残酷な描写あり
第百十七話「決着」
任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス
止められなかった。邪竜の復活を。今まで私はそのために生徒会長として、彼と同じネフティス推薦者になったというのに……
申し訳ございません、ホウジョウさん。私達では力及ばず、彼の復活を許してしまいました……
◆ ◆ ◆
西暦2004年4月 ネフティス本部――
そう、私――ベディヴィエル・レントは昨年のこの日にアルスタリア高等学院に唯一のネフティス推薦枠として入学した。魔法すら使えず、剣の腕しか取り柄の無かったこんな私を推薦してくれた人こそ、ホウジョウさんという人だった。
ホウジョウさんは当時ネフティスNo.8だったが、それでも将来入るであろうネフティス側から推薦を貰えるのはとても嬉しかった。だから私はホウジョウさんのために強くなって、もっと剣の腕を磨いて、共に任務を遂行して人類を守ろうと誓った。
それから剣術では学園一となり、ある程度の魔法も習得できるようになった。その成果を認められ、私は学園最強を象徴する生徒会の会長に任命された。ホウジョウさんにその事を報告すると、とても喜んでくださった。
しかし、生徒会長に任命されて、新しい後輩が入ってくる年に近づいてきた際に、私はホウジョウさんにこんな事を言われた。
「ベディヴィエル。今年の新入生は問題児達が入ってくる」
「イレギュラー……?」
「それもネフティス総長含むトップ3からの推薦でだ。その中でも特に危険なのはこの黒髪の青年……」
「えっと……『オロチ・クロガミ』?」
「そうだ、この黒神大蛇という人間……いや、復讐者は過去に数多の人を殺している。理不尽に、無慈悲にな。その名の通り厄災竜……ヤマタノオロチのようにな」
「っ――!!」
この時の私は、黒神大蛇という存在が恐怖以外の何者でも無かった。だが、本当の恐怖はここからだった。
「ベディヴィエル。入学してきてすぐに彼をここに呼び、殺せ。あの人殺しは生かしてはいけないのだ」
「私が……ですか」
「君にしか頼めないのだ。同じ生徒会の仲間を利用しても構わない。どんな手を使ってでもいい。黒神大蛇を殺すのだ」
どんな手を使ってでもいい……そう言われた途端、私は生徒会長の権限を利用し、この剣血喝祭を5年ぶりに開催させた。全ては彼を殺すために。ホウジョウさんとの夢を叶えるために――
◆ ◆ ◆
「くっ……!」
青白く光った血の盾が壊れるのと同時に巨大な光が消えた。爆発したような強い衝撃波が二人を吹き飛ばす。
「黒神大蛇!! この時を待っていた……覚悟しろっ!!」
「残念だが……お前に俺は殺せない!」
双方共に同じ速度で突進し、剣を交じらせ合う。火花が散らせながら互いに睨み合う。
「ちっ……!」
「ふっ――!」
周囲を飛び交う青白い光を避けながら、ベディヴィエルは俺に剣を振り続ける。テンポよく迫る剣撃を確実に避けては受け流し、斬り上げを避けてすぐに左足でベディヴィエルの腹部に思い切り蹴りを入れる。
「うぐっ……!」
「はぁっ!」
力強く地を蹴り、左下から首めがけて斬り上げる。ギリギリのところで避けられるも、切っ先がベディヴィエルの鎧に傷をつけた。
「ちっ……」
「さっきまでの余裕な表情はどこいった、ベディヴィエル。もっと笑えよ、楽しめよ……お祭りなんだろっ!!」
刀身に青白いエフェクトの代わりに黒い影を纏わせた反命剣を後ろに構え、再び突進する。距離を一気に詰められたベディヴィエルは咄嗟に聖剣を構え、受け流す姿勢をとる。
「君の技は読めている……!」
「読めてるなら……全部避けられるよなぁっ!!」
威力を上げるために一回転して遠心力をつけてから『最終之剣』の初撃を入れる。だが言葉通り、ベディヴィエルは的確に初撃を受け流す。その隙に青白い光と化した無数の血の刃がベディヴィエルに襲いかかる。
「くっ……!」
「おいどうした……剣筋が鈍ってきているぞ!」
二撃、三撃……と確実に弾かれる。だが、攻撃を弾く度に剣を振る速度が遅くなっていく。
「おおおおおおおお!!!!」
ようやく一撃がベディヴィエルに命中し、鎧から鮮血が吹き出す。影を纏った斬撃は更に容赦なく速度を増し、周囲を飛び交う光と共に全方向から攻撃を仕掛ける。
「常夏の血祭りなんだからよぉ……もっとトロピカってくれねぇとなああっ!!」
背後から斬りかかると同時に全身を捻って回転させる。刹那、周囲の光と剣に纏った影が回転に合わせて螺旋状の竜巻を発生させた。影はやがて青白い光と化し、ベディヴィエルを巻き込みながら斬り裂いた。
「なんだこの竜巻はっ……!?」
竜巻の風に合わせて俺はベディヴィエルの頭上まで飛び、とどめの一撃を決めるべく剣を引いて構える。すると竜巻は青白い刀身に集まり、無数の光が元の俺の血に戻っては刀身を真紅に彩る。
「おおおああああああ!!!!!」
迫る。重力で徐々に傷だらけのベディヴィエルとの距離が詰まる。ベディヴィエルはありったけの魔力を籠めた聖剣で俺の身体を突き刺す。それと同時に俺の剣はベディヴィエルの身体を穿つ。
「「おおおおおおおおおお!!!!!」」
双方、雄叫びを上げながら互いの胸部を剣で刺しながら落ちていく。そして地面に着いては、夜のハウステンボスに巨大な爆発と竜巻をもたらした。爆風で施設は吹き飛び、もはやスラムと化した。あの時のシンデレラ宮殿のように。
空から落ちた二人の姿が見えるまで、あらゆる時が止まった気がした――
遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス
止められなかった。邪竜の復活を。今まで私はそのために生徒会長として、彼と同じネフティス推薦者になったというのに……
申し訳ございません、ホウジョウさん。私達では力及ばず、彼の復活を許してしまいました……
◆ ◆ ◆
西暦2004年4月 ネフティス本部――
そう、私――ベディヴィエル・レントは昨年のこの日にアルスタリア高等学院に唯一のネフティス推薦枠として入学した。魔法すら使えず、剣の腕しか取り柄の無かったこんな私を推薦してくれた人こそ、ホウジョウさんという人だった。
ホウジョウさんは当時ネフティスNo.8だったが、それでも将来入るであろうネフティス側から推薦を貰えるのはとても嬉しかった。だから私はホウジョウさんのために強くなって、もっと剣の腕を磨いて、共に任務を遂行して人類を守ろうと誓った。
それから剣術では学園一となり、ある程度の魔法も習得できるようになった。その成果を認められ、私は学園最強を象徴する生徒会の会長に任命された。ホウジョウさんにその事を報告すると、とても喜んでくださった。
しかし、生徒会長に任命されて、新しい後輩が入ってくる年に近づいてきた際に、私はホウジョウさんにこんな事を言われた。
「ベディヴィエル。今年の新入生は問題児達が入ってくる」
「イレギュラー……?」
「それもネフティス総長含むトップ3からの推薦でだ。その中でも特に危険なのはこの黒髪の青年……」
「えっと……『オロチ・クロガミ』?」
「そうだ、この黒神大蛇という人間……いや、復讐者は過去に数多の人を殺している。理不尽に、無慈悲にな。その名の通り厄災竜……ヤマタノオロチのようにな」
「っ――!!」
この時の私は、黒神大蛇という存在が恐怖以外の何者でも無かった。だが、本当の恐怖はここからだった。
「ベディヴィエル。入学してきてすぐに彼をここに呼び、殺せ。あの人殺しは生かしてはいけないのだ」
「私が……ですか」
「君にしか頼めないのだ。同じ生徒会の仲間を利用しても構わない。どんな手を使ってでもいい。黒神大蛇を殺すのだ」
どんな手を使ってでもいい……そう言われた途端、私は生徒会長の権限を利用し、この剣血喝祭を5年ぶりに開催させた。全ては彼を殺すために。ホウジョウさんとの夢を叶えるために――
◆ ◆ ◆
「くっ……!」
青白く光った血の盾が壊れるのと同時に巨大な光が消えた。爆発したような強い衝撃波が二人を吹き飛ばす。
「黒神大蛇!! この時を待っていた……覚悟しろっ!!」
「残念だが……お前に俺は殺せない!」
双方共に同じ速度で突進し、剣を交じらせ合う。火花が散らせながら互いに睨み合う。
「ちっ……!」
「ふっ――!」
周囲を飛び交う青白い光を避けながら、ベディヴィエルは俺に剣を振り続ける。テンポよく迫る剣撃を確実に避けては受け流し、斬り上げを避けてすぐに左足でベディヴィエルの腹部に思い切り蹴りを入れる。
「うぐっ……!」
「はぁっ!」
力強く地を蹴り、左下から首めがけて斬り上げる。ギリギリのところで避けられるも、切っ先がベディヴィエルの鎧に傷をつけた。
「ちっ……」
「さっきまでの余裕な表情はどこいった、ベディヴィエル。もっと笑えよ、楽しめよ……お祭りなんだろっ!!」
刀身に青白いエフェクトの代わりに黒い影を纏わせた反命剣を後ろに構え、再び突進する。距離を一気に詰められたベディヴィエルは咄嗟に聖剣を構え、受け流す姿勢をとる。
「君の技は読めている……!」
「読めてるなら……全部避けられるよなぁっ!!」
威力を上げるために一回転して遠心力をつけてから『最終之剣』の初撃を入れる。だが言葉通り、ベディヴィエルは的確に初撃を受け流す。その隙に青白い光と化した無数の血の刃がベディヴィエルに襲いかかる。
「くっ……!」
「おいどうした……剣筋が鈍ってきているぞ!」
二撃、三撃……と確実に弾かれる。だが、攻撃を弾く度に剣を振る速度が遅くなっていく。
「おおおおおおおお!!!!」
ようやく一撃がベディヴィエルに命中し、鎧から鮮血が吹き出す。影を纏った斬撃は更に容赦なく速度を増し、周囲を飛び交う光と共に全方向から攻撃を仕掛ける。
「常夏の血祭りなんだからよぉ……もっとトロピカってくれねぇとなああっ!!」
背後から斬りかかると同時に全身を捻って回転させる。刹那、周囲の光と剣に纏った影が回転に合わせて螺旋状の竜巻を発生させた。影はやがて青白い光と化し、ベディヴィエルを巻き込みながら斬り裂いた。
「なんだこの竜巻はっ……!?」
竜巻の風に合わせて俺はベディヴィエルの頭上まで飛び、とどめの一撃を決めるべく剣を引いて構える。すると竜巻は青白い刀身に集まり、無数の光が元の俺の血に戻っては刀身を真紅に彩る。
「おおおああああああ!!!!!」
迫る。重力で徐々に傷だらけのベディヴィエルとの距離が詰まる。ベディヴィエルはありったけの魔力を籠めた聖剣で俺の身体を突き刺す。それと同時に俺の剣はベディヴィエルの身体を穿つ。
「「おおおおおおおおおお!!!!!」」
双方、雄叫びを上げながら互いの胸部を剣で刺しながら落ちていく。そして地面に着いては、夜のハウステンボスに巨大な爆発と竜巻をもたらした。爆風で施設は吹き飛び、もはやスラムと化した。あの時のシンデレラ宮殿のように。
空から落ちた二人の姿が見えるまで、あらゆる時が止まった気がした――