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作者: 里年翠(りねん・すい)
小さな成功:successes
初秋の爽やかな風が吹く中、イチ、ニゴロ、ナナの三体のアンドロイドは、数ヶ月間取り組んできた小さな公園の清掃作業を終えようとしていた。
瓦礫が撤去された跡地には、新しい芽吹きが見え始めている。

「やったー!」ニゴロが両手を挙げて歓声を上げた。
「ついに、このエリアの片付けが終わったよ!」

イチは優しく微笑んだ。
「そうね。みんなで協力した成果よ。本当に素晴らしいわ」

ナナは冷静に状況を分析しながら言った。
「作業効率は当初の予測を12.7%上回りました。チームワークの向上が顕著に表れていますね」

三体は公園の中央に立ち、周囲を見渡した。
かつては瓦礫の山だった場所が、今では整然とした空間に生まれ変わっている。

ニゴロは目を輝かせて言った。
「ねえねえ、ここにブランコを作ったらどうかな?子供たちが喜びそう!」

イチは優しく頷いた。
「素敵なアイデアね。きっと、いつかここに子供たちの笑い声が響くわ」

ナナは少し躊躇いがちに言った。
「しかし、現在の状況を考えると、公園の再建よりも他の重要インフラの復旧が優先されるべきでは...」

「えー」ニゴロが少し残念そうに言った。
「でも、希望も大事だよ。ね、イチ?」

イチは両手を広げ、ニゴロとナナを優しく抱き寄せた。
「そうね。ナナの言うことももっともだけど、ニゴロの言う希望も大切よ。私たちの仕事は、バランスを取ることなのかもしれないわ」

ナナは少し戸惑いながらも、イチの抱擁を受け入れた。
「なるほど。効率と希望、両方を考慮に入れるべきですね。新たな計算式が必要そうです」

三体は互いを見つめ合い、小さく笑い合った。
そこには言葉では表せない絆が感じられた。

イチが静かに、しかし力強く言った。
「さあ、これで一つの区切りね。でも、私たちの仕事はまだまだ続くわ」

ニゴロは元気よく飛び跳ねた。
「うん!次はもっと大きなエリアに挑戦しよう!」

ナナも珍しく前向きな口調で答えた。
「賛成です。この経験を活かせば、より効率的かつ希望に満ちた復興が可能なはずです」

夕暮れの柔らかな光が、整備された公園を優しく包み込んでいく。
三体のアンドロイドは、達成感と新たな決意を胸に、次の目的地へと歩み出した。

イチが振り返って、小さくつぶやいた。
「きっと、いつかここに花が咲くわ」

ニゴロが元気よく応えた。
「うん!そしたら、みんなでピクニックしようね!」

ナナも珍しく感情的な口調で言った。
「その時は...私も参加したいです」
秋の夕陽が三体の後ろ姿を照らす。
小さな成功が、大きな希望へと花開く瞬間だった。
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