残酷な描写あり
第四幕 13 『鬼のいぬ間にガールズトーク』
結論から言うと、地下牢獄はハズレだった。
かつての地下牢獄は既にその役目を果たす事はなく、今では倉庫として使われているだけで、人が暮らしているような痕跡は何も無かった。
「誰も居ませんでしたわね…」
「そうですね…マクガレンは一体どこに居るんでしょうね?」
「…夜になれば会えるって事だし、今は一旦部屋に戻って報告する?」
「あと確認した方が良い場所は無いかしら…」
「他に目ぼしい場所も無いですけど…もう少し見回ってから戻りましょうか。受け身なのは気分良くないし、リタさんたちの話によると何らかの異能を持ってるみたいだから、不安要素は少しでも排除したい所ですが…」
「多分、精神干渉系の能力だよね?…どの程度効果があるかは分からないけど、夜になる前に[聖套]をかけておこうか」
「え?かなりの高等魔法じゃないですか…ケイトリンさん、凄いですね」
以前にリーゼさんも使っていた精神攻撃から護ってくれる魔法だ。
相当高度な魔法で並の魔道士では使えない。
…この人何者なんだろ?
「まあ、それなりにね…それよりも、もう少し見て回るんでしょ?」
「そうですわね…夜になる前に報告して方針も決めたいですし、さっさと見回ってしまいましょう」
そうして、その後も敷地内…建物を中心に見て回ったが、特に目ぼしい情報は得られなかった。
敷地は相当に広いので全てを見れたわけではないが、これ以上は時間の無駄と判断して部屋に戻ることにした。
「…と言う訳で、先代様たちの居場所は分かったけど、マクガレンの方は確認できませんでした」
部屋に戻って、邸を探索して得られた情報を報告し終わったところだ。
『そうですか…そうなると作戦を少し練り直す必要がありますね』
『今親玉が居ねぇなら、先に救出しちまえば良いんじゃねえか?』
「う~ん、出来ればそうしたいんだけど、昼間だと難しそうかな……がちがちに監視されてる訳じゃ無いんだけど、それとなく見張られてる感じはするんだよね」
「それに…この邸の者を縛り付けているのは、マクガレンに対する畏怖…恐怖…そういったもののようですので、マクガレンを何とかしなければ邸の者たちは敵対の立場を取らざるを得ないと思いますわ」
「だけど、彼らが面従腹背なのであれば、積極的にマクガレンに味方することも無いかも?」
『…救出に人員を割くよりも、マクガレン打倒に集中した方が良いのかもしれませんね。後は陽動と…念の為、最低限の護衛は回すとして…』
現状はマクガレンの居場所は分からないので、結局のところ夜になって接触してから行動開始ということに。
主力は対マクガレン戦に集中、残りの手勢で陽動と客室棟や先代様たちの部屋の警護に当たる。
『とにかく、マクガレンに接触したらすぐに連絡をするんだ。俺達が合流するまでは無茶はしないで逃げに徹するんだぞ。人数が揃ってないと印発動の時間も稼げないだろう』
「うん、分かってる。早く助けに来てね、カイト」
『ああ、任せろ』
頼りにしてるからね!
「はぁ~、色男はカッコいいね~」
「ティアさんだけじゃなくて、私たちも助けてくださいね」
『あ、ああ、もちろんだ』
やがて日は落ち、辺りはすっかり暗くなった。
もう夜と言っても良い時間だ。
部屋着ではなく、戦闘装備で帯剣もしてる。
お嬢様の『収納倉庫の指輪』に入れておいてもらっていたのだ。
さらに、ケイトリンさんに[聖套]もかけてもらってる。
夕食は体調が優れないと言って断った。
変なもの入れられても困るしね。
準備は万端。
さあ、いつでも来い!
と、意気込んでみたものの…
「ただ単に夜と言っても、長いですよね~」
「そうですわね。リタさんたちの話では深夜、皆が寝静まった時間帯みたいですし。気は抜けませんけど」
「じゃあ、ここはガールズトークと行きますか!」
「あら、良いですわね」
え?
ケイトリンさんそういうの好きなの?
てかお嬢様、気は抜けないんじゃなかったの?
「という事で…ティアは、あのカイトって人とデキてるんでしょ?」
「そうですわ」
「いやいや、まだ恋人というわけでは…」
「…まだそんな事言ってるんですの?キスまでしてるのに」
「おお~!お熱いねぇ…ひゅーひゅー!」
「何でお嬢様が知ってるんです!?」
リゼールの街では別の宿だったはず…
「もちろん、アネッサさんに聞きましたわ!」
ねぇーさぁーん!?
まさか、皆に言いふらしてないよね!?
「それはもう、微に入り細を穿つ説明に皆さん聞き入ってましたわ」
ねぇぇ~さぁぁ~~んっっ!!?
「しかし!ですわ!寝所を共にしてキスだけとは…やっぱりカイト様はヘタレだと思いますわ!」
「いやいやいや……別に二人きりじゃなくてミーティアも一緒だったし…」
「へえ…もう既に一緒に寝る仲なんだね?」
「い、いや、ミーティアが一緒じゃないとイヤって言うから仕方なく…ベッドは別々だったし!」
「あら?嫌々でしたの?」
「そ、そんなことは…無いけど…」
「ふむ…じゃあ、もし求められてたら…どうしてた?」
「へ?…………(ぷしゅ~)」
「…あら?どうやらキャパオーバーのようですわ。こんなに真っ赤になって…。やっぱりティアさんは可愛らしいですわ~」
あぅあぅ…
思わず想像したら…いっぱいいっぱいだよ。
しかし、まさかこんなガールズトークをするようになるとは。
もう吹っ切ったとは言え、こちとら前世男なんですけど…
女同士だからって、遠慮がないというか明け透けというか…
しかし、私だけいじられるのは不公平だ!
「もう!私の事ばかり!お二人はどうなんです!?」
「私は恋人なんていないしねぇ…まったく、ラブラブで羨ましいよ」
「ケイトさんなら引く手あまたのような気がしますけど」
美人だし話しやすいし、モテそうだけど。
「だといいんだけどね…お嬢様はどうなの?」
「私は婚約者がおりますわ」
「あ、そうでしたよね。どういう方なんです?」
以前に婚約者がいる事は聞いたけど、どんな方なのかは知らないんだよね。
お嬢様は侯爵令嬢なんだから、お相手も高位貴族だと思うけど。
「あら?お話してませんでしたっけ?このリッフェル領の隣、モーリス公爵家の嫡男で、リュシアン様と申しますの」
「ふぇ~、公爵家の方かぁ…そんな雲の上の人の婚約者とこんな話をしてるなんて不思議だねぇ」
「貴族ですとどうしても政略結婚が多いのですが…私達はお互いに望む相手と婚約できたので、まぁ、幸せですわね」
あ、珍しくちょっと照れてるね。
そう言う表情をすると、年相応のあどけなさが出て可愛らしい感じだね。
「お嬢様が好きになる人なら、素敵な方なんでしょうね」
「それはもう。優しくて格好良くて…何より私よりもお強いですし」
…重視するところが閣下と同じなんだね。
流石、血は争えないというか…
でも、お嬢様より強いなんて相当な猛者だね。
モーリス公爵家って別に武勇で鳴らすような家でもなかったと思うのだけど…
「で?お嬢様はそのリュシアン様とはどこまでいったのです?」
むふふ…ここは反撃しておかねば…!
「あら、私はまだ成人しておりませんし、普段会う機会もなかなかありませんし…お会いしてもお茶会とかですからね。期待に添えるようなことは何もありませんのよ」
…そっすか。
もう!
話が終わっちゃったじゃないの!
「ふふ、貴族同士のお付き合いなんて、結婚するまでそんなものですわ。ですからティアさんとカイト様の事は少し羨ましいのですし、お二人の仲が進むのは私事のように嬉しいのですよ」
「お嬢様…」
「なので!また進展があったら細大漏らさず報告してもらわねば!」
「…それは遠慮させてください」
「いいじゃないですか。最近は人目も憚らずにイチャついてるのですし」
「え!?そんな事ないですよ!」
「…いや、十分イチャついてたでしょ。あれでイチャついてないとか…ないわ~」
…マジか。
いけない…これは少し自重せねば…!
…そんなこんなで夜は更けていく。
マクガレンの接触はまだ無い。
かつての地下牢獄は既にその役目を果たす事はなく、今では倉庫として使われているだけで、人が暮らしているような痕跡は何も無かった。
「誰も居ませんでしたわね…」
「そうですね…マクガレンは一体どこに居るんでしょうね?」
「…夜になれば会えるって事だし、今は一旦部屋に戻って報告する?」
「あと確認した方が良い場所は無いかしら…」
「他に目ぼしい場所も無いですけど…もう少し見回ってから戻りましょうか。受け身なのは気分良くないし、リタさんたちの話によると何らかの異能を持ってるみたいだから、不安要素は少しでも排除したい所ですが…」
「多分、精神干渉系の能力だよね?…どの程度効果があるかは分からないけど、夜になる前に[聖套]をかけておこうか」
「え?かなりの高等魔法じゃないですか…ケイトリンさん、凄いですね」
以前にリーゼさんも使っていた精神攻撃から護ってくれる魔法だ。
相当高度な魔法で並の魔道士では使えない。
…この人何者なんだろ?
「まあ、それなりにね…それよりも、もう少し見て回るんでしょ?」
「そうですわね…夜になる前に報告して方針も決めたいですし、さっさと見回ってしまいましょう」
そうして、その後も敷地内…建物を中心に見て回ったが、特に目ぼしい情報は得られなかった。
敷地は相当に広いので全てを見れたわけではないが、これ以上は時間の無駄と判断して部屋に戻ることにした。
「…と言う訳で、先代様たちの居場所は分かったけど、マクガレンの方は確認できませんでした」
部屋に戻って、邸を探索して得られた情報を報告し終わったところだ。
『そうですか…そうなると作戦を少し練り直す必要がありますね』
『今親玉が居ねぇなら、先に救出しちまえば良いんじゃねえか?』
「う~ん、出来ればそうしたいんだけど、昼間だと難しそうかな……がちがちに監視されてる訳じゃ無いんだけど、それとなく見張られてる感じはするんだよね」
「それに…この邸の者を縛り付けているのは、マクガレンに対する畏怖…恐怖…そういったもののようですので、マクガレンを何とかしなければ邸の者たちは敵対の立場を取らざるを得ないと思いますわ」
「だけど、彼らが面従腹背なのであれば、積極的にマクガレンに味方することも無いかも?」
『…救出に人員を割くよりも、マクガレン打倒に集中した方が良いのかもしれませんね。後は陽動と…念の為、最低限の護衛は回すとして…』
現状はマクガレンの居場所は分からないので、結局のところ夜になって接触してから行動開始ということに。
主力は対マクガレン戦に集中、残りの手勢で陽動と客室棟や先代様たちの部屋の警護に当たる。
『とにかく、マクガレンに接触したらすぐに連絡をするんだ。俺達が合流するまでは無茶はしないで逃げに徹するんだぞ。人数が揃ってないと印発動の時間も稼げないだろう』
「うん、分かってる。早く助けに来てね、カイト」
『ああ、任せろ』
頼りにしてるからね!
「はぁ~、色男はカッコいいね~」
「ティアさんだけじゃなくて、私たちも助けてくださいね」
『あ、ああ、もちろんだ』
やがて日は落ち、辺りはすっかり暗くなった。
もう夜と言っても良い時間だ。
部屋着ではなく、戦闘装備で帯剣もしてる。
お嬢様の『収納倉庫の指輪』に入れておいてもらっていたのだ。
さらに、ケイトリンさんに[聖套]もかけてもらってる。
夕食は体調が優れないと言って断った。
変なもの入れられても困るしね。
準備は万端。
さあ、いつでも来い!
と、意気込んでみたものの…
「ただ単に夜と言っても、長いですよね~」
「そうですわね。リタさんたちの話では深夜、皆が寝静まった時間帯みたいですし。気は抜けませんけど」
「じゃあ、ここはガールズトークと行きますか!」
「あら、良いですわね」
え?
ケイトリンさんそういうの好きなの?
てかお嬢様、気は抜けないんじゃなかったの?
「という事で…ティアは、あのカイトって人とデキてるんでしょ?」
「そうですわ」
「いやいや、まだ恋人というわけでは…」
「…まだそんな事言ってるんですの?キスまでしてるのに」
「おお~!お熱いねぇ…ひゅーひゅー!」
「何でお嬢様が知ってるんです!?」
リゼールの街では別の宿だったはず…
「もちろん、アネッサさんに聞きましたわ!」
ねぇーさぁーん!?
まさか、皆に言いふらしてないよね!?
「それはもう、微に入り細を穿つ説明に皆さん聞き入ってましたわ」
ねぇぇ~さぁぁ~~んっっ!!?
「しかし!ですわ!寝所を共にしてキスだけとは…やっぱりカイト様はヘタレだと思いますわ!」
「いやいやいや……別に二人きりじゃなくてミーティアも一緒だったし…」
「へえ…もう既に一緒に寝る仲なんだね?」
「い、いや、ミーティアが一緒じゃないとイヤって言うから仕方なく…ベッドは別々だったし!」
「あら?嫌々でしたの?」
「そ、そんなことは…無いけど…」
「ふむ…じゃあ、もし求められてたら…どうしてた?」
「へ?…………(ぷしゅ~)」
「…あら?どうやらキャパオーバーのようですわ。こんなに真っ赤になって…。やっぱりティアさんは可愛らしいですわ~」
あぅあぅ…
思わず想像したら…いっぱいいっぱいだよ。
しかし、まさかこんなガールズトークをするようになるとは。
もう吹っ切ったとは言え、こちとら前世男なんですけど…
女同士だからって、遠慮がないというか明け透けというか…
しかし、私だけいじられるのは不公平だ!
「もう!私の事ばかり!お二人はどうなんです!?」
「私は恋人なんていないしねぇ…まったく、ラブラブで羨ましいよ」
「ケイトさんなら引く手あまたのような気がしますけど」
美人だし話しやすいし、モテそうだけど。
「だといいんだけどね…お嬢様はどうなの?」
「私は婚約者がおりますわ」
「あ、そうでしたよね。どういう方なんです?」
以前に婚約者がいる事は聞いたけど、どんな方なのかは知らないんだよね。
お嬢様は侯爵令嬢なんだから、お相手も高位貴族だと思うけど。
「あら?お話してませんでしたっけ?このリッフェル領の隣、モーリス公爵家の嫡男で、リュシアン様と申しますの」
「ふぇ~、公爵家の方かぁ…そんな雲の上の人の婚約者とこんな話をしてるなんて不思議だねぇ」
「貴族ですとどうしても政略結婚が多いのですが…私達はお互いに望む相手と婚約できたので、まぁ、幸せですわね」
あ、珍しくちょっと照れてるね。
そう言う表情をすると、年相応のあどけなさが出て可愛らしい感じだね。
「お嬢様が好きになる人なら、素敵な方なんでしょうね」
「それはもう。優しくて格好良くて…何より私よりもお強いですし」
…重視するところが閣下と同じなんだね。
流石、血は争えないというか…
でも、お嬢様より強いなんて相当な猛者だね。
モーリス公爵家って別に武勇で鳴らすような家でもなかったと思うのだけど…
「で?お嬢様はそのリュシアン様とはどこまでいったのです?」
むふふ…ここは反撃しておかねば…!
「あら、私はまだ成人しておりませんし、普段会う機会もなかなかありませんし…お会いしてもお茶会とかですからね。期待に添えるようなことは何もありませんのよ」
…そっすか。
もう!
話が終わっちゃったじゃないの!
「ふふ、貴族同士のお付き合いなんて、結婚するまでそんなものですわ。ですからティアさんとカイト様の事は少し羨ましいのですし、お二人の仲が進むのは私事のように嬉しいのですよ」
「お嬢様…」
「なので!また進展があったら細大漏らさず報告してもらわねば!」
「…それは遠慮させてください」
「いいじゃないですか。最近は人目も憚らずにイチャついてるのですし」
「え!?そんな事ないですよ!」
「…いや、十分イチャついてたでしょ。あれでイチャついてないとか…ないわ~」
…マジか。
いけない…これは少し自重せねば…!
…そんなこんなで夜は更けていく。
マクガレンの接触はまだ無い。