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作者: konoyo
R-15
涙の温度
 死のなにが怖いというものでもない。死んだらあたしはただのたんぱく質の塊になるだけであろう。死の瞬間も痛いとか苦しいとかは一瞬の感覚だろう。多少長く苦しむことがあってもそれは病気や怪我のせいであり、死があたしに痛みを与えるわけではないのだ。

 あたしは死が怖ろしい。それはきっとあたしだけではなく全ての人間が持つ感性なのであろうけど。この世から消えてしまうことが怖ろしいというのともまた違う。なんなのだろう。この異常な、雷のような心拍は。いつもは聞こえない鼓動が途轍もない大きな音であたしを脅かした。涙が出た。流れる理由の分からない涙。寂しくもなく悲しくもないのに、ただ怖いだけで涙が出た。涙とはこんなに冷たいものだっただろうか。
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