異世界は小悪魔と共に

作者： 特攻君

ファンタジー ／ダークファンタジー

異世界 ／西洋風

残酷な描写あり R-15

　醜く焼けただれた顔を治せるのは、上級の信仰系魔法である。
　使える人物は限られており、残念ながらエウィ王国には存在しない。しかしながら儀式魔法を行使することで、上級の魔法が使用可能になる。
　儀式魔法とは、何人かの高位司祭や魔法使いが集まって執り行う魔法だ。
　そのための寄付金が、白金貨十枚だった。

「神殿もボリ過ぎよね」

　ロッジから出たアーシャは、道の端を隠れるように歩いていた。
　神殿は大通りを進んだ先で、中央は人通りが激しい。いくら顔を包帯で隠していても、面体を気にする女性なのだ。

（オシャレがしたいわ。でもこっち世界じゃ、あたしの着てた服は派手ね。ああいう服の女性をまったく見かけないわ）

　アーシャが召喚されていたときに着ていた服は、いわゆるヘソ出しルック。下は超が付くほどのミニスカートで、前屈みになれば後ろから見られてしまう。
　城塞都市ソフィアで見かける女性は、何の見栄えもしない布の服とロングスカートだった。刺繍ししゅうが施してあるくらいで、色のバリエーションも少ない。
　肌もほとんど露出しておらず、装飾品も木製で味気なかった。

「アレを着たら一人だけ浮いちゃうわね」

　そうは言っても、今のアーシャも同様の服を着ている。
　シュンの従者になったときに、王国から支給されたものだ。召喚当時に着ていた服は、荷物の中に大切に保管してある。
　なぜかと言うと、治安が悪いからだ。
　露出の激しい服で歩いていれば、すぐに路地裏に引っ張り込まれて犯される。今は醜いので襲われないかもしれないが、体だけが目的の男性もいた。
　用心に越したことはない。

（最初にそう聞いたしなあ。レイプされるなんて御免よ！　でもオシャレができないのは辛いわ。何とかならないものかしら？）

　アーシャの思考は、裕福な日本で育ったからだろう。
　それが通用するのは、同じく裕福な貴族や大商人に限られる。平民の生活は苦しくて、服などに金銭を使っている余裕はない。
　そんなことを考えていると、大通りを抜けて神殿に到着した。
　エウィ王国の国教である聖神イシュリル神殿である。

「神殿に何か御用ですか？」

　神殿をマジマジと見ていると、一人の女性がアーシャに声をかけてきた。
　神官着を纏まとっているので、神殿の関係者だろう。いつからか見かけなくなったジェシカを彷彿ほうふつさせる女神官だった。

「治療をお願いしたいんだけど……」
「その顔の包帯はどうされました？」
「魔の森でちょっとね」
「討伐隊の人でしょうか？」
「そっそうよ！　えっと……」
「失礼しました。神殿の中にお入りください」

　さすがに外で問診されても困る。アーシャが言葉を濁すと察してくれたのか、女神官は神殿の中に案内してくれた。
　その間も傷のことを聞かれる。

「信仰系魔法は試されましたか？」
「上級じゃないと駄目って言われたのよ」
「そうですか。でしたら、こちらにご案内致します」

　女神官は状態を理解したようで、アーシャは応接室らしき部屋まで案内された。同時に彼女からは、ソファーに座って待つように促される。
　すぐには治療できないようだ。

「さすがに普通の治療じゃないしね」

　それでも日本の病院のように、何時間も待つことはなかった。
　神殿は病院業務も行うが、医療技術が魔法技術なのだ。診察後はすぐに癒してしまうので、治療に必要な時間が短い。
　そして上質な服を着た男性が、応接室に入ってくる。

「お待たせしました。司祭のモルホルトと申します」

　モルホルトは中年の男性だった。
　おっさんが嫌いなアーシャは、肩を落としてゲッソリした。とはいえ、包帯のおかげで伝わらないのは幸いだろう。
　立場も司祭なので、あまり失礼なことも言えない。

「えっと……。アーシャです」
「ご希望は上級の信仰系魔法と伺いましたが？」
「はい」
「包帯を外して傷を見せていただけますか？」
「え？　はい」
「これは……」

　アーシャが包帯を解くと、モルホルトはすぐに診察を開始した。と言っても特に触られず、ジッと眺めているだけだ。
　口には出さないが、「キモいから見んな！」と言いたくなる。

「確かに上級の信仰系魔法が必要ですね」
「治るんですか？」
「もちろんです。ですが、寄付金のほうが少々……」
「白金貨十枚でしょ？」
「はい。もしかして……。お持ちで？」
「あるわ。これでいい？」

　懐に手を入れたアーシャは、白金貨十枚を取り出した。
　それを見たモルホルトは、怪訝けげんそうな表情に変わる。額に眉を寄せて、まるで彼女を値踏みするかのようだった。
　これには少しカチンときたので、席を立ちあがって問いかける。

「何か問題あんの？」
「いえ。どうやって工面されたのかと思いまして……」
「どうだっていいでしょ！　とにかく早く治して！」
「わっ分かりました」
「急いでよ！」
「儀式の準備がありますので、もう少々お待ちください」

　尋問された気がしたので、アーシャは声を荒げてしまった。
　もちろん反省などせずに、鋭い視線をモルホルトに向ける。するとムスっとした表情で、足早に応接室を出ていった。
　それからは、小一時間ほど待たされる。

「お待たせしました」

　どうやら、儀式魔法の準備が整ったようだ。
　応接室に案内してくれた女神官が、アーシャを迎えにきた。
　そして、儀式を執り行う部屋まで連れていかれる。
　部屋に入ると、中央の床に魔法陣が描かれていた。周囲にはモルホルトを含めて、十人の司祭が立っている。
　何やら物々しいが、神殿の儀式とはそういうものだ。

「アーシャ様、魔法陣の中央にお進みください」
「え、えぇ……」
「すぐに済みますのでご安心を……」

　アーシャが魔法陣の中央に立つと、周囲の司祭たちが魔法の詠唱を始めた。通常の魔法であれば詠唱など要らないが、儀式魔法には必要なようだ。
　司祭たちの詠唱が終わると、魔法陣が光りだして全身を包み込んでいく。と同時に目が眩くらむような輝きを放って、体の中に吸い込まれていった。
　これにはビックリしたが、とりあえず痛くも痒かゆくもない。

「終わりました」
「え？」
「可愛らしい顔ですな。こちらをお使いください」

　モルホルトはアーシャの容姿を褒めた後に、手鏡を渡してきた。
　治っているようだが、自身の醜い顔が脳裏に浮かんで鏡を直視できない。だが恐る恐る視線を向けると、一瞬にして喜びの表情に変わった。

「凄い！　治ってるわ！　治ったのよ！」
「聖神イシュリルの奇跡でございます」
「凄いわね！　あはっ、あはははっ！」
「では寄付金を頂けますかな？」
「これね。どうもありがとう！」
「いえいえ。司祭の務めでございます」

　満面の笑みを浮かべたアーシャは、モルホルトに白金貨十枚を渡す。
　以降はその白金貨を、一枚ずつ他の司祭たちに手渡していた。一人に対して一千万円とは恐れ入るが、なぜ白金貨が十枚必要なのかを理解する。
　それを物語るように、司祭たちはホクホク顔で部屋を出ていった。

「今後は私が担当です。ご用の際はお呼びください」
「分かったわ！」

（神の奇跡って凄いわ！　こんなにもアッサリと治っちゃうなんてね。でも、さすがにボリすぎよ。そのうち天罰でもあるんじゃないかしらね）

　アーシャの歓喜は収まらないが、いつまでも神殿にいる必要は無い。
　さっさと神殿を出て、ゆっくりとロッジまで帰る。もちろん可愛い顔を見せつけるように、堂々と大通りの中央を歩いた。
　そしてロッジに戻った後は、床の上に寝転がる。

「そう言えば、シュンに会えないんだっけ？」

　現状をシュンに伝えて、あのときに捨てたことを後悔させてやりたかった。しかしながら彼のいる部屋に向かうには、許可証が必要である。
　天井を見上げたアーシャは、右手の人差し指で頬を掻かいた。

「まぁいいかあ。もう付き合うつもりは無いしぃ」

　よく考えたら、復縁を迫られても困る。
　シュンの本性を知ったので、従者に戻るつもりもない。

（お金は半分も残ってるわ。まずは家を探さなきゃ！　良い物件があればいいんだけど、都市もよく知らないんだよねぇ。可愛いものでも売ってるかなあ？）

　アーシャは今後のことを考える。
　ロッジを追い出されれば、住まいを探さないといけない。だが生きていくための仕事については、暫く働かなくても良いはず。
　まだ白金貨は、半分も残っているのだ。家も借家であれば安いだろう。となると、日本にいた頃のように遊べる。
　これには感極まりながら、楽しそうに床の上を転がるのだった。


◇◇◇◇◇


　ロッジから出たアーシャは、城塞都市ソフィアで暮らし始める。
　住む場所を探したが、残念ながら良い物件は無かった。なので今は仕方なく、宿屋生活を送っている。
　日本ならホテル暮らしと同意なので、ちょっとだけ気分が良かった。
　ただしそれ以外には、無性に腹が立っている。

「まったく……。こっちの世界ときたら！」

　こちらの世界は、現代人だと暮らしづらいのだ。
　まず、娯楽が無い。
　クラブやカラオケなどといった施設は存在しない。ファッションをしようにも、平民が使う服飾店では気に入る服が売っていない。
　何でも揃そろっている日本とは違うのだ。

（やることが無いわ。何をしろって言うのよ！）

　アーシャが望む最低限のものは、貴族にしか扱えないものだった。
　高級料理を楽しみたくても品格が問われるので、平民では入店すらできない。豪華な服は高価であり、普段から着るものでもない。
　貴金属は桁が違った。白金貨十枚など、すぐに吹っ飛んでしまう。
　これでは、何も楽しめないのだ。

「どんだけ格差があるのよ！」
「君。ちょっといいかな？」

　それでもめげずに都市内を散策していると、後ろから男性に呼び止められる。ナンパかと思ったが、どうやら違うようだ。
　巡回中の衛兵らしく、見覚えのある剣と鎧よろいを装備していた。

「何かしら？」
「討伐隊に所属していたアーシャ殿で間違いないかな？」
「え、えぇ。そうよ」
「勇者候補のシュン殿の従者だった？」
「そうよ」
「ふむ。デルヴィ伯爵様が君を呼んでいる。ご同行を願えるかな？」
「デルヴィ伯爵？」

　アーシャには聞き覚えのない名前だったが、断れる雰囲気ではない。
　いつの間にか、数名の衛兵に取り囲まれている。

「なっ何よ！」
「君には強盗の疑いが掛けられている！　一緒に来てもらうぞ！」
「え？」
「おい！」
「「はっ！」」

　衛兵たちが、アーシャを拘束する。
　どうやら、捕縛の準備を整えていたようだ。まるで警察の捕り物みたいに、周囲にはヤジ馬が集まってきた。

「やめて！　放して！」
「「大人しくしろ！」」

　アーシャは暴れるが、屈強な衛兵たちが相手では逃れられない。
　あっという間にロープで拘束され、そのまま強引に連行される。以降は何の取り調べも無く、デルヴィ伯爵の屋敷に連れていかれた。
　都市にある貴族街の一角で、とても大きな屋敷である。
　その中の一室では、一人の老人が待っていた。

「伯爵様、例の女を連れて参りました」
「ご苦労。もう暫く押さえておきたまえ」
「「はっ！」」
「放して！」
「活きのいい女だな。ワシが納得したら帰してやる」
「あ、あんたは誰よ？」
「この御方はデルヴィ伯爵様だ。無礼が過ぎると重罪だぞ！」
「はあ？」

　デルヴィ伯爵。
　エウィ王国の有力貴族で、齢六十を越える。レイナスの父親であるローイン伯爵と実力を二分するほどの人物だ。
　そして、黒い噂うわさが絶えない人物でもある。
　私欲にまみれた生活をしており、世間だけでなく貴族からの評判も悪い。蛇のような鋭い目をした白髪の老人で、アーシャを舐なめ回すように見ている。
　これには寒気がして、ブルっと体を震わせてしまう。

「ワシの屋敷に強盗が入ったようでの」
「それがどうしたのよ！」
「盗まれたのは、白金貨が二十枚ほどだ」
「あたしじゃないわよ！」
「聖女様に聞いたのだが、其方そなたは顔に大火傷を負っていたな？」
「そっそうね……」
「治療するには、神殿で上級の信仰系魔法が必要だったとか？」
「そうよ！」
「どうやって寄付金を工面したのだ？」
「………………」

　デルヴィ伯爵の話は、カーミラが奪ってきた白金貨の件である。
　あの小悪魔ではなく、アーシャを犯人だと思っているようだ。

「もらったのよ」
「ほう。誰に？」
「っ！」

　アーシャの胸に刻まれた魔法陣が疼うずき出した。
　デルヴィ伯爵の問いに答えると、おそらく死ぬ。やっと元の顔に戻って、普通の生活を始めているのだ。
　こんな所で死にたくはない。

「言えないわ」
「まぁ犯人が其方であろうとなかろうと、それは構わぬのだ」
「はい？」

　デルヴィ伯爵は、いったい何を言っているのか。
　犯人じゃなくても構わないとは、どういう意味なのだろう。といった考えがアーシャの表情に出たようで、口角を上げた顔が近づく。
　物凄い嫌悪感に鳥肌が立ちそうだ。

「白金貨二十枚分の仕事をしてもらうぞ」
「だから、あたしじゃないって言ってるでしょ！」
「ほほっ。其方が犯人なのだ。ワシがそう決めたからの」
「はあ？」
「ワシの屋敷から白金貨が盗まれ、其方は神殿に白金貨を寄付した」
「何を言ってんのよ！」
「十分な証拠だな。お前たちもそう思うだろう？」
「はい。この女が犯人です！」
「え？」

　デルヴィ伯爵の言葉に対して、衛兵たちが同意する。
　これは取り調べでも何でもなく、ただの出来レースだった。

「ワシは若い女が好きでの。其方のような可愛い女がな」
「キモいからこっちを見んな！」
「白金貨二十枚分。其方の体で返してもらうぞ」
「ふざけるんじゃないわよ！」

　アーシャは必死に抵抗するが、堅く拘束されているうえに衛兵の力は強い。
　この場から逃げることは不可能だった。

「奴隷部屋に連れていけ」
「畏まりました」
「準備ができたらの。お前たちも遊んでいけばよい」
「よろしいのですか？」
「ほほっ。若い女が壊れるを見るのが好きでの」
「ありがとうございます！」
「存分に孕はらませてやれ」
「「はっ！」」
「ちょ、ちょっと！　嫌よっ！　放してっ！　誰か助けてっ！」

　いくら助けを呼んでも無駄である。
　衛兵に引きずられたアーシャは、屋敷にある奴隷部屋に連れていかれた。続けて、天井から鎖で吊つり下げられる。
　以降は裸にされて、衛兵たちに何時間も輪姦りんかんされてしまう。
　それを嫌がっても「生意気な女だ」と、しこたまぶん殴られる。何度も体内に精を注がれ、休む暇さえも与えられない。
　行為が終わるころには、もう動く気力さえ沸かなかった。

「良かったぜぇ。まぁこれから大変だろうがな」
「色んな奴が来るからな。さっさと壊れたほうが楽だぜ？」
「はぁ、はぁ」

　今後のアーシャには、白金貨二十枚分の仕事が待っている。
　その若々しい体を抱くのは、デルヴィ伯爵の息がかかった者たちだそうだ。貴族もいれば、商人や役人もいるらしい。男性だけではなく女性も、だ。
　そして、地獄の日々が始まるのだった。


◇◇◇◇◇


　あれから何日経っただろうか。
　奴隷部屋にある籠の中に、一枚の銅貨が投げ入れられる。入口近くにある籠は、罪人にされたアーシャが連れてこられたときから置いてあった。
　銅貨は何枚貯まっただろうか。三分の一は入っているかもしれない。しかしながら溢あふれるほど入ったところで、白金貨二十枚分には届かない。
　銅貨一枚は十円である。
　つまり十円で飽きるまで抱かれ、二億円を稼がなければならないのだ。

「も、もう……。やめ、て……」
「えへへ。その体をもらいにきたよぉ」
「あ、貴女、は……」

　アーシャが壊れかけた頃だった。
　どうやってここまで来たのかは分からないが、眼前にカーミラが現れる。邪悪な笑みを浮かべて、契約の対価を要求してきた。

「た、たす、け、て……」
「助けませんよぉ。もう死んじゃいますしねぇ」
「お、おね、が、い……」
「駄目でーす！　悪魔は契約にうるさいって言ったよねぇ？」
「あた、しは、ま、だ、死……んで、な、いわ」
「えへへ。次の契約を結んじゃいましたぁ！」
「や、やく……そ、くが……」
「だから、カーミラちゃんは殺さないですよぉ」
「え？」
「この人間がお相手しまーす！」

　カーミラが指し示した場所には、見たことがある男性が裸で立っていた。しかもその胸には、アーシャと同じ小さな魔法陣が刻まれている。
　この小悪魔と、次の契約を結んだモルホルト司祭だった。

「銅貨一枚は入れましたぁ。契約どおりに好きにしていいですよぉ」
「あのときから狙っていたのだ。たとえ悪魔に魂を売ろうとも！」
「やっやめっ！　ぎゃああああ！　痛い！　いやあ！」
「ひゃははははっ！」

　モルホルトはその手に、鋭利なナイフを持っていた。
　まさに、カーミラから許可を得た瞬間である。アーシャの首や胸、または腹を突き刺している。と言っても、顔だけは手を出していない。
　奴隷部屋の中は、苦痛の悲鳴と狂気の声が木霊した。

「はぁはぁ。やっと静かになったな。さぁその体を愛してやるぞ」

　アーシャは目を見開き、悶絶もんぜつしながら若い命を終わらせた。
　そしてモルホルトが、死体を抱き始めた。
　神に仕える司祭として、女性を殺して抱くなど言語道断である。しかしながら、死んだ女性しか愛せない死体愛好家だった。
　今まで犠牲になった女性が存在するか分からないが、悪魔と契約してまで手に入れた死体である。
　まさに精魂が尽き果てるまで、何回も絶頂していた。

「契約満了！　汚いけど、その体をもらっていくねぇ」

　一連の光景を眺めていたカーミラは、アーシャの死体を袋に詰め込む。もちろん、モルホルトの死体は要らない。
　主人であるフォルトは、男性に興味が無い。

「待ちくたびれたよぉ。御主人様に慰めてもらおう！」

　それにしても、時間がかかってしまった。終わるのを待っていただけだが、モルホルトは止まらなかった。
　そんなにも、アーシャの死体は良いものだったのだろうか。
　カーミラは首を傾げながら、不思議なものを見たような表情をする。とはいえ、そんなことを考えている暇はない。
　さっさと袋を抱え上げて、奴隷部屋から出ていくのだった。

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