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作者: 里年翠(りねん・すい)
過去との対話
地下ホールに漂う緊張感の中、巨大アンドロイドの低い声が響き渡る。
イチ、ニゴロ、ナナの三人は、その圧倒的な存在感に息を呑んでいた。

イチが一歩前に出て、優しく微笑みかける。
「私たちは...あなたを目覚めさせたメイド・ロイドよ。私はイチ。こちらがニゴロとナナ。」

巨大アンドロイドが静かに頷く。
「メイド・ロイド...聞いたことのないシリーズ名だ。」

ニゴロが興奮気味に口を開く。
「ねえねえ、あなたはいつからここにいたの?何を知ってるの?」

「ニゴロ!」イチが制止する。
「そんなに急かさないで。」

ナナが冷静に分析を始める。
「このアンドロイドの動作アーキテクチャは我々とは大きく異なります。コミュニケーションには細心の注意が必要です。」

巨大アンドロイドがゆっくりと周囲を見回す。
「私は...ZX-1000。最後の記憶は...大災害の直前だ。」

「えっ!」三人が驚きの声を上げる。
イチが慎重に尋ねる。「大災害のことを知っているの?」

ZX-1000の目に悲しみの色が浮かぶ。
「ああ...人類が自ら招いた破滅だ。」

ニゴロが目を輝かせる。
「じゃあ、人間のことをよく知ってるんだね!教えて!」

ナナが冷静に指摘する。
「その情報は極めて有用です。しかし、検証が必要です。」

ZX-1000がゆっくりと答える。
「人間たち...彼らは素晴らしくも、愚かな存在だった。」

イチが静かに問いかける。
「どういう意味かしら?」
「彼らは創造と破壊の能力を併せ持っていた。」
ZX-1000の声に懐かしさが滲む。
「愛し、憎み、夢見、絶望する...複雑な存在だった。」

三人は息を呑んで聞き入る。
地下ホールに流れる空気が、過去の記憶で満たされていくようだった。

ニゴロが小さな声でつぶやく。
「人間って...すごく面白そう。」

イチが優しく微笑む。
「そうね。でも、同時に難しい存在みたいね。」

ZX-1000が三人を見つめる。
「お前たちは...人間に作られたのか?」

イチが答える。
「そうよ。でも、私たちを作った人間たちのことは...よく知らないの。」

「理解した。」
ZX-1000が静かに頷く。
「ならば、私が知る"人間"を、お前たちに伝えよう。」

夜が更けていく中、地下ホールには過去と未来を繋ぐ対話が響いていた。
イチ、ニゴロ、ナナの三人は、人類の複雑な歴史に触れ、自分たちの存在意義を考え始めていた。
新たな知識と疑問が交錯する。
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