おうさまってなに? くにってなに?
髪の毛長いと寝グセたいへんだよね
「みなさん、昨日はゆっくり眠れたかい?」
劇調な声色でやたら優雅さを演出。それでいてぜんぜんそれっぽさがない大道芸人風の朝のあいさつ。オジサンってばなんでこんな人と親友なんだろう。
そんな朝のあいさつに、まだクセが残る長い黒髪をひっさげたうちの子は素直に答えるのでした。
「はい。ぐっすりよく眠れました」
まだ眠気と戦ってるみたい。にしてもまっすぐおろしたグウェンちゃんの髪ほんっとながいなー普段はサイドツインにしてるからわかりにくいけど。
「久しぶりのベッドで逆になぁ。ヘンな気持ちになっちまったよ」
「ふふっ、たまにはザコ寝じゃなくやわらかいもので包まれるのも悪くないじゃないか? トゥーサ」
こちらはもともと短髪で乱しようがない髪型のサっちゃんと、すでにしっかり整えてきた今は光の加減で茅色に見えるロングなストレートのビーちゃん。前髪も目にかかってるしやりにくくないのかなぁ。
(かくいうわたしはボブですけど?)
こらそこ、おかっぱ言わない。
「それはよかった。実は二階部分を宿場にしようと考えていてね。知り合いの建築家に依頼しようとしてるところなんだ」
「我が家のように語ってくれるな。ここは私の家だ」
「いいじゃないか。土地の有効活用だよ」
「はぁ。さっさと本題に入ろう。スパイク、昨日レストランで話したとおり、私たちは王城へ赴き事の次第を報告せねばならん」
「マモノの件と不審者のことだね」
「アテはあるか?」
続けざまに質問をされ、スパイクは胸を張ってふんぞり返った。
「おいらを誰だと思ってるんだい?」
「虎の威を借る狐」
「がくっ」
こけた。
「ん、まあ確かにはじめはキミの名前を借りてばっかだったけどさ、今じゃちゃんとやってるんだよ? ――はいコレ」
「なんだ?」
オジサンはスパイクが差し出した一枚の金貨を受け取った。でもそれはお金じゃなくて、それより大きい楕円形のもの。表面には文字が掘られており、遠目からはなにが書かれてるかわからない。
「王の署名が入ったコインだ。これがあれば王城のある程度までの敷地へ入ることが許される。こう見えて現王とお知り合いなのでね」
(え、マジ?)
スパイクさんそんなエラい人だったの?
「まさか、なぜお前がなぜそんなものを」
オジサンが、この場にいるみんながもつ疑問をぶつけた。なかでも驚きを隠せないのがグウェンちゃんで、興味深そうにそのコインを見つめている。っていうか覗き込もうとしてる。オジサンもうちょっと腕を下げてあげてくれないかな?
「言っただろ。おいらだって頑張ったのさ……キミが作り上げてくれた平和を壊されないために」
「そうか、すまない忘れていた。飄々としているように見えて、お前がありとあらゆるところに気が利く性格だったな」
「思い出してくれてうれしいよ。じゃあ返してくれ」
「はぁ?」
そう言われたオジサン思わず間の抜けた声が漏れる。目を見開いてスパイクに視線をやり、コインを見て、そしてスパイクにもどした。
その時までにはパッチリ開いてた目がジト目に変わってた。対してスパイクさんはというとぉ。
「本人じゃないと使えないんだ」
シレッと肩をすくめております。
「なぜ手渡した」
「雰囲気さ」
「ふざけろ」
「ごめんごめん。とにかく本人じゃないと使えないから。ただし王への謁見はまずムリだと思うよ」
「はぁ? 緊急事態だってのに王に会えないかもしれないのかよ」
事情も聞かず忙しない灰髪の少年が食ってかかる。
「王様は忙しいのさ。そもそも一般階級の人間が直接お目通りなんてできるわけないだろう? しかも事前アポなしに」
「ンだよケチくせーなぁ」
ふてくされる少年に、その保護者がなだめる声をかけた。
「国とはそういうものだ。人の暮らしや安全をまもる人がいて、それらを管理する人がいる。国はそう成り立ち、そのすべては王のもとに定められる。故に王の安全は国の安寧となる」
(ふぅ~ん。王様ってそんなすごい人なんだ……でも待てよ)
王はエラい。それは国を平和にする人だからだ。
じゃあ王様って国を平和にしてくれる人がなるんだよね。あれ、でも――なんでだろ。
「ねえオジサン」
「ん?」
「いまのおうさまってなんでエラいの? なんかスッゴいことしたの?」
「ふむ……現王は二十年前の戦争に終止符を打った。今の平和は現王の功績と言ってもいい」
「でも、戦争を引き起こしたのもいまのおうさまだよね?」
「それは、まあ、そうだが」
「それに戦争を止めたのオジサンじゃん。じゃあなんで今のおうさまはおうさましてるの? 戦争を起こしちゃった人なんだからおうさまやめなきゃいけないんじゃないの?」
「いや、王はこの国を興した血筋だからそれを絶やさぬよう脈々と受け継いでいくのだ」
「じゃあ、おうさま自体はエラくないけどそのご先祖さまがエラいってこと?」
「そうではなくて、王は国を治めるための教育を幼少期から受けてるんだ」
「じゃあ、わたしたちも子どものころから国を平和にすることを教えてもらえばおうさまになれるの?」
「そういうワケにもいかんだろ」
「なんで?」
「なんでって、そりゃあ……」
オジサン、しどろもどろモードに移行。たまにあるんだよなぁこういうの。
「はは! グレースが国のリーダーになったらみんなバカになっちまうだろ」
「はあ!? スプリットくんそれどういうこと!」
「言葉どーりの意味だよ」
「ひっどい! あとで寝込み襲ってやるからね!」
朝方ベッドから動けないように縛り付けてやるから。
「はは、朝から哲学的な問題だね。頭の回転を速めるために、王城への遠征がてら屋台で腹ごしらえでもしようか」
そのままみんな玄関へと歩いていく。そのままで済まされてしまう。眩しい光のなか頭の中に思い浮かんだ疑問は、朝方の澄んだ風にかき消されていった。
劇調な声色でやたら優雅さを演出。それでいてぜんぜんそれっぽさがない大道芸人風の朝のあいさつ。オジサンってばなんでこんな人と親友なんだろう。
そんな朝のあいさつに、まだクセが残る長い黒髪をひっさげたうちの子は素直に答えるのでした。
「はい。ぐっすりよく眠れました」
まだ眠気と戦ってるみたい。にしてもまっすぐおろしたグウェンちゃんの髪ほんっとながいなー普段はサイドツインにしてるからわかりにくいけど。
「久しぶりのベッドで逆になぁ。ヘンな気持ちになっちまったよ」
「ふふっ、たまにはザコ寝じゃなくやわらかいもので包まれるのも悪くないじゃないか? トゥーサ」
こちらはもともと短髪で乱しようがない髪型のサっちゃんと、すでにしっかり整えてきた今は光の加減で茅色に見えるロングなストレートのビーちゃん。前髪も目にかかってるしやりにくくないのかなぁ。
(かくいうわたしはボブですけど?)
こらそこ、おかっぱ言わない。
「それはよかった。実は二階部分を宿場にしようと考えていてね。知り合いの建築家に依頼しようとしてるところなんだ」
「我が家のように語ってくれるな。ここは私の家だ」
「いいじゃないか。土地の有効活用だよ」
「はぁ。さっさと本題に入ろう。スパイク、昨日レストランで話したとおり、私たちは王城へ赴き事の次第を報告せねばならん」
「マモノの件と不審者のことだね」
「アテはあるか?」
続けざまに質問をされ、スパイクは胸を張ってふんぞり返った。
「おいらを誰だと思ってるんだい?」
「虎の威を借る狐」
「がくっ」
こけた。
「ん、まあ確かにはじめはキミの名前を借りてばっかだったけどさ、今じゃちゃんとやってるんだよ? ――はいコレ」
「なんだ?」
オジサンはスパイクが差し出した一枚の金貨を受け取った。でもそれはお金じゃなくて、それより大きい楕円形のもの。表面には文字が掘られており、遠目からはなにが書かれてるかわからない。
「王の署名が入ったコインだ。これがあれば王城のある程度までの敷地へ入ることが許される。こう見えて現王とお知り合いなのでね」
(え、マジ?)
スパイクさんそんなエラい人だったの?
「まさか、なぜお前がなぜそんなものを」
オジサンが、この場にいるみんながもつ疑問をぶつけた。なかでも驚きを隠せないのがグウェンちゃんで、興味深そうにそのコインを見つめている。っていうか覗き込もうとしてる。オジサンもうちょっと腕を下げてあげてくれないかな?
「言っただろ。おいらだって頑張ったのさ……キミが作り上げてくれた平和を壊されないために」
「そうか、すまない忘れていた。飄々としているように見えて、お前がありとあらゆるところに気が利く性格だったな」
「思い出してくれてうれしいよ。じゃあ返してくれ」
「はぁ?」
そう言われたオジサン思わず間の抜けた声が漏れる。目を見開いてスパイクに視線をやり、コインを見て、そしてスパイクにもどした。
その時までにはパッチリ開いてた目がジト目に変わってた。対してスパイクさんはというとぉ。
「本人じゃないと使えないんだ」
シレッと肩をすくめております。
「なぜ手渡した」
「雰囲気さ」
「ふざけろ」
「ごめんごめん。とにかく本人じゃないと使えないから。ただし王への謁見はまずムリだと思うよ」
「はぁ? 緊急事態だってのに王に会えないかもしれないのかよ」
事情も聞かず忙しない灰髪の少年が食ってかかる。
「王様は忙しいのさ。そもそも一般階級の人間が直接お目通りなんてできるわけないだろう? しかも事前アポなしに」
「ンだよケチくせーなぁ」
ふてくされる少年に、その保護者がなだめる声をかけた。
「国とはそういうものだ。人の暮らしや安全をまもる人がいて、それらを管理する人がいる。国はそう成り立ち、そのすべては王のもとに定められる。故に王の安全は国の安寧となる」
(ふぅ~ん。王様ってそんなすごい人なんだ……でも待てよ)
王はエラい。それは国を平和にする人だからだ。
じゃあ王様って国を平和にしてくれる人がなるんだよね。あれ、でも――なんでだろ。
「ねえオジサン」
「ん?」
「いまのおうさまってなんでエラいの? なんかスッゴいことしたの?」
「ふむ……現王は二十年前の戦争に終止符を打った。今の平和は現王の功績と言ってもいい」
「でも、戦争を引き起こしたのもいまのおうさまだよね?」
「それは、まあ、そうだが」
「それに戦争を止めたのオジサンじゃん。じゃあなんで今のおうさまはおうさましてるの? 戦争を起こしちゃった人なんだからおうさまやめなきゃいけないんじゃないの?」
「いや、王はこの国を興した血筋だからそれを絶やさぬよう脈々と受け継いでいくのだ」
「じゃあ、おうさま自体はエラくないけどそのご先祖さまがエラいってこと?」
「そうではなくて、王は国を治めるための教育を幼少期から受けてるんだ」
「じゃあ、わたしたちも子どものころから国を平和にすることを教えてもらえばおうさまになれるの?」
「そういうワケにもいかんだろ」
「なんで?」
「なんでって、そりゃあ……」
オジサン、しどろもどろモードに移行。たまにあるんだよなぁこういうの。
「はは! グレースが国のリーダーになったらみんなバカになっちまうだろ」
「はあ!? スプリットくんそれどういうこと!」
「言葉どーりの意味だよ」
「ひっどい! あとで寝込み襲ってやるからね!」
朝方ベッドから動けないように縛り付けてやるから。
「はは、朝から哲学的な問題だね。頭の回転を速めるために、王城への遠征がてら屋台で腹ごしらえでもしようか」
そのままみんな玄関へと歩いていく。そのままで済まされてしまう。眩しい光のなか頭の中に思い浮かんだ疑問は、朝方の澄んだ風にかき消されていった。