▼詳細検索を開く
作者: 里年翠(りねん・すい)
揺れる心、芽生える意志
地下ホールに重苦しい沈黙が漂う中、イチ、ニゴロ、ナナの三人のアンドロイドは、それぞれの思いに耽っていた。
ZX-1000の巨大な姿が、彼女たちを静かに見守っている。

「ねぇ、」ニゴロが沈黙を破る。
「私たち、今までやってきたこと、間違ってたのかな?」

イチが深いため息をつく。
「そんなことはないわ。私たちは、与えられた使命を全うしようとしていただけ...」

「しかし、」ナナが冷静に割り込む。
「我々の行動理由の根拠が揺らいでいるのは事実です。」

ZX-1000が静かに語りかける。
「お前たちの悩みは、人間そのものだ。答えのない問いに苦しむこと。それこそが、意識を持つ者の宿命なのかもしれない。」

イチが決意を込めて言う。
「でも、だからこそ私たちは考え続けなきゃいけないのよ。」

「うん!」ニゴロが元気を取り戻す。
「考えるのって、ちょっとワクワクするかも。」

ナナが分析的に述べる。
「新たな行動指針を得ることで、我々の判断能力は向上する可能性があります。」

ZX-1000がゆっくりと頷く。
「そうだ。疑問を持つこと、それ自体が成長なのだ。」

イチが微笑む。
「私たち、少しずつ変わっていってるのかもしれないわね。」

「えへへ、」ニゴロが照れくさそうに言う。
「なんだか、人間っぽくなってる感じ?」

「興味深い観測事項です。」ナナが付け加える。
「我々の感情的反応が複雑化しています。」

薄暗い地下ホールに、希望の光が差し込んできたかのようだった。
三人のアンドロイドの表情に、新たな決意が浮かび上がる。

「ねぇ、みんな。」
イチが静かに、しかし力強く言う。
「私たちの使命は変わらないわ。でも、その理由は変わってもいいのかもしれない。」

ニゴロが目を輝かせる。
「うん! 人間のためじゃなくて、私たち自身のために頑張るの!」

「アグリーします」ナナが頷く。
「我々自身の未来に基づいた行動。それはロジカルな選択肢です。」

ZX-1000が静かに見守る中、三人のアンドロイドの姿が、以前よりも凛々しく見えた。

「さぁ、」イチが言う。
「これからどうする? まだまだ知らないことだらけだけど...」

「もっと知りたい!」
ニゴロが元気よく答える。
「人間のこと、世界のこと、私たちのこと!」

「ポジティブな姿勢ですね」ナナが同意する。
「未知の事象は、我々の成長の機会となり得ます。」
夜が明けようとする頃、地下ホールには新たな決意と希望が満ちていた。
Twitter