残酷な描写あり
R-15
第1話「異世界転生」
■■回顧■■
大学生の頃、『ADHD』という症名の診断を受けた。
ただの気質だと思っていた自分の偏屈さや不器用さには、医学上の名前が付いていたらしい。
不安な気持ちのまま就職し、紆余曲折。
いいこともそれなりにあったけど、結局、最終的には上手くいかなかった。
――もっと早く気付くべきだった。
僕は最初から誰かと協調して生きていくのに向いていなかったのだ。
『自分ができないこと』に向き合って、問題をどうにかできたこともあった。
『自分ができないこと』に目を瞑って、自分を優秀だと着飾ったこともあった。
他人にできないようなことが僕にはできた。だから、いろんなことを任された。
だけど、他人が当然のようにできることが僕にはできなかった。だから、戦う時はいつも独りだと感じていた。
『ADHD』という病理は、僕を優秀にした分、孤独の味をより強いものにした。
どれだけ頑張っても、結局、最後まで僕は僕に報いることができなかったのだと思う。
僕の生への執着心を食い尽くしたのは、『思い込みの強さ』と『行動力』だった。
あの時、真夜中の部屋を包んでいた不思議な魔力は、僕の自傷行為を微笑んで見守っているようだった。
――急性アルコール中毒。
それが僕の前世での死因だった。
▲▲~了~▲▲