村の外はどんなとこ?
都会にあこがれる田舎民
田舎にあこがれる都会民
ちょうどいいとこないの?
田舎にあこがれる都会民
ちょうどいいとこないの?
ティベリアさんとジェネザレスさんは、わたしたちをこころよく迎えてくれた。急な来訪にもかかわらず、ふたりはわたしたちのお夕飯まで用意してくれた。
牧場ならではの贖罪で歓迎してくれるそうだ。今からヨダレだばだばだけど、その時にはまだはやい。もうおなかがグースカピーでございまして、そんな気分をごまかすために、わたしは村を散策することにした。
みんなを誘ってみたら、ドロちんは室内で読書。ブッちゃんは牧場を手伝うそうです。あんずちゃんにも遠慮する言われまして、わたしは久々のシングルプレイ中。
「ありがとねぇ」
「いいのいいの! また何かあったら呼んでね!」
屋根から飛び降り、そこに引っかかってたハンマーを持ち主に返した。やっぱり人に感謝されるときもちいね。
旅の道中、いろんな集落や村に足を踏み入れる。そこではいっしょに食べたり飲んだりして、たまに困ってる人を助けたりする。時には路銀をもらうけど、人は助け合ってなんぼだとオジサンも言ってた。
ここにはお宿がないけど、フラーへの道中だから旅人はよく通るらしい。だから、村の人たちはたまに旅人を泊めてあげたり、そのかわりいろいろなお手伝いをしてもらう。人が少ない場所だけど、それでもきちんとしたおうちが多かったり建物が立派だったりするのはそういう理由なんだろう。中央に設置された井戸も屋根付きでしっかりしたものだ。
「ねえねえ。あなた、旅人さん?」
村の中心をぶらぶらしてたとき、うしろからとんとん迫ってくる足音が聞こえた。敵意がなかったので放っておいたけど、近いし話しかけられたので振り向くことにする。
「なに?」
振り向き、わたしはちょっと目線を下げた。
ちいさなおんなの子がいた。
「旅人さんだよね?」
見たかんじ10才くらい? 白い薄手のワンピース。麦わらぼうしをすっぽりかぶり、その中からうすくピンク色の髪の毛が伸びている。
茶色く、好奇心旺盛な瞳がキラキラしていて、年相応の無邪気でかわいい笑顔だった。
「うん、そうだよ」
わたしが肯定の意思を示すと、少女は嬉々として言葉を重ねてきた。
「外ってどんなとこ? たのしい? それともキケンがいっぱい?」
「えぇっと」
そんなずいずい尋ねられてもなぁ。いかにも外の世界にあこがれてるような感じ。次の瞬間には「いっしょにつれてって!」なんて言われてしまいそうだ。
(言われたことあるなぁ……ついでに口説かれたことも)
しつこいジジイに言い寄られてうで触られて。思わず股間にシュートしそうになったけどあん時ゃ堪えた。だれかわたしをほめて。
「ねえ! きいてるの!」
「え、うわっ」
うで引っ張られた。その拍子に懐に忍ばせたナイフが動き、彼女のうでに触れた。
「ねえ、そこに何かはいってるの? 見せて!」
「い、いやぁそれは」
困るなぁ、だってこれ大型獣用なのよ。小型ナイフで大型を仕留めるにはくふうがいるじゃん? つまりそういうことです。
(だからサヤ付き。使う時以外は決して抜いてはならぬのだ)
「ここ?」
「って、あ、ちょっと!」
まさぐられた! っていうかスられた!
「なにこれ? ふた?」
厳重に取り付けられた鞘を取り外そうとしてる。いや待ってそれはまずい。
「こーら」
少女が持つナイフを取り上げる。さすがに緊急案件なので全力で奪い返しまして、その結果、少女にとっては一瞬で手に持っていたナイフが消えた演出になる。
「え?」
こちらを見上げる。そして、わたしの手にナイフが握られていることを知る。
「すごい!」
少女はよろこんだ。
「どうやったの! まほう? ねえもういちどやってよ!」
(あーこれは対応に困るなぁ。こんな時は)
さっさと逃げるに限るよね。
「あ、ちょっと!」
うしろから声、あんどちっちゃな足でとてとて地面を蹴る音。ちっちゃな子どもとのかけっこは、問答無用でわたしがぶっちぎることになりました。
「ごっはんっだごっはんっだぁ~」
木目のまるテーブルに料理が並ぶ。もくっと煙をたてたチキン。畑で育てた野菜を煮込んだスープ。それがドンと中央に鎮座して、ナタのような包丁を手におばあさんが切り分けてくれている。
これをみたらサっちゃんよろこぶだろうなぁなんて思いつつ、今は目の前のお料理にしか目がいきません。はよ、はよ!
「グレース、よだれ」
「あぅ」
今は装備を脱ぎ捨てたあんずちゃんからご指摘。でもムリ止められないだばぁ。
「煩悩にまみれおって」
「そういうブーラーこそ手がはやいんじゃないの」
「受け取りやすくするだけだ」
と、お互い皿を手に睨み合うくろいのとしろいの。デカいのとチビなの。僧侶と魔法使い。ふたりともほんっと対照的だよね。
「さあ、みんなにまわりましたか?」
ジェネザレスさんがそれぞれの皿を確認する。いいですよ、みんなチキンのっかってますよ。
「だからはよ!」
「こころの声が漏れてますわよ」
「ふふふ、久しぶりに賑やかな夜ですね、ティベリア?」
「そうじゃな」
暖炉の前のイスに腰掛けたティベリアさんが柔和な笑みを浮かべ、その背後にある写し身を懐かしむ。それからふと思い出したかのように、彼は薄暗くなった窓の外に目をやった。
「そろそろ孫娘も帰って来ることじゃな」
って言ったそばから木製の扉が開け放たれる音。それから、小さなおんなの子の声が室内まで響いてくる。
「ただいまぁ~」
(ん?)
この声どっかで。いやまてよ?
(イヤな予感する)
「ねえねえおじいちゃん! 今日旅人さんと会ったんだ! おんなのひとで、なんかフタつきのナイフもってた――あ!!」
その少女は部屋へ足を踏み入れ、こちらに気づくとズバッと指さした。
「旅人さん!」
麦わら帽子からピンクの髪がのぞく。少女はキラキラした瞳をこちらを凝視し、おもいっきり笑顔になった。
牧場ならではの贖罪で歓迎してくれるそうだ。今からヨダレだばだばだけど、その時にはまだはやい。もうおなかがグースカピーでございまして、そんな気分をごまかすために、わたしは村を散策することにした。
みんなを誘ってみたら、ドロちんは室内で読書。ブッちゃんは牧場を手伝うそうです。あんずちゃんにも遠慮する言われまして、わたしは久々のシングルプレイ中。
「ありがとねぇ」
「いいのいいの! また何かあったら呼んでね!」
屋根から飛び降り、そこに引っかかってたハンマーを持ち主に返した。やっぱり人に感謝されるときもちいね。
旅の道中、いろんな集落や村に足を踏み入れる。そこではいっしょに食べたり飲んだりして、たまに困ってる人を助けたりする。時には路銀をもらうけど、人は助け合ってなんぼだとオジサンも言ってた。
ここにはお宿がないけど、フラーへの道中だから旅人はよく通るらしい。だから、村の人たちはたまに旅人を泊めてあげたり、そのかわりいろいろなお手伝いをしてもらう。人が少ない場所だけど、それでもきちんとしたおうちが多かったり建物が立派だったりするのはそういう理由なんだろう。中央に設置された井戸も屋根付きでしっかりしたものだ。
「ねえねえ。あなた、旅人さん?」
村の中心をぶらぶらしてたとき、うしろからとんとん迫ってくる足音が聞こえた。敵意がなかったので放っておいたけど、近いし話しかけられたので振り向くことにする。
「なに?」
振り向き、わたしはちょっと目線を下げた。
ちいさなおんなの子がいた。
「旅人さんだよね?」
見たかんじ10才くらい? 白い薄手のワンピース。麦わらぼうしをすっぽりかぶり、その中からうすくピンク色の髪の毛が伸びている。
茶色く、好奇心旺盛な瞳がキラキラしていて、年相応の無邪気でかわいい笑顔だった。
「うん、そうだよ」
わたしが肯定の意思を示すと、少女は嬉々として言葉を重ねてきた。
「外ってどんなとこ? たのしい? それともキケンがいっぱい?」
「えぇっと」
そんなずいずい尋ねられてもなぁ。いかにも外の世界にあこがれてるような感じ。次の瞬間には「いっしょにつれてって!」なんて言われてしまいそうだ。
(言われたことあるなぁ……ついでに口説かれたことも)
しつこいジジイに言い寄られてうで触られて。思わず股間にシュートしそうになったけどあん時ゃ堪えた。だれかわたしをほめて。
「ねえ! きいてるの!」
「え、うわっ」
うで引っ張られた。その拍子に懐に忍ばせたナイフが動き、彼女のうでに触れた。
「ねえ、そこに何かはいってるの? 見せて!」
「い、いやぁそれは」
困るなぁ、だってこれ大型獣用なのよ。小型ナイフで大型を仕留めるにはくふうがいるじゃん? つまりそういうことです。
(だからサヤ付き。使う時以外は決して抜いてはならぬのだ)
「ここ?」
「って、あ、ちょっと!」
まさぐられた! っていうかスられた!
「なにこれ? ふた?」
厳重に取り付けられた鞘を取り外そうとしてる。いや待ってそれはまずい。
「こーら」
少女が持つナイフを取り上げる。さすがに緊急案件なので全力で奪い返しまして、その結果、少女にとっては一瞬で手に持っていたナイフが消えた演出になる。
「え?」
こちらを見上げる。そして、わたしの手にナイフが握られていることを知る。
「すごい!」
少女はよろこんだ。
「どうやったの! まほう? ねえもういちどやってよ!」
(あーこれは対応に困るなぁ。こんな時は)
さっさと逃げるに限るよね。
「あ、ちょっと!」
うしろから声、あんどちっちゃな足でとてとて地面を蹴る音。ちっちゃな子どもとのかけっこは、問答無用でわたしがぶっちぎることになりました。
「ごっはんっだごっはんっだぁ~」
木目のまるテーブルに料理が並ぶ。もくっと煙をたてたチキン。畑で育てた野菜を煮込んだスープ。それがドンと中央に鎮座して、ナタのような包丁を手におばあさんが切り分けてくれている。
これをみたらサっちゃんよろこぶだろうなぁなんて思いつつ、今は目の前のお料理にしか目がいきません。はよ、はよ!
「グレース、よだれ」
「あぅ」
今は装備を脱ぎ捨てたあんずちゃんからご指摘。でもムリ止められないだばぁ。
「煩悩にまみれおって」
「そういうブーラーこそ手がはやいんじゃないの」
「受け取りやすくするだけだ」
と、お互い皿を手に睨み合うくろいのとしろいの。デカいのとチビなの。僧侶と魔法使い。ふたりともほんっと対照的だよね。
「さあ、みんなにまわりましたか?」
ジェネザレスさんがそれぞれの皿を確認する。いいですよ、みんなチキンのっかってますよ。
「だからはよ!」
「こころの声が漏れてますわよ」
「ふふふ、久しぶりに賑やかな夜ですね、ティベリア?」
「そうじゃな」
暖炉の前のイスに腰掛けたティベリアさんが柔和な笑みを浮かべ、その背後にある写し身を懐かしむ。それからふと思い出したかのように、彼は薄暗くなった窓の外に目をやった。
「そろそろ孫娘も帰って来ることじゃな」
って言ったそばから木製の扉が開け放たれる音。それから、小さなおんなの子の声が室内まで響いてくる。
「ただいまぁ~」
(ん?)
この声どっかで。いやまてよ?
(イヤな予感する)
「ねえねえおじいちゃん! 今日旅人さんと会ったんだ! おんなのひとで、なんかフタつきのナイフもってた――あ!!」
その少女は部屋へ足を踏み入れ、こちらに気づくとズバッと指さした。
「旅人さん!」
麦わら帽子からピンクの髪がのぞく。少女はキラキラした瞳をこちらを凝視し、おもいっきり笑顔になった。