第15話 まだまだハルトは疑われる
雑用を頼まれた。僕は何も考えずにただ引き受けた。それを見た周囲から、あれもこれもと面倒事を押し付けるようになってきた。僕が引き受けると、皆ありがとうと言ってくれた。僕はもっと役立ちたいと思い続けた。
(もっと、感謝されたい……頑張らなきゃ)
人から頼まれる前に、自分から引き受けていくようになった。自分にできることなら、なんでもしてあげたくなった。時々煙たがられることはあったけど、僕は満足していた。
――
「それ、良かったら手伝うよ」
「え!? は、はい……」
「先生、この問題がわからなかったんですが……」
「ハルト、貴方はまたちゃんと聞いてな……いわけではなさそう、ですね」
「あいつはどうせ掃除当番サボって……ない!?」
「それどころかいつもより綺麗になってるんだけど!?」
教室ではハルトが真面目になったという話題ばかりになっていた。いかに去年まで悪目立ちしていたかが身に染みてわかる。僕としては前と同じことをしているだけなのだけれど、こうも驚かれるとどうにもむず痒い。
「ハルトのやつ、まさか本気で改心したってのか?」
「人格が誰かと入れ替わったと言われても信じてしまいそうだ……」
(ほぼ正解! って言ってあげたい)
ハルトであってハルトでない、というややこしい状態を説明するのは難しすぎるし理解されにくそうだ。少なくとも皆の知るハルトでは無くなったけれど、そんな宣言をしても胡散臭いだけだろう。
まだ僕を見て怖がったり嫌悪感を向けられる状況は変わっていない。信用というのは一度落ちると戻すのが大変なことは経験済みだ。
「……こないだ、図書室でリリア先輩とお話してたそうだけど」
「何か関係あるのかしらね?」
「気に入られるために猫被ってるとか? いやいや無駄でしょ」
(やっぱり、リリアの評判にも影響が及んじゃうよね……)
ゲームの時も、明確には表示されないものの周囲からの評判は一定以上を保つ必要があった。評判が悪いとヒーローからの好感度は上がりにくくなるため、ヒーローと会っていない時でも行いを気を付けなくてはならない。
(……ゲームじゃそもそもハルトに会いに行くって選択肢が無かったよね)
リリアの邪魔をしないように大人しく生きると僕は決めている。そのために、この学園生活を普通に大人しく生きていく必要がある。
そんな矢先、僕の予定を一気に狂わせる出来事が起こった。
「ハルト君はこのクラスだったのですね」
「リリアさん!? 何でここに?」
僕の席の前に、リリアさんが立っていた。わざわざ中等部の棟まで来て僕を探していたらしい。噂の編入生があのハルトを訪ねてきたために、クラスの全員がリリアさんを見て驚愕することとなった。
「その、相談したいことがありまして……お時間を頂きたいのですが」
「わ、わかりました! とりあえずここじゃアレだから移動しましょう!」
「アレ……? わ、わかりました」
足早にリリアの背中を押して教室を出る。僕の穏便な生活がいきなり崩れ去ってしまったな、という喪失感を抱えながら、空気がどよめき始めた教室を後にして、二人で落ち着いて相談が出来そうな場所を探し始めた。
(もっと、感謝されたい……頑張らなきゃ)
人から頼まれる前に、自分から引き受けていくようになった。自分にできることなら、なんでもしてあげたくなった。時々煙たがられることはあったけど、僕は満足していた。
――
「それ、良かったら手伝うよ」
「え!? は、はい……」
「先生、この問題がわからなかったんですが……」
「ハルト、貴方はまたちゃんと聞いてな……いわけではなさそう、ですね」
「あいつはどうせ掃除当番サボって……ない!?」
「それどころかいつもより綺麗になってるんだけど!?」
教室ではハルトが真面目になったという話題ばかりになっていた。いかに去年まで悪目立ちしていたかが身に染みてわかる。僕としては前と同じことをしているだけなのだけれど、こうも驚かれるとどうにもむず痒い。
「ハルトのやつ、まさか本気で改心したってのか?」
「人格が誰かと入れ替わったと言われても信じてしまいそうだ……」
(ほぼ正解! って言ってあげたい)
ハルトであってハルトでない、というややこしい状態を説明するのは難しすぎるし理解されにくそうだ。少なくとも皆の知るハルトでは無くなったけれど、そんな宣言をしても胡散臭いだけだろう。
まだ僕を見て怖がったり嫌悪感を向けられる状況は変わっていない。信用というのは一度落ちると戻すのが大変なことは経験済みだ。
「……こないだ、図書室でリリア先輩とお話してたそうだけど」
「何か関係あるのかしらね?」
「気に入られるために猫被ってるとか? いやいや無駄でしょ」
(やっぱり、リリアの評判にも影響が及んじゃうよね……)
ゲームの時も、明確には表示されないものの周囲からの評判は一定以上を保つ必要があった。評判が悪いとヒーローからの好感度は上がりにくくなるため、ヒーローと会っていない時でも行いを気を付けなくてはならない。
(……ゲームじゃそもそもハルトに会いに行くって選択肢が無かったよね)
リリアの邪魔をしないように大人しく生きると僕は決めている。そのために、この学園生活を普通に大人しく生きていく必要がある。
そんな矢先、僕の予定を一気に狂わせる出来事が起こった。
「ハルト君はこのクラスだったのですね」
「リリアさん!? 何でここに?」
僕の席の前に、リリアさんが立っていた。わざわざ中等部の棟まで来て僕を探していたらしい。噂の編入生があのハルトを訪ねてきたために、クラスの全員がリリアさんを見て驚愕することとなった。
「その、相談したいことがありまして……お時間を頂きたいのですが」
「わ、わかりました! とりあえずここじゃアレだから移動しましょう!」
「アレ……? わ、わかりました」
足早にリリアの背中を押して教室を出る。僕の穏便な生活がいきなり崩れ去ってしまったな、という喪失感を抱えながら、空気がどよめき始めた教室を後にして、二人で落ち着いて相談が出来そうな場所を探し始めた。