Exspetioa2.7.5
今日も、午前と午後に見まわりをしたのですが、なにもありませんでした。補佐係の方々がお部屋の掃除やシーツの洗濯をしてくださっている様子を静かに見守りました。補佐係の皆さんの手際のよいご作業に、尊敬の念とありがたい気持ちがますます膨らみました。
「明日から作戦が変わる」
補佐係の方々が一階の掃除へ行くのを見送っていると、シスター・ルドベキアが、一枚の紙を見せてくださいました。そこには、十人ほどの方々のお名前が並んでいました。
「昨日今日で、クローゼットに手紙を置いている花の修道女の部屋を調べ上げた。明日から、この花の修道女たちの部屋に隠れ、様子を伺う」
私が補佐係さんのお仕事に見惚れている間になんということでしょう……! 見まわりをしながら、調査をしていらっしゃったなんて……!
私は、まったく気が付きませんでした。
「あ、ですが……どのお方のお部屋にいらっしゃるのでしょう」
「おそらく、シスター・ルゴサや、西の修道院で蟲になった子のことを考えると、片思いや、想いが叶わない子を狙っている可能性が高い。今まではエスの文化を流行させるために両思いである子を中心に手紙を配っていたのだろうが、それが浸透した今、蟲化する子に手を伸ばそうとしているはずだ。今、シスター・サンビタリアたちが、彼女たちの想いの状況を探っているところだ。明日には絞り切れるだろう」
本当に、素晴らしい洞察力、行動力……。私はただただ圧巻していました。
午後の時間は、シスター・ルドベキアと別れ、マザーとの「神の学び」を行いました。
マザーにお手紙をお渡しすると、マザーはとても喜んで、足をバタバタしながら読んでくださいました。
「久しぶりだね、手紙もらうの」
「日記で時間がかかってしまうことが多くて、時間が空いてしまい申し訳ありませんでした」
「ふふ、かわいい字。毎日書いてくれたら嬉しいんだけど……」
マザーの足が止まりました。私の手紙を見つめたまま、沈黙していらっしゃいました。
「あの、マザー……なにか、お気に障ることを書いてしまいましたでしょうか?」
「ううん、書いていない。でも……そう。書いてないんだ」
マザーの美しい水色の瞳が、私を、まっすぐに見つめました。
「セナ。私のこと、好き?」
「えっ……はい」
「もっと言って。セナの言葉で、私への気持ちを」
「あっ、はい。あの、尊いマザーに、このような気持ちをもっていいかわからないのですが……かわいらしく、美しく、やさしく私を導いてくださり……大好きです」
「これからはもっと、そういうことを書いて。私のことを好きだって、いっぱい。イヴも、手紙は書かなかったけれど、心のままに、好きだと口にしていた。セナは『神の花嫁』。イヴのようになって、イヴ以上の存在にならないと。だからセナも心のままに……ううん、ちょっと大げさなくらいでいい。たくさん好きって書いて。そう、エスたちみたいに」
私は、お約束通り、たくさんマザーへのお気持ちを綴ろうと思いました。秘密を抱いている分、マザーのお言葉に従い、マザーを喜ばせたいと思ったのです。
ですが、罪滅ぼしのような気持ちではなく、真心を込めて綴っていきたいと思います。
いつでも誰かに純真な愛を注ぐことができる、美しい心で在りたいです。
神に愛を。神に感謝を。
「明日から作戦が変わる」
補佐係の方々が一階の掃除へ行くのを見送っていると、シスター・ルドベキアが、一枚の紙を見せてくださいました。そこには、十人ほどの方々のお名前が並んでいました。
「昨日今日で、クローゼットに手紙を置いている花の修道女の部屋を調べ上げた。明日から、この花の修道女たちの部屋に隠れ、様子を伺う」
私が補佐係さんのお仕事に見惚れている間になんということでしょう……! 見まわりをしながら、調査をしていらっしゃったなんて……!
私は、まったく気が付きませんでした。
「あ、ですが……どのお方のお部屋にいらっしゃるのでしょう」
「おそらく、シスター・ルゴサや、西の修道院で蟲になった子のことを考えると、片思いや、想いが叶わない子を狙っている可能性が高い。今まではエスの文化を流行させるために両思いである子を中心に手紙を配っていたのだろうが、それが浸透した今、蟲化する子に手を伸ばそうとしているはずだ。今、シスター・サンビタリアたちが、彼女たちの想いの状況を探っているところだ。明日には絞り切れるだろう」
本当に、素晴らしい洞察力、行動力……。私はただただ圧巻していました。
午後の時間は、シスター・ルドベキアと別れ、マザーとの「神の学び」を行いました。
マザーにお手紙をお渡しすると、マザーはとても喜んで、足をバタバタしながら読んでくださいました。
「久しぶりだね、手紙もらうの」
「日記で時間がかかってしまうことが多くて、時間が空いてしまい申し訳ありませんでした」
「ふふ、かわいい字。毎日書いてくれたら嬉しいんだけど……」
マザーの足が止まりました。私の手紙を見つめたまま、沈黙していらっしゃいました。
「あの、マザー……なにか、お気に障ることを書いてしまいましたでしょうか?」
「ううん、書いていない。でも……そう。書いてないんだ」
マザーの美しい水色の瞳が、私を、まっすぐに見つめました。
「セナ。私のこと、好き?」
「えっ……はい」
「もっと言って。セナの言葉で、私への気持ちを」
「あっ、はい。あの、尊いマザーに、このような気持ちをもっていいかわからないのですが……かわいらしく、美しく、やさしく私を導いてくださり……大好きです」
「これからはもっと、そういうことを書いて。私のことを好きだって、いっぱい。イヴも、手紙は書かなかったけれど、心のままに、好きだと口にしていた。セナは『神の花嫁』。イヴのようになって、イヴ以上の存在にならないと。だからセナも心のままに……ううん、ちょっと大げさなくらいでいい。たくさん好きって書いて。そう、エスたちみたいに」
私は、お約束通り、たくさんマザーへのお気持ちを綴ろうと思いました。秘密を抱いている分、マザーのお言葉に従い、マザーを喜ばせたいと思ったのです。
ですが、罪滅ぼしのような気持ちではなく、真心を込めて綴っていきたいと思います。
いつでも誰かに純真な愛を注ぐことができる、美しい心で在りたいです。
神に愛を。神に感謝を。