残酷な描写あり
R-15
白紙の頁:眺める少女
——融和の国。
あらゆる種族の異端者たちが辿り着く、天使が作りたもうた異端者のための国。種族の垣根を越え、互いを受け入れ、新たな種を芽吹かせていく場所である。かつては人間と呼ばれる種族が猛威を振い、彼らの苗床となっていたが、今は異端の女王の統治によってかつての繁栄を取り戻しつつあった。
城下町の一角に新しく建設された図書館の最上階にある立ち入り禁止エリアで、少女が大きな本を広げてそれと睨めっこをしていた。周囲には四角く切り取られた動く景色たちが世界を映し続けている。その奥にはそれを記録した本を収納する棚がずらりと並んでいた。
少女はずっとずっと同じ姿勢で、本をじいっと見つめている。しかし、本にも変化がなかった。少女によって捲られることもないからだ。
そもそも、本のページには何も書かれてはいなかった。空白のページを、少女は長い長い時間見つめているだけなのである。
異端の女王によって救い出され、角のある女性にそれを受け取ってから、一日の大半を少女はそんなことに費やしている。
理由は、少女自身にもわかっていない。
そうしていなければいけない、そんな気がしただけ。
空白を埋めるように、ずっとずっと同じことを繰り返しながら、来たるべき時を彼女は待ち続けている。
彼女は、人間だった。
今では純血は存在しないとされる、人間だったのである。
そんな彼女の瞳が、色彩に溢れる輝きを宿すことすらも、彼女自身は知らなかった。
あらゆる種族の異端者たちが辿り着く、天使が作りたもうた異端者のための国。種族の垣根を越え、互いを受け入れ、新たな種を芽吹かせていく場所である。かつては人間と呼ばれる種族が猛威を振い、彼らの苗床となっていたが、今は異端の女王の統治によってかつての繁栄を取り戻しつつあった。
城下町の一角に新しく建設された図書館の最上階にある立ち入り禁止エリアで、少女が大きな本を広げてそれと睨めっこをしていた。周囲には四角く切り取られた動く景色たちが世界を映し続けている。その奥にはそれを記録した本を収納する棚がずらりと並んでいた。
少女はずっとずっと同じ姿勢で、本をじいっと見つめている。しかし、本にも変化がなかった。少女によって捲られることもないからだ。
そもそも、本のページには何も書かれてはいなかった。空白のページを、少女は長い長い時間見つめているだけなのである。
異端の女王によって救い出され、角のある女性にそれを受け取ってから、一日の大半を少女はそんなことに費やしている。
理由は、少女自身にもわかっていない。
そうしていなければいけない、そんな気がしただけ。
空白を埋めるように、ずっとずっと同じことを繰り返しながら、来たるべき時を彼女は待ち続けている。
彼女は、人間だった。
今では純血は存在しないとされる、人間だったのである。
そんな彼女の瞳が、色彩に溢れる輝きを宿すことすらも、彼女自身は知らなかった。