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作者: 月ノ瀬 静流
残酷な描写あり
〈第四章あらすじ&登場人物紹介〉
===第四章 あらすじ===



 暑い夏の盛り。ミンウェイをシュアンのもとに送り出し、ルイフォンとメイシアは草薙家に行ったまま。物寂しくなった鷹刀一族の屋敷で、リュイセンは次期総帥として業務に追われていた。

 ある日、怪しげな黒づくめの女が訪ねてきた。その正体は、女王アイリー。素性を隠すのと、先天性白皮症アルビノの肌を守るための変装だった。

 アイリーは、義姉となったセレイエの死を確かめに来たという。どうやら彼女は、摂政である兄カイウォルからも、婚約者で異母兄であるヤンイェンからも、情報を制限されていたらしい。鷹刀一族はアイリーとは懇意にすべきだと判断し、リュイセンが『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』について語ることになった。



 セレイエから家族の話を聞いていたというアイリーは、初対面にも関わらずリュイセンに対して親しげで、先天性白皮症アルビノの弱視もあって妙に距離が近い。無邪気なだけでなく、王族フェイラの責任を果たそうとする彼女に、リュイセンは困惑と敬意をいだいた。

 ふたりは『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』や、『ライシェン』の未来に関する意見を交わす。アイリーは「次代の王は自分のクローンとするから、『ライシェン』は父親のヤンイェンと暮らしてほしい」と告げ、リュイセンは戸惑う。ふたりの間で結論を出せるものではないので、ここで出た話はルイフォンに伝えるということで、お開きとなった。



 脱走してきた神殿への秘密の通路まで、リュイセンが車でアイリーを送ることになった。「ドライブは初めて」と喜ぶアイリー。彼女の言う『ドライブ』は、『助手席に乗って、恋人と仲睦まじく出掛けること』であるらしい。女王である彼女には一生、縁のないものだ。

 不憫に思ったリュイセンは、彼女の憧れである『恋人とふたりきりになれるような、穴場の絶景スポット』に連れて行ってやると、人造湖へのデートの真似事を提案した。大喜びのアイリーだったが、謎の襲撃者に遭ってしまう。

 襲撃者の正体は、兄である摂政のめいを受けた近衛隊員たちであった。アイリーの携帯端末の位置情報をもとに追ってきたのだ。女王アイリーと一緒にいる凶賊リュイセンを捕まえて、拉致犯に仕立てる魂胆だったらしい。

 アイリーは素直に近衛隊員たちと帰ることでリュイセンを逃がそうとしたが、リュイセンは「陛下には息抜きが必要です」と叫び、神業の刀技と高潔な姿勢で近衛隊員たちを黙らせた。



 無事、デートの真似事を続行できるようになったふたりは、とりとめもない話で距離を縮めながらドライブを続ける。道案内ナビに使ったリュイセンの携帯端末は、今後、摂政に気づかれずに連絡を取る手段として、そのままアイリーのものになった。

 人造湖には他の観光客がいたため、目的地を獣道を抜けた先の小さな滝に変更し、真にふたりきりの場所に着いた。

 ふたりが滝に触れている最中に風が吹き、アイリーを庇ったリュイセンが、水をかぶってしまう。濡れたシャツを絞るために脱ぐと、彼の傷だらけの肉体を目撃したアイリーが悲鳴を上げた。

 アイリーは衝撃を受けつつも、傷を負った経緯をリュイセンに尋ねる。これをきっかけに、リュイセンは『過去の自分』のすべて彼女にさらけ出し、『未来これからの自分』は「鷹刀の最後の総帥になる」と宣言した。「諸悪の根源は『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』ではなくて、古くからの因習のようなものであり、自分はそれを断ち切るのだ」と。

 そして、王族フェイラとして、因習の犠牲になろうとしているアイリーに、「お前も『最後の王』になればいいんだ」と呟く。口にしてから、ことの重大さに慌てるリュイセンであったが、アイリーは、それこそが自分の採るべき道だと、「私も『最後の王』になる」と決意した。



 アイリーを秘密の通路に送るべく、神殿に近づいた際、リュイセンは筆舌に尽くしがたい『恐怖』を味わった。原因は、鷹刀一族を〈にえ〉として喰らい続けた、〈冥王プルート〉。それを見たアイリーは、〈冥王プルート〉の破壊を心に決める。

 そして、いよいよ別れのとき。リュイセンは、自分を見つめるアイリーの目が、恋する乙女のそれだと気づく。異性に免疫のない彼女がデートの真似事をすれば、錯覚するのは当然だった。

 アイリーへの気持ちを既に自覚していただけに、リュイセンとしては、たちが悪い。「お前は俺に、夢と理想を見ているだけ」と突き放してしまう。しかし、「見くびらないで!」とアイリーはリュイセンに抱きついた。彼の刀傷を優しく撫で、ちゃんと彼を見ているのだと、強引に口づける。

 今日一日を振り返り、「どうして、これが恋ではないと言えるのか」と詰め寄るアイリーに、リュイセンは、はっとする。立場を背負った自分たちは、逃げることはできないし、逃げる気もない。自由な恋人たちにはなれないけれど、だからこそ、特別な絆を築けるはずだ、と。

 そして、ふたりは『共犯者』になろうと決める。『自分の運命を、自分で決める共犯者』に。





===『di;vine+sin;fonia デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』===



 主人公ルイフォンの姉セレイエによる、殺された息子ライシェンを蘇らせる計画。

 王の私設研究機関〈七つの大罪〉の技術で再生された『肉体』に、ルイフォンの中に封じたライシェンの『記憶』を入れることで『蘇生』が叶う。

 また、生き返った『ライシェン』が幸せな人生を送れるように、セレイエはふたつの未来を用意した。

 ひとつは、本来、ライシェンが歩むはずだった、父ヤンイェンのもとで王となる道。

 もうひとつは、愛情あふれる家庭で、優しい養父母のもとで平凡な子供として生きる道。

 セレイエは、弟であるルイフォンと、ヤンイェンの再従妹はとこであるメイシアを『ライシェン』の幸せを託す相手として選び、ふたりを出逢わせた。



『di;vine+sin;fonia』という名称は、セレイエによって名付けられた。

『di』は、『ふたつ』を意味する接頭辞。『vine』は、『つる』。

 つまり、『ふたつのつる』――転じて、『二重螺旋』『DNAの立体構造』――『命』の暗喩。

『sin』は『罪』。『fonia』は、ただの語呂合わせ。

 これらを繋ぎ合わせて『命に対する冒涜』を意味する。

 この計画が禁忌の行為と分かっていながら、セレイエは自分を止められなかった、ということである。





===登場人物===



鷹刀たかとうルイフォン

『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』を託された少年。十六歳。

 亡き母キリファから〈フェレース〉というクラッカーの通称を受け継いでいる。

 父親は、表向きは凶賊ダリジィン鷹刀一族総帥イーレオということになっているが、実はイーレオの長子エルファンの息子である。

 そのことは、薄々、本人も感づいてはいるが、既に親元から独立し、凶賊ダリジィンの一員ではなく、何にも属さない『対等な協力者〈フェレース〉』であることを認められているため、どうでもいいと思っている。

 端正な顔立ちであるのだが、表情のせいでそうは見えない。

 長髪を後ろで一本に編み、毛先を母の形見である金の鈴と、青い飾り紐で留めている。

 亡くなる前のセレイエに、ライシェンの『記憶』を一方的に預けられていた。



※『ハッカー』という用語は、本来『コンピュータ技術に精通した人』の意味であり、悪い意味を持たない。むしろ、尊称として使われている。

 対して、『クラッカー』は、悪意を持って他人のコンピュータを攻撃する者を指す。

 よって、本作品では、〈フェレース〉を『クラッカー』と表記する。



メイシア

『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』を託された少女。十八歳。

 セレイエによって、ルイフォンとの出逢いを仕組まれ、彼と恋仲――事実上の伴侶となる。

 もと貴族シャトーア藤咲ふじさき家の娘だが、ルイフォンと共に居るために、表向き死亡したことになっている。

 箱入り娘らしい無知さと明晰な頭脳を持つ。すなわち、育ちの良さから人を疑うことはできないが、状況の矛盾から嘘を見抜く。

 白磁の肌、黒絹の髪の美少女。

 王族フェイラの血を色濃く引くため、『最強の〈天使〉』として『ライシェン』を守ってほしいというセレイエの願いから、『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』に巻き込まれた。

 セレイエの〈影〉であったホンシュアを通して、セレイエの『記憶』を受け取っている。





[鷹刀一族]

 凶賊ダリジィンと呼ばれる、大華王国マフィアの一族。

 約三十年前、イーレオが、王家および王家の私設研究機関である〈七つの大罪〉と縁を切るまで、血族を有機コンピュータ〈冥王プルート〉の〈にえ〉として捧げる代わりに、王家の保護を受けてきた。近親婚を強いられてきたため、血族は皆そっくりであり、また強く美しい。



鷹刀イーレオ

 凶賊ダリジィン鷹刀一族の総帥。六十五歳。

 若作りで洒落者。

 かつては〈七つの大罪〉の研究者、〈悪魔〉の〈獅子レオ〉であった。



鷹刀エルファン

 イーレオの長子。次期総帥であったが、次男リュイセンに位を譲った。

 ルイフォンとは親子ほど歳の離れた異母兄ということになっているが、実は父親。

 感情を表に出すことが少ない。冷静、冷酷。



鷹刀リュイセン

 エルファンの次男。十九歳。本人は知らないが、ルイフォンの異母兄にあたる。

 父から位を譲られ、次期総帥となった。また、最後の総帥になる決意をしている。

 黄金比の美貌の持ち主。

 文句も多いが、やるときはやる男。『神速の双刀使い』と呼ばれている。

 ミンウェイを愛していたが、彼女の幸せを思い、彼女を一族から追放し、緋扇シュアンのもとに行かせた。

 その後、女王アイリーと出逢い、恋のような愛のような、曖昧な感情をいだくようになる。なお、アイリーとの関係は、『恋人』ではなく、『共犯者』であると、ふたりで決めた。



鷹刀ユイラン

 エルファンの十歳以上は年上の妻。レイウェン、リュイセンの母。銀髪グレイヘアの上品な女性。

 レイウェンの会社の専属デザイナーとして鷹刀一族の屋敷を出ていたが、ミンウェイがシュアンのもとへ行ったため、総帥の補佐役として再び屋敷に戻ってきた。

 ただし、服飾の仕事が忙しいときには、草薙家にある仕事場に詰めっぱなしになるため、行ったり来たりの生活をしている。

 ルイフォンが、エルファンの子であることを隠したいキリファに協力して、愛人をいじめる正妻のふりをしてくれた。

 メイシアの異母弟ハオリュウに、メイシアの花嫁衣装を依頼された。



草薙チャオラウ

 鷹刀一族の中枢をなす人物のひとり。イーレオの護衛にして、ルイフォンの武術師範。

 無精髭を弄ぶ癖がある。

 主筋であるユイランを、幼少のころから半世紀ほど、一途に想っている、らしい。



料理長

 鷹刀一族の屋敷の料理長。

 恰幅の良い初老の男。人柄が体格に出ている。



キリファ

 もとエルファンの愛人で、セレイエ、ルイフォンの母。ただし、イーレオ、ユイランと結託して、ルイフォンがエルファンの息子であることを隠していた。故人。

 天才クラッカー〈フェレース〉。

〈七つの大罪〉の〈悪魔〉、〈スコリピウス〉に人体実験体である〈天使〉にされた。

 四年前に当時の国王シルフェンに『首を落とさせて』死亡。

 どうやら、自分の体を有機コンピュータ〈スー〉に作り変えるためだったらしい。

 ルイフォンに『手紙』と称し、人工知能〈スー〉のプログラムを託した。



〈ケル〉〈ベロ〉〈スー〉

 キリファが、〈冥王プルート〉を破壊するために作った三台の兄弟コンピュータ。

 表向きは普通のスーパーコンピュータだが、それは張りぼてである。

 本体は、人間の脳から作られた有機コンピュータで、光のたまの姿をしている。

〈ベロ〉の人格は、シャオリエのオリジナル『パイシュエ』である。

〈ケル〉は、キリファの親友といってもよい間柄である。

〈スー〉は、ルイフォンがキリファの『手紙』を正確に打ち込まないと出てこないのだが、所在は、〈スコリピウス〉の研究所跡に建てられた家にあることが分かっている。



鷹刀セレイエ

 エルファンとキリファの娘。表向きはルイフォンの異父姉となっているが、同父母姉である。

 リュイセンにとっては、異母姉になる。

 生まれながらの〈天使〉であり、自分の力を知るために自ら〈悪魔〉となった。

 王族フェイラのヤンイェンと恋仲になり、ライシェンという〈神の御子〉を産んだ。

 先王シルフェンにライシェンを殺されたため、『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』を企てた。

 ただし、セレイエ本人は、ライシェンの記憶を手に入れるために〈天使〉の力を使い尽くし、あとのことは〈影〉のホンシュアに託して死亡した。

 女王アイリーのことは、義妹いもうととして、とても可愛がっていた。



パイシュエ

 イーレオ曰く、『俺を育ててくれたひと』。故人。

 鷹刀一族を〈七つの大罪〉の支配から解放するために〈悪魔〉となり、三十年前、その身を犠牲にして未来永劫、一族を〈にえ〉にせずに済む細工を施して死亡した。

 自分の死後、一族を率いていくことになるイーレオを助けるために、シャオリエという〈影〉を遺した。

 また、どこかに残されていた彼女の何かを使い、キリファは〈ベロ〉を作った。

 すなわち、パイシュエというひとりの人間から、『シャオリエ』と〈ベロ〉が作られている。



鷹刀ヘイシャオ

〈七つの大罪〉の〈悪魔〉、〈ムスカ〉。ミンウェイの『父親』。医者で暗殺者。故人。

 妻のミンウェイの遺言により、妻の蘇生のために作ったクローン体を『娘』として育てていくうちに心を病んでいった。

 十数年前に、娘のミンウェイを連れて現れ、自殺のようなかたちでエルファンに殺された。





[王家]

 白金の髪、青灰色の瞳の先天性白皮症アルビノの者が多く生まれる里を起源とした一族。

 王家に生まれた先天性白皮症アルビノの男子は必ず盲目であり、代わりに他人の脳から『情報を読み取る』能力を持つ。

 この特殊な力を持つ者を王としてきたため、先天性白皮症アルビノの外見を持つ者だけが〈神の御子〉と呼ばれ、王位継承権を有する。かつては男子のみが王となれたが、現在では〈神の御子〉が生まれにくくなったために女王も認めている。ただし、あくまでも仮初めの王である。



アイリー

 大華王国の現女王。十五歳。四年前、先王の父が急死したため、若年ながら王位に就いた。

 彼女の婚約を開始条件トリガーに、すべてが――『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』が始まった。

 素直で純粋な性格。とても良い子であるが、王としての威厳がまったくないために、兄であり摂政でもあるカイウォルに、公式の場では大人しく黙っているように言われているらしい。

 リュイセンと出逢い、アイリーとしては、恋に落ちた――が、互いに『最後の総帥』『最後の王』となるために、『恋人』ではなく、『共犯者』としての絆を結んだ。



シルフェン

 先王。四年前、腹心だった甥のヤンイェンに殺害された。

〈神の御子〉の男子に恵まれなかった先々王が〈七つの大罪〉に作らせた『過去の王のクローン』である。



ヤンイェン

 先王の甥。女王の婚約者。

 実は先王が〈神の御子〉を求めて姉に産ませた隠し子で、女王アイリーや摂政カイウォルの異母兄弟に当たる。

 セレイエとの間に生まれたライシェンを殺され、蘇生を反対されたため、先王を殺害した。

 メイシアの再従兄はとこにあたる。

 ルフォンが女装までして会いに行き、『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』の現状を伝え、父親として『ライシェン』にどんな未来を与えたいか、意見を求めようとしたのだが、「考えるべきことが多すぎて、何も決められない」としか答えてくれなかった。



ライシェン

 ヤンイェンとセレイエの息子で、〈神の御子〉。

〈神の御子〉の男子が持つ『情報を読み取る』能力に加え、〈天使〉のセレイエから受け継いだ『情報を書き込む』能力を持っていた。

 彼の力は、〈天使〉の羽のように自分と相手を繋ぐことなく、〈神の御子〉のように手も触れずに扱えたため、先王シルフェンは彼を『神』と呼ぶしかないと言い、『来神ライシェン』と名付けた。

 周りの『殺意』を感じ取り、相手を殺してしまったために、先王に殺された。



『ライシェン』

ムスカ〉が、セレイエに頼まれて作った、ライシェンのクローン体。

 オリジナルのライシェンは盲目だったが、周りの『殺意』を感じ取らずにすむようにと、目が見えるように作られた。

 凍結処理が施され、ルイフォンとメイシアに託された。



カイウォル

 摂政。女王の兄に当たる人物。

 摂政を含む、女王以外の兄弟は〈神の御子〉の外見を持たないために、王位継承権はない。

 ハオリュウに、「異母兄にあたるヤンイェンとの結婚を嫌がる妹、女王アイリーの結婚を延期するために、君が女王の婚約者になってほしい」と陰謀を持ちかけた。





[〈七つの大罪〉]

 現代の『七つの大罪』=『新・七つの大罪』を犯す『闇の研究組織』。

 実は、王の私設研究機関。

 王家に、王になる資格を持つ〈神の御子〉が生まれないとき、『過去の王のクローンを作り、王家の断絶を防ぐ』という役割を担っている。



冥王プルート

 他人の脳から情報を読み取ることによって生じる、王族フェイラの脳への負荷を分散させるために誕生した連携構成クラスタシステム

 太古の昔に死んだ王の脳細胞から生まれた巨大な有機コンピュータで、鷹刀一族の血肉を動力源とする。

『光のたま』の姿をしており、神殿に収められている。



〈悪魔〉

 知的好奇心に魂を売り渡した研究者を〈悪魔〉と呼ぶ。

〈悪魔〉は〈神〉から名前を貰い、潤沢な資金と絶対の加護、蓄積された門外不出の技術を元に、更なる高みを目指す。

 代償は体に刻み込まれた『契約』。――王族フェイラの『秘密』を口にすると死ぬという、〈天使〉による脳内介入を受けている。



〈天使〉

『記憶の書き込み』ができる人体実験体。

 脳内介入を行う際に、背中から光の羽を出し、まるで天使のような姿になる。

〈天使〉とは、脳という記憶装置に、記憶データ命令コードを書き込むオペレーター。いわば、人間に侵入クラッキングして相手を乗っ取るクラッカー。

 羽は有機コンピュータ〈冥王プルート〉の一部でできており、〈天使〉と侵入クラッキング対象の人間との接続装置インターフェースとなる。限度を超えて酷使すれば熱暴走を起こして死亡する。



〈影〉

〈天使〉によって、脳を他人の記憶に書き換えられた人間。

 体は元の人物だが、精神が別人となる。



『呪い』・便宜上、そう呼ばれているもの

〈天使〉の脳内介入によって受ける影響、被害といったもの。悪魔の『契約』も『呪い』の一種である。

 服従が快楽と錯覚するような他人を支配する命令コードや、「パパがチョコを食べていいと言った」という他愛のない嘘の記憶データまで、いろいろである。



『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』のために作られた〈ムスカ

 セレイエが『ライシェン』を作らせるために、蘇らせたヘイシャオ。

 セレイエに吹き込まれた嘘のせいでイーレオの命を狙い、鷹刀一族と敵対していたが、リュイセンによって心を入れ替えた。

 メイシアを〈悪魔〉の『契約』から解放するため、自ら王族フェイラの『秘密』を口にして死亡した。



ホンシュア

 セレイエの〈影〉。肉体はライシェンの侍女で、〈天使〉化してあった。

 主人ライシェンの死に責任を感じ、『デヴァイン・シンフォニア計画プログラム』に協力した。

〈影〉にされたメイシアの父親に、死ぬ前だけでも本人に戻れるような細工をしたため、体が限界を超え、熱暴走を起こして死亡。

 メイシアにセレイエの記憶を潜ませ、鷹刀に行くように仕向けた、いわば発端を作った人物である。



サーペンス

 セレイエの〈悪魔〉としての名前。

 セレイエの〈影〉であるホンシュアをを指すこともある。





[藤咲家・他]



藤咲ハオリュウ

 メイシアの異母弟。十二歳。

 父親を亡くしたため、若年ながら貴族シャトーアの藤咲家の当主を継いだ。その際、異母姉メイシアを自由にするために、表向き死亡したことにしたのは彼である。

 母親が平民バイスアであることや、親しみやすい十人並みの容姿であることから、平民バイスアに人気がある。ただし、温厚そうな見た目とは裏腹に、気性は激しい。

 女王陛下の婚礼衣装制作に関して、草薙レイウェンと提携を決めた。

 摂政カイウォルに「女王の婚約者にならないか」と陰謀を持ちかけられていたが、友人シュアンを人質に取られたことから猛反発。シュアンのため、そして、相思相愛でありながら、身分差のために想いを告げることのできなかったクーティエのため、『この国から身分をなくす』と決意する。



藤咲コウレン

 メイシア、ハオリュウの父親。厳月家・斑目一族・〈ムスカ〉の陰謀により死亡。



藤咲コウレンの妻

 メイシアの継母。ハオリュウの実母。平民バイスア

 心労で正気を失ってしまい、別荘で暮らしていたが、メイシアがお見舞いに行ったあとから徐々に快方に向かっている。



緋扇ひおうぎシュアン

 ハオリュウの歳の離れた友人であり、現在は秘書。三十路手前程度。悪人面の凶相の持ち主。

 もとは銃の名手のイカレ警察隊員であったが、摂政の陰謀により投獄。獄死を装って救出されたため、自由民スーイラとなった。

 幼いころ、凶賊ダリジィン同士の抗争に巻き込まれ、家族を失った。そのため、「世を正す」と正義感に燃えて警察隊に入るも、腐った現実に絶望していた。しかし、ハオリュウと出会い、彼を『理想の権力者』に育てることに希望を見出した。

 また、以前より、秘めた愛情をいだいていたミンウェイと家族になった。

 

鷹刀ミンウェイ

 鷹刀一族の総帥の補佐を務めていたが、リュイセンに追放という形で背中を押され、シュアンのもとに来た。現在は、ハオリュウの侍医として、シュアンと共に藤咲家に住み込みで働いている。

 緩やかに波打つ長い髪と、豊満な肉体を持つ、二十代半ばに見える絶世の美女。ただし、本来は直毛。薬草と毒草のエキスパート。医師免状も持っている。

 かつて〈ベラドンナ〉という名の毒使いの暗殺者として暗躍していた。

 母親だと思っていた人物のクローンであり、そのために『父親』ヘイシャオに溺愛という名の虐待を受けていたのだと知った。苦悩はあったが、今は乗り越えている。





[草薙家・他]



草薙レイウェン

 エルファンの長男。リュイセンの兄。

 妻のシャンリーと共に一族を抜けて、服飾会社、警備会社など、複数の会社を興す。

 

草薙シャンリー

 レイウェンの妻。チャオラウの姪だが、赤子のころに両親を亡くしたためチャオラウの養女になっている。王宮に召されるほどの剣舞の名手。

 遠目には男性にしかみえない。本人は男装をしているつもりはないが、男装の麗人と呼ばれる。



草薙クーティエ

 レイウェンとシャンリーの娘。リュイセンの姪に当たる。十歳。可愛らしく、活発。

 ハオリュウが、彼女の父レイウェンに『お嬢さんをください』という意味合いを含めて決闘を申し込んだらしいのだが、惨敗したので、ふたりの間柄は保留である。



斑目タオロン

 よく陽に焼けた浅黒い肌に、意思の強そうな目をした、もと凶賊ダリジィン斑目一族の若い衆。

 堂々たる体躯に猪突猛進の性格。二十四歳だが、童顔ゆえに、二十歳そこそこに見られる。

 斑目一族や〈ムスカ〉にいいように使われていたが、今はレイウェンの警備会社で働いている。将来的には、ハオリュウの専属護衛になる予定。



斑目ファンルゥ

 タオロンの娘。四、五歳くらい。

 くりっとした丸い目に、ぴょんぴょんとはねた癖っ毛が愛らしい。





[繁華街]



シャオリエ

 高級娼館の女主人。年齢不詳若くはないはず

 外見は嫋やかな美女だが、中身は『姐さん』。

 実は〈影〉であり、イーレオを育てた、パイシュエという人物の記憶を持つ。



スーリン

 シャオリエの店の娼婦。

 くるくる巻き毛のポニーテールが似合う、小柄で可愛らしい少女。ということになっているが妖艶な美女という説もある。

 本人曰く、もと女優の卵である。実年齢は不明。



ルイリン

 ルイフォンの女装姿につけられた名前。

 タオロンとい仲の少女娼婦。癖の強い、長い黒髪の美少女。

 少女にしては長身で、そのことを気するかのように猫背である。

 ――という設定になっている。

 また、『仕立て屋の助手』として、ユイランと王宮に訪れたのも『彼女』である。



トンツァイ

 繁華街の情報屋。

 痩せぎすの男。



キンタン

 トンツァイの息子。ルイフォンと同い年。

 カードゲームが好き。





===大華王国について===



 黒髪黒目の国民の中で、白金の髪、青灰色の瞳を持つ王が治める王国である。

 身分制度は、王族フェイラ貴族シャトーア平民バイスア自由民スーイラに分かれている。

 また、暴力的な手段によって団結している集団のことを凶賊ダリジィンと呼ぶ。彼らは平民バイスア自由民スーイラであるが、貴族シャトーア並みの勢力を誇っている。

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