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作者: Siranui
残酷な描写あり
第百九話「魔女を狩る死神」
 任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
 遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス


 2005年7月27日 剣血喝祭13日目――

 流石のネフティス推薦者兼特別区分生徒でさえも、この生徒会副会長の奥義には息の根を奪われたか。おまけにミスリア先生の弟も排除できた。なんて私は運の強い人なのだろうか。

「……ただ、結局は実力の差ね。いくら特別区分だろうとネフティス推薦だろうと、私には到底及ばないのよ。どれだけ才能があったとて、若手は所詮その程度なのよ」

 しかし、苦戦を強いられたのも確かだ。次からはもう味わないと誓い、カペラは再び両手を広げて奥義の構えを取る。

「次は……長崎ごと焼く。全てはこの時のため。なるつもりも無かった生徒会にわざわざ入り、副会長に立候補してベディヴィエルとかいうあんな女たらしとタッグを組んであげたのも全てはこのため……」

 ――もうは必要無いのよ。

「……亡霊は大人しく眠っていなさい!!」

 そして再び空間が歪み始めた刹那、歪み一つない一閃が空間を┃ほとばしった。

「えっ……?」

 突如痛みと共に左目が真っ暗になる。斬られた。左目を持ってかれた。痛い。軌道に沿って血が飛び散っていく。

「何で……」

 目の前に現れた謎の黒い影に思わず右目を見開く。かすみの如く覆う黒い影。そこから微かに揺らぐ漆黒の衣服の一部。思い当たるのは彼しかいなかった。いや、もはや彼では無いのかもしれない。1番適した言葉がこれしか浮かばなかった。

「……死神」

 途端、死神の右手が振り払われて霧が全身に取り込まれる。次第に姿が顕わになり、黒い短髪が風に揺れる。

「……悪くねぇ呼び名だな」

 言い終えたと同時に目の前から大蛇……いや、死神が消えた。黒い影がカペラの周囲を囲む。

「どこに隠れようと無駄……!」

 カペラは両手の指を鳴らし、空間を歪ませる。しかし、爆発する寸前に歪みが断ち斬られる。再び黒い影が飛び交いながら歪みの根源を確実に斬る。

「くっ……この! 死神め!!」
「そこまで言うならなってやるよ……死神になああああ!!!!」

 あまりに皮肉めいた言葉と共に慈悲無き連撃がカペラを襲う。必死に距離を取りながら爆裂魔法を唱えるも、全て読まれて避けられる。

「消えろ……消えろっ!!」

 ……爆発は直撃したら即死すると思った方がいい。確実に避けて距離を詰めるしかないか。

 死神と化した英雄に無数の爆発が襲いかかるも、縦横無尽に駆け抜けては魔女との距離を詰める。

「――!!」
「くっ……!」

 速い。あまりにも速すぎて詠唱が追いつかない。風魔法で距離を加速させてるのにも関わらず、間合いが一瞬で詰められる。

「うらああっ!!」
「ぐっ……!」

 死神の右目から流れる血が更に殺気を醸し出す。あれは一体何なんだ。この動きと何か関係あるのか。

「おおおおおおおおああああああ!!!!」

 死神が叫びながら魔女を斬る。容赦なく、慈悲など知らずに。ただ大切なものが消え逝く運命を呪うかのように漆黒の魔剣を振り続ける。黒い影がその軌道に合わせて紅炎の如く舞う。

「うぐっ……がはっ」
「死ね……俺の望む未来にお前は邪魔だ」

 死神が上段に剣を振りかざす。そしてその勢いのまま振り下ろした。




 ――その時、漆黒の剣とは正反対なる閃光がカペラの前に入り込んで受け止めた。

「ちっ……」
「よくもカペラをここまでやってくれたな……大蛇君」

 ……くそっ、最悪の展開だ。ベディヴィエ ルが入って来やがった! クロムもまだ意識を取り戻してない中、一人で生徒会長と副会長を相手にしないといけないのか。
 これはかなり骨が折れるぞ。一瞬でも気を抜いたら死んでしまう。

「死神と化した英雄は、このベディヴィエルが断ち斬ってみせよう」
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