すべてはこの日のため
意見があるならしっかり言いましょう
異世界人が突然立ち上がってさけんだ。
たぶん、みんなにとっては突然のできごと。だから階段の左右で立ってる貴族風の人たちはその人を好奇の目で見てるだろう。
甲冑に身を包んだ人たちの何人かが武器に手をかける様子がチラリと見えた。護衛としてただしい判断だ。わたしだって急に叫ぶようなヤツが近くにいたら、懐の武器を確認していろいろ想定してたとおもう。
いまは武器を持ってない。そのかわり、わたしは好き勝手にひとの進路を決めようとした男を睨みつけた。
「どうした」
彼はただしずかにこちらを見返していた。乾いた目。そこからはなんの感情も汲み取れない。
(ううん、ちがう)
そこには燃えたぎるような熱がある。野望がある。でも、こちらに向けられた感情はなにもない。
わたしたちを"モノ"だと認識してるからだ。
「勝手にいろいろ決めないで! わたしは戦いなんていかないよ」
「そうだ。これは戦いではない。我らが領土をまもるための行動だ」
「それってけっきょく戦うってことじゃん!」
言い方変えただけじゃん!
「我が国が危機にさらされているのだ。異世界人にはそれを憂う感情すらないのか?」
「そんなことないよ! なんでそんなふうに言うの!?」
「グレース、落ち着け」
「オジサンはだまってて!」
となりからくる声をさらに遮って、わたしはただバカみたいなことを言う人間にだけ焦点を合わせた。
「こんなのゼッタイおかしいよ! だって、なんかみんな戦いたいからいろいろ考えてるみたいじゃん」
「……ふん」
そこではじめて、高そうな布に身を包んだ王子さまがわたしを見た。
ひとつの存在として認知した。けど、その目は明らかに自分以外を見下していた。
「侵略され、ただ守るだけの国はバカにされる。そしてさらに攻められる。それを防ぐ手段がなんだかわかるか?」
彼は答えを期待しない。だからこそ、間をもたずすぐに次の言葉を紡いだ。
「巨大な力を見せつけ、侵略し、逆にヤツらを支配することだ」
「そんなのいらないよ! っていうかあのふたりは敵国のスパイなんかじゃないと思うよ!」
ピクリ。こちらを睨む金髪が眉を短く痙攣させた。
「ほう? あまつさえこのストッケード城を衝撃せしめた不逞の輩を庇い立てするか? もしや貴様もヤツらの仲間ではあるまいな?」
「だからなんでそうなるの?! ねえ、もっとみんな仲良くしよーよ! ケンカしたってなにもいいことないじゃん!」
「勘違いするな」
蔑むような目をもって彼は言った。
「なんの身分もない貴様らを軍に取り立ててやろうと進言してやるのだ。黙って従え。そうでなければ貴様も反乱分子として捕える」
「レシル王子! それは!」
かしずく姿勢から驚きの表情で立ち上がり、睨み合うわたしと王子の間にオジサンが割り込んできた。
そのまま、またあの格好をする。人がエラい人とエラくない人に分けるための動き。自分からわざわざ低い場所にいくための動作
なんかキライだ。
「グレースは私が直に訓練した精鋭。決してそのような意図はございません!」
気づけばみんな立ち上がっていた。背ぇたか組の女性ふたりは不審感を隠そうとせず演説を行った王子を見てる。一番弟子のスプリットくんはこの状況を戸惑いのなかで傍観し、修道服の少女はただただ静かに様子を見守っていた。
「私は来る時のためこの者らを鍛え上げてきました。そして老骨ながら、私自らも戦場の第一線に立ちたく存じます」
(え?)
信じられない言葉を聞いた。
その言葉に、この世界の住人は驚き喜んだ。
金髪の若い王子がにやりと笑った。
「オジサン?」
それどういうこと?
だって、わたしとオジサンは偶然出会って、みんなと出会って、それでここまでたどり着いて。
(オジサンは行く町や村すべてで異世界人を探してた。それを見つけては仲間に誘ってた。それってつまり)
「わたしたちを利用しようとしてた、だけなの?」
「……」
彼の長い沈黙が、その答えを示していた。
たぶん、みんなにとっては突然のできごと。だから階段の左右で立ってる貴族風の人たちはその人を好奇の目で見てるだろう。
甲冑に身を包んだ人たちの何人かが武器に手をかける様子がチラリと見えた。護衛としてただしい判断だ。わたしだって急に叫ぶようなヤツが近くにいたら、懐の武器を確認していろいろ想定してたとおもう。
いまは武器を持ってない。そのかわり、わたしは好き勝手にひとの進路を決めようとした男を睨みつけた。
「どうした」
彼はただしずかにこちらを見返していた。乾いた目。そこからはなんの感情も汲み取れない。
(ううん、ちがう)
そこには燃えたぎるような熱がある。野望がある。でも、こちらに向けられた感情はなにもない。
わたしたちを"モノ"だと認識してるからだ。
「勝手にいろいろ決めないで! わたしは戦いなんていかないよ」
「そうだ。これは戦いではない。我らが領土をまもるための行動だ」
「それってけっきょく戦うってことじゃん!」
言い方変えただけじゃん!
「我が国が危機にさらされているのだ。異世界人にはそれを憂う感情すらないのか?」
「そんなことないよ! なんでそんなふうに言うの!?」
「グレース、落ち着け」
「オジサンはだまってて!」
となりからくる声をさらに遮って、わたしはただバカみたいなことを言う人間にだけ焦点を合わせた。
「こんなのゼッタイおかしいよ! だって、なんかみんな戦いたいからいろいろ考えてるみたいじゃん」
「……ふん」
そこではじめて、高そうな布に身を包んだ王子さまがわたしを見た。
ひとつの存在として認知した。けど、その目は明らかに自分以外を見下していた。
「侵略され、ただ守るだけの国はバカにされる。そしてさらに攻められる。それを防ぐ手段がなんだかわかるか?」
彼は答えを期待しない。だからこそ、間をもたずすぐに次の言葉を紡いだ。
「巨大な力を見せつけ、侵略し、逆にヤツらを支配することだ」
「そんなのいらないよ! っていうかあのふたりは敵国のスパイなんかじゃないと思うよ!」
ピクリ。こちらを睨む金髪が眉を短く痙攣させた。
「ほう? あまつさえこのストッケード城を衝撃せしめた不逞の輩を庇い立てするか? もしや貴様もヤツらの仲間ではあるまいな?」
「だからなんでそうなるの?! ねえ、もっとみんな仲良くしよーよ! ケンカしたってなにもいいことないじゃん!」
「勘違いするな」
蔑むような目をもって彼は言った。
「なんの身分もない貴様らを軍に取り立ててやろうと進言してやるのだ。黙って従え。そうでなければ貴様も反乱分子として捕える」
「レシル王子! それは!」
かしずく姿勢から驚きの表情で立ち上がり、睨み合うわたしと王子の間にオジサンが割り込んできた。
そのまま、またあの格好をする。人がエラい人とエラくない人に分けるための動き。自分からわざわざ低い場所にいくための動作
なんかキライだ。
「グレースは私が直に訓練した精鋭。決してそのような意図はございません!」
気づけばみんな立ち上がっていた。背ぇたか組の女性ふたりは不審感を隠そうとせず演説を行った王子を見てる。一番弟子のスプリットくんはこの状況を戸惑いのなかで傍観し、修道服の少女はただただ静かに様子を見守っていた。
「私は来る時のためこの者らを鍛え上げてきました。そして老骨ながら、私自らも戦場の第一線に立ちたく存じます」
(え?)
信じられない言葉を聞いた。
その言葉に、この世界の住人は驚き喜んだ。
金髪の若い王子がにやりと笑った。
「オジサン?」
それどういうこと?
だって、わたしとオジサンは偶然出会って、みんなと出会って、それでここまでたどり着いて。
(オジサンは行く町や村すべてで異世界人を探してた。それを見つけては仲間に誘ってた。それってつまり)
「わたしたちを利用しようとしてた、だけなの?」
「……」
彼の長い沈黙が、その答えを示していた。