残酷な描写あり
R-15
第14話「依頼『盗賊頭を討伐せよ』③」
■■盗賊のアジト、入口にて■■
「【アーカイブ】。【コール:シア・フェレライ】」
ようやっとの思いで迷宮洞窟を抜け出した僕は、【アーカイブ】画面からシアさんを呼び出した。
半透明に輝く本の上に画面が現れ、そこには『シア・フェレライ 呼び出し中』と記載されている。
しばらく待っていると、その画面に見慣れた美人のお姉さんの顔が表示された。
『ああ、ターナカ。すみません、夜会の準備に戸惑っていました』
「お疲れ様、シアさん。とりあえず依頼の件、終わったよ」
『ああ、お家にいらっしゃらないと思ったら、今日早速取りかかられたのですね。朝方、依頼した内容で間違いないですか』
「うん、そう。盗賊頭以外の【衰弱】の付与状況までは確認していないから、依頼者には明日の明け方頃までには跡確認するように伝えてほしい」
『分かりました。それではそう取り計らっておきます』
云いながら、シアさんはなにやら忙しなさそうだ。
どうやら僕の自宅にいるようだけれど、なにか急ぎの仕事でもあるのだろうか。
すると、シアさんは間もなく――びっくりするようなことを云った。
『それで、今日の懇親会はいつ頃参加できそうですか?』
「……え、懇親会……?」
僕の脳裏を思考が駆け巡り、すぐにひとつの記憶にたどり着いた。
『……忘れてましたね。今朝、依頼の期限を伝えたときにもお伝えしたかと思いますが……』
「うん……うん……間違いなく云ってた……」
『忘れていらっしゃいました?』
「……うん」
画面の向こうではシアさんがクスクスと笑っていた。
『そうしましたら――もう少し遅れるとお客様には伝えておきます。仕事の都合と云えば、納得してくださるでしょう』
「うん……ごめんね……いつもいつも」
『いえ、それより戦闘でお怪我はされませんでしたか』
「ちょっと危なかったけど、まあいつも通りだよ。ステータスに関してはそんなに削られなかった」
『でしたら、それがなによりのことです――』
それから、軽く画面に向かってお辞儀をして、シアさんは続けた。
『――お気をつけてお帰りください。おいしい料理を作って待っていますね』
「……ありがとうママ」
『ぷひゅっ――』
僕はそのまま通話を切った。
自分の迂闊さに反省も多かった今日だけど。
シアさんが噴き出した顔を見られただけで、不思議と心が満たされていくのを僕は感じたのだった。
▲▲~了~▲▲