▼詳細検索を開く
作者: 里年翠(りねん・すい)
異変の予感
夏の終わりを告げるような、どこか寂しげな風が吹く午後。
イチ、ニゴロ、ナナの三人のアンドロイドは、いつもの瓦礫撤去作業に励んでいた。
そんな中、ニゴロの鋭い感覚が何かを察知した。

「あれ? みんな、何か変な感じしない?」
ニゴロが首を傾げながら言った。

イチが慎重に周囲を見回す。
「具体的に何を感じたの、ニゴロ?」

「うーん、なんていうか...空気がピリピリしてる感じ?」
ニゴロは言葉を選びながら説明を試みる。

ナナは冷静に状況を分析し始めた。
「私のセンサーに異常な電磁波が検知されています。正体は不明ですが、方向は特定できそうです。」

イチは眉をひそめる。
「電磁波...? このエリアで そんな強い電磁波を出す物体があるはずないわ。」

「わー、なんかワクワクしてきた!」ニゴロは目を輝かせる。
「探検しに行こうよ、みんな!」

「ちょっと待って、」イチが冷静に制す。
「まずは安全を確認しないと。ナナ、その電磁波は私たちにとって安全?」

ナナは一瞬考え込む。
「現時点での情報では危険性は低いと判断されます。ただし、発生源に近づくにつれて状況が変化する可能性があります。」

「じゃあ、行こう!」
ニゴロが勢いよく言う。

イチは深呼吸をして決断を下す。
「わかったわ。でも、慎重に行動しましょう。ニゴロ、あなたは特に注意して。」

「はーい、約束する!」
ニゴロは軽快に答える。

三人は瓦礫の山を慎重に進んでいく。
夕暮れが近づき、空が赤く染まり始めた。
その光景は美しくもあり、不気味でもあった。

「ねえ、」ニゴロが突然つぶやく。
「私たち、この異変で何か大切なものを見つけられるかな?」

イチは優しく微笑む。
「わからないわ。でも、きっと私たちの絆を試す何かがあるはずよ。」

ナナは黙って歩を進めていたが、ふと立ち止まる。
「抑えきれない好奇心を感じます。これが人間の言う 'ワクワク' なのでしょうか?」

イチとニゴロは驚いて顔を見合わせる。
そして、三人は笑顔で頷き合った。
未知なる異変への道のりは、彼女たちの新たな一歩となるのだった。
Twitter