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作者: Siranui
残酷な描写あり
第百七話「無謀な賭け」
 任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
 遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス


「うおおおおおお!!!!」
「くっ、その一撃に賭けた所で結果は変わらない!」
「邪魔はさせませんよ、副会長のカペラさん」
「……ミスリア先生の弟如きっ!」

 魔女……カペラはクロムの攻撃を避けつつ距離を取る。その後両手を開き、指先に魔力を籠める。両手の指から小さな魔力玉が精製される。

「生徒会副会長として、1年生なんかに負けるわけにはいかない……! 燃え尽きろ、『却空裂星壊スターダムゼノ』!!」
「大蛇さん!」
「うおおおおおおおお!!!」

 ちっ、副会長の奴めこんな時に奥義を使ってくるのかよ。ハウステンボスごと破壊する気か!
 ……当然そんな事させねぇよ。

 俺は更に魔剣に力を入れ、刀身を長くする。後はあの時教会の建物を破壊したように、空中で回転して勢いをつけて奥義を放たれる前に斬るまで。

「おおああああああ!!」
「はあああっ!!!」
 カペラの魔法と俺の斬撃がほぼ同時に放ち、相殺した。互いに魔力のぶつかり合いによってハウステンボス内で大爆発が発生し、俺達は互いに後方に吹き飛ばされる。

「くっ……ぅ……」
「……残念ね、そう来ると思って一つしか使ってないの。残りの魔力玉は私の指に九個。これで分かったでしょう。貴方のはいぼくは最初から決められていたの。そう……とでも言っておこうかしら」

 魔女が徐々にこちらに近づいてくる。俺は今の一撃に全てを賭けた代償からか、全身に全く力が入らない。

「さよなら、『黒き英雄』。観念して私の魔法の塵となりなさい」

 そして、左手の小指を除いた九個の魔力玉が一気に放たれた。刹那、魔力玉が空間内で分裂しては増殖し、無数に広がった。

「大蛇さん!」
「呼んでも無駄だから、さっさと死にな」

 刹那、空間が大きく歪みだした。それに合わせて無数に広がる魔力玉が立て続けに爆発を起こしていった。

「くっ……!」

 クロムが俺の元に向かおうとするも、目の前で爆発が起きたせいで前に踏み込む事すら出来ない。

「うっ……このままでは私も大蛇さんもっ……!!」

 カペラは表情一つも変えずに俺達が爆発に飲まれる様を見る。まるで俺達の死を確信したかのような、そんな未来を見つめた眼差しを向けていた。

「……」
『主様……主様!!』

 右手に持つ魔剣から声が聞こえるも、爆発によって身体ごと掻き消された。

 アドベンチャーエリアどころか、ハウステンボス一帯がカペラの爆裂魔法によって甚大な被害を受けてしまった。今日そこで楽しむ客も近くの建物や外に逃げ込んだりと慌てふためいていた。
 この自分勝手な祭典で理不尽に命を落とした者もいる。所々で血を流しながら焼けた身体がゴロゴロと転がっていた。

「……これが貴方の運命。抗おうなんて最初から無理なのよ。我々人間如きは神の予言にすら抗えない惨めな存在なのよ……そうですよね、

 焼け落ちたパークと二人の英雄を見つめた後、カペラは黒く染まった佐世保の街を歩き出した。
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