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作者: 小説書き123456
あのシーンをバトル風に書いたら停止ですか?
「そ、それ…は」

 いつものように追い詰められた男の取り出したそれはそれはあまりにも無骨だった。

 灰色の先端は亀の甲羅のような形をしてブブブと細かく、でも無数に振動し続けている。

 威圧感にも似た音はそこから聞こえてきていた。

 強大なエネルギーを供給するためのコードに繋がれた白い持ち手を力強く握り締めて男は女と対峙した。

 あれは危険だ。 本能で理解していた。

 それが例え表面でも触れれば自身の身体に触れてしまえば自分は先に倒れてしまうだろう。

 それほどまでにそれはあまりにも力強く、そして危険な武器だった。

「そ、そこまでしてでも勝ちたいっていうの?」

 声は静かだった。 

内心の震えと焦りを押し隠しながら女は問いかける。

「そうだよ、どう足掻いても俺はお前に勝てない。あまりにも経験してきた場数が違うからな…それでも…だからこそ、いつもみたいに負けるのはもう嫌なんだ」

 男は冷静だった。 そしてそれが強い覚悟によって築かれたものであることを女はすぐ理解した。

「そこまでして、生身を捨て去ってまで…機械に頼るなんてプライドは無いの!」

「何度も悩んだ…例え矜持が傷つけられたとしても、俺はお前に勝ちたいんだ、それだけだ! それさえあればいい…それが俺の決意なのさ」

 負けて、負けて、負け続けながら。 それでも彼は何度も勃ちあがってきた。

 その健気な執念を女は好ましく思い、また可愛いとも思い、決して手加減することなく何度もそれを倒してきた。

 男もまた女と似た強い感情を持っていた。
 
 圧倒的な技術と機転そして経験を持った唯一最大の相手。 それがゆえに自身の不甲斐無さにいつまでも甘え続けているわけにはいかなかった。

 たとえ相手がそれを許したとしても彼はそれを認めるわけにも許すわけにはいかない。

 だからこそ男はこだわり続けていた決意を捨て、新たなる決意を持ってこの場にやってきたのだ。

 たとえ自身の無能を曝け出そうとも。 それこそが不器用な彼なりの誠意だった。

「これが正真正銘最後だ。耐えられるものなら耐えてみな!」 
 
 女の逡巡は一瞬だった。 男が動いたのだ。

 彼女の比較的弱い箇所を目指して一心不乱に。

 慌てて避けたが、男の切り札にたじろいだせいだろうか?

 完全に避けきることは出来ずに彼女の最も弱い一点に刹那の瞬間だけそれは触れた。

「あっあああ!」
 
 反射的に仰け反った。 電流にも似た衝撃が彼女の身体を走る。  

 くっ、掠っただけでこの威力? 
 
 これは…いくらなんでも…。

 負ける? この私が? 技術は拙く、スタミナすら無い。 ただしつこく勃つことくらいしかできなかったこの男に…、私が?

 女の脳内に言葉が走る。

 『敗北』という二文字が。

 今までそんなことはありえなかった。 

 何度も手合わせしてきたこの男に。

 そんなことは有り得ない! 

 考えたことすらなかったその言葉がいま確実に彼女の脳内に圧倒的な存在感で浮かび上がる。
  
 それでも男はめげずに再度攻撃を続けよとうとする。 

同時に男自身も腕だけではなく全身で彼女に覆いかぶさり、胸元へとせまる。

 狙いは武器だけじゃない! 必殺の武器との同時攻撃! そうされてしまえば危険だ。

 いや間違いなく終わる。
 
 女特有の弱点。 そしていくつかあるどうにも出来ない弱点を男が攻めようとしているのは明白だった。

「な、舐めるなーーーー!」

 身を捩じらせてポイントをずらす。

 同時に近づいてきた男の首を両手で掴んで自身の首元へと引き寄せる。 

 二点同時攻撃による速攻。

 それが男が彼女に対抗しうる戦術だと喝破した女は胸元の弱点を攻撃させないために執念にも似た思いであえて超至近距離へと移行させた。

「こ、これで…どう?胸は攻められないでしょう?」

「ふっ、これだけだと思うか?」

 彼女の執念が男の覚悟を上回ったようにも思えた。

 だが、男は不適に笑う。
 
「……?」

 なんで、そこで笑うの?

 女が訝しんだ瞬間、ふいに左胸に衝撃が走る。 それはまったくの予想外だった。

 強烈な一撃が来たのだ。 意識ごと刈取るようなそれを女はかろうじて耐えた。

 完全に防いだはずなのに…、どうして?

 驚きと同時に女はその場所を見た。 

男の手、いままで左手に持った武器にだけ集中していたことで見逃していた自身の愚かさを女は知る。

「なっ…、二刀流(ダブルバイブレーション)…ですって!」

「切り札は最後まで取っておくものだろ?ここまで隠し通すのは一苦労だったが…やはり電池式にして成功だったな」
 
 女は避けようとする。 しかし集中を切らしてしまったことで男は左手に持った武器で彼女の弱点を正確に突いた。

「あっああああっ!ああ…ぐっ!」

 想像以上の衝撃が彼女に走った。 まるで固い地層を砕くようにそれは彼女の鉄壁にも思えた余裕とそれを壊していく。 

 それとは何か? 彼女のプライドだ。 

「こ、この程度で…私が…」

 歯を食いしばり、それに耐える。 

しかし力が緩んだ腕を振り払い、男はすぐに間髪居れず両手で二撃目を叩きこんできた。 
  
「双天地激!(ダブルインパクト!)」

「やあああああぁぁっ!」 

 攻められたことで露出した突起した弱点に上下から挟み込むように必殺の一撃が放たれた。

 二倍の力で攻められたことで久しく流れることのなかった大量の液体が、かつてないくらいに弱点からあふれ出てくる。 
 
 それでも彼女は耐えた。 ただし長くは持たないだろうことは彼女自身も理解していた。 

 それほどまでに男が持ってきた武器は驚異であった。

 だ、だからこそ…、すぐに終わらせてみせる! 
 
 半ば痺れてきた片手で彼女は男に手を伸ばす。 

 何度も倒してきた。 何度も流して項垂れさせた男のそれを女もまたその執念で屈服させようとあがなう。 

 途端、男の顔に苦渋が浮かび上がる。

「ぐっ…、持ってくれよ、俺の肉棒!(からだ!)」

 両者ともすでに防御は捨て去った。 

壮絶な打ち合いにも似た行為が両者のくぐもった声で奏でられる。

 ブブブブブブブ! ブブブッブブブ! ブブブブ! ブブブブッブ!

「くっ…あがっ…」
 
 シコシコシコシコ! シッコシッコシッコシコシコシコシコ!
 
「ああああっああ…ああ!」

 時間にして数秒にも満たない攻撃と攻撃。   

 だが両者にとっては何時間にも似た濃密な瞬間が流れている。 
 
 気が遠くなるような『ダメージ』の中で彼女は久しく忘れていた感覚を思いだしていた。

 男と出会う前のまだ彼女自身が、目の前の男と同じように不慣れであったころに何度も味わったあの感覚。

 あ、あと少し…あと少…しだったのに…。  

 女が仰け反る。 そして強く握り締めていた『それ』を手離してシーツの上に落ちた。

 愛憎半ばするような壮絶な勝負。 両者の全てを賭けた闘いに無常なる決着がついたのだ。

 終りを告げるように雨が両者に降り注ぐ。

 ブシャリと吹き上がった体液は男の腕と顔に降りかかった。 

その中で女は笑い、そして男も笑った。

 歓喜の飛沫であるそれに塗れながら男は本懐を遂げた満足感を、女は男の成長とその覚悟、そしてかつての自分を思い出して互いに抱き合う。

 強烈な肉体的刺激と新しく生まれた前よりもさらに強い感情で。

 誇りと意地がぶつかり合った勝負がいま終わったのだ。
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