残酷な描写あり
岩屑に埋もれし信仰の迷宮――アル・グレイル遺跡 1
遺跡までの道中、アリアはルイスとシスティナに、異世界に来てから苦労したことを語ることにした。
まずは食事のこと。なんだかいつも食べることばかり考えているようだが、やはり食は大事だと思う。美味しいものが食べたい。
ファウンテールの食事も想像よりも美味しかったし、日本人であるアリアの舌にも合っていたのだが、それでもアストリア(日本)とは食材も調理方法も異なる。当然、味付けも。
こちらに来てから一ヶ月も経ってさすがに慣れてきたが、それでも日本の料理が恋しくないと言えば嘘になる。
そして。
ある意味では食事よりももっと深刻な、困った問題があった。
「お風呂に入りたい……」
アリアがつぶやくと、システィナが少しだけ驚いた表情をした。
「お風呂ですか?」
「うん。私のいた日本ではね、毎日お風呂に入ってたんだよ」
どうやら、こちらの世界でも町によっては浴場のようなものがあるにはあるようなのだが、それは珍しいものらしい。残念ながら、アリアたちの滞在しているナガルにはない。
通常、こちらの世界の人々は風呂には入らずに、お湯とタオルで体を拭うくらいで済ますのが当たり前なのである。
もちろん、シャワーなどという文明の力は存在しない。
それをアリアが語ると、ルイスが「ふぅ」と感嘆の息を吐いた。
「そうか。どうやら、君のいた国は本当に豊かだったのだな。聞く限り、一人一人の民の生活が、まるで王侯貴族のようだ」
「……うん。そうだよね。食べ物も捨てちゃうほどあったし」
思えばそうだったかもしれない。日本の豊かな暮らしは、こちらの世界からすると貴族のように感じるだろう。――実際は、そんなにいいものでもない気もするが。
ちなみに、ルイスに対して、女性であるアリアたちを「貴公」と呼んでいるのが不自然だと指摘すると――。
「そうか。……私は騎士であり、男性ばかりの環境にいたからな。女性に対する言葉遣いなどは、勉強不足な面がある。すまない」
これからも失礼な言動をしてしまうことがあるかもしれないが、どうか許してほしい。
彼はそう言ったのだった。
意外だった。ルイスはもっと女性慣れしていそうだったのに。
殊勝な物言いは、嘘をついているようにも思えなかった。
そんなことがあって、ルイスはアリアたちのことを「君」と呼ぶようになった。
まあ、それはそれでルイスが言うとちょっと気障っぽい。
「今度は、システィナのことを教えてくれないか?」
ルイスが今度は、銀髪の少女へと話を振った。
「わたしですか……?」
「ああ。アリアと出会う前、君はどうしていたんだ?」
「それは……」
システィナは暗い表情で口篭る。
それもそうだろう。システィナの歩んできた道は、決して平坦なものではない。過去にあった出来事は、どれも思い出したくもない過酷なものばかり。
彼女にとっては、幸せだった記憶すら、今となっては自身の罪悪感を募らせる呪いでしかない。
気軽に他人に話せるような内容ではないし、話たいとも思わないだろう。
「ルイス、システィナはちょっと話せない事情があって……」
アリアが口を挟むと、ルイスは申し訳なさそうに言う。
「そうか……すまない。冒険者の素性はあまり詮索するものではないと、わかってはいたのだがな」
「……ごめんなさい」
せっかくの楽しい話を、暗い雰囲気にしてしまった。
そのことをシスティナは心苦しく思っているようだ。
それを察してなのか、ルイスが大袈裟に語り始める。
「では、次は私の話をさせてもらうが、いいかな?」
「あはは。どうぞどうぞ」
「私はね。もとは騎士として王都フォンデインにいたんだ」
「王都フォンデイン?」
首を傾げるアリアに、システィナが捕捉する。
「この国の首都です。今は穢れに飲まれてしまっていて、ほとんど機能していませんが……」
「ああ、冒険者ギルドの本部のある場所!」
「そうだ。少しの間だが、私は王都の騎士団に世話になっていたんだ。そこで礼儀作法をはじめ、人の世に関するあれこれを学んだのさ」
「へぇ」
王都の騎士。この世界の身分制度はどうなっているかわからないが、ルイスはいいとこの生まれなのだろうか。
「騎士になる前は、どんな生活をしていたの?」
ルイスは見た目も若いし、騎士になる前というと、子供の頃の話になるだろう。
この国において高い身分の人間がどういう生活をしているのか、純粋に興味があった。
「騎士になる前か。……実は私の生まれは、少し特殊でね。なぜなら……」
ルイスが何かを言いかけたところで、急に真面目な顔をして口を閉ざした。
「……そろそろ魔物の出る領域だな。ゴブリンの住処となったアル・グレイル遺跡も近いし、続きはクエストを達成してからにしよう」
クエストとは、冒険者ギルドから受注する依頼のことだ。
どうやら、話をしているうちに目的地近くまで来ていたらしい。
「そうだね。気を引き締めていこう」
「はい」
システィナも首肯して、杖を握り直した。
ルイスは背負っていた槍を手に取り、いつでも戦闘ができるように準備をする。
「作戦はどうするの?」
その問いに、この中でもっとも等級の高いルイスが答える。
「正面から来る魔族は、基本的には私に任せてもらえれば問題ない。君たちは援護に徹して欲しい」
「……頼もしいね。わかったよ」
「承りました。もし遺跡の中が暗くて視界が効かなかった場合、私が星灯りの魔術を使います」
「魔術師がいるのは、本当に心強いな。頼む」
戦闘にルイス、アリアが二番手、後衛にシスティナという並びになり、三人の冒険者はアル・グレイル遺跡を目指す。
幸運にも、道中で魔物と遭遇することなく目的地に辿り着いた。
アル・グレイル遺跡。石造りの建造物はかなり大きなものに見えるが、全貌は計り知ることができない。なぜなら、建物の半ば以上は岩屑によって埋まり、付近の岩山と一体化しているからだ。
「……土砂崩れでも起きたのかな?」
アリアの疑問の声に、システィナが答える。
「おそらく、そうだと思います。しかしこれだけの規模となると……地形が変わるほどの天変地異か、あるいは……何か巨大な魔物でも現れたのか」
岩山という怪物に飲み込まれたような異様のアル・グレイル遺跡。それにアリアとシスティナが目を奪われていると、横からルイスが声をかける。
「さて、周囲に問題はなさそうだし、中に入るとしようか。……内部は暗くて視界が効かないな。本来であればランタン頼りになるのだが、システィナ、灯りは君に任せていいのだろう?」
「は、はい」
言われてシスティナが、星灯りの魔術を行使する。
すると彼女の杖に青白い魔術の明かりが宿り、暗い遺跡の中が、まるで昼間の太陽の下にいるように辺りが照らし出された。
「……魔術とは、便利なものだな」
「えへへ。システィナすごいでしょ?」
「ああ。これは中の探索も楽に進められそうだ」
二人に褒められたシスティナが、照れて小さくはにかむ。
「しかし、妙だな」
ルイスが腕を組んで疑問を呈する。
「何が?」
「いや……この遺跡がゴブリンの住処になっているなら、入り口付近に見張りくらいいそうなものだが。……奴らも、そのくらいの知恵はあるはずだ」
たしかに。
そう思ってアリアが魔術によって照らされた遺跡の奥を覗いてみると。
目が合った。子供くらいのサイズの何者か。緑色の肌に、長く鋭い耳。
その数、二匹。
「ゴブリン!」
アリアが叫ぶと同時に、ゴブリンも喚き始めた。
「ニンゲン! ニンゲン!」
「ニンゲンだ! 仲間に知らせろ!」
それを聞いて、システィナが緊迫した声を上げる。
「逃してはダメです、仲間を呼ばれてしまいます……!」
「くっ」アリアが剣を手にゴブリンを追いかけようとした瞬間、その脇をルイスが疾風のように通り抜けた。
駆け寄り様に槍をひと突き。その一撃はゴブリンの胴体を深々と貫く。そして切っ先に妖魔の体が刺さったままの槍を、ルイスは凄まじい膂力で振り払って妖魔の体を投げ飛ばしてから、素早くもう一匹のゴブリンの頭を槍で貫いた。
壁に叩きつけられた一匹と、頭を貫かれたもう一匹の「ぐぎゃ」という断末魔の声が重なる。
槍についた露を払いながら、ルイスが振り向く。
「ここは片付いたな。先に進もう。奴らが私たちの侵入に気づくまで待つこともあるまい」
「う、うん」
周囲を警戒しながら慎重に遺跡の奥へと進んでいくルイスの後を、アリアとシスティナが続く。
「……ルイス、やっぱりすごいんだね」
アリアがこっそりとシスティナに耳打ちする。
「銀級冒険者、初めてご一緒しましたが、これほどとは……」
「ルイスについていけば、私たちは楽できるかもしれないね」
「もう……アリアったら」
先頭を進んでいたルイスが、突如その歩みを止める。
「待て。……前方に、気配がする」
「またゴブリン?」
「おそらくな」
気配というものはわからないが、なにか――ひどいにおいがする。
というか、臭い。壁とかも、なんだかヌメヌメとしていて汚い。
吐き気がして、アリアは口元を押さえた。
「この曲がり角の向こうに広間がある。そこに、いる」
廊下の角の壁に背を預け、前方を覗き込みながらルイスは言った。
システィナも表情を引き締め、尋ねる。
「敵の数は?」
「おそらく……十匹程度といったところか。奥にもっといるかもしれない」
「そうですか……」
「突入するぞ、準備はいいか?」
それぞれの武器を構え直して、アリアとシスティナはうなずいた。
「行くぞ」というルイスの合図とともにアリアたち三人は走り出し、広間へとなだれ込んだ。
まずは食事のこと。なんだかいつも食べることばかり考えているようだが、やはり食は大事だと思う。美味しいものが食べたい。
ファウンテールの食事も想像よりも美味しかったし、日本人であるアリアの舌にも合っていたのだが、それでもアストリア(日本)とは食材も調理方法も異なる。当然、味付けも。
こちらに来てから一ヶ月も経ってさすがに慣れてきたが、それでも日本の料理が恋しくないと言えば嘘になる。
そして。
ある意味では食事よりももっと深刻な、困った問題があった。
「お風呂に入りたい……」
アリアがつぶやくと、システィナが少しだけ驚いた表情をした。
「お風呂ですか?」
「うん。私のいた日本ではね、毎日お風呂に入ってたんだよ」
どうやら、こちらの世界でも町によっては浴場のようなものがあるにはあるようなのだが、それは珍しいものらしい。残念ながら、アリアたちの滞在しているナガルにはない。
通常、こちらの世界の人々は風呂には入らずに、お湯とタオルで体を拭うくらいで済ますのが当たり前なのである。
もちろん、シャワーなどという文明の力は存在しない。
それをアリアが語ると、ルイスが「ふぅ」と感嘆の息を吐いた。
「そうか。どうやら、君のいた国は本当に豊かだったのだな。聞く限り、一人一人の民の生活が、まるで王侯貴族のようだ」
「……うん。そうだよね。食べ物も捨てちゃうほどあったし」
思えばそうだったかもしれない。日本の豊かな暮らしは、こちらの世界からすると貴族のように感じるだろう。――実際は、そんなにいいものでもない気もするが。
ちなみに、ルイスに対して、女性であるアリアたちを「貴公」と呼んでいるのが不自然だと指摘すると――。
「そうか。……私は騎士であり、男性ばかりの環境にいたからな。女性に対する言葉遣いなどは、勉強不足な面がある。すまない」
これからも失礼な言動をしてしまうことがあるかもしれないが、どうか許してほしい。
彼はそう言ったのだった。
意外だった。ルイスはもっと女性慣れしていそうだったのに。
殊勝な物言いは、嘘をついているようにも思えなかった。
そんなことがあって、ルイスはアリアたちのことを「君」と呼ぶようになった。
まあ、それはそれでルイスが言うとちょっと気障っぽい。
「今度は、システィナのことを教えてくれないか?」
ルイスが今度は、銀髪の少女へと話を振った。
「わたしですか……?」
「ああ。アリアと出会う前、君はどうしていたんだ?」
「それは……」
システィナは暗い表情で口篭る。
それもそうだろう。システィナの歩んできた道は、決して平坦なものではない。過去にあった出来事は、どれも思い出したくもない過酷なものばかり。
彼女にとっては、幸せだった記憶すら、今となっては自身の罪悪感を募らせる呪いでしかない。
気軽に他人に話せるような内容ではないし、話たいとも思わないだろう。
「ルイス、システィナはちょっと話せない事情があって……」
アリアが口を挟むと、ルイスは申し訳なさそうに言う。
「そうか……すまない。冒険者の素性はあまり詮索するものではないと、わかってはいたのだがな」
「……ごめんなさい」
せっかくの楽しい話を、暗い雰囲気にしてしまった。
そのことをシスティナは心苦しく思っているようだ。
それを察してなのか、ルイスが大袈裟に語り始める。
「では、次は私の話をさせてもらうが、いいかな?」
「あはは。どうぞどうぞ」
「私はね。もとは騎士として王都フォンデインにいたんだ」
「王都フォンデイン?」
首を傾げるアリアに、システィナが捕捉する。
「この国の首都です。今は穢れに飲まれてしまっていて、ほとんど機能していませんが……」
「ああ、冒険者ギルドの本部のある場所!」
「そうだ。少しの間だが、私は王都の騎士団に世話になっていたんだ。そこで礼儀作法をはじめ、人の世に関するあれこれを学んだのさ」
「へぇ」
王都の騎士。この世界の身分制度はどうなっているかわからないが、ルイスはいいとこの生まれなのだろうか。
「騎士になる前は、どんな生活をしていたの?」
ルイスは見た目も若いし、騎士になる前というと、子供の頃の話になるだろう。
この国において高い身分の人間がどういう生活をしているのか、純粋に興味があった。
「騎士になる前か。……実は私の生まれは、少し特殊でね。なぜなら……」
ルイスが何かを言いかけたところで、急に真面目な顔をして口を閉ざした。
「……そろそろ魔物の出る領域だな。ゴブリンの住処となったアル・グレイル遺跡も近いし、続きはクエストを達成してからにしよう」
クエストとは、冒険者ギルドから受注する依頼のことだ。
どうやら、話をしているうちに目的地近くまで来ていたらしい。
「そうだね。気を引き締めていこう」
「はい」
システィナも首肯して、杖を握り直した。
ルイスは背負っていた槍を手に取り、いつでも戦闘ができるように準備をする。
「作戦はどうするの?」
その問いに、この中でもっとも等級の高いルイスが答える。
「正面から来る魔族は、基本的には私に任せてもらえれば問題ない。君たちは援護に徹して欲しい」
「……頼もしいね。わかったよ」
「承りました。もし遺跡の中が暗くて視界が効かなかった場合、私が星灯りの魔術を使います」
「魔術師がいるのは、本当に心強いな。頼む」
戦闘にルイス、アリアが二番手、後衛にシスティナという並びになり、三人の冒険者はアル・グレイル遺跡を目指す。
幸運にも、道中で魔物と遭遇することなく目的地に辿り着いた。
アル・グレイル遺跡。石造りの建造物はかなり大きなものに見えるが、全貌は計り知ることができない。なぜなら、建物の半ば以上は岩屑によって埋まり、付近の岩山と一体化しているからだ。
「……土砂崩れでも起きたのかな?」
アリアの疑問の声に、システィナが答える。
「おそらく、そうだと思います。しかしこれだけの規模となると……地形が変わるほどの天変地異か、あるいは……何か巨大な魔物でも現れたのか」
岩山という怪物に飲み込まれたような異様のアル・グレイル遺跡。それにアリアとシスティナが目を奪われていると、横からルイスが声をかける。
「さて、周囲に問題はなさそうだし、中に入るとしようか。……内部は暗くて視界が効かないな。本来であればランタン頼りになるのだが、システィナ、灯りは君に任せていいのだろう?」
「は、はい」
言われてシスティナが、星灯りの魔術を行使する。
すると彼女の杖に青白い魔術の明かりが宿り、暗い遺跡の中が、まるで昼間の太陽の下にいるように辺りが照らし出された。
「……魔術とは、便利なものだな」
「えへへ。システィナすごいでしょ?」
「ああ。これは中の探索も楽に進められそうだ」
二人に褒められたシスティナが、照れて小さくはにかむ。
「しかし、妙だな」
ルイスが腕を組んで疑問を呈する。
「何が?」
「いや……この遺跡がゴブリンの住処になっているなら、入り口付近に見張りくらいいそうなものだが。……奴らも、そのくらいの知恵はあるはずだ」
たしかに。
そう思ってアリアが魔術によって照らされた遺跡の奥を覗いてみると。
目が合った。子供くらいのサイズの何者か。緑色の肌に、長く鋭い耳。
その数、二匹。
「ゴブリン!」
アリアが叫ぶと同時に、ゴブリンも喚き始めた。
「ニンゲン! ニンゲン!」
「ニンゲンだ! 仲間に知らせろ!」
それを聞いて、システィナが緊迫した声を上げる。
「逃してはダメです、仲間を呼ばれてしまいます……!」
「くっ」アリアが剣を手にゴブリンを追いかけようとした瞬間、その脇をルイスが疾風のように通り抜けた。
駆け寄り様に槍をひと突き。その一撃はゴブリンの胴体を深々と貫く。そして切っ先に妖魔の体が刺さったままの槍を、ルイスは凄まじい膂力で振り払って妖魔の体を投げ飛ばしてから、素早くもう一匹のゴブリンの頭を槍で貫いた。
壁に叩きつけられた一匹と、頭を貫かれたもう一匹の「ぐぎゃ」という断末魔の声が重なる。
槍についた露を払いながら、ルイスが振り向く。
「ここは片付いたな。先に進もう。奴らが私たちの侵入に気づくまで待つこともあるまい」
「う、うん」
周囲を警戒しながら慎重に遺跡の奥へと進んでいくルイスの後を、アリアとシスティナが続く。
「……ルイス、やっぱりすごいんだね」
アリアがこっそりとシスティナに耳打ちする。
「銀級冒険者、初めてご一緒しましたが、これほどとは……」
「ルイスについていけば、私たちは楽できるかもしれないね」
「もう……アリアったら」
先頭を進んでいたルイスが、突如その歩みを止める。
「待て。……前方に、気配がする」
「またゴブリン?」
「おそらくな」
気配というものはわからないが、なにか――ひどいにおいがする。
というか、臭い。壁とかも、なんだかヌメヌメとしていて汚い。
吐き気がして、アリアは口元を押さえた。
「この曲がり角の向こうに広間がある。そこに、いる」
廊下の角の壁に背を預け、前方を覗き込みながらルイスは言った。
システィナも表情を引き締め、尋ねる。
「敵の数は?」
「おそらく……十匹程度といったところか。奥にもっといるかもしれない」
「そうですか……」
「突入するぞ、準備はいいか?」
それぞれの武器を構え直して、アリアとシスティナはうなずいた。
「行くぞ」というルイスの合図とともにアリアたち三人は走り出し、広間へとなだれ込んだ。