言って俺の手を取った。
 
 不思議に思いながらも、俺は勇気の手を取り、勇気は愛の、愛は夢の、夢は優の、優は男の子の手を取り……俺達は円になった。
 
 
 
 それから…………目を瞑り、俺達は見た。
 
 
 
 雲一つない青空が割れ、空の中から目映く光る謎の飛行体が現れる瞬間を……現れた飛行体の数は無数……飛行体は輝ヶ丘を一瞬にして火の海にしてしまった。
 
 
 そして、俺は聞いた。
 
 
 母ちゃんや妹の泣き叫ぶ声を………いや、断末魔を、母ちゃん達だけじゃない、世界中の人々の死を目の前にした声を、俺は聞いた。
 
 
 そして、感じた。
 
 
 世界中を襲う飛行体の陰に潜む《悪の王》の存在を。その姿は見えなかった。でも、確かに俺は感じた。世界中の国々が破壊され、人類の全てが殺戮される………そんな残酷な光景を、悪の王が邪悪に笑って見ている………その姿を俺は確かに感じた…………だから、男の子が俺の手を離した時、俺は流れた涙を拭いながら決意したんだ。
 
 世界は俺が救う……って。
 
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