残酷な描写あり
第三十八話「少女の想い、そして共鳴(上)」
緊急任務:パンサーと名乗る怪盗を逮捕、シンデレラ宮殿の象徴「スタニッシュリング」を奪還
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
犠牲者:???
「『果てをも穿ちし逆鱗の花』」
右手を不良達めがけて翳した刹那、花吹雪の如く青白い無数の光が不良達を巻き込んで舞い上がった。
「Hé, c'est quoi cette tornade ...... !(な、何だこの竜巻は……!?)」
「N'ayez pas peur ! Je te pousserai à travers sur mon vélo, gorrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr !(怯えてんじゃねぇ! バイクで押し通すぞゴラァ!!)」
不良達が一斉にクラッチを踏みながら勢いよくバイクを走らせる。だが、バイクは全く動かない。咲き乱れる光の花嵐には一切通用しない。
「大人しく散っていけば良かったものをっ……!」
右手を横に振り払う。光の花は螺旋状に吹き荒れては、不良達の心臓を確実に穿つ。不良達は声も血も出せずにバタバタとその場に倒れる。大量の屍が出来た後、無数の光は俺の元へ戻ってふわふわと漂う。
今度こそ凪沙さんの加勢をしなくては……
見る限り凪沙さんはかなり苦戦している。というか追い込まれてるように見えた。どれほどの本気で戦ってるかは分からないが、一秒でも速く加勢して残りの不良を倒さなければ、後に面倒な事になる。
しかし、また予想だにしなかった事が俺を襲った。
花火が打ち上がるような高い音を立てながらこちらに何かが向かってきた。そう、バズーカの弾だった。
「おいおいあいつら正気かよ!」
また不良の増援か。……って、冗談じゃない。あれをこの遊具に落としてみろ。跡形も無くこの公園は消えるぞ。もしそうなれば俺だけでなく、凪沙さんにも被害が……
「させねぇよっ……!!」
巨大な銃弾に向かって右手を翳す。それに合わせて光が線状になって勢いよくバズーカ弾に向かって無数の細い穴を作る。
「……覆え」
先程のマシンガン同様爆発すると考え、バズーカ弾を光の球体で覆い尽くした。その後、予想通り大きな爆発音が光の中で鳴り響いた。
「うぐっ……!」
爆発による焼け野原状態は防げたものの、衝撃波までは防ぎきれずに俺は遊具の外に吹き飛ばされた。
「大蛇君っ!!」
凪沙さんも俺を呼ぶが、あちらも増援による不良達にせき止められる。
くそっ……、凪沙さんの方にも増援が来てたのか。本来なら助けに行きたいところだが……
爆発の衝撃で木の幹に背中をぶつけた痛みに苦しみながら立ち上がると、目の前に白いタスキをつけたオールバックの男が俺を睨みつけていた。
「Vous êtes le "héros noir" de la rumeur ?(お前が噂の『黒き英雄』だな?)」
……何言ってるのかさっぱり分からない。俺、一応日本人なんだが……
「Ces cheveux courts, noirs et soyeux, ces yeux noirs et cette peau blanche qui les contredisent. ...... Pas de doute, tu es le "Black Hero" ah !(そのサラサラの黒い短髪に黒い瞳、それらとは相反した白い肌……間違いねぇ、お前が『黒き英雄』かああ!!!)」
フランス語で何を言ってるか分からないまま、突如男は左手から剣を召喚した。
「っ――!?」
間違いない、神器だ。あの男は神器使いだ。ということはあの不良軍団の総長クラス……
「冗談はほどほどにしておけっ!」
勢いよく振り下ろされた男の大剣をとっさに右に転がって避ける。前に俺がいた場所は真っ二つに斬られていた。
なんて威力の大剣なんだ……これだと力勝負ではまず敵わないな。
「……来い!」
男とある程度距離をとり、その間にバズーカ弾を覆っていた光をこちらに集めて反命剣にする。しかし、目の前には既に男が大剣を振りかぶっていた。
「J'attendais ce moment avec impatience. ...... à ce moment !(楽しみにしてたぜぇ……この時をよおお!!!)」
鼓膜を一瞬で破壊するような甲高い音が公園中を包み込んだ。俺と男の剣の交点からは火花と共に稲妻を散らしている。
やはり一撃が重すぎる。下手をしたら俺の剣が折れてしまうかもしれない。それほど男の神器はその身体と比例して大きさも重さも段違いだ。
「C'est comme ça avec "Black Heroes" ! Vous devez me divertir davantage. ......(そんなもんかよっ、『黒き英雄』はよおお!! もっと俺を楽しませてくれよ……!)」
「さっきから何言ってるか……分かんねぇよ!!」
俺は剣が折れそうな勢いで男の大剣を全体重を乗せて何とか弾き返す。ギャリィィンッという嫌な音が響く。
しかし、ここで怯む訳にはいかない。左上に剣を振りかぶり、男の右肩から斬り裂く!!
「おおおおっ!!」
俺は吠えながら男に向かって刃を振るう。しかし、男は先程の俺の受け流しにびくともせず、余裕の笑みを浮かべながら右下から大剣を振り上げた。
再び火花が飛び散った。
「Oh, ...... n'est pas encore vraiment prêt pour cela. Ecoutez, il n'est pas nécessaire de faire des économies devant moi ! Viens et tue-moi, Héros Noir !(ほぉ……まだ本気を出し切れてねぇってとこか。いいか、俺の前に手抜きはいらねぇ! 俺を殺しに来い、『黒き英雄』!!)」
「おい……こんな時にフランス語のリスニングさせんじゃねぇ!!」
全体重を乗せて押し通そうとするも、中々大剣を押し崩せそうに無い。そう判断し、一旦大剣から離れる。俺が力を抜いたと判断したのか、男はそこから勢いよく大剣を斬り上げた。
ギリギリのところで避けた……はずだった。
「っ――!」
え……斬られたのか? 今どこにも触れてなかっただろ……
頭から左脇腹が一直線に斬られ、鮮血が飛び散った。幸い真っ二つにされてないので少しだけ安堵する。
「がっ……」
あの男の神器……一体どうなってるんだ。それが理解出来ない限り、まともにあいつとは戦えない。
「Tu avais l'habitude d'éviter cela facilement, mais tu es devenu si faible avant que je ne te voie !(昔のお前ならこれくらい簡単に避けれたのによぉ、見ねぇ内に随分弱くなっちまったなあ!!)」
左から大剣の剣閃が見え、俺はとっさに右から剣を振るが、簡単に反命剣は弾き飛ばされ、遊具の壁に突き刺さった。
「Hé, hé, hé, arrête, mec, je ne veux pas te voir faible, je ne veux pas t'imaginer faible. Je veux te voir fort alors. ......(おいおいやめてくれよぉ、俺は弱いお前を見たくねぇし想像したくねぇんだよ。あの時の強いお前を見てぇんだよ……)」
ザシュッと俺の左肩に一撃。
「Je vous ai dit que nous n'avions pas besoin d'être généreux, n'est-ce pas ? Ne me dites pas que vous ne pensiez pas que nous serions à court d'énergie avec ces voyous ?(出し惜しみはいらねぇって言ったよなあ? まさかとは言わねぇが、あのチンピラ共に力使い切っちまったのか?)」
また、俺の胸と腹を斬っては鮮血が飛ぶ。
「Je ne veux pas te traiter de délinquant, je ne veux pas te tuer comme ça. Tu es fort. Depuis, tu es ce type que j'ai toujours voulu être. ......(不良とはいい、お前をこうして殺すのは惜しいんだよ。お前は強い。あの時からずっと、この俺の憧れだった……)」
ザシュッ、ザシュッ……
もう男の声など聞こえなくなった。格が違いすぎた。今の俺ではあの男……不良軍団の総長に勝てない。あの並外れた体格と大剣からして分かっていた話だが。
「Montre-moi, montre-moi ta réalité ...... plus réelle que celle que tu as montrée à ces punks, mon héros qui m'a fait languir de toi, oh !(見せてくれよ、お前の本気を……あのチンピラ共に見せた以上の本気を俺に見せてくれよ、俺に憧れをくれたマイヒーローよおお!!!)」
ズバッ、ザシュッ……バシャァァァッ――
痛みと共にこの身が斬られる音だけが鮮明に聞こえる。
……あぁ、こんなに斬られたの正義と戦った時以来だな。
「大蛇君っ……! すぐ行くからっ……!!」
「Mademoiselle, vous savez ce qui arrivera si vous interférez avec le patron maintenant, n'est-ce pas ?(嬢ちゃ〜ん、今ボスの邪魔したらどうなるか分かってるよなぁ〜?)」
凪沙さんも不良達に止められて……あの感じだとまだ本気を出してないのか。パンサー戦にとっておいてるのか。
……ふっ、正反対で似たもの同士なんだな、俺達は。
死へと誘う冷たい風と共に、後ろから暖かい光が俺を照らした気がした。
『まだ死なないで』と言っているかのように――
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
犠牲者:???
「『果てをも穿ちし逆鱗の花』」
右手を不良達めがけて翳した刹那、花吹雪の如く青白い無数の光が不良達を巻き込んで舞い上がった。
「Hé, c'est quoi cette tornade ...... !(な、何だこの竜巻は……!?)」
「N'ayez pas peur ! Je te pousserai à travers sur mon vélo, gorrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr !(怯えてんじゃねぇ! バイクで押し通すぞゴラァ!!)」
不良達が一斉にクラッチを踏みながら勢いよくバイクを走らせる。だが、バイクは全く動かない。咲き乱れる光の花嵐には一切通用しない。
「大人しく散っていけば良かったものをっ……!」
右手を横に振り払う。光の花は螺旋状に吹き荒れては、不良達の心臓を確実に穿つ。不良達は声も血も出せずにバタバタとその場に倒れる。大量の屍が出来た後、無数の光は俺の元へ戻ってふわふわと漂う。
今度こそ凪沙さんの加勢をしなくては……
見る限り凪沙さんはかなり苦戦している。というか追い込まれてるように見えた。どれほどの本気で戦ってるかは分からないが、一秒でも速く加勢して残りの不良を倒さなければ、後に面倒な事になる。
しかし、また予想だにしなかった事が俺を襲った。
花火が打ち上がるような高い音を立てながらこちらに何かが向かってきた。そう、バズーカの弾だった。
「おいおいあいつら正気かよ!」
また不良の増援か。……って、冗談じゃない。あれをこの遊具に落としてみろ。跡形も無くこの公園は消えるぞ。もしそうなれば俺だけでなく、凪沙さんにも被害が……
「させねぇよっ……!!」
巨大な銃弾に向かって右手を翳す。それに合わせて光が線状になって勢いよくバズーカ弾に向かって無数の細い穴を作る。
「……覆え」
先程のマシンガン同様爆発すると考え、バズーカ弾を光の球体で覆い尽くした。その後、予想通り大きな爆発音が光の中で鳴り響いた。
「うぐっ……!」
爆発による焼け野原状態は防げたものの、衝撃波までは防ぎきれずに俺は遊具の外に吹き飛ばされた。
「大蛇君っ!!」
凪沙さんも俺を呼ぶが、あちらも増援による不良達にせき止められる。
くそっ……、凪沙さんの方にも増援が来てたのか。本来なら助けに行きたいところだが……
爆発の衝撃で木の幹に背中をぶつけた痛みに苦しみながら立ち上がると、目の前に白いタスキをつけたオールバックの男が俺を睨みつけていた。
「Vous êtes le "héros noir" de la rumeur ?(お前が噂の『黒き英雄』だな?)」
……何言ってるのかさっぱり分からない。俺、一応日本人なんだが……
「Ces cheveux courts, noirs et soyeux, ces yeux noirs et cette peau blanche qui les contredisent. ...... Pas de doute, tu es le "Black Hero" ah !(そのサラサラの黒い短髪に黒い瞳、それらとは相反した白い肌……間違いねぇ、お前が『黒き英雄』かああ!!!)」
フランス語で何を言ってるか分からないまま、突如男は左手から剣を召喚した。
「っ――!?」
間違いない、神器だ。あの男は神器使いだ。ということはあの不良軍団の総長クラス……
「冗談はほどほどにしておけっ!」
勢いよく振り下ろされた男の大剣をとっさに右に転がって避ける。前に俺がいた場所は真っ二つに斬られていた。
なんて威力の大剣なんだ……これだと力勝負ではまず敵わないな。
「……来い!」
男とある程度距離をとり、その間にバズーカ弾を覆っていた光をこちらに集めて反命剣にする。しかし、目の前には既に男が大剣を振りかぶっていた。
「J'attendais ce moment avec impatience. ...... à ce moment !(楽しみにしてたぜぇ……この時をよおお!!!)」
鼓膜を一瞬で破壊するような甲高い音が公園中を包み込んだ。俺と男の剣の交点からは火花と共に稲妻を散らしている。
やはり一撃が重すぎる。下手をしたら俺の剣が折れてしまうかもしれない。それほど男の神器はその身体と比例して大きさも重さも段違いだ。
「C'est comme ça avec "Black Heroes" ! Vous devez me divertir davantage. ......(そんなもんかよっ、『黒き英雄』はよおお!! もっと俺を楽しませてくれよ……!)」
「さっきから何言ってるか……分かんねぇよ!!」
俺は剣が折れそうな勢いで男の大剣を全体重を乗せて何とか弾き返す。ギャリィィンッという嫌な音が響く。
しかし、ここで怯む訳にはいかない。左上に剣を振りかぶり、男の右肩から斬り裂く!!
「おおおおっ!!」
俺は吠えながら男に向かって刃を振るう。しかし、男は先程の俺の受け流しにびくともせず、余裕の笑みを浮かべながら右下から大剣を振り上げた。
再び火花が飛び散った。
「Oh, ...... n'est pas encore vraiment prêt pour cela. Ecoutez, il n'est pas nécessaire de faire des économies devant moi ! Viens et tue-moi, Héros Noir !(ほぉ……まだ本気を出し切れてねぇってとこか。いいか、俺の前に手抜きはいらねぇ! 俺を殺しに来い、『黒き英雄』!!)」
「おい……こんな時にフランス語のリスニングさせんじゃねぇ!!」
全体重を乗せて押し通そうとするも、中々大剣を押し崩せそうに無い。そう判断し、一旦大剣から離れる。俺が力を抜いたと判断したのか、男はそこから勢いよく大剣を斬り上げた。
ギリギリのところで避けた……はずだった。
「っ――!」
え……斬られたのか? 今どこにも触れてなかっただろ……
頭から左脇腹が一直線に斬られ、鮮血が飛び散った。幸い真っ二つにされてないので少しだけ安堵する。
「がっ……」
あの男の神器……一体どうなってるんだ。それが理解出来ない限り、まともにあいつとは戦えない。
「Tu avais l'habitude d'éviter cela facilement, mais tu es devenu si faible avant que je ne te voie !(昔のお前ならこれくらい簡単に避けれたのによぉ、見ねぇ内に随分弱くなっちまったなあ!!)」
左から大剣の剣閃が見え、俺はとっさに右から剣を振るが、簡単に反命剣は弾き飛ばされ、遊具の壁に突き刺さった。
「Hé, hé, hé, arrête, mec, je ne veux pas te voir faible, je ne veux pas t'imaginer faible. Je veux te voir fort alors. ......(おいおいやめてくれよぉ、俺は弱いお前を見たくねぇし想像したくねぇんだよ。あの時の強いお前を見てぇんだよ……)」
ザシュッと俺の左肩に一撃。
「Je vous ai dit que nous n'avions pas besoin d'être généreux, n'est-ce pas ? Ne me dites pas que vous ne pensiez pas que nous serions à court d'énergie avec ces voyous ?(出し惜しみはいらねぇって言ったよなあ? まさかとは言わねぇが、あのチンピラ共に力使い切っちまったのか?)」
また、俺の胸と腹を斬っては鮮血が飛ぶ。
「Je ne veux pas te traiter de délinquant, je ne veux pas te tuer comme ça. Tu es fort. Depuis, tu es ce type que j'ai toujours voulu être. ......(不良とはいい、お前をこうして殺すのは惜しいんだよ。お前は強い。あの時からずっと、この俺の憧れだった……)」
ザシュッ、ザシュッ……
もう男の声など聞こえなくなった。格が違いすぎた。今の俺ではあの男……不良軍団の総長に勝てない。あの並外れた体格と大剣からして分かっていた話だが。
「Montre-moi, montre-moi ta réalité ...... plus réelle que celle que tu as montrée à ces punks, mon héros qui m'a fait languir de toi, oh !(見せてくれよ、お前の本気を……あのチンピラ共に見せた以上の本気を俺に見せてくれよ、俺に憧れをくれたマイヒーローよおお!!!)」
ズバッ、ザシュッ……バシャァァァッ――
痛みと共にこの身が斬られる音だけが鮮明に聞こえる。
……あぁ、こんなに斬られたの正義と戦った時以来だな。
「大蛇君っ……! すぐ行くからっ……!!」
「Mademoiselle, vous savez ce qui arrivera si vous interférez avec le patron maintenant, n'est-ce pas ?(嬢ちゃ〜ん、今ボスの邪魔したらどうなるか分かってるよなぁ〜?)」
凪沙さんも不良達に止められて……あの感じだとまだ本気を出してないのか。パンサー戦にとっておいてるのか。
……ふっ、正反対で似たもの同士なんだな、俺達は。
死へと誘う冷たい風と共に、後ろから暖かい光が俺を照らした気がした。
『まだ死なないで』と言っているかのように――