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作者: 小説書き123456
落語っぽく書いたら停止ですか?
『出禁』

どうも皆々様、このカクヨムの私のページへようこそいらっしゃいました。

 私、高進亭 申打(こうしんていしんだ」と申します。 
 
 皆様は最近腹の立つ事はございましたか? 私は心血込めて作った小説を最近更新停止になりましてね、いや~あれは本当に腹の立つ事でございます。

 ただまあ、こんなことを生業にしておりますから、ただ腹が立ったと言うばかりでは文字通り芸がございません。
 
 それなりの文筆家ならば抗議文なんてものを書くんでしょうが、今日はまあそんなような話である『出禁』というものを一席やりたいと思います。

 

 やいやいお師匠よ、聞いておくれよ。

 なんだい、藪から棒に、なにかあったっていうのかい?

 何かあったってもんじゃねえよ、この間オイラが苦労して作った作品が公開停止になっちまったんだよ。

 おやおやそれは大変だったね、でもお前さん、どうにもそそっかしいから規約にひっかかっちまったんじゃねえのか?

 い~や、しっかり性描写有りにしておいたよ。

 それならよほど内容が過激だったんだろうね、お前さんはすぐに無茶をするからね。

 いやいやそれもありえねえ。 何しろ直接触れるような行為はびた一文書いちゃいねえんだ。

 それはおかしいね~。 どんな内容なんだい?

 ああ、とある趣味で意気投合した男女が出会ったんだけんどね、女の方が年齢をさば読みしてやがったのよ、それじゃしょうがねえと男が命令や提案で女と自分の趣味を満足させるために指一本触れねえであれこれするってえくらいの他愛も無い話ですよ。

 相変わらず、よくわからんもんをつくってるねえ。 確かにそれだけなら他にももっと過激な物がありそうだねえ

 あたぼうよ、オイラ悔しくて悔しくてしょうがねえ。 こうなったらどこか大都会でいきなり服を脱いで抗議のブレイクダンスをしてやりてえくらいさ。

 抗議する前にご公儀の方々に捕まってしまいそうだねえ。まあお前さん、落ち着きなさいよ、そんなつまらねえことをしたってしょうがないだろう。 そんな公開停止になんかめげずにまた新しく書けばいいじゃないの。

 いやそういうわけにはいかねえんだ。 次にまた同じことやったらアカウント停止、つまり出入り禁止にされちまう可能性もあるからな。

 出入り禁止、つまり出禁ってやつだね、それは穏やかじゃないね。

 ああでもオイラ悔しくてよ。理由もいわないでいきなり停止なんてあんまりじゃねえか。

 それならお前さん、抗議文でも書いたらどうだい?

 公儀文? ご公儀みたいなもんでも書けっていうのかい?

 そんな堅苦しいもんなんか、誰も読みゃしないよ、違うよ、抗議文。 つまり私は今回のことがまったく納得いきませんってのを文章で書いてみたらってことさね。

 へえ、抗議文? それをかけって言うのかい?

 ああそうだよ、お前さんも文章を書くんだろ?文章のことは文章で返すってのが粋じゃないか。 

 なるほどね、しかし抗議文ってのはどう書けばいいんだい?

 お前さん、そんなのでよく小説なんて書いてるね~、お前さんが納得行かなくて、腹のたつ部分を書けばいいんだよ 

 なるほどね、ああ! でも師匠それは俺には難しいかもしれねえ

 おや、何が難しいってんだい?

 どうにもオイラ、育ちのせいか怒りが長続きしねえんだ。 どんなにむかっ腹が立っても、そのうちに別のところが立っちまってそれを静めているうちに何でむかついていたか忘れちまう。

 それはなんとも難儀だが、構うことはねえさ。 抗議文を書くのも、別のものを静めるのも同じくカクっていうんだ。 同時に書くカクしてみればいいじゃないか

 はあ~、師匠そんなもんかねえ。 わかった! オイラやってみるよ

 そうやって粗忽物のそいつは小汚い家に帰ってシコシコと抗議文を書き始めた。

 ところがそうしているうちに話の通りに別のところがズンズンと立ってしまう。

 いけねえ、いけねえ、またムスコが立ってきちまった。 まだ途中だってのによ、仕方ねえ、師匠の言うとおりにいっちょカイテみるかねえ。

 さて言葉通りシコシコとカイてみて、静めるとまた抗議文をシコシコ書きはじめる。
  
 こりゃいいぜ、この調子なら最後まで書けるってもんだぜ。

 ところがしばらくするとまた別のところが立ってきてしまう。

 おっとまた立ってきちまったぜ、しょうがねえもう一度カイてみるか。

 今度は一回目よりも時間は掛かったが、なんとか静められた。 そうしてまた抗議文を書きはじめる。

 ちょっとまたすると、また別のところが立ち上がる。

 そこで粗忽者、またカキはじめる。 

そしてまた書く。 

また立つのでまたまたカク書く。 

そしてまたまた書くカク。 

 この粗忽者には珍しく、根気良く書いてカイテ書いてカキ続けられた。

 明けて次の昼になると師匠が家にやってきた。

 昨日はああも言ったけどあいつ、ちゃんと書けてるのかね?

 心配した師匠が付き合いの長いがゆえの無遠慮無さで家にあがりこみ、粗忽者の部屋の扉を開ける。

 中には紙類がゴミ箱や床に散らばり、また異質な空気が充満している。
 
 おいおいどうしたことだい? これは。 あの粗忽者、本当に今回のことは腹にすえかねていたようだねえ。 こんなにカキ損じがあるじゃねえか。

 師匠、いまだ机に向かって忙しそうに右手を動かす粗忽者に声をかける。

 おいお前さん、抗議文は書けたのかい? 

 すると振り返った粗忽者、げっそりと痩せこけ、目の下に隈を拵えて、こう言った。

「ああ、もう出来ん」 ってな


 お後がよろしいようで。
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