第七三話 周布との一戦
周布との訓練で、弥勒は真剣に戦う。
周布は木刀の一つを弥勒へ渡した。周布は受け取った弥勒に対し「どのくらい扱えるんだ?」と尋ねた。
弥勒は「色々な武器を試して、刀が自分に最も適していると認識できる程度には、ブンブンと振り回しました」と、少し冗談の雰囲気でいった。それは、自身の緊張を解してリラックスをする為の冗談だった。
周布は冗談に気付き、「鋭利な刀で、他の選択肢を斬ったんだな」といった。しかし弥勒の愛想笑いを見て、周布は、やはり自分は上手い冗談が苦手らしいと思った。咳払いをし、「ならば早速手合わせしてみよう」といった。
「構えなさい」
「お願いします」
短い言葉を皮切りに、陽気さは消え去って、緊張感が二人を包んだ。結界のすぐ側には、無数の美白さんが二人を見守っていた。
次の瞬間、周布は稲葉と同じ様な圧倒的な速さで、周布は距離を詰めてきた。反射的に弥勒は距離を取ろうと、神通力で半身を強化して下がった。しかしその動きは周布に読まれており、周布は間合いを詰め、弥勒の顔面を突く構えをした。弥勒は反射的にその剣を弾くも、周布は次の一撃で弥勒を仕留める目をしていた。その目に気づいた弥勒は覚悟を決め、袈裟斬りで周布を叩き切ろうと、両手に力を込め、刀を振り下ろそうとした。しかし次の瞬間、周布はしゃがんで弥勒の剣を交わしながら、喉元を真下から垂直に突き刺す位置に構えた。
「勝負ありだ。どう動こうとも君の斬撃は私を殺められず、私の剣は君の急所を刺して、仕留められる」
「参りました……」
「居合は一瞬で決まるものだ。どんな剣豪も、一瞬の誤判断、それらを起こす身体の不調、気温の高低差や空腹による集中力の欠如、直前の些事で乱された心など、下らないことで斬り殺される。今回も偶然の勝利かもしれないから、もう一度、居合をしよう」
「お願いします……!」
二戦目、互いに神通力を用いて、心の内の読み合いが始まった。互いに、神通力での読心術や嘘をつく詐術では、初手ですら動きが読めなかった。
その腹の中の読み合いは、将棋の様なものだった。数分間、相手の一手を読み続け、下手に動くことはできない。しかしそこに囚われ続ければ、速さに特化した一撃で斬られる為、集中しすぎることも出来ない。
弥勒の額に、汗が流れた。弥勒は、自身の神通力における読心術のコントロール力は、同年代の誰よりも優れているという自負があった。しかしはやり開眼者周布一心に対し、優位に働く程の技量ではないと思い知った。
「読心術や詐術では同格……ならば剣で勝つしかない。でも僕の身体強化や剣術では技量で上回る訳が無い……ならば、居合に於いての詐術で勝つしかない……!」
弥勒は集中力が切れた振りを装い、刀を少し右側へずらし、小手を見せた。つまり、刀を相手へ真っ直ぐ見せず、手を斬らせる様に誘導したのだ。
周布はその動きを見逃さず、刀を振り下ろした。
弥勒は右側から左側へ強く振り、周布の剣を弾いた。弥勒はそのまま攻勢を掛け、剣を弾かれた周布のがら空きになった右腕を叩き斬ろうと、水平斬りをした。
周布は、左足を前へ出し避けながら、剣を縦に構えて弥勒の水平斬りを防いだ。
周布は左足を軸にして弥勒のがら空きになった首元を、左側から狙ってくるだろうと、弥勒は考えていた。その振りかぶる瞬間を見切って、喉を一突きしようと、弥勒は考えていたのだ。
しかし周布は経験から、その動きを見切った。周布は、笑みを浮かべた。そして、弥勒の剣が喉へ向かって来れない様に、敢えて勢いを殺しながらも、しゃがむ様な姿勢になりながら右足で弥勒の元へと踏み込んだ。
間合いに入られた弥勒は周布の剣を右側へ弾こうとするも、周布は弥勒の剣に自身の剣を当て、それに導かれる様に弥勒の体へと進み、弥勒の胴体へ一突きさせた。
弥勒は「色々な武器を試して、刀が自分に最も適していると認識できる程度には、ブンブンと振り回しました」と、少し冗談の雰囲気でいった。それは、自身の緊張を解してリラックスをする為の冗談だった。
周布は冗談に気付き、「鋭利な刀で、他の選択肢を斬ったんだな」といった。しかし弥勒の愛想笑いを見て、周布は、やはり自分は上手い冗談が苦手らしいと思った。咳払いをし、「ならば早速手合わせしてみよう」といった。
「構えなさい」
「お願いします」
短い言葉を皮切りに、陽気さは消え去って、緊張感が二人を包んだ。結界のすぐ側には、無数の美白さんが二人を見守っていた。
次の瞬間、周布は稲葉と同じ様な圧倒的な速さで、周布は距離を詰めてきた。反射的に弥勒は距離を取ろうと、神通力で半身を強化して下がった。しかしその動きは周布に読まれており、周布は間合いを詰め、弥勒の顔面を突く構えをした。弥勒は反射的にその剣を弾くも、周布は次の一撃で弥勒を仕留める目をしていた。その目に気づいた弥勒は覚悟を決め、袈裟斬りで周布を叩き切ろうと、両手に力を込め、刀を振り下ろそうとした。しかし次の瞬間、周布はしゃがんで弥勒の剣を交わしながら、喉元を真下から垂直に突き刺す位置に構えた。
「勝負ありだ。どう動こうとも君の斬撃は私を殺められず、私の剣は君の急所を刺して、仕留められる」
「参りました……」
「居合は一瞬で決まるものだ。どんな剣豪も、一瞬の誤判断、それらを起こす身体の不調、気温の高低差や空腹による集中力の欠如、直前の些事で乱された心など、下らないことで斬り殺される。今回も偶然の勝利かもしれないから、もう一度、居合をしよう」
「お願いします……!」
二戦目、互いに神通力を用いて、心の内の読み合いが始まった。互いに、神通力での読心術や嘘をつく詐術では、初手ですら動きが読めなかった。
その腹の中の読み合いは、将棋の様なものだった。数分間、相手の一手を読み続け、下手に動くことはできない。しかしそこに囚われ続ければ、速さに特化した一撃で斬られる為、集中しすぎることも出来ない。
弥勒の額に、汗が流れた。弥勒は、自身の神通力における読心術のコントロール力は、同年代の誰よりも優れているという自負があった。しかしはやり開眼者周布一心に対し、優位に働く程の技量ではないと思い知った。
「読心術や詐術では同格……ならば剣で勝つしかない。でも僕の身体強化や剣術では技量で上回る訳が無い……ならば、居合に於いての詐術で勝つしかない……!」
弥勒は集中力が切れた振りを装い、刀を少し右側へずらし、小手を見せた。つまり、刀を相手へ真っ直ぐ見せず、手を斬らせる様に誘導したのだ。
周布はその動きを見逃さず、刀を振り下ろした。
弥勒は右側から左側へ強く振り、周布の剣を弾いた。弥勒はそのまま攻勢を掛け、剣を弾かれた周布のがら空きになった右腕を叩き斬ろうと、水平斬りをした。
周布は、左足を前へ出し避けながら、剣を縦に構えて弥勒の水平斬りを防いだ。
周布は左足を軸にして弥勒のがら空きになった首元を、左側から狙ってくるだろうと、弥勒は考えていた。その振りかぶる瞬間を見切って、喉を一突きしようと、弥勒は考えていたのだ。
しかし周布は経験から、その動きを見切った。周布は、笑みを浮かべた。そして、弥勒の剣が喉へ向かって来れない様に、敢えて勢いを殺しながらも、しゃがむ様な姿勢になりながら右足で弥勒の元へと踏み込んだ。
間合いに入られた弥勒は周布の剣を右側へ弾こうとするも、周布は弥勒の剣に自身の剣を当て、それに導かれる様に弥勒の体へと進み、弥勒の胴体へ一突きさせた。