残酷な描写あり
第百三話「守りきった笑顔」
任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス
2005年 7月23日 剣血喝祭9日目
長崎県 佐世保市――
――あぁ、何度この目に遭わなきゃいけねぇんだろうか。何か戦いが起きる度に死にかけてねぇか、俺。まぁ雑魚を無双するっていう弱い者いじめみてぇな事して優越感に浸るよりは断然マシだけどよ……
だけど何だあのバケモンは。全身真っ黒に染めやがって。おまけにパワーもアルスタリアの生徒とは到底思えないくらいだったぜ。
普通あんだけ強い生徒いたらわざわざこんなとこに入学してくる必要ねぇだろうに。
いや、待てよ。もしやこの祭りのためだけに来たのだとしたら……奴の真の目的は――
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
「うぐっ……!?」
突然身体を誰かに揺らされ、思わず目を開ける。そこには先程俺が安全な所に避難させた少女が大粒の涙をポタポタと零しながら俺を見ていた。
「良がっだああっ……死んじゃったかど思っだがら……ぐすっ」
……ちっ、何女の子泣かせてんだ俺。これじゃああのバケモンの事言えなくなるだろ。
何とか泣き止ませようと、俺は少女の頭を優しく撫でた。
「……わりぃ、心配かけちまったな。今からお前の親んとこつれてやるから……もうちょい待ちやがれ……」
心配させまいと何とか笑顔を作り、ゆっくりと身体を起こす。しかし、身体にとてつもない違和感を覚えたと同時に左肩に激痛が走った。
「――!?」
無い。左腕が無い。もしかしてさっきの激突で持ってかれたのだろうか。
「お兄ちゃんっ……!!」
「へっ、死んじゃいねぇから何てことねぇよ。とりあえず行くぞ……」
刀を杖代わりに立ち上がり、鞘に収めて空いた右手で少女の小さな手を握って歩き始めた。
「へへっ、お兄ちゃんの手……大きくてっ……あったかい」
「そうかい。まぁまだ嬢ちゃんは小せぇからな。これからもっと食って寝て元気に過ごしてりゃ大きくなるぜ」
少女はにっこりと俺の方を見て笑った。思わず俺も口元が綻んでしまう。
そうしている内に目の前に人影が現れ、少女の名を呼んでいた。
「甘菜! 良かった……無事で良かった……!!」
「ママ……!!」
少女――甘菜は母親の姿を確認するとすぐに抱きついた。無事で安堵したのか、甘菜も母親も泣きながら抱きついていた。そんな姿を見て、俺もほっと一息つく。
しばらく抱きしめた後、母親が俺の方を見て頭を下げた。
「あの……本当にありがとうございます! 甘菜を助けてくださって……本当に……!」
「あぁいや、俺は小さい女の子はほっとけねぇだけでって…………」
言い終える途中、突然頭がクラクラしだしてそのまま倒れた。
「あ、あの……大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
……へっ、嬢ちゃんの笑顔見れたんだ。それを俺がこの手でバケモンから守ったんだ。これだけで十分ってな……ったく、俺もここまでとはな。
――でっかく、元気に育てよ、嬢ちゃん……
遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス
2005年 7月23日 剣血喝祭9日目
長崎県 佐世保市――
――あぁ、何度この目に遭わなきゃいけねぇんだろうか。何か戦いが起きる度に死にかけてねぇか、俺。まぁ雑魚を無双するっていう弱い者いじめみてぇな事して優越感に浸るよりは断然マシだけどよ……
だけど何だあのバケモンは。全身真っ黒に染めやがって。おまけにパワーもアルスタリアの生徒とは到底思えないくらいだったぜ。
普通あんだけ強い生徒いたらわざわざこんなとこに入学してくる必要ねぇだろうに。
いや、待てよ。もしやこの祭りのためだけに来たのだとしたら……奴の真の目的は――
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
「うぐっ……!?」
突然身体を誰かに揺らされ、思わず目を開ける。そこには先程俺が安全な所に避難させた少女が大粒の涙をポタポタと零しながら俺を見ていた。
「良がっだああっ……死んじゃったかど思っだがら……ぐすっ」
……ちっ、何女の子泣かせてんだ俺。これじゃああのバケモンの事言えなくなるだろ。
何とか泣き止ませようと、俺は少女の頭を優しく撫でた。
「……わりぃ、心配かけちまったな。今からお前の親んとこつれてやるから……もうちょい待ちやがれ……」
心配させまいと何とか笑顔を作り、ゆっくりと身体を起こす。しかし、身体にとてつもない違和感を覚えたと同時に左肩に激痛が走った。
「――!?」
無い。左腕が無い。もしかしてさっきの激突で持ってかれたのだろうか。
「お兄ちゃんっ……!!」
「へっ、死んじゃいねぇから何てことねぇよ。とりあえず行くぞ……」
刀を杖代わりに立ち上がり、鞘に収めて空いた右手で少女の小さな手を握って歩き始めた。
「へへっ、お兄ちゃんの手……大きくてっ……あったかい」
「そうかい。まぁまだ嬢ちゃんは小せぇからな。これからもっと食って寝て元気に過ごしてりゃ大きくなるぜ」
少女はにっこりと俺の方を見て笑った。思わず俺も口元が綻んでしまう。
そうしている内に目の前に人影が現れ、少女の名を呼んでいた。
「甘菜! 良かった……無事で良かった……!!」
「ママ……!!」
少女――甘菜は母親の姿を確認するとすぐに抱きついた。無事で安堵したのか、甘菜も母親も泣きながら抱きついていた。そんな姿を見て、俺もほっと一息つく。
しばらく抱きしめた後、母親が俺の方を見て頭を下げた。
「あの……本当にありがとうございます! 甘菜を助けてくださって……本当に……!」
「あぁいや、俺は小さい女の子はほっとけねぇだけでって…………」
言い終える途中、突然頭がクラクラしだしてそのまま倒れた。
「あ、あの……大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
……へっ、嬢ちゃんの笑顔見れたんだ。それを俺がこの手でバケモンから守ったんだ。これだけで十分ってな……ったく、俺もここまでとはな。
――でっかく、元気に育てよ、嬢ちゃん……