緊急強化選手
栃木の一件から一週間あまり、あれから『嘉納』の動向は一切確認されていない。
当初各局で連日のように報道されていた事件も一旦の終息の兆しを見せ始め、現在は一部のワイドショーが取り扱うだけとなっており、それにしたってもっと大きな事件が起きた日は話題にも上がらなくなる程度の扱いだ。
コメンテーターの「常識的」な見解では事件以降運営側に警戒感が高まったことによって警備が強化され、犯人も再度事件を起こすようなリスクはもう犯さないだろう……と言われている一方、既に次の計画に備えて機会を待っているのでは? といった憶測も飛び交っていた。
本来世の中が平穏なのは結構なことであるわけだが人間とは実に勝手なもので、それならそれで退屈を訴えだし世が乱れるのを心待ちにする者も現れる。それは今回も同様で、どこか心の片隅であのトーチ男の再登場を願っている……世間にはそんなムードも漂っているのだった……。
そんなとある昼下がり、不破は港区の一角にある小さな公園にいた。
木陰に位置するベンチを選んで座り、テイクアウトしてきたコーヒーなどのんびりと飲んでいる。しばらくすると後方の植え込みの陰から一人の中年男が姿を現した。
風体にこれといって突出した特徴こそないが、怠く着崩したスーツと緩めたネクタイから、仮にサラリーマンだったとしても決して真面目に勤務するタイプではないことだけは窺い知れる。男は不破の座るベンチに近づき、少し距離を置いて腰を下ろした。
「相変わらず忙しそうだな、皆守」
相手の顔を確認する素振りも見せず、まるで独り言を呟くかのように不破は目の前の宙空に語りかけた。
「まぁ忙しいと言えばそうなんだろうなぁ、昨年の総理辞任から始まる政局不安の余波がまだ燻ぶってるせいかねぇ?」
皆守と呼ばれた男もまたどこに目を向けるでもなく、のらりくらりとした口調でそれに応じる。
「風が吹けば桶屋が何とやら……ってね、時に政治は拡大する玉突き事故の様だよ」
「慶朝の政治部記者としては当分休む暇なしって事か?」
「こういう時、出来の良い相棒がいてくれれば……なんてつくづく思うよ。たとえそいつが手に負えない武闘派でもね」
「……俺はそんな危険人物だったか?」
不破は顔をしかめた。
「知らぬは本人ばかりだよ」
ひと時相好を崩した皆守……が、すぐに真顔を取り戻す。
「随分珍妙な事件に首突っ込んでるらしいな」
一見覇気の無さげな表情の中に隠れた鋭い眼差しが不破を見据える、いつの間にか不破も皆守の顔を覗き込んでいたため二人の視線がばちりと交差する形となった。
「……まぁ、成り行きでな」
先に視線を外したのは不破、どこかばつの悪そうな苦笑いを浮かべる。
まだ先に解除された緊急事態宣言の影響でも残るのか、この時間に公園には親子連れの姿一つもない。それでも以前に比べたら人の往来もちらほら見られるようになったのはだいぶ社会が正常化してきたとも、緩みとも解釈出来る。
「…で、見つかったのか?」
「一応探してはみたがね……」
皆守は鞄から茶封筒を取り出した。
「こいつがお前の求めている情報かどうかは分からないぞ? まず予め言っておくが──」
一拍おいて皆守は声を潜めた。
「不破……お前の関わっている案件、かなりヤバいぞ?」
「……ほぉ、そうなのか?」
まるで他人事のような不破は封筒の中の書類束にざっと目を通し始める。それを横目で見守りながら皆守は話題を繋いだ。
「『嘉納』って呼んでいるんだって? また馬場園さんのアイデアか?」
「まぁ、……そんなもんだ」
正確にはデスクの案は『ジゴロー』なのだが、『嘉納』を提案したのは自分であるなどとは口が裂けても言えない。陳腐な発想がこの男に笑われてしまうのではないかと思ったからだ。
「で、その嘉納とやらな、やはり国内の道場や団体には該当する人物はいないな」
「国内…には……か、なら海外はどうなんだよ? ブラジル辺りとか?」
思いつくまま不破は口にしてみる。日本の武術が海外で思いもよらぬ活況を呼ぶこともある。ブラジルでの柔術がもはや日本に勝るとも劣らない一勢力になっているのは有名な話だ。
「いや、可能性としてはやはり国内だ」
「どういうことだ? お前今、国内にはいないと」
まるで禅問答でも投げかけられたみたいに面食らう不破。
「正確には表の国内にはいない、ってことだよ……つまり──」
そこまで皆守が語る時点で、書類をざっと眺めていた不破の目も彼がこれから語らんとしていた項目に行き着いていた。
「緊急強化選手? 登録上存在しない『裏』のアスリート……って、何だこれ!?」
ふぅ、と怠そうに一息ついて皆守が注釈を入れ始めた。
「戦前から話を始めようか。1940年のオリンピックに東京が名乗りを上げて一度は招致に漕ぎつけた……って話は知ってるよな?」
「ああ、幻の東京オリンピックと呼ばれた大会だな」
不破は先日牧に披露して聞かせた自身の蘊蓄を思いだす。
「そうだ。結局日中戦争で開催を返上した……というのが一般的な認識だが実際はもっと事情は複雑だ。各国のIOC委員に対する根回しや利権もさることながら、国内においてでさえ現場で招致に動いていた嘉納治五郎や副島道正をはじめ、当時の内閣や陸軍部等々、様々な人間の思惑が複雑怪奇に絡み合っていたんだ」
「……何かいつの時代も変わらないものだな」
今大会の招致や開催に関してのここ数年にわたる世論や関係者の発言が思い起こされる。もちろん意見に多様性があるのは民主国家として健全な姿であろうが、自国開催の是非を論ずることを抜きにしても理想論が政治的思想や政権争いに踊らされてみたり、空論入り混じるネットの諍いが醜くもあさましい水掛け論と中傷合戦に終始してみたり……。日本人は…いや、決して日本人に限った話ではないが……80年以上経ってもまるで精神的に成長していないのでは? と疑わずにはいられない。
「特に当時陸軍の一部には開催するからにはあらゆる競技で勝利を収め国威を顕すべし、という考えにこだわる一派がいてな。『国民精神の発揚』の名の下、日本のIOC委員や出場選手の意向とは全く別の次元で選手層の強化策が検討されていたらしい」
「よくある軍部のメンツってやつか? 何ともきな臭い話だな」
「その計画の中の一案で、開催時点までの段階で選手層に不足がある場合、または代表選手が世界で競うに実力的に不十分である場合……そうした事態に対して即座に選手を補充するための補強要員をリザーブするという構想があったと言われている」
「随分と簡単に言ってくれるな。仮にも代表選考だって多くの選手の中から選抜されるというのに、その補強要員とやらは一体どこから連れて────、……待てよ?」
気づいて不破は手元の書類を辿る。ある項目で目が留まり……やがてその表情に驚愕の色が浮かぶ。
「……受刑者……からの選定だと!?」
「その資料を信用するのであれば、な」
返す皆守の言葉にも緊張の色が浮き出ている。
「……運動能力と個々の経歴、人格、モラルは残念ながら全くの別問題だ。例えば殺人犯の中にも人並外れた反射神経や筋力を持つ者も存在する……つまりここで示唆されている補強要員とは、本来社会的、人格的に選手として不適格を受けた人間の事なんだ」
不破は周囲の気温が急に下がったような薄ら寒い感覚に襲われる。
「もちろん犯罪歴があったとしても、その後に更生してまっとうなアスリートとして再起する者もいるだろう。だがそうした人間もやはり『表』の例でしかない……ここで言うところの人物像はもっと闇の、『裏』の領域。それこそ更生の見込みも無い人間を指していると思われる。『緊急強化選手』、彼らはそう呼ばれていたらしい」
「緊急……強化選手……ちょっと待て、だがそれが事実だったとしても戦前の話なのだろ? まさかそんなモンがこの現代の、しかも法治国家であるこの日本にまだいるとでも言うんじゃないだろうな!?」
たまらず立ち上がった不破は皆守に詰め寄る。
「おいおい、『可能性は事実以外のファクターで否定をせず』……報道の鉄則だぞ?」
「そうは言っても……こいつぁ現実味が無さ過ぎやしないか?」
「単身の聖火トーチ強奪犯が警護の群れをあしらって犯行を成功させているという『事実』が既にもう現実からかけ離れているんだよ」
「……だとしたら……。あの『嘉納』も、その緊急強化選手である可能性がある……と?」
皆守が肩を竦める。
「さて、どうだろうな……そこまでは断言し兼ねる。だがお前は先日の栃木の一件で疑念を抱いたのだろう? 予てより只の愉快犯ではないと目していた人物が、カメラに映っていない所で『何か』と争っているのではないか? ……と」
先日のTV中継を思い出す、嘉納の腕には最初に福島で遭遇した時には無かった白い包帯が巻かれていた。何らかの事故で負った怪我とも推測できるが、実際に相対した実感からあの男が不用意な怪我を負うとは到底思えない。
確かに極めて荒唐無稽な想像なのだが、警察組織とは別に、彼の行動を水面下で妨害している何者かがいるのではないか? 不破は先日からずっとそんな予感に囚われていたのだ。
「しかし……いや、だがなぁ、そんなの前時代的過ぎる。この現代にそんな馬鹿げた存在が残っている必然性は何だ?」
「それなんだがな──」
皆守はこの上まだ何か情報を掴んでいるようだ。
「──ここからは俺の推測がだいぶ混じった話になる。そのつもりで聞いてくれ」
一瞬周囲を見回し、一層声を落として皆守は語り始めた。
「……不破よ、お前『首都再開発計画』って聞いたことはあるか?」
当初各局で連日のように報道されていた事件も一旦の終息の兆しを見せ始め、現在は一部のワイドショーが取り扱うだけとなっており、それにしたってもっと大きな事件が起きた日は話題にも上がらなくなる程度の扱いだ。
コメンテーターの「常識的」な見解では事件以降運営側に警戒感が高まったことによって警備が強化され、犯人も再度事件を起こすようなリスクはもう犯さないだろう……と言われている一方、既に次の計画に備えて機会を待っているのでは? といった憶測も飛び交っていた。
本来世の中が平穏なのは結構なことであるわけだが人間とは実に勝手なもので、それならそれで退屈を訴えだし世が乱れるのを心待ちにする者も現れる。それは今回も同様で、どこか心の片隅であのトーチ男の再登場を願っている……世間にはそんなムードも漂っているのだった……。
そんなとある昼下がり、不破は港区の一角にある小さな公園にいた。
木陰に位置するベンチを選んで座り、テイクアウトしてきたコーヒーなどのんびりと飲んでいる。しばらくすると後方の植え込みの陰から一人の中年男が姿を現した。
風体にこれといって突出した特徴こそないが、怠く着崩したスーツと緩めたネクタイから、仮にサラリーマンだったとしても決して真面目に勤務するタイプではないことだけは窺い知れる。男は不破の座るベンチに近づき、少し距離を置いて腰を下ろした。
「相変わらず忙しそうだな、皆守」
相手の顔を確認する素振りも見せず、まるで独り言を呟くかのように不破は目の前の宙空に語りかけた。
「まぁ忙しいと言えばそうなんだろうなぁ、昨年の総理辞任から始まる政局不安の余波がまだ燻ぶってるせいかねぇ?」
皆守と呼ばれた男もまたどこに目を向けるでもなく、のらりくらりとした口調でそれに応じる。
「風が吹けば桶屋が何とやら……ってね、時に政治は拡大する玉突き事故の様だよ」
「慶朝の政治部記者としては当分休む暇なしって事か?」
「こういう時、出来の良い相棒がいてくれれば……なんてつくづく思うよ。たとえそいつが手に負えない武闘派でもね」
「……俺はそんな危険人物だったか?」
不破は顔をしかめた。
「知らぬは本人ばかりだよ」
ひと時相好を崩した皆守……が、すぐに真顔を取り戻す。
「随分珍妙な事件に首突っ込んでるらしいな」
一見覇気の無さげな表情の中に隠れた鋭い眼差しが不破を見据える、いつの間にか不破も皆守の顔を覗き込んでいたため二人の視線がばちりと交差する形となった。
「……まぁ、成り行きでな」
先に視線を外したのは不破、どこかばつの悪そうな苦笑いを浮かべる。
まだ先に解除された緊急事態宣言の影響でも残るのか、この時間に公園には親子連れの姿一つもない。それでも以前に比べたら人の往来もちらほら見られるようになったのはだいぶ社会が正常化してきたとも、緩みとも解釈出来る。
「…で、見つかったのか?」
「一応探してはみたがね……」
皆守は鞄から茶封筒を取り出した。
「こいつがお前の求めている情報かどうかは分からないぞ? まず予め言っておくが──」
一拍おいて皆守は声を潜めた。
「不破……お前の関わっている案件、かなりヤバいぞ?」
「……ほぉ、そうなのか?」
まるで他人事のような不破は封筒の中の書類束にざっと目を通し始める。それを横目で見守りながら皆守は話題を繋いだ。
「『嘉納』って呼んでいるんだって? また馬場園さんのアイデアか?」
「まぁ、……そんなもんだ」
正確にはデスクの案は『ジゴロー』なのだが、『嘉納』を提案したのは自分であるなどとは口が裂けても言えない。陳腐な発想がこの男に笑われてしまうのではないかと思ったからだ。
「で、その嘉納とやらな、やはり国内の道場や団体には該当する人物はいないな」
「国内…には……か、なら海外はどうなんだよ? ブラジル辺りとか?」
思いつくまま不破は口にしてみる。日本の武術が海外で思いもよらぬ活況を呼ぶこともある。ブラジルでの柔術がもはや日本に勝るとも劣らない一勢力になっているのは有名な話だ。
「いや、可能性としてはやはり国内だ」
「どういうことだ? お前今、国内にはいないと」
まるで禅問答でも投げかけられたみたいに面食らう不破。
「正確には表の国内にはいない、ってことだよ……つまり──」
そこまで皆守が語る時点で、書類をざっと眺めていた不破の目も彼がこれから語らんとしていた項目に行き着いていた。
「緊急強化選手? 登録上存在しない『裏』のアスリート……って、何だこれ!?」
ふぅ、と怠そうに一息ついて皆守が注釈を入れ始めた。
「戦前から話を始めようか。1940年のオリンピックに東京が名乗りを上げて一度は招致に漕ぎつけた……って話は知ってるよな?」
「ああ、幻の東京オリンピックと呼ばれた大会だな」
不破は先日牧に披露して聞かせた自身の蘊蓄を思いだす。
「そうだ。結局日中戦争で開催を返上した……というのが一般的な認識だが実際はもっと事情は複雑だ。各国のIOC委員に対する根回しや利権もさることながら、国内においてでさえ現場で招致に動いていた嘉納治五郎や副島道正をはじめ、当時の内閣や陸軍部等々、様々な人間の思惑が複雑怪奇に絡み合っていたんだ」
「……何かいつの時代も変わらないものだな」
今大会の招致や開催に関してのここ数年にわたる世論や関係者の発言が思い起こされる。もちろん意見に多様性があるのは民主国家として健全な姿であろうが、自国開催の是非を論ずることを抜きにしても理想論が政治的思想や政権争いに踊らされてみたり、空論入り混じるネットの諍いが醜くもあさましい水掛け論と中傷合戦に終始してみたり……。日本人は…いや、決して日本人に限った話ではないが……80年以上経ってもまるで精神的に成長していないのでは? と疑わずにはいられない。
「特に当時陸軍の一部には開催するからにはあらゆる競技で勝利を収め国威を顕すべし、という考えにこだわる一派がいてな。『国民精神の発揚』の名の下、日本のIOC委員や出場選手の意向とは全く別の次元で選手層の強化策が検討されていたらしい」
「よくある軍部のメンツってやつか? 何ともきな臭い話だな」
「その計画の中の一案で、開催時点までの段階で選手層に不足がある場合、または代表選手が世界で競うに実力的に不十分である場合……そうした事態に対して即座に選手を補充するための補強要員をリザーブするという構想があったと言われている」
「随分と簡単に言ってくれるな。仮にも代表選考だって多くの選手の中から選抜されるというのに、その補強要員とやらは一体どこから連れて────、……待てよ?」
気づいて不破は手元の書類を辿る。ある項目で目が留まり……やがてその表情に驚愕の色が浮かぶ。
「……受刑者……からの選定だと!?」
「その資料を信用するのであれば、な」
返す皆守の言葉にも緊張の色が浮き出ている。
「……運動能力と個々の経歴、人格、モラルは残念ながら全くの別問題だ。例えば殺人犯の中にも人並外れた反射神経や筋力を持つ者も存在する……つまりここで示唆されている補強要員とは、本来社会的、人格的に選手として不適格を受けた人間の事なんだ」
不破は周囲の気温が急に下がったような薄ら寒い感覚に襲われる。
「もちろん犯罪歴があったとしても、その後に更生してまっとうなアスリートとして再起する者もいるだろう。だがそうした人間もやはり『表』の例でしかない……ここで言うところの人物像はもっと闇の、『裏』の領域。それこそ更生の見込みも無い人間を指していると思われる。『緊急強化選手』、彼らはそう呼ばれていたらしい」
「緊急……強化選手……ちょっと待て、だがそれが事実だったとしても戦前の話なのだろ? まさかそんなモンがこの現代の、しかも法治国家であるこの日本にまだいるとでも言うんじゃないだろうな!?」
たまらず立ち上がった不破は皆守に詰め寄る。
「おいおい、『可能性は事実以外のファクターで否定をせず』……報道の鉄則だぞ?」
「そうは言っても……こいつぁ現実味が無さ過ぎやしないか?」
「単身の聖火トーチ強奪犯が警護の群れをあしらって犯行を成功させているという『事実』が既にもう現実からかけ離れているんだよ」
「……だとしたら……。あの『嘉納』も、その緊急強化選手である可能性がある……と?」
皆守が肩を竦める。
「さて、どうだろうな……そこまでは断言し兼ねる。だがお前は先日の栃木の一件で疑念を抱いたのだろう? 予てより只の愉快犯ではないと目していた人物が、カメラに映っていない所で『何か』と争っているのではないか? ……と」
先日のTV中継を思い出す、嘉納の腕には最初に福島で遭遇した時には無かった白い包帯が巻かれていた。何らかの事故で負った怪我とも推測できるが、実際に相対した実感からあの男が不用意な怪我を負うとは到底思えない。
確かに極めて荒唐無稽な想像なのだが、警察組織とは別に、彼の行動を水面下で妨害している何者かがいるのではないか? 不破は先日からずっとそんな予感に囚われていたのだ。
「しかし……いや、だがなぁ、そんなの前時代的過ぎる。この現代にそんな馬鹿げた存在が残っている必然性は何だ?」
「それなんだがな──」
皆守はこの上まだ何か情報を掴んでいるようだ。
「──ここからは俺の推測がだいぶ混じった話になる。そのつもりで聞いてくれ」
一瞬周囲を見回し、一層声を落として皆守は語り始めた。
「……不破よ、お前『首都再開発計画』って聞いたことはあるか?」