異世界だもん、ドラゴンいたほうがいいよね!
そーいや出してなかったなって
いや設定自体はあったんだよ?
いや設定自体はあったんだよ?
「ひっさしぶりだなァ! こんなトコロで会えるとは思わなかったぜ!」
激しい破壊音を響かせ、
「知ってたクセに」
あの緑髪のおんなの子もいっしょだ。突然の襲来はもちろん驚きなんだけど、ふたりがなぜ山頂の城のさらに高い位置にある塔を破壊することができた理由のほうが驚きだ。彼らの足は巨大な鱗の上に乗っている。
「ウソだろ!? この世界ドラゴンいんのかよ!」
思わずスプリットくんが叫ぶ。それに対し、ドラゴンに両足をつけた銀髪の男は子どものように笑った。
「異世界なんだからあたりめーだろ? へへ、どーだすげぇだろ!」
スナップの声に呼応するかのように、ドラゴンは城の周囲を旋回していく。その影が城の周囲をめぐるにつれ、会場にいる人々の不安がより深くなっていくのがわかる。
壊れたのは城のごく一部でしかないけど、ドラゴンが本気になればこのお城くらいかんたんに壊すことができそうだ。そんなドラゴンの姿を見て驚愕に目を見開く勇者がひとりだけ存在した。
「ドラゴンだと!?」
「あのデカブツのこと知ってんのかい!」
「トゥーサか。ドラゴンは魔族の領域の存在だ。普段は深い山奥に住み滅多に姿を表さん」
「二十年前の戦いにすら登場しなかった。くぅ、人々の間では伝説上の生物とまで云われてるね」
崩れ落ちたガレキの影からスパイクが出てきた。
「スパイク無事か!」
「なんとかね、でもこちらの女性が」
「エリザベス殿!」
スパイクが肩を抱き引き寄せた女性の姿を見て、ビーちゃんがすぐ悲壮な目でその側に走り寄った。あの人はさっきまでビーちゃんと仲良くお話してた王さまの親戚だった。
「クッ、なぜこのようなことをする!」
激しい怒りの表情で高みを睨みつける。そんな目で見つめられても、手が届かない場所にいるスナップは蔑むような笑みを見せるだけ。
「何度も言わせんなよ! えぬぴーしーが何匹死のうがどーでもいいだろ!」
「貴様ぁ!」
「落ち着けビシェル! 武器がなければ戦いようがない。おまえはみんなの避難を頼む」
その言葉に歯を食いしばりまた頭上を見つめて、それから倒れた女性に目を向け絞り出すように言葉を紡いだ。
「わかった」
「ひなんン~? そんなことさせっかよこっちは、っておわッ!」
「チッ、ガードされたか」
スプリットくんが食器用ナイフを猫背男に突き出す。寸前のところでガードされたけどサンキュ! これで隙ができた。
こいつを仕留める隙が。
「あっぶね!」
(逃さない)
一撃目は飛び退かれる。追いかける。ドラゴンの背は凹凸があり硬い鱗で覆われていた。そのまま二撃、三撃と武器を交わして、結局ヤツの身体にキズをつけることはできなかった。
(やっぱり食器用ナイフじゃこの程度か)
でも武器はこれしかない。わたしは懐に隠し持ったナイフの数を確認した。とっさに鷲掴みしたものだから数はないけど、この地形なら何本か投げて体勢を崩させればチャンスはあるだろう。あるいは――。
(もうひとつ気になることがある)
「くずれた柱をわたってここまで登ってきやがったのか」
「……動きが素早くなった?」
おかしいな、以前のスナップだったら今のでヤれたのに。
「油断大敵。チート状態じゃなかったら今のでゲームオーバーだった」
「うるせぇなキャス余計なお世話だ……っへへ」
「ちーと?」
(なにそれ)
その疑問に答えず、彼は不敵な笑みをうかべこちらと正対した。
「へっ、はじめから全力か――それはこっちもだぜぇ!」
まるで指揮者のように両手をふるう。それと同時に甲高い声が響く。ドラゴンの背から下を覗き込むと、会場にたくさんのマモノが出現して人々を襲っていた。
「マモノが!」
「今日は大サービス回だぜ! メインクエストをぶち壊したらどーなるか見てみたいだろぉ?」
「この世界はゲームじゃない!」
「ゲームなんだよ! あいつらは所詮プログラム通りに動くのさ。テメーらがあのジジイと王城にやってきた瞬間から、あたらしいクエストが始まってるのさ」
「ねえ、あなたも同じ目的で来たの!?」
わたしは緑髪の少女に訴える。わたしの中で、彼女はちがうという声が渦巻いていた。
「わたしはただ新しいクエストがはじまったことを伝えただけ」
少女は淡々と言う。そこに悪意はなく、今起こっている惨状にさえ感情の起伏がうかがえない。
「ひどいことしてるよ? なんとも思わないの?」
「NPCはNPC」
「彼らは生きてるんだよ!」
「わたしは関係ない。けどマスターがそうしろって」
え?
「それ以上言うなキャス」
(今マスターって。じゃあやっぱりこのふたりに命令をしてる人がいるってこと?)
「こんなヒドいこと、いったいだれから命令されてるの!」
「うるせえ! ンなこたァどーだっていいんだよ!」
やれ! 彼のひと言でマモノの動きが激しさを増した。よつあしの動物。大きさこそ人と同じくらいだけど、自身の被害を鑑みずに柱に突進し、燈台を破壊していきパーティー会場がどんどん壊滅状態になっていく。
「やめて!」
「へっ」
スナップの胸めがけて投げたナイフは、ターゲットに命中せずそのまま通り過ぎた。その先にいた少女の前で見えない風に阻まれ弾かれる。
「はやい!」
「あたりめーだろチートなんだからよォ――ああ、忘れてたぜ」
そう言って、スナップは地面に落ちたナイフを拾い上げ自分の胸に突き刺した。
「なッ!」
予想外の行動にスプリットくんが驚愕の声をあげる。それを嘲笑うかのように彼は言った。
「避ける必要もねーんだった」
「どういうことだ!?」
「見てのとーりだよ。んでぇ、最重要キャラの王様はどぉーこいったかなぁ? ……ンだよいねーじゃん!」
猫背をさらに曲げて見下ろすスナップに、うしろの少女は淡々としゃべった。
「王は病気療養中。だけど姿を見せるため控室にいる設定のはず」
「あぁそうか、まあでも王子もメインクエキャラだったがぁ……おかしい、やっぱ死なねぇ」
下ではオジサンが壁に掛けてあった飾り物の剣で応戦している。またサっちゃんもふくすうのマモノを腕で巻き上げ、ビーちゃんとグウェンちゃんはみんなの避難誘導をしている。
それでも間に合わなくて、破壊された柱があちこちに落下していく。でもちょっとまって。
(なに今の?)
王子の真上、かなり大きなガレキが崩れていたはずなのにひとりでに横にズレたような気が――。
「やっぱりな。ったく運が良いで済ませられねーぜゲームマスターさんよぉ。どーせオレさまが直接ぶっ飛ばしても意味ねーんだろ?」
リアルが売りじゃねーのかァ! 彼は猫背を伸ばして天空へと叫んだ。
「無意味」
「うるせえぞキャス! ――ったく萎えたぜ。あーどうせならなにか傷跡残して帰っかなー」
「それならあの女性はどう?」
キャサリンはある女性を見下ろす。ビーちゃんと仲良くお話していたあの人だ。
「サブクエのキーキャラ」
「なるほど、じゃあ殺すか」
「させない!」
ナイフを数本投擲する。それらはすべてスナップの身体をすり抜けていった。
「ムダだっつってんの。じゃーな!」
言って、彼はドラゴンの背中から自然落下していく。着地というより地面への激突。それでも彼はキズひとつ負わなかった。
「何者だ!」
「テメーこそナニモンだ? ――あぁ、あのクソガキとつるんでる女か」
ビーちゃんは広場の隅、比較的被害が軽微な場所にケガを負った人たちを避難させていた。このなかで治療魔法を使える人は少数で、グウェンちゃんも大量の汗を流し救護活動にあたっている。
舞っていた土煙が徐々に晴れていき、ビーちゃんは目の前にいる男の姿を瞳に映した。
「おまえは……」
「ビーちゃん!」
わたしはドラゴンの背から駆け出していった。その間にもスナップは距離を詰めていく。
猫背で白髪。とつぜん表れた男の正体を察したビーちゃんは臨戦態勢にはいる。
「弓がなきゃなんもできねーな。ま、できたとして今のオレさまにゃ無意味だが……用があるのはそっちだ」
スナップの視線が、背後に倒れている女性を示していた。
「どけ」
「……」
「どかねーの? あっそ」
「ぐう!!」
男は目を薄め、ビーちゃんの横腹を足蹴にした。あまりの素早さに対応できず、弓をもたぬ弓兵はされるがままに横に吹っ飛ぶ。
「さて、と」
「うぅぅ、や、やめろ!」
スナップは無造作な白髪を手でおさえつつ淡々と足をすすめ。壁に横たわるビーちゃんのオトモダチを冷淡に見下ろし、そして手を振り上げた。
「やめろおおおおおおおおおおおおお!!」
激しい破壊音を響かせ、
「知ってたクセに」
あの緑髪のおんなの子もいっしょだ。突然の襲来はもちろん驚きなんだけど、ふたりがなぜ山頂の城のさらに高い位置にある塔を破壊することができた理由のほうが驚きだ。彼らの足は巨大な鱗の上に乗っている。
「ウソだろ!? この世界ドラゴンいんのかよ!」
思わずスプリットくんが叫ぶ。それに対し、ドラゴンに両足をつけた銀髪の男は子どものように笑った。
「異世界なんだからあたりめーだろ? へへ、どーだすげぇだろ!」
スナップの声に呼応するかのように、ドラゴンは城の周囲を旋回していく。その影が城の周囲をめぐるにつれ、会場にいる人々の不安がより深くなっていくのがわかる。
壊れたのは城のごく一部でしかないけど、ドラゴンが本気になればこのお城くらいかんたんに壊すことができそうだ。そんなドラゴンの姿を見て驚愕に目を見開く勇者がひとりだけ存在した。
「ドラゴンだと!?」
「あのデカブツのこと知ってんのかい!」
「トゥーサか。ドラゴンは魔族の領域の存在だ。普段は深い山奥に住み滅多に姿を表さん」
「二十年前の戦いにすら登場しなかった。くぅ、人々の間では伝説上の生物とまで云われてるね」
崩れ落ちたガレキの影からスパイクが出てきた。
「スパイク無事か!」
「なんとかね、でもこちらの女性が」
「エリザベス殿!」
スパイクが肩を抱き引き寄せた女性の姿を見て、ビーちゃんがすぐ悲壮な目でその側に走り寄った。あの人はさっきまでビーちゃんと仲良くお話してた王さまの親戚だった。
「クッ、なぜこのようなことをする!」
激しい怒りの表情で高みを睨みつける。そんな目で見つめられても、手が届かない場所にいるスナップは蔑むような笑みを見せるだけ。
「何度も言わせんなよ! えぬぴーしーが何匹死のうがどーでもいいだろ!」
「貴様ぁ!」
「落ち着けビシェル! 武器がなければ戦いようがない。おまえはみんなの避難を頼む」
その言葉に歯を食いしばりまた頭上を見つめて、それから倒れた女性に目を向け絞り出すように言葉を紡いだ。
「わかった」
「ひなんン~? そんなことさせっかよこっちは、っておわッ!」
「チッ、ガードされたか」
スプリットくんが食器用ナイフを猫背男に突き出す。寸前のところでガードされたけどサンキュ! これで隙ができた。
こいつを仕留める隙が。
「あっぶね!」
(逃さない)
一撃目は飛び退かれる。追いかける。ドラゴンの背は凹凸があり硬い鱗で覆われていた。そのまま二撃、三撃と武器を交わして、結局ヤツの身体にキズをつけることはできなかった。
(やっぱり食器用ナイフじゃこの程度か)
でも武器はこれしかない。わたしは懐に隠し持ったナイフの数を確認した。とっさに鷲掴みしたものだから数はないけど、この地形なら何本か投げて体勢を崩させればチャンスはあるだろう。あるいは――。
(もうひとつ気になることがある)
「くずれた柱をわたってここまで登ってきやがったのか」
「……動きが素早くなった?」
おかしいな、以前のスナップだったら今のでヤれたのに。
「油断大敵。チート状態じゃなかったら今のでゲームオーバーだった」
「うるせぇなキャス余計なお世話だ……っへへ」
「ちーと?」
(なにそれ)
その疑問に答えず、彼は不敵な笑みをうかべこちらと正対した。
「へっ、はじめから全力か――それはこっちもだぜぇ!」
まるで指揮者のように両手をふるう。それと同時に甲高い声が響く。ドラゴンの背から下を覗き込むと、会場にたくさんのマモノが出現して人々を襲っていた。
「マモノが!」
「今日は大サービス回だぜ! メインクエストをぶち壊したらどーなるか見てみたいだろぉ?」
「この世界はゲームじゃない!」
「ゲームなんだよ! あいつらは所詮プログラム通りに動くのさ。テメーらがあのジジイと王城にやってきた瞬間から、あたらしいクエストが始まってるのさ」
「ねえ、あなたも同じ目的で来たの!?」
わたしは緑髪の少女に訴える。わたしの中で、彼女はちがうという声が渦巻いていた。
「わたしはただ新しいクエストがはじまったことを伝えただけ」
少女は淡々と言う。そこに悪意はなく、今起こっている惨状にさえ感情の起伏がうかがえない。
「ひどいことしてるよ? なんとも思わないの?」
「NPCはNPC」
「彼らは生きてるんだよ!」
「わたしは関係ない。けどマスターがそうしろって」
え?
「それ以上言うなキャス」
(今マスターって。じゃあやっぱりこのふたりに命令をしてる人がいるってこと?)
「こんなヒドいこと、いったいだれから命令されてるの!」
「うるせえ! ンなこたァどーだっていいんだよ!」
やれ! 彼のひと言でマモノの動きが激しさを増した。よつあしの動物。大きさこそ人と同じくらいだけど、自身の被害を鑑みずに柱に突進し、燈台を破壊していきパーティー会場がどんどん壊滅状態になっていく。
「やめて!」
「へっ」
スナップの胸めがけて投げたナイフは、ターゲットに命中せずそのまま通り過ぎた。その先にいた少女の前で見えない風に阻まれ弾かれる。
「はやい!」
「あたりめーだろチートなんだからよォ――ああ、忘れてたぜ」
そう言って、スナップは地面に落ちたナイフを拾い上げ自分の胸に突き刺した。
「なッ!」
予想外の行動にスプリットくんが驚愕の声をあげる。それを嘲笑うかのように彼は言った。
「避ける必要もねーんだった」
「どういうことだ!?」
「見てのとーりだよ。んでぇ、最重要キャラの王様はどぉーこいったかなぁ? ……ンだよいねーじゃん!」
猫背をさらに曲げて見下ろすスナップに、うしろの少女は淡々としゃべった。
「王は病気療養中。だけど姿を見せるため控室にいる設定のはず」
「あぁそうか、まあでも王子もメインクエキャラだったがぁ……おかしい、やっぱ死なねぇ」
下ではオジサンが壁に掛けてあった飾り物の剣で応戦している。またサっちゃんもふくすうのマモノを腕で巻き上げ、ビーちゃんとグウェンちゃんはみんなの避難誘導をしている。
それでも間に合わなくて、破壊された柱があちこちに落下していく。でもちょっとまって。
(なに今の?)
王子の真上、かなり大きなガレキが崩れていたはずなのにひとりでに横にズレたような気が――。
「やっぱりな。ったく運が良いで済ませられねーぜゲームマスターさんよぉ。どーせオレさまが直接ぶっ飛ばしても意味ねーんだろ?」
リアルが売りじゃねーのかァ! 彼は猫背を伸ばして天空へと叫んだ。
「無意味」
「うるせえぞキャス! ――ったく萎えたぜ。あーどうせならなにか傷跡残して帰っかなー」
「それならあの女性はどう?」
キャサリンはある女性を見下ろす。ビーちゃんと仲良くお話していたあの人だ。
「サブクエのキーキャラ」
「なるほど、じゃあ殺すか」
「させない!」
ナイフを数本投擲する。それらはすべてスナップの身体をすり抜けていった。
「ムダだっつってんの。じゃーな!」
言って、彼はドラゴンの背中から自然落下していく。着地というより地面への激突。それでも彼はキズひとつ負わなかった。
「何者だ!」
「テメーこそナニモンだ? ――あぁ、あのクソガキとつるんでる女か」
ビーちゃんは広場の隅、比較的被害が軽微な場所にケガを負った人たちを避難させていた。このなかで治療魔法を使える人は少数で、グウェンちゃんも大量の汗を流し救護活動にあたっている。
舞っていた土煙が徐々に晴れていき、ビーちゃんは目の前にいる男の姿を瞳に映した。
「おまえは……」
「ビーちゃん!」
わたしはドラゴンの背から駆け出していった。その間にもスナップは距離を詰めていく。
猫背で白髪。とつぜん表れた男の正体を察したビーちゃんは臨戦態勢にはいる。
「弓がなきゃなんもできねーな。ま、できたとして今のオレさまにゃ無意味だが……用があるのはそっちだ」
スナップの視線が、背後に倒れている女性を示していた。
「どけ」
「……」
「どかねーの? あっそ」
「ぐう!!」
男は目を薄め、ビーちゃんの横腹を足蹴にした。あまりの素早さに対応できず、弓をもたぬ弓兵はされるがままに横に吹っ飛ぶ。
「さて、と」
「うぅぅ、や、やめろ!」
スナップは無造作な白髪を手でおさえつつ淡々と足をすすめ。壁に横たわるビーちゃんのオトモダチを冷淡に見下ろし、そして手を振り上げた。
「やめろおおおおおおおおおおおおお!!」