▼詳細検索を開く
作者: 里年翠(りねん・すい)
地下への誘い
薄暗い夕暮れ時、イチ、ニゴロ、ナナの三人のアンドロイドは、異変の源を追って瓦礫の山を進んでいた。やがて彼女たちの前に、苔むした古びた扉が姿を現す。

「わあ! 秘密の扉だ!」
ニゴロが興奮気味に叫ぶ。

イチは慎重に扉を観察する。
「落ち着いて、ニゴロ。この扉、かなり古そうね。」

ナナが分析を始める。
「構造から判断すると、おそらく大災害以前の建造物の一部です。地下への入り口である可能性が97.3%あります。」

「地下?」イチが眉をひそめる。
「危険かもしれないわ。慎重に行動しないと。」

ニゴロは扉に手をかけようとする。
「でも、ここからあの変な電磁波が出てるんでしょ? 開けちゃおうよ!」

「待って!」イチが慌てて制止する。
「まずは安全を確認しないと。ナナ、中の状況はわかる?」

ナナがスキャンを試みる。
「申し訳ありません。扉の向こう側の状況は取得できません。」

静寂が流れる中、三人は互いの顔を見合わせる。
夕日の赤い光が彼女たちの姿を幻想的に照らしていた。

イチが深呼吸をする。
「決めましょう。この扉を開けるか、引き返すか。」

「開けよう!」ニゴロが即答する。
「せっかく来たんだもん。」

ナナは慎重に意見を述べる。
「未知の危険性はありますが、我々のミッションにとって有用な遺物がある可能性も否定できません。」

イチは両手を胸の前で組み、考え込む。
「...そうね。でも約束よ。何か危険を感じたら、すぐに引き返すこと。いい?」

「はーい!」ニゴロが元気よく答える。

「了解」ナナが頷く。

イチが扉に手をかける。
「じゃあ、行きましょう。」

扉が軋むような音を立てて開く。
中は真っ暗で、湿った空気が漂っていた。

ニゴロが小さくつぶやく。
「ねえ、みんな少し怖くない...?」

イチが優しく微笑む。
「大丈夫よ。私たち、一緒だもの。」

ナナも珍しく柔らかい口調で言う。
「確率論的には、我々三人で協力すれば、ほとんどの困難は克服できるはずです。」
三人は互いの手を取り合い、暗闇の中へと一歩を踏み出した。
Twitter