第七一話 コソコソと
長崎から福岡へのの帰路に着いた一行。巳代は、厚東と、スマホでコソコソと連絡を取り合う。
その後弥勒らは、有明海の名産品を楽しんだ。まだ鷲頭や厚東への、大友一派のスパイ疑惑を払拭できてない以上、表向きの理由として弥勒らは観光を全うしなくてはならなかった。
だがそれすらも本題といえる程、弥勒らは全力で楽しんだ。
夜になり、福岡へ戻ることになった一行。帰りの車は大きなキャンピングカー数台であり、ベッドが二つ積まれた一台に弥勒と巳代は乗り、渋川は他の車に乗った。
巳代は帰りの車内で、弥勒が眠ったことをいいことに、厚東と連絡を取り合っていた。
『来てくれて良かった。久々に、剣への思いに心を燃やせたよ。ありがとう(目を潤ませたウサギの絵文字)』
『こちらこそだ。ありがとうな。伊東と稲葉の連絡先を送っておく』
『うゆうゆ そういやさ巳代ってどうして九州に来たの? やっぱり殺気立ってるから?(首を傾げるウサギの絵文字)』
『殺気立ってるのか?』
『知らずに来た感じか。九州今ヤバイよ……こんな田舎の街に住む人まで巨大政党を恨んでて、選挙期間中はヤジも瓶とかの投げ込みがあった。佐賀の漁師のおじさん達は元から清由党を恨んでるけどね。フランス革命とかこういう感じから始まったのかなーなんて(涙を浮かべるウサギの絵文字)』
『東洋のナポレオンとして名を上げたいのか? それもいいが、そんな惨事にならないことを俺は切に願うよ』
『呼ばれるならジャンヌ・ダルクがいいなぁ』
『フランス革命関係ないじゃねえか』
『細かいなぁ。巳代は教師か校長か!』
『大宰府分校の大隅(おおすみ)校長はそんなに細かい人じゃなかったと思うが……?』
『そーじゃないよーだ。彼杵(そのぎ)分校の鍋島隆信(なべしまたかのぶ)校長とかいうヤツのこと。本当はここに入る筈だったけど、細かいし高圧的だし、なんかムリってなった。学風は結構、熾烈(しれつ)で好きだったけどね(頷くウサギのスタンプ)』
『一番近いのは平戸(ひらど)分校じょないのか?』
『違うよー彼杵(そのぎ)分校。平戸分校かぁーあの人が居たよね』
巳代は平戸分校のことをよく知らなかった。二年前の剣道の大会で、九州一の剣豪という異名を欲しいがままにしていた、籠手田渚(こてだなぎさ)という女性剣士がいたことを知っているくらいで、平戸という地域がどこにあるのかさえちゃんとは知らないのだ。
籠手田(こてだ)と交流があればなにか違ったのかもしれない。だが巳代はその大会で籠手田(こてだ)と剣を交えることはなく、籠手田(こてだ)は大会の途中で棄権し、その後すぐに病没したらしかった。
『九州一の剣豪と呼ばれた剣士が居た場所だな』
『籠手田(こてだ)さん……だっけ? 直接戦ったことはないけど、予選でその剣さばきを見たことがある。鍔迫(つばぜ)り合いをするまでもなく、気迫や動きの速さ、見たこともない剣術で、誰も五合以上の打ち合いが出来ないまま斬られてた。特にあの突きはヤバイ。360度どこからでも現れる突きは避けられない……一度手合わせして欲しかったなぁ』
『勝てそうか?』
巳代は、ふと思いたってそう質問した。しかしそこ直後、視線を感じて顔を上げると、いつの間にか起きていた弥勒が巳代を見ていた。
「なにニヤニヤしてるんだか。眩しいんだから消しなよね」
「おやすみ」
「うん」
巳代はスマホの画面を落とし、毛布を被った。
だがそれすらも本題といえる程、弥勒らは全力で楽しんだ。
夜になり、福岡へ戻ることになった一行。帰りの車は大きなキャンピングカー数台であり、ベッドが二つ積まれた一台に弥勒と巳代は乗り、渋川は他の車に乗った。
巳代は帰りの車内で、弥勒が眠ったことをいいことに、厚東と連絡を取り合っていた。
『来てくれて良かった。久々に、剣への思いに心を燃やせたよ。ありがとう(目を潤ませたウサギの絵文字)』
『こちらこそだ。ありがとうな。伊東と稲葉の連絡先を送っておく』
『うゆうゆ そういやさ巳代ってどうして九州に来たの? やっぱり殺気立ってるから?(首を傾げるウサギの絵文字)』
『殺気立ってるのか?』
『知らずに来た感じか。九州今ヤバイよ……こんな田舎の街に住む人まで巨大政党を恨んでて、選挙期間中はヤジも瓶とかの投げ込みがあった。佐賀の漁師のおじさん達は元から清由党を恨んでるけどね。フランス革命とかこういう感じから始まったのかなーなんて(涙を浮かべるウサギの絵文字)』
『東洋のナポレオンとして名を上げたいのか? それもいいが、そんな惨事にならないことを俺は切に願うよ』
『呼ばれるならジャンヌ・ダルクがいいなぁ』
『フランス革命関係ないじゃねえか』
『細かいなぁ。巳代は教師か校長か!』
『大宰府分校の大隅(おおすみ)校長はそんなに細かい人じゃなかったと思うが……?』
『そーじゃないよーだ。彼杵(そのぎ)分校の鍋島隆信(なべしまたかのぶ)校長とかいうヤツのこと。本当はここに入る筈だったけど、細かいし高圧的だし、なんかムリってなった。学風は結構、熾烈(しれつ)で好きだったけどね(頷くウサギのスタンプ)』
『一番近いのは平戸(ひらど)分校じょないのか?』
『違うよー彼杵(そのぎ)分校。平戸分校かぁーあの人が居たよね』
巳代は平戸分校のことをよく知らなかった。二年前の剣道の大会で、九州一の剣豪という異名を欲しいがままにしていた、籠手田渚(こてだなぎさ)という女性剣士がいたことを知っているくらいで、平戸という地域がどこにあるのかさえちゃんとは知らないのだ。
籠手田(こてだ)と交流があればなにか違ったのかもしれない。だが巳代はその大会で籠手田(こてだ)と剣を交えることはなく、籠手田(こてだ)は大会の途中で棄権し、その後すぐに病没したらしかった。
『九州一の剣豪と呼ばれた剣士が居た場所だな』
『籠手田(こてだ)さん……だっけ? 直接戦ったことはないけど、予選でその剣さばきを見たことがある。鍔迫(つばぜ)り合いをするまでもなく、気迫や動きの速さ、見たこともない剣術で、誰も五合以上の打ち合いが出来ないまま斬られてた。特にあの突きはヤバイ。360度どこからでも現れる突きは避けられない……一度手合わせして欲しかったなぁ』
『勝てそうか?』
巳代は、ふと思いたってそう質問した。しかしそこ直後、視線を感じて顔を上げると、いつの間にか起きていた弥勒が巳代を見ていた。
「なにニヤニヤしてるんだか。眩しいんだから消しなよね」
「おやすみ」
「うん」
巳代はスマホの画面を落とし、毛布を被った。